去る6月15日(土)、東京・板橋区のイオンシネマ板橋で「『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater上映&スペシャルトークが開催された。これは2月16日に続いて3回目の開催となる。

 『ULTRAMAN ARCHIVES』プロジェクトは、「ウルトラマンシリーズ」作品を観たことのない人にも存分に楽しんでもらえることを目的にしたイベントだ。「ウルトラマンシリーズ」の歴代作品にスポットを当て、当時の資料や制作関係者の証言、現代ならではの視点や外部の有識者からの評論を交えた映像、出版、商品化など、様々な形でより深く知ってもらうとともに、新たな魅力を伝えようという狙いで企画されている。

画像: 特別ゲストとして、俳優/彫刻家の片桐 仁氏(左)と特技監督の中野昭慶氏(右)が登場

特別ゲストとして、俳優/彫刻家の片桐 仁氏(左)と特技監督の中野昭慶氏(右)が登場

 今回は『ウルトラQ』シリーズ14話「東京氷河期」のリマスター版を上映、その後、特技監督の中野昭慶氏と、俳優/彫刻家の片桐 仁氏によるスペシャルトークショウが開催された。その内容は全国15劇場にライブビューイングで中継されている。

 作品本編は劇場の大スクリーンに、アスペクト比4:3の白黒映像として再現された。当日は劇場の最前列、かぶりつきの状態で本編を見たが、ほどよくグレイン感の残った映像で、よく知っている作品ながら、またもや飽きずに最後まで見てしまった。

 そして、その後の中野監督と片桐氏のトークショウも、ファンにとってはたいへん興味深いものだった。

 片桐氏は、俳優だけでなく彫刻家としても多くの作品を発表している。その中にはウルトラ怪獣にインスパイアされたものがあるそうで、当日もふたつの作品を持参していた。

 片桐氏曰く「シャックール星人」と「キング縄文」だそうだが、そもそも片桐氏は子供の頃におかしの懸賞でキングジョーのキーホルダーが当たったことがあり、その造形が大好きだったそうだ。

画像: 片桐氏の作品から「キング縄文」(左)と「シャックール星人」(右)

片桐氏の作品から「キング縄文」(左)と「シャックール星人」(右)

 「『ウルトラQ』ではありませんが、『ウルトラ警備隊西へ』はお話の浮かれ具合もいいんですよね。キングジョーも世界初の合体ロボットですから、凄いです」と円谷作品愛全開で語っていた。

 そこから当時の撮影の話になったが、ここで中野監督から面白いエピソードが披露された。中野監督は、もともと成瀬巳喜男監督作品などが好きだったそうだ。しかし当時は助監督は作品を選ぶことができず、円谷英二監督の撮影に加わったときも、何をやっているのかすらわからなかったそうだ。

 しかしその後、特撮作品の撮影方法やスタッフなどを必死で勉強した結果、円谷監督に気に入られ、助監督として指名をされるほどになった。そこから円谷プロの立ち上げにも協力し、テレビ作品の制作にも関わっていったのだという。

 ちなみに『ウルトラQ』というシリーズ名については、最初の候補だった『アンバランス』を円谷監督が気に入らず、SF作家協会に打診したところ、『Q』(QuestionのQ)という提案があった。ちょうどその頃オリンピックの体操で「ウルトラC」という言葉が話題になっていたので、「このふたつを合わせて『ウルトラQ』になった……と思う」と中野監督は紹介してくれた。

 ここから「東京氷河期」本編の話になり、「ペギラの眠そうな目がいいんですよね」と片桐氏が言うと、中野監督から「当時の材料では丸い目が作れなかったので、粘土を丸くして、そこに塗料を塗ったんです。また、またまぶたを内部に仕込んだワイヤーで操作していたんだけど、調子が悪くてしっかり閉じることができなかった。だから半開きになって、眠そうな顔に見えるんです」と、意外なエピソードが披露された。そう聞いて本編を見直すと、ペギラもユーモラスに思えるから不思議だ。

 「そういったトラブルも多いけど、特撮にNGはないんです。そもそもセットを壊してしまったら撮り直しはできない。特撮作品にはNGをOKにする編集テクニックが必要です。映画はドラマが大切で、特撮に縛られては駄目です。特撮は映画を面白くする演出のひとつで、円谷監督も特撮という言葉を嫌って、いつもトリックと呼んでいました」という中野監督の言葉に、観客一同頷いていた。

画像: 「特撮にNGカットはない!」中野昭慶監督の言葉にみんな納得。『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theater第3弾はファン必聴の内容だった

 そこから30分のテレビシリーズでドラマを完結させる難しさや、作品に収められた時代性(季節労務手帳や父親が元・零戦パイロットという設定など)、桜井浩子さんが当時の助監督のアイドルだったことなどについての話題で盛り上がり、あっという間にトークショウは終了となった。

 最後にウルトラシリーズに関するコメントを聞かれて片桐氏は「ウルトラシリーズの基地の隊員になりたいです。コックピットに座ってみたい」と、ファンらしい素直な気持ちを語ってくれた。

 中野監督は来場者に向けて「雨の中足を運んでくれてありがとうございます。50年以上前に頑張った作品を、今こうして見られることに、作り手として感動しています。こういった作品を後生に語りついでいきたい」と話してくれた。

 なおイベントの最後に、次回の『ULTRAMAN ARCHIVES』Premium Theaterが9月21日(土)に開催されることも発表された。上映作品は『カネゴンの繭』。実はこのカネゴンは、もともとスタッフから怪獣のアイデアがないか相談された中野監督が、「がま口のお化けを作ったら?」と提案したことから生まれたそうだ。

 そのカネゴンがどれほどのクォリティで甦るのか、会場は今回と同じイオンシネマ板橋なので、ファンはまた足を運んでみてはいかがだろう。

画像: 『ウルトラQ』Episode 14「東京氷河期」  ●あらすじ:ある日、真夏にもかかわらず羽田空港が氷漬けになってしまう事件が起こる。異常な寒波は やがて東京中へと広がり、街はまるで氷河期のような姿に変貌。異常な寒波の原因を万城目は以前南極で遭遇したペギラの仕業ではないかと推測する。 ●スタッフ:脚本 山田正弘、監督 野長瀬三摩地、特技監督 川上景司 ●キャスト:佐原健二、西條康彦、桜井浩子 ほか

『ウルトラQ』Episode 14「東京氷河期」
 
●あらすじ:ある日、真夏にもかかわらず羽田空港が氷漬けになってしまう事件が起こる。異常な寒波は やがて東京中へと広がり、街はまるで氷河期のような姿に変貌。異常な寒波の原因を万城目は以前南極で遭遇したペギラの仕業ではないかと推測する。
●スタッフ:脚本 山田正弘、監督 野長瀬三摩地、特技監督 川上景司
●キャスト:佐原健二、西條康彦、桜井浩子 ほか

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