豊かな田園風景をたたえる福島県いわき市を舞台に、少年少女が出会い、そして恋に落ちる。そうした淡々とした日常を描きながら、忙しすぎる現代人が忘れかけている感情や、風景を愛でる気持ちを呼び覚ましてくれる映画「薄暮」が、いよいよ6月21（金）日より公開となる。主演・小山佐智を演じるのは、若手の中でも人気と実力を兼ね備えた女優・桜田ひよりだ。声優初体験の感想や、作品の魅力を聞いた。
――出演おめでございます。憧れていた声優を経験していかがでしょうか？
小さいころからアニメが好きで、声優さんってすごいなってずっと尊敬していたんです。まさか自分が声のお仕事をするとは考えたこともなかったので、佐智を演じられて、すごく貴重な体験になりました。うれしかったです。
――実際のアフレコはいかがでしたか？
収録は二日間に分けて、初日は一人で、二日目は雉子波祐介役の加藤（清史郎）さんと一緒に行ないました。
やはり一人でするよりも、二人のほうがやりやすいなって感じました。一人だと、（一人で）壁打ちをしているみたいですけど（笑）、相手役がいれば受け取るもの（セリフのニュアンス）によって感情のキャッチボールができますし、それによって自分の吐き出し方（セリフの言い方）も変わってくるので、映像（映画、ドラマ）の世界と同じ感覚でできました。
――さて、演じられた小山佐智の印象は？
結構、自分と似ている部分があるなって感じました。監督には、佐智とビジュアルが似ているって仰っていただいたし、（似ているから）声も自分の理想通りだから、そのままでやってほしいってお願いされたんです。声のお芝居は初めてでしたけど、自分のままでできるのは、すごくやりやすかったです。
――少し、キーを高くしていませんか？
そうですね、女子高校生っぽくすこし元気な感じにはしています（笑）。そうした部分も含めて、監督とはたくさんお話をさせていただきながら、佐智像を見つけていく作業をしました。実は、監督の中で20年ぐらい温めてきた役（作品）ということでしたので、そこを目指していきましたけど、結局、自分に戻ってきた感じです。
――モノローグも担当されています。
そこは監督から、大げさに、大胆なぐらい自分を表現してほしいと言われていましたし、自分の想いを吐露するところですから、感情をたくさんのせていくようにしました。だから、佐智に当てている声とは少し印象が違うかもしれません。
――物語は、特段大きなうねりがあるわけでなく、平穏な日常を淡々と描いています。
台本を読んでいて、心地よさを感じました。実際に現地にもお邪魔したり、（現地の）写真も見せていただいて、こういう素敵な光景が広がっている場所で生活できるのって、すごく幸せなことなんだろうなって思いました。東京で過ごしていると、高い建物が多くて空が狭く見えるんです。でも、いわきは空が広くて、星が綺麗で！ それがそのまま作品に反映されているので、心地よさと同時に、リラックスできる映画になったなって感じています。
――作品では、少し昔を感じさせるような、淡い恋愛模様も描かれています。
雄大な自然に囲まれているからでしょうか、二人の恋は現代的なものからは少し離れているようにも感じて、友達というか、お互いに気になる存在だけど、その仲が、なかなか詰められないというもどかしさがあって！ でもそれは、この景色にすごくあっているなって思いました。
――初々しい喧嘩もあって。
本当に！ 10代にしかないぶつかり合いなのかなって感じました。バスの中のシーンはいろいろと試行錯誤を重ねながら、監督と創っていきましたから。さきほどもどかしいと言いましたけど、言いたいけど言えない、聞きたいけど聞けない……。そうした感情がぶつかり合って、遠慮しがちに喧嘩する姿は、私自身、フッと笑みがこぼれてきて。（二人は）いい関係だなって思いましたね。
――佐智は、喧嘩した後に帰宅して、記憶に残るセリフを言います。ソノ意味は？
私も、分からなかったので、監督に聞いてみたんです。そうしたら、そういうものなんだよってはぐらかされてしまって（笑）。結局、分からないままそう感じるように演じたらOKでしたので、それはそれでよかったのかなって思います。
――そうしたものを経ての、最後の屋上のシーンはいかがでしたか？
お互いに勇気を振り絞って頑張りを見せたシーンになっているので、お見逃しなく。
――今回、声優を経験してみての感想は？
声だけで表情とか感情を表現するという、とても貴重な体験をさせていただけたなって感じています。実際にやってみて、声だけの印象でこんなにも喜怒哀楽が表現できるんだっていう発見もあり、女優としての表現も幅が広がったように感じます。とにかく、学生のうちはいろいろなことを経験して、いろいろなことを吸収して、たくさん成長していくことを目標にしているので、頑張ります。
――最後に見どころをお願いします。
この作品は、男の子と女の子が恋に落ちていくさまを描いているんですけど、実在する場所の景色、風景を収めているので、映画を観てくださった方にはぜひ、現地を訪れていただき、佐智ちゃんと同じ景色を見てほしいなって思います。
劇場アニメ「薄暮」
6月21日（金）よりポレポレシネマいわき小名浜ほか、全国公開
＜キャスト＞
桜田ひより
加藤清史郎
下野紘、島本須美、福原香織、雨宮天、佐倉綾音、花澤香菜
＜スタッフ＞
原作・脚本・監督・音響監督：山本寛
配給：プレシディオ
アニメーション制作：Twilight Studio
製作：Project Twilight、株式会社つかさ製菓
特別協賛：株式会社SNY
（C）Yutaka Yamamoto/Project Twilight
ヘアメイク：池上豪
スタイリスト：福田亜由美（crepe）
