昨年10月7日にタワーレコード渋谷店で行なわれたセカンド・アルバム『SOLEIL is Alright』のリリイベを終えて受験体制に入って以来、およそ180日ぶりのパブリック・パフォーマンスである。これがワクワクせずにいられようか。会場についた自分を待ち受けていたのは、場内に流れるハービー・マン「Philly Dog」やアーサー・アレキサンダー「Anna(Go to Him)」だ。“これはいい一日になりそうだぞ”との予感が、さらに強まる。

 SOLEIL(ソレイユ)が3月30日、東京・渋谷wwwにてワンマンライブ「Hello, Again SOLEIL」を開催した。ヴォーカルのそれいゆは見事、高校受験→合格を勝ち取った。ファンの胸中では、高校生それいゆの誕生を祝う気持ち、そしてバンドの活動再開を祝う気持ちが、がっちり結びついていたことだろう。いつもライブの冒頭に流れる映像にも、新たに撮影されたフッテージが追加されている。ああ、もうすぐ本人が出てくるのだ。ビートルズやタイガースやオックスで失神する、というファンの気持ちが、ストンと理解できるぐらいには、心臓の高まりを覚えた。

 バンドスタンドにはベース&プロデュースのサリー久保田、ギターの中森泰弘、さらにサポート・メンバーであるコーラスの白井真梨子、ドラムスの白根賢一が揃う。「魔法を信じる?」のイントロが始まり、少し遅れてそれいゆが登場する。ほんの数小節かもしれないが、すごく長く感じられたのはぼくだけではないはずだ。ああ、目の前には、たしかにそれいゆがいる。それいゆがいるのだ。ファンの感極まったかのようなエモーショナルそのものの拍手を受けても、それいゆはクールだ。そして一瞬で歌の魔法に引き込む。音楽のミューズに愛される声質とリズム感の持ち主だからこそできることだ。

画像1: SOLEIL(ソレイユ)/祝、高校合格! 待望の活動再開ステージで、春の東京に桃源郷の桜咲く。東名阪ツアーも開催決定、7月にはサード・アルバムもリリース

 つづいてお面を使う「Sweet Boy」。“私がかっこいいと思うのは、イケメンでも勉強ができる子でもスポーツ万能でもなく、ギターが弾ける人”的な歌詞がまた、音楽好きの心を揺さぶる。ラストの“サバラ”ポーズ(楳図かずお「まことちゃん」)も見事に決めた。「姫林檎GO GO!」は昨年38年ぶりのソロ・アルバム『超冗談だから』を発表、精力的そのものの活動を続けるレジェンド・近田春夫の書き下ろし。途中、ザ・フー「I Can See for Miles」的世界に連れ出してくれるところも最高だ。

 ここで最初のMCパートに。高校合格をオーディエンスに報告し、星野みちるが花束をプレゼントする。前述のリリイベで片目だけ書き入れられていたモッズ仕様のだるまに、ついにもう片目(右目)が書き入れられた。4月から高校生……つまりこの日のワンマンは中学生のそれいゆを見ることができる正真正銘のラスト・ライブだったのだ。高校生になることを記念して歌ったのは「ハイスクールララバイ」(松本隆;作詞、細野晴臣:作曲 1981年にイモ欽トリオが歌唱して大ヒット)。ゴリゴリのテクノ歌謡が、人力(じんりき)スカとして鮮やかに蘇った。

画像2: SOLEIL(ソレイユ)/祝、高校合格! 待望の活動再開ステージで、春の東京に桃源郷の桜咲く。東名阪ツアーも開催決定、7月にはサード・アルバムもリリース

 それいゆは「Sweet Boy」のお面、「青いインクのラブレター」の傘、「MARINE I LOVE YOU」の手旗、撮影OKパートでの「#ソレイユぽ」パネル、段ボールギター(二代目)など小道具をふんだんに駆使し、加えて「キャンディの欠片」やインスト「ソレイユのテーマ」等でグロッケンの演奏もたっぷり聴かせてくれた。さらにアンコールではドラム・セットに座って、中森泰弘、サリー久保田とのトリオ(つまりSOLEILのメンバーのみ)でブルース・コードのインスト曲、「恋するギター」、「Pinky Fluffy」を届けた。それいゆはリズム感が本当にいい。多少難しめの“入り”でもごく自然にスッとバンドに乗って歌ってしまうところ、間奏でグロッケンを弾いてから歌に戻る時の見事なタイミング、ベースと呼吸を合わせながらしっかりギターを盛り立てていくドラム・プレイ、どこにも見事なセンスが輝いている。もちろんリードとサイド、イントロにソロにバッキングに、シングル・トーンにコード弾きにとリッケンバッカー・ギターのおいしさを放ちまくった中森泰弘、やはりリッケンバッカーのベースで重厚かつメロディアスにアンサンブルのボトムを担ったサリー久保田の巧技にも聴きほれるばかりだった。キーボードレスのSOLEILサウンドは、“決してエフェクターを多用せず、爆音で攻めない”場合の3ピースのロック・アンサンブルを構築する際のすごくいいテキストになるはずだ。

画像3: SOLEIL(ソレイユ)/祝、高校合格! 待望の活動再開ステージで、春の東京に桃源郷の桜咲く。東名阪ツアーも開催決定、7月にはサード・アルバムもリリース

 この日はまた、いくつかの新情報が発表された。6月29日・大阪OSAKA MUSE、30日・愛知RAD HALL、7月20日・東京WWW Xとワンマン・ツアーが行なわれ、最終日にはニュー・アルバム『LOLLIPOP SIXTEEN』もリリース(もちろんモノラル)。ライブではその中から「メロトロンガール」がいち早く披露された。サイケデリック・サウンドに溢れていた頃のスウィンギング・ロンドンのヴァイブレーションを、いまこの場所に持ち込んだ感じのナンバーといっていいはずだ。

 高校生のそれいゆがヤンキーになるのか小悪魔になるのか魔性を身につけるのかは全く予想できない。ただひとつ確実にいえるのは、今後も音楽家としてさらに躍進し、成長し、きらめくようなポップ・チューンの数々で聴き手をときめかせるであろうということだけだ。

This article is a sponsored article by
''.