4K UHD BLU-RAY レビュー『ランボー』テッド･コッチェフ監督 【世界4K-Hakken伝】

FIRST BLOOD - 4K UHD BLU-RAY

FIRST BLOOD is a simple movie but one which has this almost primitive appeal
about one man in a wood fighting for survival

Release Dates (Theater)：October 22, 1982 (USA)
Domestic Total Gross：$47,212,904
(Foreign: $78,000,000)

FILM

今年の7月で72歳の誕生日を迎える我らがスライ、シルヴェスター･スタローン。その彼が37年前の1982年、２本の主演作をヒットさせてアクション･スタアとしての健在ぶりを示した。1本は82年全米興行ベスト4に輝いた『ロッキー3』（ちなみに1位～3位は『E.T.』『トッツィー』『愛と青春の旅立ち』）。そしてもう1本のヒット作が本作である（カロルコ･ピクチャーズ製作／オライオン･ピクチャーズ配給／全米興行成績13位）。原作はディヴィッド･マレル著『一人だけの軍隊』（出版邦題／原作ラストでランボーは壮絶な死を迎える／映画も同様の結末となるはずだったが、モニター試写結果の不評により変更）。演出は『ノース･ダラス40』『地獄の七人』や名作海外ドラマ『LAW & ORDER：性犯罪特捜班』の製作総指揮で知られるカナダ人監督テッド･コッチェフ。

プロットはシンプル。グリーンベレーとしてベトナム戦争を戦った男ジョン･ランボー。山間の小さな町に戦友を訪ねた彼が、保安官や地元警察の心無い態度に怒り、たったひとりで警察や軍を相手に戦いを挑んでいく。ちなみに原題FIRST BLOODは｢どちらが先に仕掛けたか｣という意味を持つ。共演にリチャード･クレンナ（『暗くなるまで待って』）、ブライアン･デネヒー（『コクーン』）、『悪魔の追跡』等の監督でも知られるジャック･スターレット、劇場映画デビュー間もない『CSI:マイアミ』のデヴィッド･カルーソー。

ライオンズゲート（北米地区のみリリース）とスタジオカナル（欧州地区リリース）は、終戦後もベトナムで捕虜となっている米兵たちの救出を描く続編『ランボー／怒りの脱出』（85／監督ジョージ･P･コスマトス）、戦火のアフガニスタンでランボーの唯一人の理解者トラウトマン大佐救出劇を繰り広げる『ランボー／怒りのアフガン』（88／監督ピーター･マクドナルド）もUHD BLU-RAYリリースしており、ランボー･ジャンキーならば3タイトル揃えることをお薦めしたい。

VIDEO

撮影は『ウォリアーズ』『ストリート･オブ･ファイヤー』『インナースペース』のアンドリュー･ラズロ。35mmパナビジョン･アナモフィック撮影。スタジオカナルと修復プロダクションの老舗パークサーカス総監修による、35mmオリジナルネガからの4Kデジタルレストア、HDRグレーディング（全3作品）。映像平均転送レートは65Mbps（HDR10）を記録。ちなみに2007年BLU-RAY版の映像平均転送レートは21.6Mbpsとなり、3倍超の映像レートを有している。

BLU-RAY版からのアップグレードは明快。アナモフィックレンズならではの柔らかさの残るショットがあるものの、解像感は大幅に改善されている。建造物や衣装の輪郭線は鮮明で、看板や店舗窓の文字もより明確に。山岳地帯の木々や針葉、岩肌も鋭さを増し、背景の耐久性も堅固。画面を薄く覆う粒子感も良好で、フィルムの触感はシネフィルの心を掴むはずだ。晩秋のカナダ（ロケ地）にみる濃青色の晴天や鈍色の曇天、深いアーストーンや二次色、低体温の肌質も強化。HDRの恩恵はパトロールカーの回転灯や点滅灯、車両のヘッドライトやテールライト、ネオンサイン、金属のスペキュラー、火炎の輝きに表れる。真っ暗な廃坑内の炎の描画にも目を瞠る。

AUDIO

サウンドデザイン／音響編集監修は『コナン･ザ･グレート』『ダブルボーダー』『ランボー』3部作のフレッド･J･ブラウン。4トラック･ドルビーステレオ･マスターからの5.1chミックス。音声平均転送レートは3.4Mbps。音楽は御大ジェリー･ゴールドスミス。

サラウンド･ジャンキーはリミックス･アトモスやDTS:X未採用を残念に思うかもしれないが、5.1ch化には細心の注意が払われており、オリジナル･シネソニックのニュアンスを十二分に楽しめよう。最新映画のサウンドトラックとは比べようもないが、納得のいくイマーシブなソニック体験を生み出している。発声は乾性の明瞭さを持つ。山間のアンビエント、野生動物の鳴き声、木々のを揺らす風、上空を飛ぶヘリコプターの音、爆発音や銃撃音の反響音等、サラウンドの聴きどころも多い。アクションシークエンスも手に汗を握らせる緊迫感を生み出している。ゴールドスミス節は聴きどころのひとつ。アコースティック･ギターとトランペットによる哀愁のメロディ（イッツ･ア･ロング･ロード）や気魄が籠るバトルスコアも忘れ難い。前述通りアトモス／DTS:Xは未採用ではあるが、トップスピーカーを使ったアップミックス再生も予想以上の効果あり。

FINAL THOUGHTS

ウォームトーンで染め抜かれた第2作（撮影はなんと"テクニカラーの父""ミスター･マジックアワー"ジャック･カーディフ）／第3作（『2001年宇宙の旅』の撮影監督ジェフリー･アンスワースに師事した監督ピーター･マクドナルドが実質的な撮影監督）に対して、本作は寒々しいクールトーンで彩られており、これがベトナム帰還兵でPTSD（心的外傷後ストレス障害)を患ったランボーの心象風景を語っている。UHD BLU-RAYではその悲壮感が際立った。これは撮影のアンドリュー･ラズロの功績である。ハンガリー出身のラズロがブダペストの映画撮影所で見習いとして働いているときに第二次大戦が勃発、両親ともどもナチスの強制収容所に収容されたが、ラズロのみが奇跡的に生還したという悲惨な過去を持つ。そのため｢明るく暖かいトーンに強い拒否反応がある（シネマトグラファー誌）｣と語ったラズロが、たとえコダックフィルムを使って撮影しても｢現像段階でフジフィルムの冷たいトーンを忍ばせてきた｣というのは悲惨な体験によるものだろう。コレを頭に入れて鑑賞すれば、ラズロならではの様式美をより深く体験できるはずだ。必見！

SPECIAL FEATURES

4K UDH SPECIAL FEATURES

BLU-RAY / DIGITAL SPECIAL FEATURES

SCREEN CAPTURES（1280 × 720 pix）

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FILM SPECS

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音質評価

SCORE