レノボ・ジャパンは、昨年末に発売となったデュアルディスプレイのノートパソコン「Yoga Book C930」に搭載されたキーボード部分(E-inkディスプレイ)についての技術説明会を、大和研究所で開催した。
Yoga Book C930(以下、C930)は、2016年に発売されたYoga Bookの後継機で、キーボード部分もディスプレイで構成されており、通常の液晶画面と、キーボード部分のディスプレイ(ハロキーボード)の2面を使えるデュアル仕様のノート。キーボード面は、電子書籍リーダーなどにも使われている電子ペーパー=E-inkディスプレイとなる。
C930では、そのキーボード部分に各種改良が行なわれており、より快適な入力=タイピングが行なえるようになった、と担当者は力説していた。
その開発を担当したのは、レノボと言えば、ソレと返ってくるぐらい有名な大和研究所だ。同研究所は、レノボの開発・研究機関となるLenovo Researchの中で、System Innovation、つまりシステム全体の技術革新を担っているそうで、現在では20名ほどのスタッフが、日夜研究に勤しんでいるという。
Yoga Bookからの一番大きな変更(改良)は、キーボード入力にまつわる処理を行なう専用のハードウェアエンジン(そのまんまキーボードエンジンと言う)を搭載したことだ。そのチップが、液晶側、キーボード側、どちらの筐体に搭載されているのかはナイショということだが、これによって反応速度は大幅に向上。同時に、キーボード関連の処理にパソコン本体のCPUを使わなくなったことで、ノートパソコンとしての操作性(安定性)向上にも寄与しているそうだ。ちなみに、タイピングの反応速度は、一般的な人で60WPM(ワード/分)とのことで、世界記録は256WPMなのだが、C930では490WPMのタイピングでもきちんと反応したという。
加えて、タイピングの学習機能にもメスが入り、従来のE-VL(エルゴノミック・バーチャル・レイアウト=個々のキーをユーザーのクセに合わせてリアルタイムに調整する)を進化させ、ユーザーのスタイル(一本指入力orタッチタイピング)の予測も行なうようにしたことで、同研究所の調査では22%の生産性向上が見られたという。
また、実際にハードキーを持たない平面キーボードでありながら、キーをタッチした後の反応を感じられる(ないものを感じる=クロスモーダル)ようなフィードバックもより吟味され、従来の音や振動に加え、3Dアニメによってキーが沈む動きが再現されることで、前述のクロスモーダルを強化する工夫も採用されている。3Dアニメによって視覚的なクロスモーダルを付加することで約6%の生産性の向上、キータッチ後の遅延の短縮&タイプ音の最適化によって約7%の生産性の向上が、見込まれるという。
キーのレイアウトについては、初代Yoga Bookに近い「クラシック」と、キーの縦方向を長くした「モダン」の2種類が選べ、切替え操作もリアルタイムで行なえるようになった。なお、細かいポイントとして、音量ミュート、機内モードなどのオン・オフが一目で認識できるアクティブ・インジケーター(ON状態で点灯)機能も追加されており、よりユーザー目線に立った改良が行なわれていることが、アピールされていた。
その他、タッチパッド部分については、マイクロソフトと協業を行ない、Windows10のさまざまなジェスチャをサポートしているそうで、このサイズでの実現は世界初になるという。また、静電容量センサーのみで、タッチと仮想プレス(ドラッグ&ドロップ)を識別、指一本でドラッグ&ドロップが行なえることも、同様に世界初の対応になるそうだ。
説明会では、報道陣のみならず、ユーザーにも面白い試作機が展示されていた。それは、Yoga Bookのご先祖さまとなるもので、次世代の製品開発へ向け、液晶とE-inkデバイスを組み合わせた2台のプロトタイプ。一台は2016年6月ごろ、もう一台はその約一年後の2017年3月のもの。こうしたプロトタイプは、これまであまり表には出してこなかったが、今回の技術説明会に合わせ、開発の経緯や、同研究所が手掛けている内容を広くアピールしたいという狙いもあって、公開にこぎつけたという(今後もこういう取り組みには期待したい)。