1947年にウェスタン・エレクトリック(Western Electric = WE)が開発した20cmフルレンジユニット755A。20cm口径フルレンジユニットの原器的な存在であるWE755Aを最初期アルテックA7で採用された大型エンクロージュアH825にマウントして鳴らし、未知の表現を引き出す。ホームユース機も交えた9機種のヴィンテージ真空管パワーアンプを組み合わせた。

② ダイナコMkIV

画像: 1960年、EL34・UL接続pp機としては3機種目に発売され、モノーラル機としてはMARK IIの後継機、増幅段の回路、パーツ構成は59年発売のSTEREO70と同一である。電源トランスのみ、モノーラル化に合わせて小型化されている。先行モデルMARK IIIの売り上げが好調で膨大な生産台数があるのに対し、STEREO70と比較しても需要が少ないためか短命に終わり、中古市場で見かけることはひじょうに稀である。(杉井)

1960年、EL34・UL接続pp機としては3機種目に発売され、モノーラル機としてはMARK IIの後継機、増幅段の回路、パーツ構成は59年発売のSTEREO70と同一である。電源トランスのみ、モノーラル化に合わせて小型化されている。先行モデルMARK IIIの売り上げが好調で膨大な生産台数があるのに対し、STEREO70と比較しても需要が少ないためか短命に終わり、中古市場で見かけることはひじょうに稀である。(杉井)

輝かしさが出て音楽の味わいが濃厚に。懐の深さとスケール感が表れてきた

杉井 管球王国113号の「実験工房」でダイナコSTEREO70を用いた試聴を行ないましたが、MkIVはそのモノーラル版です。EL34プッシュプルで、ダイナコ特有のUL接続。出力は40Wとなっています。使っている出力トランスや回路も基本的に同じです。ステレオ時代になってからのモノーラルアンプで、STEREO70よりも短命に終わったため、市場で見かけることも少ない製品です。

 1970年前後、日本製のアンプとアメリカ製のアンプを聴き比べて、私はその鳴り方の違いに大いに悩みました。出力管や回路は同じなのに何が違うのか。違いは出力トランスの違いだろうと考え、アメリカ製のトランスを買ってきて自作アンプに組み込むと、まったく音の出方が変わった。先のラックスキットA3500とこのダイナコMkIVを続けて聴いて、当時を思い出しました。こちらの方が全体的に音が輝いているんですね。好みの違いもあると思いますが、私はこちらの方が断然好きです。WE755Aがよいスピーカーであることを再確認させてくれるアンプだと思いました。

杉井 そうですね。出力管は同じEL34ですが、ラックスA3500とは全然違いました。端的にいいますと懐の深さ、スケール感が違う。タイトでありながら、とても広がりのある音です。加えて、音像がシャープ。曖昧な部分がいっさいない反面、細かい音までよく彫り出せている。モニターとしても使えるでしょう。ペーパーコーンっぽい鳴り方にならず、WE755A本来のポテンシャルをよく引き出していたと思います。

土井 STEREO70よりもこちらの方がいいんじゃないかと思いました。スケールのある音で紙っぽさがなく、まるでホーンスピーカーが鳴っているかのような雰囲気で聴かせる。アメリカらしい音ですね。これまで数百本のWE755Aを箱に入れて音作りしてきましたが、こんなに簡単に音が仕上がるのは珍しいと思います。ダイナコのアンプには特有の個性があると思っていますが、ここではそれがよい方向で鳴っていて好印象でした。

 「御諏訪太鼓」は、太鼓の一打目から鳴り方が違いました。太鼓の音を本物のように再生するのは難しいことですが、周囲の笛なども含めてよく再生できていたと思います。「モルゲン」はピアノだけでなく、ベースやドラムもくっきり浮かび上がり、立体感がよく出ていました。先のラックスA3500と比べて、音楽としての味わいが濃厚になった印象です。

 「ちあきなおみ」は声の立ち上がりや演奏の雰囲気がよく、これまでいろいろなシステムで幾度となく聴いてきた中でもかなり上位にくる再生だったと思います。WE755Aが比較的シンプルに鳴らせるシステムとして、多くの方の参考になる組合せではないでしょうか。

杉井 「御諏訪太鼓」は、20㎝口径でここまで雄大な音が聴けるのかと感心しました。多種多様な打楽器の音が巧みに描き分けられていて、ドラのような金属製の打楽器も紙っぽい鳴り方にならず、リアルな音が聴けたと思います。「モルゲン」は音楽としての美しさがよく出ていました。全体的に音が澄んでいて、ピアノの音色も可憐です。トリオの演奏ですが、とてもスケールの大きな音楽に感じました。「ちあきなおみ」は音像がシャープで、演歌的ではなく、ジャズ的な哀愁を感じさせる歌声。これまでに聴いたことのない魅力がありました。

土井 「御諏訪太鼓」は太鼓の革の素材感やサイズ感がよく表現されていて、ラックスA3500とはずいぶん印象が変わりました。「モルゲン」はゆったりと音楽が始まります。ピアノは冴えがあり、ベースはアルコに味わいがある。これまで聴いてきた中でも相当高いレベルの再生です。「ちあきなおみ」はギターの音色が綺麗で声に伸びがあり、ストリングスには切なさが出ています。WE755Aでここまでのスケール感がいとも簡単に出てしまったことに驚いています。

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