シュアーMM型カートリッジの変遷を辿る
M3D、M44-7、V15 TypeⅢの3モデルで飛躍的な進歩を実感。透明度が上がり、高域の再現力が高まっていく
──今回の「実験工房」では、シュアーのMM型ステレオカートリッジM44-7とV15 Type IIIの交換針の比較試聴を行ないたいと思います。同じMM型カートリッジでも、カンチレバーの材質や針先の形状は様々です。それらの仕様の違いが音にどう表れるかを検証します。試聴に先立ち、そもそもシュアーのカートリッジはどんな音なのかをおさらいするため、純正交換針を装着した状態で歴代カートリッジ3機種の音を聴いていただきました。シュアー初のMM型ステレオカートリッジであるM3D(1958年発売)、そして今回の交換針試聴のメインである63年発売のM44-7と73年発売のV15 Type IIIの3機種です。


シュアー M3D
●発電方式:MM型●出力電圧:7.5mV(1kHz、5cm/sec)●負荷インピーダンス:47kΩ●針先形状:0.7ミル丸針●適正針圧:3~6g●自重:9.2g●純正交換針:N3D
※初期型の出力電圧は5mV(1kHz、5cm/sec)


シュアー M44-7
●発電方式:MM型●出力電圧:9.5mV(1kHz、5cm/sec)●負荷インピーダンス:47kΩ●針先形状:0.7ミル丸針●適正針圧:1.5~3g●自重:7g●純正交換針:N44-7
※最初期型の出力電圧は9mV(1kHz、5cm/sec)、66年~75年頃のモデルは11mV(1kHz、5cm/sec)


シュアー V15 Type III
●発電方式:MM型●出力電圧:3.5mV(1kHz、5cm/sec)●負荷インピーダンス:47kΩ●針先形状:0.2~0.7ミル楕円針●適正針圧:0.75~1.25g●自重:6g●純正交換針:VN35E
新 こうして年代順に並べて聴いてみると、シュアーのカートリッジがどのように進化していったかがよく分かります。競合メーカーと市場競争をする中で、取り入れるべき部分を取り入れていったのでしょう。簡単に言えば、年々「良い音」になっている。
古屋 そうですね。特に高域の再現が綺麗でクリアーになっていくのが分かりました。シュアーというひとつのメーカーが、ステレオ初期のM3Dから黄金期のV15 Type IIIまで、どのように音作りを進化させていったか。それを知ることができました。
新 知らずに聴くと、同じメーカーのカートリッジだと分からないぐらい音質が飛躍していますね。
古屋 M3Dは、良い意味でモノーラルの音をそのままステレオにしたような、中域重視でガツっと聴かせる音。個人的にはそこが気に入っていて、自宅でも使っています。ただ、これはソースを選ぶカートリッジです。録音が新しくなればなるほどレンジの狭さが気になってしまうので、何を聴いても良いというわけではない。M44-7は透明度が飛躍的に上がって、高域まで見通しが良くなります。V15 Type IIIになるとその部分がさらに進化し、新しい録音はM44-7やV15 Type IIIでないとしっかり鳴らないという感じになる。しかし、録音によっては先ほどお話ししたように、M3Dがとても嵌まることがあるんです。
新 私は普段、MC型カートリッジを使うことがほとんどですが、M3Dと同時代に発売されたレコードをCDで復刻するときに、久しぶりにM3Dを引っ張り出してみたんです。するとこれがぴったりと嵌まった。ステレオカートリッジですが、モノーラルカートリッジで聴くよりも、モノーラルのレコードを良い雰囲気で再生してくれたわけです。
新忠篤氏(左)、古屋 明氏(右)

