励磁型/パーマネント型と、磁気回路の構成が異なるウーファーとドライバー+ホーンを「J.C.モリソン方式ネットワーク」を使って組み合わせ、2ウェイマルチアンプ駆動で音作りを実践。パワーアンプはIPC/アルテック/ウェスタン・エレクトリック(WE)の3機種。46cm大口径ウーファーとドライバー+ホーンならではの音の可能性を追求する。

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④JBL 2440+2397
 パワーアンプ
 アルテック 1520T 低域用
 IPC AM1027 中高域用
 WE143A 低域用
 WE143A 中高域用

ハイファイ志向の最上の音に聴き惚れる。タンガーバルブ電源の力強さも本領発揮

1971年発売の2440は既存の375のプロシリーズ板と考えてほぼ差し支えないが、マグネット形状、ダイヤフラム品番に若干の相違はある。システムとしては、唯一4350に採用されるが、ほとんどの用途はPA、SRなどである。PAの場合は、2350、2355、などの大型ラジアルホーンが採用されたが、SRあるいは、モニター用途には今回試聴の2397が優れているといえよう。高密度のパーチクルボードにグレー塗装が施され、2インチ口径のスローアダプターとして2328(シングル)/2329(ダブル)があるが、さらに1インチ用として2327アダプターも用意された。(杉井)

 思わず聴き惚れてしまいました。これは本当に素晴らしいですね。かつて私はWE594Aにアルテックの31ホーンを組み合わせて使っていたことがありましたが、もし先にこの組合せの音を聴いていたら594は買わなかったかもしれません。それぐらいの驚きと感動がありました。まず「マーラー」ですね。私は何度かボストンのシンフォニーホールへ行ったことがありますが、少し音がこもって聴こえる部分があるんです。その響きを正確にマイクロフォンで拾うと、まさしくこういう音になるんですね。ですからこの再生を普通に表現するなら、まるで生演奏を聴いているかのような音、スピーカーを通した音ではないような音、ということになります。「ベイシー」もまた涙の出るような再生でした。このレコードを、CD時代になってからも菅野沖彦さんがいろいろなところで褒めておられたのを思い起こします。「ちあきなおみ」は、ギターの力強い弾き方が歌を邪魔せず、バランスよく共存していました。この伴奏あっての歌、この歌あっての伴奏、という関係性に改めて気づかされました。

杉井 JBL 2440は70年代前半のユニットですから、今回のラインナップでは時代が新しいものになります。ウーファーとの製造年代の差も一番開いている。でも実際の音を聴いて驚きました。年代やウーファーとのバランスといったことがどうでもよくなるほど、時代を超越した音だったからです。ひとつのシステムとして完成した音だと感じました。JBLでこのドライバーが使用された市販のシステムは、プロ・シリーズの4350しか存在しません。その他は、ほとんどPA用として3ウェイで使われていたと思います。2350ホーンにマウントされ、上は2405、下は15インチの2220や2205をエンクロージュアに入れて多数積み上げて使われていたと思います。そのため個体によっては酷使されて状態の良くないもの、或いはダイヤフラムが何度も交換されているものも少なくないはずですが、この個体はオリジナルで非常に状態の良いものです。

土井 おっしゃる通りです。個体の状態が良かったことも幸いでした。

杉井 2397ホーンとの相性も良かったですね。「マーラー」は、オーディオとして何の不満もない最上の音質でした。演奏の抑揚やスリル、緊張感が強く表れていて、音楽を聴くよろこびをしみじみと感じられる鳴り方です。「ベイシー」は、ピアノだけを聴けば先のアルテック288B+1005Bの方が印象的なのですが、演奏全体のバランスを聴くとこちらもたいへん魅力的です。とても活気に溢れた再生で、低音の質もこれまででベストでした。総じてハイファイ志向でバランスの整った音ですね。「ちあきなおみ」も、音楽そのものがとても美しく、心を揺さぶられました。アルテック288B+1005Bの組合せと違い、こちらはほとんど調整を施さないまま鳴らして、すんなりと凄い音が出てしまった。そのことにも驚きました。

土井 以前、本誌でマグナヴォックスの15インチ励磁型ウーファーとアルテックH825エンクロージュアとの組合せでこのJBL 2440を聴いたことがありました。そこでの印象が良かったので今回のラインナップにも入れたのですが、想像以上に素晴らしかったです。今回、励磁型ウーファーはタンガーバルブで電源供給しています。そのタンガー電源ならではの力強さが、ここへきてついに発揮されたと思いました。「マーラー」は管楽器の分厚さや弦楽器の穏やかさとスケール感が出ており、ここまでで一番の再生です。音色の統一感も印象に残りました。「ベイシー」のピアノは、アルテックの組合せよりもくぐもった感じはするものの、音にしっかりと芯がある。骨格が頑丈で安定感のあるサウンドでした。正直なところ、IPC AM1027+アルテック1520Tというアワーアンプの実力を超えています。「ちあきなおみ」は重量感と充実感がたっぷりで、圧巻の音でした。「今日のメダル確定」といってしまいたくなる、ここまでで間違いなくベストのちあきなおみです。

エンクロージュアにウイングを装着

土井 ここで、ジェンセン・タイプEシステムのエンクロージュアにウイングを装着してみました。いかがでしょうか。

杉井 私の位置で聴くと、真ん中に誰もいなくなるんです。左右に完全にセパレートしているように聴こえます。スピーカーの間隔を狭めればいいのかな。音がまだ馴染んでいない可能性もありますね。

土井 おっしゃる通り、ウイングを追加してから音が馴染むまでに少し時間がかかるのかもしれません。先ほどよりも低域を上げてみましたが、印象はあまり変わらないですかね?

 悪くはないのですが、ウイングを追加する前のほうが自然な鳴り方だったように思います。

杉井 私も同感です。ちょっと難しいですね。クォリティは高くなったけれども、音の面白味が減衰した感じがします。どうしてだろう。

画像: ジェンセンType“E”Systemエンクロージュアのフロントバッフル両サイドにウィングを取り付けた。

ジェンセンType“E”Systemエンクロージュアのフロントバッフル両サイドにウィングを取り付けた。

土井 さらに左右のスピーカーを10㎝ほど内側に寄せてみましたが、印象は変わりましたか?

杉井 スピーカーの真ん中あたりに音が戻ってきましたが、もう少し近くてもいいかなと。音が横に広がった感じは変わりません。

 ウイングを追加したことで響きは増したのですが、逆にキレ味が減ったように思います。これならウイングを装着する前のほうが良かったかなと。

土井 いろいろ試しましたが、総じて結果は難しいですね。ウイングは外して聴き直しましょう。

低域/中高域アンプをWE143Aに

土井 もうひとつこの組合せで試したいことがあり、パワーアンプを変更したいと思います。JBL 2440+2397の組合せのまま、ウーファー用/ドライバー用ともパワーアンプをWE143Aに変更しました。ここまではウーファー用がアルテック1520T、ドライバー用にIPC AM1027を使いましたが、AM1027は相対的に温和な音の傾向のアンプになるだろうと思います。ですから、ここまではウーファーよりもホーンを少し前に出すのを基本としてきましたが、ご存知の通りWE143Aははっきりと物を言うアンプです。これまでとは逆に、ホーンを後方に下げる必要がある。いろいろ試した結果、5㎝ほど下げました。

 パワーアンプが圧倒的な力でスピーカーを支配しているように感じました。とても良い音ですし、凄い音ではありますが、いささか凄すぎる(笑)。スピーカーがヘトヘトになっているように感じました。「マーラー」は大編成のオーケストラですから、アンプから供給されるパワーをスピーカーがそれなりに放出できていたように感じましたが、「ベイシー」はアンプのパワーをスピーカーが十分に受け止めきれていないと感じる瞬間がありました。「ちあきなおみ」も圧倒的すぎると思うほどでした。WE143Aというアンプのことをよく知っているから、そういう思い込みをしているのかもしれません。もしアンプを知らずに音だけ聴いていたら、こういう印象ではなかったかもしれない。しかし、いずれにしてもアンプのパワーが強すぎるとは思います。凄い音であることは確かなのですが……。

杉井 アンプのカラーが前面に出た音ですね。WE143Aは、けっしてリラックスして聴ける音ではありません。聴き手に緊張感を強いる音です。圧倒的な風格で音楽を支配します。聴き手が相応の心構えで向き合えば大きな感動が得られますが、疲れたときに癒しを求めて聴こうとするとすっかり参ってしまう。

 よく分かります。

画像: 低域/中高域アンプをWE143Aに

杉井 でも、なんだかんだいっても私はこの組合せで「良いスピーカーを良いアンプでドライブしている」という質感をしっかり得ることができました。「マーラー」のオーケストラの風格は今日の組合せでも別格だったと思います。アメリカのオーケストラに、まるでドイツのオーケストラのような厳格さや硬質さが加わっていました。オーケストラが爆発するようなエネルギー感も圧倒的です。旋律を歌い上げるような鳴り方も、IPC AM1027+アルテック1520Tの組合せでは感じられませんでした。しかし「ベイシー」ではその厳格さや硬質さがあまりマッチしていなかったと思います。個人的にこの曲は、もう少しリラックスして聴きたいですから。ですが、ピアノの音色はさすがに高品位で、ピアノそのものがグッと高価になったように感じたほどです。「ちあきなおみ」も歌と演奏の風格が凄かったですね。特にヴォーカルのサ行が遥か先まで抜けていくような倍音の出方に快感を覚えました。ここまでで最もワイドレンジでハイファイ志向の鳴り方だったのではないでしょうか。

土井 3曲を聴いてみてホーンはあと1㎝後ろでもよかったかな、と思いました。追い込めば、さらに良くなると思います。「マーラー」は、劇場で熱いドラマを観ているような、とても力強い音でした。IPC AM1027+アルテック1520Tとの組合せと比べると無駄な音がない。WE143Aはクリアーで見通しがいいので、細部まで明瞭にくっきりと聴こえたように思います。「ベイシー」はリラックスして聴くならAM1027+1520Tのほうが合うかもしれません。しかし、さらに高みを目指すならこちらの組合せです。もっと凄い音が鳴らせると思います。「ちあきなおみ」は強い再生でした。歌もギターも強い。それでいて哀愁感もあった。まだ可能性を感じさせる、良い再生でした。

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