励磁型/パーマネント型と、磁気回路の構成が異なるウーファーとドライバー+ホーンを「J.C.モリソン方式ネットワーク」を使って組み合わせ、2ウェイマルチアンプ駆動で音作りを実践。パワーアンプはIPC/アルテック/ウェスタン・エレクトリック(WE)の3機種。46cm大口径ウーファーとドライバー+ホーンならではの音の可能性を追求する。

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③アルテック288B+1005B
 パワーアンプ
 アルテック 1520T 低域用
 IPC AM1027 中高域用

輪郭明瞭で爽快ながら、中高域が優勢。ドライバー位置の調整で溶け合いが増す

アルテック288タイプドライバーは、1945年にボイスコイルインピーダンス24Ωの288が、1956年に同じく24Ωの288Bが、そして1966年には288C(24Ω)が登場した。さらに1968年には288D(16Ω)が1975年には288-8G/16G(8Ω/16⊡)が、1980年には288-8H/16H(8Ω/16Ω)が登場した。また、これまでのユニットはアルニコVを採用していたが、同年、フェライトマグネットを採用した288-8K/16Kも登場した。1005タイプホーンには、セル間の隙間を埋めた1005と隙間のある1005Bが存在する。試聴機は隙間のある1005Bを使用。(土井)

土井 続いてもアルテックのドライバー+ホーンです。まず、中高域がかなり強めに感じられました。ネットワークのボリュウムで低域を絞れば済むという感じではなかったので、中高域の音を少し減衰させることにしました。具体的には、ドライバー側にWE製板抵抗11Ωをシリーズに入れました。インピーダンスが16Ω+11Ωに上がったわけですが、要するにボリュウムでいうところのラダー型のような形でプラス側にシリーズで11Ωを入れてゲインを少し下げたというわけです。

 土井さんにいろいろ調整していただいたのですが、「マーラー」を聴くと弦楽器がややザラついているように感じました。これはユニットの音量バランスの問題ではなく、おそらくドライバーそのものの音味なのだろうと思います。「ベイシー」は、ピアノの音色がここまでの組合せとは傾向が異なり、やや木質っぽさのある音でした。悪くはありませんが、もう少し音色がしっとりと聴ければいいなと思った次第です。「ちあきなおみ」はイントロのギターに主張があり、それ自体は悪くないのですが、これももう少し音色を楽しみたいなと。さらに追い込んでいけば良い音に鳴っていく可能性もあると思いますが、現時点ではそのような印象でした。

杉井 ホーンのサイズが大きくなると、やはり見た目通りの音になるなと、まず感じました。ホーンがこの規模になるとシングルウーファーでは役不足といいますか、ほとんど「288B劇場」という感じの鳴り方でした。ただ、バランス的な難しさこそありましたが、288Bらしい鮮度の高さは確かに感じられました。大きな音でも騒々しくならないのも288Bの特徴です。

 「マーラー」では、コンサートホールの最前列で音の洪水を浴びているような独特の爽快感がありました。しかし「ベイシー」では音のエネルギーが中高域に集中してしまい、この演奏を心から楽しめる鳴り方ではなかったですね。各楽器の輪郭はくっきりと出ていて鮮度も高く、実在感のある音ではあるのですが、どうしても低音が足りない。「ちあきなおみ」も同様です。スケール感は大きいのですが、演奏者との距離があまりにも近くなってしまった印象です。

土井 私もお二人と同様の印象でした。ホーンが大きくなった分、スケール感が増したのは確かですが、ホーンとウーファーの性格が異なり、それぞれが違う鳴り方をしていたと思うんです。先ほど聴いたJBL LE75+H91やアルテック802C+H811の組合せはウーファーとドライバーの音がよく馴染んでいましたから、なおさらそう感じるのでしょう。

ドライバー+ホーンの位置を調整

土井 ひとつご提案ですが、ホーンの位置を4㎝ほど後方に下げてもう一度聴いてみませんか。

 先ほどまでとは全然違いますね。改めて3曲を聴き直してみましたが、とても印象が良くなり、驚きです。ホーンを4㎝下げただけで見事なアルテック・サウンドになりました。「マーラー」は耳に刺激的な感じがなくなり、ホールの響きともよく馴染んでいたと思います。「ベイシー」のピアノも、これまで聴き慣れた音色が聴けました。ややさっぱりとした感じがこの組合せの特徴だと思うのですが、とろみがもう少し加わるとさらに魅力的な音になると思いました。

 「ちあきなおみ」も良かったです。ギターの主張がとても強いけれども、歌もそれに負けず主張していました。わずか4㎝の違いでここまで印象が変わることに驚きましたが、改善策をすぐに思いつく土井さんのノウハウにも感服しました。素晴らしい変化でしたね。

ボードにマウントしたアルテック288B+1005Bを天板上で約4㎝後方にシフト。

杉井 288Bの存在感が良い意味で薄れて、ウーファーと絶妙なバランスで溶け合っていました。どの曲を聴いてもしっとりとした上質な質感が備わっていて、改めてちょっとした調整で音は大きく変わるのだなと痛感しましたね。とりわけ「ベイシー」のピアノは大きく印象が変わって、一音一音に慈しみの感じられる素晴らしい響きでした。

土井 プレート抵抗で288Bのゲインを落としたのはよかったけれども、それに気を取られてホーン位置にまで注意が向いていなかったんですね。しかし4㎝下げることでここまで変わるのは驚きであると同時に恐怖でもありました(笑)。ここまでガラッと変わるものなのかと。「マーラー」の輝きのある管楽器とゆったりと響く弦楽器、「ベイシー」のバランスの整ったピアノの音色、「ちあきなおみ」のバランスも申し分ありません。やはり音作りは難しいし怖いものでもあると改めて感じました。

ドライバーのアルテック288Bへの結線にWE製板抵抗11Ωをシリーズに入れて中高域をやや減衰させた。

 しかしこの作業は、ひとりで聴いていてもなかなか思いつかないのではないでしょうか。他者の意見を求めて気がつくこともありますから。

土井 そうですね。位相調整の重要性を知識として知っている方は多いと思いますが、それがどれだけ重要かを経験的に学んでいる方は実はそれほど多くないかもしれません。たくさんの音を聴いて経験値を上げていくしかないわけですが、読者の方にはこういったセッションでの我々の試行錯誤もぜひ参考にしていただければと思います。

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