イスラエル「Waves」社のライブ・ミキシング・ソフトウェア、「eMotion LV1」がv14へとメジャー・バージョン・アップを果たした。新しいv14では、多くのユーザーが待ち望んでいたマルチ・サーバーDSP処理に対応し、専用コントロール・サーフェス「FIT Controller」の2台同時接続もサポート。さらには「FIT Controller」を使用して、プラグインをハンズ・オンでコントロールすることも可能になった。ここでは速報記事として、「eMotion LV1」v14の概要をお伝えするとともに、おなじみ橋本敏邦(ティースペック/ライブデバイス)氏によるインプレッションを紹介することにしよう。
画像: 「Waves」のライブ・ミキシング・システム「eMotion LV1」

「Waves」のライブ・ミキシング・システム「eMotion LV1」

複数のSoundGridサーバーの同時接続をサポート

 世界No.1のプラグイン・デベロッパー、イスラエル「Waves」。数百種類に及ぶ同社のプラグインは、世界中のエンジニア/クリエイターから絶大な支持を集めており、あらゆる業界で必携のツールとなっている。ハリウッド映画からNetflixのドラマ、ヒット・チャートの楽曲に至るまで、今や「Waves」のプラグインが使われていない作品を探す方が難しいだろう。

 そんな「Waves」のライブ・ミキシング・システム「eMotion LV1」がv14へとメジャー・バージョン・アップを果たした。このバージョンの目玉は、マルチ・サーバーDSP処理に遂に対応したことで、「eMotion LV1」v14では最大4台の「Waves SoundGrid」サーバーを接続することが可能。この4台という台数はリダンダント用サーバーを含めない数で、システムを冗長化させる場合は最大8台の「SoundGrid」サーバーを接続することができる。

 そしてv14では、専用コントロール・サーフェス「Waves FIT Controller」の2台同時接続もサポートした。「FIT Controller」のフェーダー数はチャンネルが16本+個別アサインが1本の合計17本なので、2台同時接続した場合は合計34本のフェーダーを使ってオペレートすることが可能になる。さらにv14では、「FIT Controller」の操作子を使ったプラグイン・パラメーターのコントロールにも対応。使用にあたって煩雑な設定は不要で、プラグインのパラメーターは「FIT Controller」の操作子に自動的にマッピングされる。これによって機能面だけでなく、操作面においてもまた一歩大型のライブ・コンソールに近づいたと言っていいだろう。

 その他、GUIの改善、視認性を高めた新デザインのパッチベイ、8つのユーザー・キーの追加など、多くの改良が施された「eMotion LV1」v14。さらなる詳細は、「メディア・インテグレーション」のWebサイトをチェックしていただきたい。

取材協力:株式会社メディア・インテグレーション MI事業部、有限会社ティースペック/ライブデバイス 写真:鈴木千佳

 

画期的なマルチ・サーバーDSP処理

by 橋本 敏邦(ティースペック/ライブデバイス)

画像: 橋本敏邦氏(ティースペック/ライブデバイス)

橋本敏邦氏(ティースペック/ライブデバイス)

 新しいバージョン14の目玉は、何と言ってもマルチ・サーバーDSP処理への対応で、最大で4台(編註:冗長用サーバーを含めると最大8台)の「SoundGrid」サーバーを併用できるようになりました。少し前に「SuperRack」がマルチ・サーバーDSP処理に対応したので、「eMotion LV1」もそう遠くないうちに対応するのではないかと我々ユーザーは首を長くして待っていたんですよ。なので今回のバージョン14は、本当に心の底から待ち望んでいたアップデートという感じですね(笑)。

 マルチ・サーバーDSP処理と言うと、大規模なPAシステム向けの機能と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。これまでは高速な「SoundGrid」サーバーのシステムでも、96kHzのハイ・サンプル・レートで、64chの入力をフルに使い、なおかつネットワーク・バッファを最小にすると、それほどたくさんのプラグインを使うことができなかったんですよ。しかしマルチ・サーバーDSP処理ならば、レーテンシーを抑えるモードで多くのプラグインを使えるようになりますし、「Abbey Road Collection」のような重いプラグインもためらいなく使用することができる。ユーザーにとってはこんなに嬉しいことはありません。

 マルチ・サーバーDSP処理と言っても、そのセットアップはシンプルで、複数の「SoundGrid」サーバーを同一のネットワークに接続して設定を行うだけ。サーバーを4台併用する場合、サーバーAがミキサーとプラグイン処理用、サーバーB〜Dがプラグイン処理用という割り振りになり、特定のチャンネルの処理をサーバーCにアサインするといった設定も行えます。サーバー間はオーディオ信号が行き来するので、その部分で僅かながらレーテンシーが生じるのですが、それも「eMotion LV1」が自動的に補正してくれるので、ユーザーはあまり気にする必要はありません。素晴らしいのが、プラグイン処理用のサーバーがダウンしてしまった場合でも、システム全体の動作には影響が無いというところ。単純にそのサーバーが担っているプラグイン処理がバイパスされるだけなので、音が止まってしまうということがないんです。

 また、バージョン14では「FIT Controller」を2台接続して、チャンネル・フェーダー32本+独立フェーダー2本という構成で使用することも可能になりました。私はタッチ・コントロール操作が好きなので、特に恩恵はないんですけど(笑)、「eMotion LV1」でもフィジカル・コントローラーは必須という人は少なくないですから、そういった人には歓迎されるアップデートだと思います。また、プラグインのコントロールも「FIT Controller」から行うことが可能になりました。

 私は「eMotion LV1」が大好きで、発売当初から愛用し続けているわけですが、この数年の間に国内外でかなりユーザーが増えた印象です。その要因の一つがライブ配信で、コロナ禍で多くのPA会社がライブ配信を手がけるようになりましたが、従来のPAコンソールではちょっと役不足だったんです。例えば、ライブ配信ではレベル・マキシマイザー的な処理が不可欠ですが、一般的なPAコンソールにはそういったプロセッサーが入っていなかったりする。入っていたとしても、決められたポイントで1つしか使用できなかったり……。しかし「eMotion LV1」なら、「Waves」のプラグインを好きなだけ使って、がっつり音作りができるわけです。そういった便利さに気づいた人が「eMotion LV1」を導入し始めていますね。(談)

画像: v14にアップデートされた「eMotion LV1」

v14にアップデートされた「eMotion LV1」

 

eMotion LV1に関する問い合わせ
株式会社メディア・インテグレーション MI事業部
Tel:03-3477-1493

 

本記事の掲載は『PROSOUND 2023年4月号 Vol.234』

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