①『サマーコンサート2026』から「ヨハン・シュトラウス2世:Wiener Blut, Walzer/ヴィオッティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」 96kHz/24ビット
②『ホルスト:組曲「惑星」』から「木星/ボールド指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団」 96kHz/24ビット
③『伝説の宇和島ライヴ2』から「ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第8番ハ短調<悲愴>/エリック・ハイドシェック」 192kHz/24ビット
④「雨に唄えば/ステラ・コール」 96kHz/24ビット
⑤「Tokyo Confidential/TOMA(苫米地義久)」 192kHz/24ビット
⑥「Blues for Dino/Banksia Trio」 96kHz/24ビット
⑦「Lush Life/セシル・マクロリン』 96kHz/24ビット
⑧「ミスター・チャーム/ザ・ローリング・ストーンズ』 96kHz/24ビット
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①世界的に人気を博す、スイス出身の気鋭マエストロ、ロレンツォ・ヴィオッティが指揮。ウィーンの香りが馥郁とし、ウィンナワルツの中で特に情緒が濃いこの曲を、実にウエッテイに、しっとりと奏す。前奏部分の弦のソロのテーマ演奏は、まさにとろけるよう。音場は豊かに上下左右に拡がり、祝祭的なコンサートの雰囲気が、愉しい音たちから伝わってくる。ハイレゾ的なのが、弦の倍音の多さ。ウィーン・フィルならではの、それはチャーミングの極致。同コンサートの2025年のソヒエフ指揮と比べると、ピラミッド的な重厚感と鮮鋭感を持つのが2025年版。2026年版は、軽妙さと繊細なグラデーションが美質と聴く。
②『惑星』の初演指揮者、ボールドは生涯に同曲を5回録音。まさにスペシャリストだ。今回は1966年版。60年前の録音だが、もの凄く鮮明で、まるでたった今、演奏したかのような熱き情報性と鮮明さだ。弦楽のヴィヴィッドさ、ホルンの偉容さ、トランペットの華麗さは、本曲の魅力をいやが上にも高め、まさに最高の『惑星』といえよう。音場が透明で、彼方の木管、金管も距離を保ち、たいそうクリアーに聴ける。ホルン合奏のブリリアントなこと。中間部の有名な堂々とした歌謡旋律では、低弦から高弦までのユニゾンが奏でるハイレゾならではの倍音感に大いに感動。私はこれまで同曲を無数の実演と録音で聴いているが、本演奏のスケール感と華麗な倍音感はまさに別格。これぞリマスタリングの勝利。
③たいへん有名な歴史的録音だ。ハイドシェックを熱烈に推した評論家の宇野功芳氏は「演奏も天才ハイドシェック以外にはとうてい不可能な千変万化の音のドラマで、他のピアニストとは次元が違う。最も雄弁で最もチャーミングな、目がくらむほどのベートーヴェンがここにある」と、CDのライナーノーツで書いている。足枷を被って、まさにこれ以上は足が重くて進めないような、慟哭感。非常に圧迫感が強く、音の精神性につぶされそうだ。どんな早いパッセージでも一音一音に魂が籠もり、深く意味を考えさせられる。録音はデッドな空気感。ライヴ収録なのだが、鍵盤感、タッチ感が、たいへん明瞭に分かる、信じられないほどのクリアーさ。1991年5月宇和島での録音。
④ステラ・コールはスタンダードを得意とする、1999年アメリカ生まれのジャズシンガー。本作はニューヨークのクラブCafe Carlyleでのライヴ収録。冒頭のピアノのメロディがおしゃれで、抱擁力のあるアルトボイスもチャーミング。スウィンギーなリズムにのせて、快適に進行。間奏でもピアノのフレージングが素敵。間奏明けでは、崩しが心地好い。人口に膾炙したスタンダード曲を完全に自分のものにした快感が聴けた。音はヴォーカルはもちろん、バックバンドの個々のパートまで明瞭度が高い。
⑤作曲家・筒美京平が、学生時代からのバンド仲間だったサックス奏者の苫米地義久氏のために書き下ろした未発表曲を軸に制作されたアルバムから、1曲目の「Tokyo Confidential」。2025年10月にキング関口台スタジオで新録された。音像がたいへんクリアー。パーカッションが左、サックスがセンター、エレキベースはセンターからやや左、ピアノは左右にまたがり大きな音像を持つ。ピアノの低弦とベースのユニゾンの調和が心地好い。
⑥須川崇志(ベース)、林正樹(ピアノ)、石若駿(ドラム)のバンクシア・トリオ。当代揃っての3人の名人芸がフルに堪能。音像の描きは流麗で明瞭その体積も大きく、その内実には音が緻密に蝟集し、快適なテンポで進行するのが、実にかっこいい。センターにベース、ドラムスが定位。ピアノもファントム的にはセンターだが、両チャンネルにまたがって、音像が大きい。
⑦世界的に高評価を受けるジャズ・ヴォーカリストが歌うスタンダードナンバー。 弦のトレモロから入る導入が、おしゃれ。それは不安定さを感じさせるが、ヴァースになるとラブリーで、少しコケティッシュなヴォーカルが、耳をくすぐる。ピアノとの掛け合いがスリリング。ヴァースでは中高域が中心だが、メインでは低域までのレンジ感の広さと、感情的な語り口の上手さを聴かせる。誰もが知っているスタンダード曲に新たな新鮮な切り口を与えている。録音はピアノ、オーケストラともに明瞭。
⑧御年83歳、現役のミック・ジャガーが絶唱。歌詞中で、イーロン・マスクを「マッドな実業家」と歌い、話題に。バスドラムがセンター、リードギターが左、リズムギターが右。ミックがセンター、コーラスが左右と華麗な音場。絢爛な音模様にて強烈なリズムに乗って、不思議に中近東的なサウンドが炸裂。ミックの声も強く、全く歳を感じさせず、ヴィヴィッドで元気さに満ちた、まさに現役のロックだ。音数の多さと、勢いの鋭さ、音場に音が満ちる迫力は、いったい何だ!

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>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』


