映像制作の最前線では、「画質の神様」(マスターモニター)を基準にした精密な画質管理が欠かせない。その「神様」に最も近い家庭用テレビとして注目を集めるのが、パナソニックのZ95Bシリーズだ。オーディオビジュアル評論家・山本浩司が、その“プロフェッショナル基準”の映像を自らの目で確かめた。

PANASONIC
VIERA
TV-65Z95B
● 画面サイズ:65V型
● 解像度:4K(3840×2160画素)
● チューナー :BS4K/110度CS4K×2、地上/BS/110度CS×3
● 音声実用最大出力:170W(JEITA)
● スピーカー構成:ラインアレイスピーカー:1セット イネーブルドスピーカー:2個 ワイドスピーカー:2個 ウーファー:1個
● 接続端子:HDMI端子4系統、USB端子3系統(うち1つはUSB 3.0に対応)、LAN端子1系統、光デジタル 音声出力端子1系統 他
● 寸法/質量:テレビスタンド含む 幅:1,448mm、高さ:916mm、奥行:348mm/約29.0kg(スタンド含む)
● ラインナップ :Z95B[77V/65V/55V]
● URL:https://panasonic.jp/viera/
「画質の神様」がリビングに降臨!Z95Bが示す新時代の有機EL映像
映像作品のポストプロダクションにおいて、画質判断の基準となるのはマスターモニターである。近年は最大輝度4,000nitでのグレーディングが可能、つまり4,000nit表示ができるマスターモニターがHDR(ハイダイナミックレンジ)映像制作時の「神様」となっている。それを代表するのが31インチのソニーBVM-HX3110プロフェッショナルモニターだ。
その「神様」を眼前に置いて、全暗環境で各社の65インチ有機ELテレビを映画系画質モードで比較テストしたことがある。そこでBVM-HX3110にもっとも近い画質を提示したのは、間違いなく「シネマプロ」モードで観るパナソニックTV-65Z95Bだった。というか神様が65インチサイズにそのまま拡大されたかのようなパフォーマンスを示したのである。
とくに驚かされたのは最大輝度4,000nitでグレーディングされたUHDブルーレイ『PAN~ネバーランド、夢のはじまり』の再現性。人物の背後に配置された太陽光を表示した場面を観たが、ピークまでの明部階調の表現が精確で、ボケたり曖昧になったりしない。画面サイズこそ違うもののBVM-HX3110とウリ二つの画質を提示したのである。加えて登場人物たちのスキントーンや原色の表現なども見事で、ぼくは有機ELテレビがTV-65Z95Bによってもう一段階高みに上ったことを確信したのだった。
第4世代有機ELパネルがもたらす飛躍的な表現力
この超絶画質の実現に大きく寄与しているのが、「プライマリーRGBタンデム」技術を投入した最新世代のフラッグシップ有機ELパネルの採用だ。これは従来3層だった発光層を4層に増やして輝度と色再現を向上させたもの。従来のパネルはブルーの発光層でイエローの発光層をはさみ込む3層構造だったが、第4世代パネルは赤・緑・濃青の3原色による4層で発光層を形成し、加法混色によって白色を得ているわけである(その後ホワイトを加えたWRGBカラーフィルターによってフルカラーを得ているのは従来同様)。
新世代の有機ELパネル構造が実現する発光性能

ビエラのフラグシップモデルに採用されるパネルは常に最新の技術を用いて開発された、高画質を追求した有機ELパネルです。Z95Bでは従来(※)3層であった発光層を4層に増やすなどにより、従来の有機ELとは一線を画したパフォーマンスを実現する「プライマリーRGBタンデム」を搭載。さらに、そのパネル性能を最大限に引き出すためにビエラが従来からこだわってきた放熱技術を新たなるステージへと進化させ、パネルが発した熱をさらに素早く空気中に放熱させる独自技術「サーマルフロー」を搭載しています。
※ 2024年発売マイクロレンズ有機EL搭載シリーズ(65Z95A)
高出力の3原色による4層発光層を開発したことで、第3世代パネルで採用していたMLA(マイクロ・レンズ・アレイ)構造を用いることなく、かつてないレベルの高輝度を得るとともに、前世代(2024年モデル)パネルに比べて色域も拡大し、主にHDR映像で使われているBT.2020色域基準でもカバー率を進化させているという。
パナソニックはこの高輝度・広色域パネルの美点を活かすべく放熱構造をより進化させている。空気の流れをコントロールする「エアロダイナミクス」技術を放熱設計に応用し、新構造のパネル空冷構造「サーマルフロー」によって安定感のある高画質を実現しているのである。
4層構造のRGBタンデムが生む、鮮やかな高画質

従来(※)搭載していた有機ELでは3層だった発光層が4層に増え、さらに青色の蛍光体を最新のものに変更することで、光の波長を最適化。これにより、発光効率の向上によるコントラスト向上と光の純度アップによる広色域化を達成しました。
※ 2024年発売マイクロレンズ有機EL搭載シリーズ(65Z95A)
77インチと立体音響がもたらす“没入の悦楽”、Z95Bが描き出すホームシアターの新境地
この冬、パナソニック製有機ELテレビのトップエンド・シリーズZ95Bに77インチのTV-77Z95Bが加わった。この大画面テレビをじっくり観る機会を得て、その魅力、面白さに自分でも驚くほど心を奪われたことを記しておきたい。
1960年代初頭にデビューしたシンガー・ソングライター、ボブ・ディランの青春の日々を描いた映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』のUHDブルーレイを、照明を落として画面ににじり寄り、「シネマプロ」モードで観たのだが、65インチのZ95Bがそのまま77インチに拡大したかのような超大画面高画質映像のインパクトは絶大。ぼくもふだんから自室で65インチの有機ELテレビを観ているのだが、77インチになると「日常の道具としてのテレビ」という枠を超えて「超高画質なミニシアター」で映画に没頭しているかのようなイリュージョンが惹起されるのである。正直「あ、もう映画館要らないかも……」という気分に、「プロジェクターの反射光で観てこそ映画!」と大きな声を叫んできたおれなのに……。
それから、ドルビーアトモス収録のこの作品をUHDブルーレイで観ると、本作はイマーシブな音響設計によって観る者を1960年代前半のニューヨークに誘う演出が採られていることがよくわかるのだが、画面上方にイネーブルドスピーカーを2基、画面両サイドにワイドスピーカーを配置した77Z95Bは、その演出意図を見事に表現してくれることがわかった。街角のシティノイズ、クルマの走行音や人々のざわめき、遠くから聞こえてくる音楽などが立体的に表現され、観る者を包み込み、タイムマシンに乗って当時のニューヨークにワープしたかのような感興が得られるのである。「テレビの音」には今なお不満を感じるところは多いが、この立体音響効果には多くの方が驚かれることだろう。
画面下部の「ラインアレイスピーカー」をはじめ、トップと両サイドも覆うファブリックもシックで美しく、視覚的な安定感もすばらしい。これぞ2025年版大画面高級テレビならではの佇まい。う~む、ぼくの部屋に入るだろうか……。
提供 : パナソニック


