オーディオ機器の実力を引き出すための、様々なアクセサリー製品を実際に試聴してみようという本連載。前回と今回は、オーディオ機器の足下を支えるアイテムをクローズアップ、オーディオボードとインシュレーターを山之内 正さんのオーディオルームに持ち込んで、じっくり試聴していただいた。

 第8回となる今回はタイプの異なるインシュレーター3モデルをチョイスした。不要な振動を遮断することで音質を改善するという目的はオーディオボードと同じだが、サイズや仕様が異なっており、自分の環境に応じて使い分ける楽しみもある。今回選んだアイテムはどんな特長があったのか、リポート&動画でぜひご確認いただきたい。(StereoSound ONLINE編集部)

※今回の取材に関する山之内さんのコメントはこちら ↓ ↓

画像: いい音の仕上げはインシュレーターで! 山之内正氏が3種類のインシュレーターを聴き比べ。その印象を空気録音とともにお届けいたします www.youtube.com

いい音の仕上げはインシュレーターで! 山之内正氏が3種類のインシュレーターを聴き比べ。その印象を空気録音とともにお届けいたします

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 前回のオーディオボードに続いて今回はアコースティックリバイブのインシュレーターに焦点を合わせ、不要振動をいかにコントロールすればいいのか、効果を探りながら使いこなしのヒントを見つけていこうと思う。試聴は前回と同様、筆者の試聴室で行った。

 インシュレーターもオーディオボードと同様、不要な振動を遮断することが目的だが、使用方法が異なる。ボードは製品に取り付けられている脚やスパイクを介して載せるスタイルが基本だが、インシュレーターは製品側の脚とラックの間に挟んだり、アンプやプレーヤーの底板をダイレクトに支えるなど、使用方法のバリエーションが広い。使う場所や数を自由に調整できるので、音を確認しながら最適な用法を探ることもできるし、オーディオボードと本体の間に追加して複合的な効果を狙うのも面白い。オーディオボードで基本的な振動対策を行ったあと、インシュレーターでさらに音を追い込むなど、一歩踏み込んだ使いこなしも試す価値がある。

 アコースティックリバイブは素材や構造が異なる複数のインシュレーターを発売しており、選択肢が広い。今回はその充実したラインナップのなかからシリコンに貴陽石やトルマリンなどの天然鉱石の粉末を含浸させたスリムな「RKI-5005」、ヒッコリーとマホガニーに天然鉱石をブレンドしたケーブルインシュレーターの「RCI-3HK」、そしてマグネットフローティング方式の「RMF-1」の計3種類のインシュレーターを選び、試してみることにした。

今回試聴したアコースティックリバイブ製インシュレーター(1)

画像1: ステップアップ・無限大!(08) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? バリエーションが多く、使う場所や数を自由に調整できるインシュレーターで、最適な用法を探ってみた

シリコン製インシュレーター
RKI-5005 ¥9,800(税別、4個1組)●寸法:直径φ50×厚み5mm

 薄型インシュレーターとして最適な硬度、粘度を吟味したシリコン系の新素材を採用し、貴陽石やトルマリンなどの天然鉱石のパウダーも含浸させている。貴陽石やトルマリンは圧力をかけることでマイナスイオン発生効果が活性化するため、スピーカーやオーディオ機器の重量がかかることで、システム周辺がマイナスイオンで満たされるという。また表面に幾何学模様の溝を施すことで制振特性を高めており、オーディオ機器からケーブルまで幅広い用途で活躍する(設置時は幾何学模様の溝のある面を上にする)。

画像: 取材時には、RKI-5005をプリアンプ「C-2900」とパワーアンプ「A-75」、SACD/CDプレーヤー「K-01Xs」の本体の脚部下に敷いてみた

取材時には、RKI-5005をプリアンプ「C-2900」とパワーアンプ「A-75」、SACD/CDプレーヤー「K-01Xs」の本体の脚部下に敷いてみた

 RKI-5005は50mm径の天然鉱石含浸シリコン製インシュレーターで、厚さ5mmと薄いため、アンプやプレーヤーの脚の下に挟む用途に向いている。高さが大きく変わらないのでラックに収納した機器にも手軽に使えるし、目立ちすぎないグレーの仕上げが好ましい。フラットな面を下、ギアのような模様が刻んである面を上(機器側)にして使うことを推奨しているので、プリアンプ、ディスクプレーヤー、パワーアンプそれぞれの純正フットの下に挿入して音を確認した。

 耐荷重は指定されていないが30kgを超えるエソテリックのSACD/CDプレーヤー「K-01Xs」を載せてもほとんど変形しないし、重さがかかると摩擦が高まり、微動だにしなくなる。この安定感が得られるだけでも使う意味があると思うが、音の改善効果は期待を大きく上回るものだった。

 ブラスアンサンブルはトランペット、トロンボーン、ホルンそれぞれの発音の違いが明瞭になり、音像のフォーカスが改善して3次元の楽器イメージが浮かぶ。音像が緩みがちなチューバも一音一音の発音がはっきりして、ハーモニーの一番下を支える音域でももやもやとした低音にならず、風通しのいい和音が広がる。旋律楽器も定位の精度が上がってステージ上の楽器の並びがよく見えるし、トランペットとトロンボーンが向かい合って左右に並ぶ配置が目に浮かぶようになった。

画像: 試聴中の山之内さん。第7回同様に、お気に入りのディスクをじっくりチェックしていただいた

試聴中の山之内さん。第7回同様に、お気に入りのディスクをじっくりチェックしていただいた

 空間再現力は使用前に比べて明らか上がっているが、アタックの強さや互いに溶け合う柔らかいブレンド感はそのままで、音が痩せたり発音が甘くなるようなことはない。インシュレーターを使うことで音色が変化したり音の勢いが失われるなどの副作用が起こることがあるが、RKI-5005はそうした音調の変化はひじょうに少ないと感じた。

 女性ヴォーカルはどの音域でも声のイメージに緩みやにじみがなく、しかも豊かなボディ感と潤いはそのままキープ。ベースは軽快でよどみなくリズムを刻み、ピアノや声の動きを邪魔しないし、ホーン楽器群もインシュレーター使用前より鮮度が上がって一歩前に出てくるようなアグレッシブな鳴り方になった。インシュレーターを追加するだけでステージの広がりが立体的に感じられるのは新鮮な驚きがある。

今回試聴したアコースティックリバイブ製インシュレーター(2)

画像2: ステップアップ・無限大!(08) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? バリエーションが多く、使う場所や数を自由に調整できるインシュレーターで、最適な用法を探ってみた

マグネットフローティングインシュレーター
RMF-1 ¥52,800(税別、1個)、¥154,000(税別、3個1組)、¥198,000(税別、4個1組)
●寸法:直径φ約35×高さ 最大約56〜最小約51mm●耐荷重:1個当たり最大7kg

 内部にネオジウムマグネットを搭載し、その反発力によってオーディオ機器を空中浮揚させることで、高S/Nで広大かつ立体的な3次元音場再生を実現するアイテム。本体は航空レベルのアルミ合金と黄銅の異種金属による制振構造に加え、天然水晶と特殊制振材を組み合わせることでインシュレーター自体の癖の発生を排除している。CDプレーヤーのドライブメカや、アンプの電源トランスなど、機材自体から発生する振動も吸収消滅させる効果を備えている。

画像: RMF-1を使い、GTラック上段に置いた「C-2900」をフローティングの状態で設置した。磁気の反発によってオーディオ機器を浮かせることで、外来振動を遮断している

RMF-1を使い、GTラック上段に置いた「C-2900」をフローティングの状態で設置した。磁気の反発によってオーディオ機器を浮かせることで、外来振動を遮断している

 次にマグネットフローティングタイプのRMF-1の効果をプリアンプのアキュフェーズ「C-2900」で検証する。耐荷重は1個あたり7kgで4個だと最大28kg。C-2900は24.2kgなのでその範囲に収まるが、K-01Xsだと超えてしまう。高さも51〜56mmと大きめなので、ラックのなかでは使える機器は限られるだろう。

 今回はラックに載せたC-2900の底板をRMF-1で支える方法を試したが、ボードを追加するよりもさらに背が高くなるので、重量バランスを慎重に吟味する必要があった。特に重量がかさむトランスの位置はカタログなどで事前に確認し、プレーヤーに使う場合はメカニズムの下を支えるなど、柔軟に位置を調整することをお薦めする。RMF-1は上下方向への磁力の漏れはないが横方向へはあるので、近くに磁気カードなどを置かないように注意することも大切だ。

 音の変化は細部に現れた。ヴォーカルの息遣いや金管楽器のブレスなど、微妙だが重要な情報をいっそうリアルに引き出し、臨場感や生々しさが際立つ効果を発揮。さらにピアノとオーケストラの低音も微妙に鳴り方が変わったように聴こえる。音圧はそのままで力強さも確保しつつ、最低音域での深さと音程感をリアルに伝える方向で変化を聴き取ることができた。高度な次元での変化だが、帯域の広い再生システムなら確実に聴き取ることができるはずだ。

今回試聴したアコースティックリバイブ製インシュレーター(3)

画像3: ステップアップ・無限大!(08) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? バリエーションが多く、使う場所や数を自由に調整できるインシュレーターで、最適な用法を探ってみた

ケーブルインシュレーター
RCI-3HK ¥26,400(1個、税別)●寸法:W80×H65×D30mm●受け部サイズ:W40×H29mm

 電源やスピーカーケーブルを床やラックから浮かせて、外部振動を回避するアクセサリー。同様のアイテムの多くは、本体が単一素材のためインシュレーター自体が共振を起こし、再生音に素材の癖が乗ってしまうこともあったが、RCI-3HKはヒッコリーとマホガニーを組み合わせることでこれを回避。さらに内部には多種の天然鉱石ブレンドに加え、新たに貴陽石を封入。電磁波・ノイズ吸収効果と優れた制振構造により、圧倒的な音質向上を実現している。旧モデル「RCI-3H」からのバージョンアップも可能(¥15,400、税別)。

 最後に試したRCI-3HKはコの字型のケーブルインシュレーターで、天然鉱石に貴陽石を加えたことが従来モデル(RCI-3H)との違いだという。輻射ノイズを抑える効果もあるとされ、スピーカーケーブルだけでなく電源ケーブルやラインケーブルなどあらゆるケーブルで音質改善が期待できそうだ。天然木を2種類組み合わせているのは固有の共振音の影響を排除する狙いがあり、楽器にも使われる良質な響きの木材をカップリングすることで響きを制御しているのだ。

 使い方はシンプルで、RCI-3HKのくぼんだ部分にケーブルを載せるだけでOK。スピーカーケーブルが床に接しないようにするには最低でも左右それぞれ2個程度は必要なのでそれなりの予算が必要だが、電源ケーブルの場合は1〜2個で間に合うはずだ。

 RCI-3HKは特にオーケストラとピアノの音源で大きな効果を発揮した。バルトークの「管弦楽のための協奏曲」で活躍するティンパニの一音一音のアタックが鮮明になり、低弦の基音の音圧感が高まることでオーケストラ全体のエネルギーバランスが安定。重心が下がる効果は室内楽のピアノでも聴き取ることができ、低音の支えが安定することでヴァイオリンの表情が深みを増す効果も実感した。重心が下るとはいっても響きが重くなるのではなく、ピアノの左手の音域もオーケストラの低音楽器も見通しのよさはそのままキープしているし、低音の厚みでテンポが重くなるようなこともない。スピーカーと電源どちらか一方を選ぶとしたら、まずは電源ケーブルの対策を優先することをお薦めする。

 今回は用途が異なる3種類のインシュレーターを試し、それぞれの効果を実際に確認することができた。筆者の試聴室では以前からアコースティックリバイブのインシュレーターを適材適所で使い分けることで効果を確認していたが、RKI-5005は今回初めて試し、RCI-3HKもバージョンアップ前の製品との違いをあらためて確認することができた。特にRCI-3HKを電源ケーブルに使ったときの効果は予想を大きく上回るもので、電源まわりの振動とノイズ対策の重要性を再認識させられた。電源タップ近傍に設置し、日々その効果を実感している。

画像: 山之内さんの愛聴盤。動画撮影時には、イリーナ・メジューエワさんのCD(写真左)から、シューベルトの「即興曲 変イ長調 Op.142-2」を再生した

山之内さんの愛聴盤。動画撮影時には、イリーナ・メジューエワさんのCD(写真左)から、シューベルトの「即興曲 変イ長調 Op.142-2」を再生した

取材時の主な試聴機器

画像4: ステップアップ・無限大!(08) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? バリエーションが多く、使う場所や数を自由に調整できるインシュレーターで、最適な用法を探ってみた
画像5: ステップアップ・無限大!(08) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? バリエーションが多く、使う場所や数を自由に調整できるインシュレーターで、最適な用法を探ってみた

●SACD/CDプレーヤー:エソテリック K-01Xs
●クロックジェネレーター:エソテリック G-01X
●プリアンプ:アキュフェーズ C-2900
●パワーアンプ:アキュフェーズ A-75
●スピーカーシステム:ウィルソンオーディオ SOPHIA3
●電源タップ:アコースティックリバイブ RTP-6

イリーナ・メジューエワさんが奏でるベーゼンドルファーを、アナタの愛機で楽しんでください

『メジューエワ・プレイズ・ベーゼンドルファー』 ¥2,530(税込)

●WAKA-4204●アーティスト:イリーナ・メジューエワ●録音:2017年4月23日、相模湖交流センター●STEREO、96kHz/24ビット録音●発売元:若林工房●収録曲:ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、シューベルト:即興曲 変イ長調 作品142-2、シューベルト=リスト:連祷、リスト:エステ荘の噴水、ワーグナー=リスト:イゾルデの愛の死、ドビュッシー:沈める寺、ラフマニノフ:プレリュード 作品32-12

 今回の動画コンテンツではイリーナ・メジューエワさんによるCD『メジューエワ・プレイズ・ベーゼンドルファー』から、トラック4「シューベルト:即興曲 変イ長調 作品142-2」の冒頭部分を再生している。

 このCDは、メジューエワさんの日本コンサートデビュー20周年を記念したリリース第4弾で、初のベーゼンドルファーによる録音。ウィーン生まれの名器の魅力を最大限に伝えるプログラムとしてベートーヴェン、シューベルト、リスト、ワーグナー、ドビュッシー、ラフマニノフを、編集なしの一発録りで収録している。

提供:関口機械販売

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