オーディオ機器の実力を引き出すための、様々なアクセサリー製品を実際に試聴してみようという本連載。今回と次回は、オーディオ機器の足下を支えるアイテムをクローズアップ、オーディオボードとインシュレーターを山之内 正さんのオーディオルームに持ち込んで、じっくり試聴していただいた。

 第7回では3種類の構造が異なるオーディボードを採り上げ、それぞれの効果と、最適な使い方を探ってみた。オーディオ機器の振動対策の盲点にもなりがちなオーディオボードの効果を、リポート&動画でぜひご確認いただきたい。(StereoSound ONLINE編集部)

※今回の取材に関する山之内さんのコメントはこちら ↓ ↓

画像: オーディオ機器の足元を強化したら予想外の効果が! 山之内正氏が3種類のオーディオボードを聴き比べ。その印象を空気録音とともにお届けいたします www.youtube.com

オーディオ機器の足元を強化したら予想外の効果が! 山之内正氏が3種類のオーディオボードを聴き比べ。その印象を空気録音とともにお届けいたします

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 オーディオシステムの音を追い込むとき避けて通れないのが振動対策だ。部品や筐体だけでなく、ラックや床など、あらゆるものが媒介する不要振動が音の純度を低下させ、オーディオ機器本来の性能を発揮できなくなってしまう。そんな残念なことが起こる前に足元をいま一度見直してみようというのが、今回の試聴のテーマだ。アコースティックリバイブの振動対策アクセサリーのなかからまずはオーディオボードに焦点を合わせ、タイプ別に最適な使いこなしを探っていく。

 オーディオボードはインシュレーターと並ぶ振動対策の定番で、扱いやすい割に大きな効果が得られるため、音質改善の入口として人気が高い。特に回転機構を内蔵するディスクプレーヤーや大型トランスを積むパワーアンプなど、振動源を持つコンポーネントで効果が期待できるが、スピーカーも床への直置きではなく、ボードやインシュレーターを介した設置が基本だ。床が振動すると低音の立ち上がりが鈍くなったり、不要振動が床からスピーカーに戻ってさらに悪さをするためだ。

今回試聴したアコースティックリバイブ製オーディオボード(1)

画像1: ステップアップ・無限大!(07) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? 各種オーディオボードを試したら、プレーヤーやアンプだけでなく、電源ボックスにも効果があった

ヒッコリーボード 「RHB-20」 ¥26,400(1枚、税別)
●寸法/質量:W470×約H20×D385mm/約2.7kg●耐荷重:最大200kg

 音質向上効果のあるヒッコリー材を採用したオーディオボード。厚みが20mmと薄型になっているため、オーディオラックの中にプレーヤー等を設置している場合にも使いやすい。音色的な癖がなく有機的で躍動感に溢れる再生を可能にする。

 オーディオボードの振動抑制効果は素材や構造によって異なり、載せる機器の最大質量を示す耐荷重も製品によって違いがあるので、適材適所で選ぶことが大切だ。アコースティックリバイブのボードのなかで構造が一番シンプルな「RHB-20」の場合、素材はヒッコリーの集成材で耐荷重は最大200kg。ボードのサイズは47×38.5cm、厚さはわずか2cmなので、ラックに収納したコンポーネントの下にも使用できることが特長だ。

 プレーヤーやアンプをラックに収納すれば振動対策は万全と考えがちだが、オーディオ用ラックといえども完璧ではなく、素材や構造に由来する固有の振動が起こる場合がある。RHB-20のようなスリムなボードを加えることで棚板の共振を抑える効果を期待できるのだ。ヒッコリーは反発力の強さを活かしてドラムのスティックなどに使われる天然木材で、振動の減衰が速く、オーディオ用途でも注目を集めている。

 ラック中段に載せたエソテリックのSACD/CDプレーヤー「K-01Xs」と上段のアキュフェーズのプリアンプ「C-2900」の下にRHB-20を使用したところ、独奏ヴァイオリンやヴォーカルの抜けのよさが向上して音場の見通しが改善し、オーケストラやジャズのライヴでは楽器同士のセパレーションがよくなる効果も確認することができた。

 声や旋律楽器の音域は僅かでも付帯音が乗ると音色がくもってしまう。RHB-20を使用することで僅かに残っていた付帯音が抑えられ、音場の透明感が向上し、音像のフォーカスがよくなる効果が生まれたのだろう。薄型のボードだが、得られる効果は小さくない。

今回試聴したアコースティックリバイブ製オーディオボード(2)

クォーツアンダーボード
「RST-38H」 ¥70,400(1枚、税別)、¥132,000(2枚、税別) ※下の写真左側
●寸法/質量:W482×約H38×D382mm/5.9kg●耐荷重:最大200kg

「TB-38H」 ¥55,000(税別、電源タップ・小型機器用) ※下の写真右側
●寸法/質量:W348×約H47×D218mm/約2.5kg●耐荷重:最大200kg

画像2: ステップアップ・無限大!(07) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? 各種オーディオボードを試したら、プレーヤーやアンプだけでなく、電源ボックスにも効果があった

 木枠内部に細かく砕いた天然水晶の粒(角が丸くなるまで研磨されている)を充填し、ヒッコリー製の天板を乗せる3層構造のオーディオボード。スピーカーから発生する振動、ならびに外部からの振動を瞬時に熱エネルギーへと変換して強力に減衰させる。これは電車の線路のバラストと同じ原理になる。

画像: アコースティックリバイブの電源ボックス「RTP-6」を「TB-38H」に載せた状態

アコースティックリバイブの電源ボックス「RTP-6」を「TB-38H」に載せた状態

 次に試した「RST-38H」は「クォーツアンダーボード」と呼ばれる構造に特長がある。クォーツというのは石英(水晶)のことで、振動エネルギーを熱エネルギーに変換する役割を担う。アンダーボードの内部に細かく砕いた水晶の粒を敷き詰め、その上に20mm厚のヒッコリー製トップボードを載せるという3層構造になっており、振動が水晶の粒子に伝わることで熱エネルギーに変換し、消滅させる仕組だ。耐荷重は200kgと充分な余裕があり、プレーヤーやアンプだけでなくスピーカーを支える用途でも問題なく使える。ユーザー自身が水晶を充填するキット方式のため、細かい水晶の粒がカーペットなどに散乱しないように注意が必要だが、作業は簡単でアッという間に完成する。

 C-2900の下にRST-38H、ひとまわり小さい「TB-38H」を電源ボックスの下にそれぞれ挿入し、再生音を確認する。K-01Xsにはさきほど使用したRHB-20をそのまま使っている。

画像: 今回は山之内さんの試聴室に3種類のオーディオボードを持ち込み、その違いを確認していただいた

今回は山之内さんの試聴室に3種類のオーディオボードを持ち込み、その違いを確認していただいた

 クォーツボードを使用した状態でブラスアンサンブルを聴くと、トランペットとトロンボーンの音色の違いが鮮明になり、楽器イメージもボード使用前に比べて立体感が際立つようになった。オーケストラや室内楽はステージの奥行や余韻が広がる空間の大きさにも変化が感じられ、クォーツボードを敷いた方が音場が前後左右に広がる。

 音場が広がる効果が予想以上に大きかったので、2枚のボードを別々に使って確かめてみたところ、電源ボックスにTB-38Hを組み合わせたときの効果がひじょうに大きいことがわかった。電源まわりの振動対策やノイズ対策が大きな効果を発揮することは何度も経験しているので、仕事場と自宅の試聴室どちらもアコースティックリバイブの頑強な作りの電源ボックスを常用している。とはいえ、これまでは電源ボックスをそのまま床に置いて使っていたため、スピーカーの音圧による振動の影響が残っていたのかもしれない。

 34.8×21.8cmとサイズはコンパクトだが、TB-38Hは市販の電源ボックスの大半に使用できる。大型のRST-38Hもアンプなどメインのオーディオ機器だけでなく、クリーン電源のような周辺機器との組み合わせにも適している。これらの製品の振動対策にも気を配ることで、音質の改善とチューニングをさらに追い込むことができるはずだ。

今回試聴したアコースティックリバイブ製オーディオボード(3)

エアフローティングボード 「RAF-48H」 ¥132,000(税別)
●寸法/質量:W486×約H55×D436mm(空気充鎮時・端子含まず)/約5.5kg●耐荷重:最大60kg

画像3: ステップアップ・無限大!(07) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? 各種オーディオボードを試したら、プレーヤーやアンプだけでなく、電源ボックスにも効果があった

 オーディオボードの内部に特殊なチューブを仕込み、付属のポンプで空気を注入することでトップボードを浮かせる電子顕微鏡台と同じエアフローティング構造を採用。オーディオ機器を空中浮揚させることで、外部からの振動の影響を完璧に回避できる。天板には他のアコースティックリバイブ製オーディオボードと共通のヒッコリー製を採用。

画像: 「RAF-48H」に空気を充填しているところ。この作業は数日おきに行った方がいいとのこと

「RAF-48H」に空気を充填しているところ。この作業は数日おきに行った方がいいとのこと

 最後にエアフローティング方式の「RAF-48H」をプリアンプの下に使用し、再生音を確認した。サイズには余裕があるが、耐荷重は最大で60kg。プレーヤーやプリアンプならまったく問題ないが、重量級パワーアンプやスピーカーに使用する場合は、耐荷重に余裕を持たせた方がいいだろう。

 また、ボード内部に封入した特殊チューブに付属の空気入れを使って空気を充填する構造だが、時間とともに少しずつ空気が抜けてしまうので、トップボードの浮き具合を確かめながら数日おきに空気を補充する必要がある。

 その手間が気にならないのであれば、エアフローティング方式ならではの優れた振動遮断効果を得られるボードとしてお薦めできる製品だ。筆者も自宅試聴室でAVセンター用アンダーボードとして第1世代の「RAF-48」を使っている。ちなみにRAF-48Hはトップボードにヒッコリーを採用した最新世代のエアフローティングボードである。

画像: 山之内さんの愛聴盤。動画撮影時には、イリーナ・メジューエワさんのCD(写真左)から、シューベルトの「即興曲 変イ長調 Op.142-2」を再生した

山之内さんの愛聴盤。動画撮影時には、イリーナ・メジューエワさんのCD(写真左)から、シューベルトの「即興曲 変イ長調 Op.142-2」を再生した

 C-2900をRAF-48Hで支えた状態で聴いたメジューエワのピアノは音色の微妙な変化が浮き彫りになり、繊細なタッチと階調豊かな強弱の変化を聴き取ることができた。弱音からフォルティシモにいたる音量のコントロールが緻密で、クレッシェンドで到達する最強音も飽和する気配を見せない。

 SACDで再生したバルトークの「管弦楽のための協奏曲」も打楽器と金管楽器の音圧が大きくなったように感じられ、低音楽器の重心も下がる。ジェーン・モンハイトとマイケル・ブーブレのデュエットは声のボディ感を引き出し柔らかい質感を保ち、アグレッシブなホーン楽器に埋もれることもない。今回はプリアンプだけに使用したが、ディスクプレーヤーとの組み合わせでも確実な効果を発揮するはずだ。

 オーディオボードは音質改善アクセサリーのなかでは地味な存在に見えるが、再生システムの音を追い込むうえで欠かせないアイテムのひとつである。今回の試聴ではラックに収めた機器や電源ボックスなど、これまで使っていなかったところでもオーディオボードが効果を発揮する事実を確認することができた。振動対策の盲点ともいえる部分だが、音質改善効果は想像以上に大きい。次回はインシュレーターに焦点を合わせ、アコースティックリバイブの様々な製品を試す予定だ。

取材時の主な試聴機器

画像4: ステップアップ・無限大!(07) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? 各種オーディオボードを試したら、プレーヤーやアンプだけでなく、電源ボックスにも効果があった
画像5: ステップアップ・無限大!(07) オーディオ機器の振動対策の盲点だった!? 各種オーディオボードを試したら、プレーヤーやアンプだけでなく、電源ボックスにも効果があった

●SACD/CDプレーヤー:エソテリック K-01Xs
●クロックジェネレーター:エソテリック G-01X
●プリアンプ:アキュフェーズ C-2900
●パワーアンプ:アキュフェーズ A-75
●スピーカーシステム:ウィルソンオーディオ SOPHIA3
●電源タップ:アコースティックリバイブ RTP-6

イリーナ・メジューエワさんが奏でるベーゼンドルファーを、アナタの愛機で楽しんでください

『メジューエワ・プレイズ・ベーゼンドルファー』 ¥2,530(税込)

●WAKA-4204●アーティスト:イリーナ・メジューエワ●録音:2017年4月23日、相模湖交流センター●STEREO、96kHz/24ビット録音●発売元:若林工房●収録曲:ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、シューベルト:即興曲 変イ長調 作品142-2、シューベルト=リスト:連祷、リスト:エステ荘の噴水、ワーグナー=リスト:イゾルデの愛の死、ドビュッシー:沈める寺、ラフマニノフ:プレリュード 作品32-12

 今回の動画コンテンツではイリーナ・メジューエワさんによるCD『メジューエワ・プレイズ・ベーゼンドルファー』から、トラック4「シューベルト:即興曲 変イ長調 作品142-2」の冒頭部分を再生している。

 このCDは、メジューエワさんの日本コンサートデビュー20周年を記念したリリース第4弾で、初のベーゼンドルファーによる録音。ウィーン生まれの名器の魅力を最大限に伝えるプログラムとしてベートーヴェン、シューベルト、シューベルト=リスト、リスト、ワーグナー=リスト、ドビュッシー、ラフマニノフを、編集なしの一発録で収録している。

提供:関口機械販売

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