国内外で大ヒットを記録したアクティブ・スピーカー「reProducer Audio」の「Epic 5」に、待望のコンパクト・モデルが登場した。先頃販売が開始された「Epic 4」は、「Epic 5」のコンセプトや基本設計はそのままに、さらなるコンパクト・サイズを実現した新製品。プライベート・スタジオや狭い作業スペースに最適なアクティブ・スピーカーで、背面にはネジ穴が付いているため、イマーシブ・システムのハイト・スピーカーとしての用途にも対応する。この注目の新型スピーカーについて、「reProducer Audio」のマイク・リー(Mike Lee)氏に話を訊くとともに、音楽プロデューサーの田辺恵二氏、レコーディング・エンジニアの加納洋一郎氏にインプレッションを伺った。

「reProducer Audio」の新型アクティブ・スピーカー、「Epic 4」。世界中で大ヒットを記録した「Epic 5」の基本設計/コンセプトはそのままに、さらなる小型化を実現した新製品

 

現代のプロダクションでは解像度と豊かな低域が重要

── 以前、代表のアティラ・サージェック(Attila Czirjak)氏にインタビューしたことがありますが、「reProducer Audio」とはどのような会社なのか、あらためてご紹介いただけますか。

マイク・リー(以下、ML) 「reProducer Audio」は、2015年設立の新興メーカーです。「United Minorities」という屋号で音響コンサルティングを手がけていた技術者のアティラ、回路設計や品質管理などを担当しているジョリン・タン(Jolin Tan)、そしてマーケティング/営業担当の私、この3人で立ち上げた会社になります。アティラはドイツ、ジョリン・タンは中国・深圳、私は韓国と、もともと中心メンバーの拠点がバラバラの会社ではあるのですが、COVID-19によって、これまで以上に多国籍企業になった感じがしますね。なお、CEOを務めていたアティラは現在、会社を離れ、「United Minorities」の方に注力しています。もちろん、製品開発には関わっているのですが、テクニカル・アドバイザーとして外部から関わっている形ですね。ちなみに彼はボートが趣味で、一度海に出たら何ヶ月も戻ってこないんです(笑)。

画像: 「reProducer Audio」のマイク・リー(Mike Lee)氏)

「reProducer Audio」のマイク・リー(Mike Lee)氏)

── 2015年というタイミングで、新型のアクティブ・スピーカーを開発した動機は何だったのでしょうか。

ML 私はサウンド・エンジニアとしての顔も持っているのですが、2015年当時、市場で手に入るアクティブ・スピーカーはどれもチューニングが古くさく感じたのです。私はロックやポップス、テクノといった音楽が好きなのですが、どのスピーカーも現代の音楽にマッチしないなと……。それがアクティブ・スピーカー市場に参入した大きな理由です。

── どのあたりが古くさく感じたのか、具体的におしえていただけますか。

ML 音の解像度と低域の再生能力の2つです。ディフィニションとロー・エンドは、現代のミュージック・プロダクションではとても重要な要素で、古くさいスピーカーでは正しく音を判断し、適切なミックスを行うことができません。

── 現代の音楽にマッチする音の解像度と低域の再生能力を実現すること、これが「Epic 5」の開発コンセプトだったと。

ML そのとおりです。「Epic 5」は、1インチのツイーター、5.25インチのウーファー、6.25インチのパッシブ・ラジエーターを搭載し、内蔵パワー・アンプは75W RMS(編註:ピーク時2×150W)の出力を誇ります。使用しているドライバーはすべて自社製で、素材にアルミニウムを採用することで、非常に速いトランジェント・レスポンスを実現しているのも特徴です。周波数特性は全帯域に渡ってフラットであり、我々が目指した音の解像度と低域の再生能力は、非常に高いレベルで達成することができました。

 余談ですが、一番最初に5.25インチのウーファーを搭載したスピーカーを開発したのは、市場で最も競合製品がひしめいているテリトリーだったからです。このテリトリーで成功すれば、我々のビジネスはきっと上手くいくだろうと思い、あえて最も競合製品が多いテリトリーに飛び込んでいったというわけです(笑)。しかも我々は、これまでに無かったタイプの新しいサウンドで勝負を挑みました。

── 「Epic 5」は、新しいメーカーの製品なのにも関わらず、日本でかなり成功したという印象があります。本誌でもインタビューさせていただきましたが、音楽プロデューサーの浅田祐介氏をはじめ、多くのクリエイター/エンジニアが導入しました。

ML 私は日本の音楽、J-POPが大好きですからとても嬉しく、光栄に思います。日本だけでなく、「Epic 5」は韓国でも大きな成功を収めました。著名なK-POPのプロデューサーの多くが「Epic 5」を使ってワールドクラスのトラックを制作しています。あとはドイツでもかなり人気があり、アメリカではヒップホップのDJ/プロデューサーの間で評判になっているようです。

画像: 大ヒットを記録した「Epic 5」

大ヒットを記録した「Epic 5」

画像: 「Epic 5」を愛用する音楽プロデューサー、浅田祐介氏のスタジオ

「Epic 5」を愛用する音楽プロデューサー、浅田祐介氏のスタジオ

ウーファーを2基搭載したバリエーション・モデル「Epic 55」

 

新製品のEpic 4は中域にこだわって開発した

── 新製品の「Epic 4」をご紹介ください。

ML 「Epic 4」は、「Epic 5」のコンセプト/基本設計を元に、さらなる小型化を実現した新型アクティブ・スピーカーです。ツイーターは1インチ、ウーファーは4インチで、ともに出力50WのクラスDアンプを搭載しています。

── 「Epic 5」のコンパクト・バージョンを求める声が多かったのですか?

ML そうですね。現代のクリエイターの制作スペースはそれほど広くなく、それは日本や韓国に限った話ではありません。「Epic 5」もそれほど大きなスピーカーではありませんが、しっかりと鳴らそうとした場合は、それなりの空間が必要になります。とはいえ、いくらサイズが小さくても、フル・レンジを再生できる能力がなければ意味がありません。いろいろなサイズを検討した結果、4インチのウーファーがベストだろうという結論に至りました。

── 基本的な設計は「Epic 5」と同一なのですか?

ML ほぼ同じですが、「Epic 4」ではよりミッド・レンジにこだわって、時間をかけてチューニングを行いました。ミッド・レンジがよりパワフルに、豊かに再生されるチューニングを施したというか。私が大好きな1980年代や1990年代のJ-POPを再生していただければ、「Epic 4」の中域の豊かさがよく分かると思います。それと、底面のパッシブ・ラジエーターに関しても、新しいものに変更しました。この新開発のパッシブ・ラジエーターは、近い将来「Epic 5」や「Epic 55」でも採用するかもしれません。

── パッシブ・ラジエーターは、「Epic」シリーズのパワフルな低音の肝だと思いますが、そもそもなぜ搭載しようと考えたのでしょうか。

ML 「Epic 5」を開発した際、低域の再生能力を向上させるため、最初にいろいろな形状を試したんです。その結果、低域のエネルギーが下へ下へ向くようにトラピゾイド(台形)型の筐体を採用したわけですが、より豊かな低域を目指して底面にスパイクを取り付け、パッシブ・ラジエーターを搭載することにしたのです。しかしスピーカーの設計というのはそんなに単純なものではなく、アルミニウム製のオリジナル・ドライバー、クラスDのアンプ回路、トラピゾイド(台形)型の筐体、そしてパッシブ・ラジエーターと、いくつもの要素が作用し合って、「Epic」シリーズのサウンドになっているのだと思います。

── 「Epic 5」を設計したアティラさんは現在会社を離れているとのことですが、「Epic 4」はどなたが設計されたのですか?

ML 「Epic 5」の基本設計を元に、新しいコンポーネントや電子回路の設計はジョリン・タンが行いました。彼はアティラに勝るとも劣らない優秀な技術者で、これまでに多くのモニター・スピーカーの開発に関わってきた経験とノウハウを持っています。こういう音響機器は、いくらアイディアが独創的で素晴らしいものでも、それを形にできなければ意味がありません。例えば、アルミニウムでドライバーを作りたいと思っても、それを実現する術がなければどうしようもないのです。先ほどもお話ししたとおり、ジョリン・タンの拠点は中国・深圳なので、彼は必要なマテリアルを各方面から調達することができ、思い立ったらすぐに試作品を製作することが可能です。製品化が決まって量産がスタートした後は、彼は間近で品質管理を行います。素晴らしいアイディアを製品として昇華できているのは、間違いなくジョリン・タンがいてこそであり、現在のreProducer Audioにとってキー・パーソンと言っていいでしょう。そして出来上がったプロト・タイプを私が試聴し、サウンド・エンジニアとしての視点でアドバイスをしました。ですので現在は、ジョリン・タンが設計、生産、品質管理を担当し、私は商品企画と営業、マーケティングという役割分担になっています。

── 「Epic 5」には、外に持ち出すためのハード・ケースが付属していました。「Epic 4」にも付属するのですか?

ML 「Epic 4」にはパッド入りのトラベル・ケースが付属します。ハード・ケースよりも軽量なので、より気軽に外に持ち出すことができると思います。

── 「Epic 4」はコンパクトなので、サラウンドやイマーシブ・システムにも合っているような気がします。そのあたりは意識されたのですか?

ML もちろんです。「Epic 4」はコンパクトでもフル・レンジを再生できますから、サラウンド/イマーシブ・システムにも最適だと思います。背面にはマウント用のネジ穴が空いているので、壁面や天井に取り付けるのも容易だと思います。Dolby Atmosや360 Reality Audioに関しては強く意識していて、現在、サブ・ウーファーも開発しているんですよ。

 

画像: トラピゾイド(台形)型の筐体が特徴

トラピゾイド(台形)型の筐体が特徴

画像: 底面にはパッシブ・ラジエーターを搭載

底面にはパッシブ・ラジエーターを搭載

 

画像: XLRのバランス入力とRCAのアンバランス入力を装備。ボリュームのほか、LF-TRIMとHF-TRIMも備える

XLRのバランス入力とRCAのアンバランス入力を装備。ボリュームのほか、LF-TRIMとHF-TRIMも備える

画像: 移動時に便利なトラベル・ケースも付属

移動時に便利なトラベル・ケースも付属

 

モニター・コントローラーも間もなく発売予定

── 最近はDSPを搭載したスピーカーが増えています。DSPへの取り組みについておしえてください。

ML DSPそのものを否定するつもりはありませんが、「Epic 5」開発時に様々な試行錯誤をする中でも、DSPを検討したことは一度もありませんでした。我々はナチュラルなフィーリング、アナログ回路だけでどこまで追い込めるかということにこだわっています。その結果、トラピゾイド型の筐体やパッシブ・ラジエーターに行き着いたのです。しかしDSPも日々進化しており、その処理もどんどんナチュラルになっていますから、未来永劫採用しないというわけではありません。現時点ではナチュラルなフィーリングをアナログ回路だけで実現しているというだけです。

── 「Epic 4」が発売になったばかりで気が早いですが、新製品の予定はありますか?

ML 先ほども言いましたが、現在サブ・ウーファーを開発しているところです。専用のサブ・ウーファーがあれば、イマーシブ・システムの構築も容易になることでしょう。これは年内に発売できればいいですね。それと現在、「Epic 5」よりも大型のモデルとなる7インチ・バージョンも開発中です。「Epic 4」は「Epic 5」をそのままコンパクトにした感じですが、7インチ・バージョンは筐体デザインが変わり、もしかしたら背面にパッシブ・ラジエーターを搭載するかもしれません。商用スタジオに導入していただける製品を目指して開発しているので発売は少し先、来年以降になると思います。

── 3年前の『The NAMM Show』で試作機を見せていただいたモニター・コントローラーはその後どうなっていますか?

ML 開発の最終段階に入っています。最初はBluetoothに対応させる予定だったのですが、パーツの調達が問題になってきたので、まずはBluetooth非搭載モデルから発売する予定です。入力音をできる限りそのまま出力するためにメインの信号パスはパッシブで、それにヘッドフォン・アンプを内蔵したような製品になります。ほぼ完成しているので、数ヶ月以内に発売できるはずです。

── 最後に、この記事を読んでいる日本のプロフェッショナルにメッセージをお願いいたします。

ML 我々は「Epic 5」発売当初からサポートしてくれた日本の皆様に心から感謝しています。個人的には、ソニーやヤマハといった尊敬してやまないメーカーの国で、我々の製品が受け入れられていることを大変嬉しく思っています。我々は日本を非常に重視していますので、製品に対して要望がありましたらぜひお伝えください。また、今後の「reProducer Audio」の展開にぜひ期待していただければと思います。

── 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

取材協力:株式会社フックアップ 写真:八島崇

 

 

 

「reProducer Audio Epic 4」プロフェッショナルが聴く、Epic 4の実力【Professional Review】

画像1: 「reProducer Audio Epic 4」人気のアクティブ・スピーカーに小型モデルが登場【PROSOUND FEATURE】

高い解像度と量感のある低域を、コンパクト・サイズで実現した「Epic 4」。メーカーがターゲットにしている“クリエイターの制作部屋”で、音楽プロデューサーの田辺恵二氏とレコーディング・エンジニアの加納洋一郎氏氏にじっくりと試聴していただいた。

 

解像度が高く、歌がよく見えるスピーカー

田辺 元になった「Epic 5」は、ぼくの周りでも何人か使っている人がいるんですよ。でも、実際に買ってみたら、意外と大きくてセッティングに困ったという人もいて(笑)。新しい「Epic 4」は、自宅の一室で作業しているクリエイターに最適なサイズになったという感じがします。「Epic 5」よりも、さらにちょうど良い大きさ、“ジャスト・サイズ”になったというか。

加納 ぼくは「Epic 5」を聴いたことがなかったんですよ。もちろん存在は知っていて、雑誌か何かで見て形状がおもしろいなと思っていました。普通ではない形なので、スタジオ用ではなく、ハイエンド・オーディオ向けなのかな?と思っていましたね。

田辺 今回デモ機をお借りして、いろいろなタイプの楽曲を聴いてみましたが、「Epic 5」と同じようにサイズ以上の低域が出るなという印象でした。筐体は小さいけれども、底面にパッシブ・ラジエーターを搭載することで、効率良く低域を鳴らしているのかなと。ローが効いているだけでなく音量感も十分にあるので、ダンス・ミュージックとか今時の音楽に合っているスピーカーだと思います。ぼくはスピーカーを試聴するとき、最初にドラムとベースを聴くんですよ。打ち込みのドラムとベースを再生し、レンジ感や広がり感を聴く。それと何より、パッと音を出して“アガる音”かというのが重要(笑)。ぼくはクリエイターなので、作りながら自分が“アガる音”じゃないとダメなんですよ。その点、「Epic 4」は合格でした(笑)。

加納 ぼくはいろいろなジャンルの音楽をかけて、バランスに注目します。それと音量に対しての低域の出方、スピード感と、クロスオーバー近辺がどうなっているか。特にクロスオーバーは歌の帯域にぶつかりがちなので、その近辺が詰まって聴こえるのか、出っ張って聴こえるのか。クロスオーバー近辺が引っ込んでいる場合、その上あたりにピークがくるので、ジャンルが変わったときにバランスが違って聴こえないかというのを気にするんです。「Epic 4」は、全体にどんなジャンルの音楽でもバランスは崩れていない印象でした。

田辺 今日はポップスからハードめのロック、ダンス・ミュージック、K-POPといろいろ聴きましたけど、歌が良かったですね。同クラスのスピーカーと比べると、ボーカルのリバーブやディレイが見えやすく、子音がしっかり聴こえる。

加納 それはぼくも感じました。解像度が高く、よく見えるスピーカーですね。歌もそうですし、ドラムの金物系に注目すると高域の解像度の高さがよく分かる。

田辺 K-POPのクリエイターの間で人気があるみたいですけど、K-POPって凄く子音が強いですし、男性ボーカルものもJ-POPと比べるとレンジが高め。そういう音楽に合わせてチューニングが施されている感じがしました。

加納 実際、TWICEとか良かったですしね。あとはSlipknotとか、ああいうハードな音楽にも合っていました。ただ、低域に関しては、しっかり出てはいるんですけど、最初少し遠く感じたんですよ。高域の解像度が高いから、その対比でそう聴こえたのかもしれないですけど。でも、背面のトリムを触ってみたら凄く良くなった。

田辺 加納くんがローがちょっと遅いと言ったので、めいっぱい上げてみたら本当に良くなったよね。逆にハイは少し速い感じがしたので少し下げて。こういうスピーカーって置き方で鳴り方が変わってきますから、環境に合わせて調整できるというのは重要なポイント。でも、決して激しく変わるものではなく、あくまでも微調整という感じですけどね。

加納 想像していたよりもコンパクトで、解像度が高いスピーカーという印象です。いろいろなジャンルがバランスよく聴こえるので、ファースト・チョイスになり得るスピーカーだなと。

田辺 これ、ケースも付いているんですよ。だから簡単に持ち出せる。

加納 ケースが付いているんですか? それはスタジオに持って行くときにいいですね。

田辺 K-POPは基本コライトですから、機動性も重要なんでしょうね。ケースがあれば、ホテルにも持って行けますし。「Epic 5」はハード・ケースだったんですけど、「Epic 4」はソフト・ケースになったのもいいですね。

画像2: 「reProducer Audio Epic 4」人気のアクティブ・スピーカーに小型モデルが登場【PROSOUND FEATURE】
画像: 音楽プロデューサーの田辺恵二氏のプライベート・スタジオにセッティングされた「Epic 4」

音楽プロデューサーの田辺恵二氏のプライベート・スタジオにセッティングされた「Epic 4」

 

reProducer Audio Epic 4 市場実勢価格:148,500円(ペア/税込)
問い合わせ:フックアップ Tel:03-6240-1213
http://www.hookup.co.jp/

 

本記事の掲載はPROSOUND 2022年8月号 Vol.230

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