家庭で楽しむオーディオのコンテンツとして、ハイレゾ音源は広く普及してきた。特に熱心なオーディオファイルにとっては、いい音を聴きたい場合には不可欠のソースになっている。

 そこで注意して欲しいのが、機器間をつなぐLAN/UBSケーブルだ。ハイレゾ再生ではデジタル信号を伝送するということから、ケーブルにまで気を遣う人はまだ少ない。しかし実際には従来のオーディオケーブル同等、もしくはそれ以上にケーブルが音に及ぼす影響は大きいという。

 その点を検証するべく、前編では山本浩司さんのオーディオルームにうかがい、LANケーブルを交換することでどんな違いがあるかをチェックしてもらった。続く今回は、USBケーブルによる再生音の変化を紹介する。(編集部)

※今回の取材に関する山本さんのコメントはこちら ↓ ↓

画像: USBケーブルをグレードアップしたら、音の実在感が確かになりました。山本浩司氏がACOUSTIC REVIVE製品を使った印象を空気録音とともにお届けいたします www.youtube.com

USBケーブルをグレードアップしたら、音の実在感が確かになりました。山本浩司氏がACOUSTIC REVIVE製品を使った印象を空気録音とともにお届けいたします

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 今から10年ほど前だろうか。各社USBケーブルの音の違いをまとめてチェックしたことがある。

 当時使っていたMac Bookと英国コード社のD/Aコンバーターをつなぐのに最適なUSBケーブルを見つけるためだ。

 USBケーブルによる音質差は、思いのほか大きいんじゃないかと当時薄々気づいており、10ブランドほどのUSBケーブルを集めてテストしてみたわけである。

 そのときにダントツに音がよかったのが、アコースティックリバイブ社の信号ラインと電源ラインを分けたUSBケーブルだった。

 それ以来ずっとそのセパレートUSBケーブルを愛用してきたのだが(変遷を経て現在はルーミンのネットワークトランスポート『U1 mini』とソウルノートのUSB DAC/SACDプレーヤー『S3 Ver.2』間に使用)、今回改めて同社の最新ケーブルの音をチェックすることになった。

今回試聴したアコースティックリバイブ製USBケーブル

画像: 右が試聴に使った「R-AU1-PL」(¥19,800、1m、税別)で、左は再生機器側が二股に分かれた「R-AU1-SP」(¥24,200、1m、税別) ※価格は2022年6月1日からのものです

右が試聴に使った「R-AU1-PL」(¥19,800、1m、税別)で、左は再生機器側が二股に分かれた「R-AU1-SP」(¥24,200、1m、税別) ※価格は2022年6月1日からのものです

画像: 同じく右が試聴に使った「USB-1.0PL-TripleC」(¥52,800、1m、税別)で、左が「USB-1.0SP-TripleC」(¥63,800、1m、税別) ※価格は2022年6月1日からのものです

同じく右が試聴に使った「USB-1.0PL-TripleC」(¥52,800、1m、税別)で、左が「USB-1.0SP-TripleC」(¥63,800、1m、税別) ※価格は2022年6月1日からのものです

 アコースティックリバイブでは、現在2ライン4種類のUSBケーブルをラインナップしている。いずれも導線にはPC-Triple Cの単線を採用し、これに銅箔を使用した2芯シールド構造のケーブルを、信号線用と電源線用にそれぞれ2本使った完全分離構造となっているのが特徴だ。

 本文にもある通り、USBケーブルは信号線と電源線がひとつのケーブルの中に同居している構造になっている。そのため、オーディオ再生では電源ケーブルから発生する輻射ノイズや磁界が信号に影響を及ぼすことが多いという。アコースティクスリバイブではこれを避けるために信号線と電源線を物理的に分離、ノイズの影響を受けずに信号を伝送できるよう配慮している。

 今回試聴したUSBケーブルは再生機器側にUSB Type-Aコネクター、USB DAC側にType-Bコネクターをそれぞれひとつ備えたPLシリーズ(コネクター間のケーブルが2本に分かれている)だが、同社では再生機器側のType-Aコネクターをふたつ(信号用と電源用)搭載したSPシリーズもラインナップしている。(編集部)

画像: セパレート構造を徹底させたSPシリーズとして「USB-1.0SP-TripleC」(左)、「R-AU1-SP」(右)もラインナップされている。両シリーズでは端子部プラグが金属の削り出し製か、樹脂のモールド製かといった点が異なっている(PLシリーズも同様)

セパレート構造を徹底させたSPシリーズとして「USB-1.0SP-TripleC」(左)、「R-AU1-SP」(右)もラインナップされている。両シリーズでは端子部プラグが金属の削り出し製か、樹脂のモールド製かといった点が異なっている(PLシリーズも同様)

 比較するために用意してもらったのは、大手通販サイトで入手した一般的なUSBケーブルで(もちろんセパレート構造ではない)、アコースティックリバイブ製は、普及ケーブルという位置づけの「R-AU1-PL」と最上級ケーブルの「USB-1.0PL-TripleC」の2種類を持ち込んでもらった。 3本とも長さは1mで統一している。

 さて、信号ラインと電源ラインをセパレートさせたUSBケーブルは、アコースティックリバイブが世界で初めて実用化したのだという。では、なぜセパレートさせたのだろうか。それは言うまでもなく音楽信号からノイズを遠ざけるためだ。

 USBケーブルの中は、信号ラインと電源ラインが同居しており、この両者を平行に引き回せば電源ラインの輻射ノイズや磁界が信号に悪影響を与えて音質を劣化させることになる。しかも「オーディオ機器」ではないPCは、ノイズの巣窟と言ってもいい。

 オーディオ用を謳うUSBケーブルは、ノイズ対策としてケーブル内の信号ラインにのみシールドを施した製品が多いが、1本のケーブル内では両ラインがきわめて近いため、シールド効果は限定的だ。

 そこでアコースティックリバイブは、シールド効果の高い銅箔を使用した2芯シールド構造のケーブルを信号ラインと電源ラインに 2本別々に使用して、電源ラインからの輻射ノイズや磁界の影響を回避することにしたわけである。

わずか1mでも、音質への影響は大きかった。
NASとUSB DAC間の音声信号伝送をになうUSBケーブルを吟味する

 ホームシアターでのネットワークオーディオ再生の際に、USB DACを使ってハイレゾを楽しんでいる方も多いだろう。特に最近はプレーヤー機能を備えたNASも登場しており、こういった機器を使えば比較的シンプルな構成でハイレゾを楽しむこともできる。

 今回は山本さんのオーディオルームで、ミュージックサーバーのデラ「N1A/2」と、USB DACのソウルノート「S-3 Ver.2」との間をつなぐUBSケーブルを交換することで音がどのように変化するかを確認してみた(接続図参照)。試聴に使ったUSBケーブルはどれも長さは1mだが、それでもはっきりわかるほどの差が確認できている。(編集部)

画像1: ステップアップ・無限大!(05)デジタルケーブルで、ハイレゾの音が変わって当然です。お気に入りの再生システムで、究極の使いこなしに挑む(後編)〜USBケーブルを試す〜
画像: 山本邸のソース機器。今回の取材では、デラのネットワークプレーヤー機能付きNASの「N1A/2」(写真左上から2段目)とソウルノートのUSB DAC/SACDプレーヤー「S-3 Ver.2」(写真右)の間をつなぐUSBケーブルを交換して、音の違いを聴き比べている

山本邸のソース機器。今回の取材では、デラのネットワークプレーヤー機能付きNASの「N1A/2」(写真左上から2段目)とソウルノートのUSB DAC/SACDプレーヤー「S-3 Ver.2」(写真右)の間をつなぐUSBケーブルを交換して、音の違いを聴き比べている

 ちなみに今回テストに用いたR-AU1-PLとUSB-1.0PL-TripleCの導体は、前回ご紹介したLANケーブルと同じPC-TripleCで、USB端子はR-AU1-PLがモールドで、USB-1.0PL-TripleCは航空機グレードのアルミ合金削り出しボディだ。

 また今回の試聴では再生機器側につなぐUSB Type-A端子プラグがひとつのPLシリーズを使っているが、両ケーブルともA端子をふたつ備えた(信号ラインと電源ラインをプラグから分離させてセパレート構造を徹底させた)SPシリーズの「R-AU1-SP」「USB-1.0SP-TripleC」もラインナップされている。

 3本のUSBケーブルの音の違いは、ぼくのリスニングルームで空気録音した動画をぜひごらんいただきたいが、ここでどういう音の違いを感じたかを記しておこう。

 まず一般USBケーブル。今回のテストでは、前回テストしてすばらしくよかったアコースティックリバイブの4分割構造のLANケーブル、「LAN-QUADRANT-TripleC」を用いるとともに、デラのネットワークスイッチ「S100」とネットワークトランスポート「N1A/2」間にエディスクリエーションの光絶縁ツール「FIBER BOX2」を用いて、通信環境のローノイズ化を図った。

 それらの工夫が功を奏したのだろう、一般USBケーブルの音もけっして悪くなかった。

画像: 3本のケーブルによる音の変化をじっくりチェックする山本さん。LANケーブルの感興は前回の試聴でベストの状態にセットしてあります

3本のケーブルによる音の変化をじっくりチェックする山本さん。LANケーブルの感興は前回の試聴でベストの状態にセットしてあります

 空気録音に用いたステレオサウンド『ハイレゾ・リファレンス・チェック・ディスク』に収録されているピアノとサキソフォンのデュオ「My Foolish Heart」(192kHz/24ビット)の演奏で言うと、スムースに音場が広がり、二人のプレーヤーが眼前で演奏しているというイメージがしっかりと得られたのである。

 ただし、ふだん聴いている音に比べると、サキソフォンの音が歪みっぽく、リバーブがすこしわざとらしく感じられるのも事実だ。

 次にアコースティックリバイブ製普及ケーブルのR-AU1-PL。このUSBケーブルに替えると、一般USBケーブルで気になった歪みっぽさが抑えられ、サキソフォンの音色がなめらかに、艶やかに聴こえるようになった。

 リバーブのかかり方もわざとらしさが抑えられ、ナチュラルに響く。加えて録音スタジオの響きの質さえリアルに実感できるようになったのである。なるほどUSBケーブルによって録音に対する評価すら間違えることがあるのだと知って、すこし恐ろしくなったことを告白しておきたい。

画像: ソウルノート「S-3 Ver.2」のリアパネル。写真中央がNASからの信号を伝送するUSBケーブル

ソウルノート「S-3 Ver.2」のリアパネル。写真中央がNASからの信号を伝送するUSBケーブル

 最後にUSB-1.0PL-TripleCを聴いて驚かされたのは、音の実在感の確かさだった。ピアニストとサキソフォン奏者が目の前にいるという実感が何より濃厚に感じられるようになるのである。

 また音楽が音楽として立ち上がる前の「気配」の表現が秀逸で、静寂の気韻の深さも途方もない。

 中低域から中域にかけてのリニアリティがぐんと向上し、奏者の演奏上の様々なニュアンスがより明瞭になり、「あれ、先ほど聴いた演奏とは違う奏者なんじゃないか」と思えるほど。

 USBケーブルの違いによって、録音テクニック云々だけではなく演奏の巧拙までもが違って聞こえるのだから、これは驚きの結果というほかない。

 前回のLANケーブル、今回のUSBケーブルと2回にわたってテストをお伝えしたが、いかがだっただろうか。電源ケーブルやスピーカーケーブル、ラインケーブルなどのアナログ用以上にネットワーク周辺のデジタルケーブルの選択には充分意を払うべきというのが、テストを終えてのぼくのリアルな実感だ。

山本邸の主な再生システム

●ネットワークプレーヤー機能付きNAS:デラN1A/2
●USB DAC/SACDプレーヤー:ソウルノートS-3 Ver.2
●クロックジェネレーター:ソウルノートX-3
●光絶縁ツール:エディスクリエーションFIBER BOX2
●プリアンプ:オクターブJubilee Pre
●パワーアンプ:オクターブMRE220
●スピーカーシステム:JBL K2 S9900
●ネットワークスイッチ:デラS100

画像2: ステップアップ・無限大!(05)デジタルケーブルで、ハイレゾの音が変わって当然です。お気に入りの再生システムで、究極の使いこなしに挑む(後編)〜USBケーブルを試す〜

提供:関口機械販売

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