吉田浩太監督作『Sexual Drive』が待望の劇場公開を迎え、それを記念した初日舞台挨拶が4月29日(金・祝)、新宿武蔵野館で行なわれ、橋本マナミ、武田梨奈、芹澤興人、そして吉田浩太監督らが登壇した。ちなみに司会を兼ねた天の声は、本作のナレーションを務める中村無何有が担当した。
本作は、食を通じて人間が内に秘めている欲望を暴き出していくという中編(70分)で、「納豆」「麻婆豆腐」「背油大蒜増々」の3作からなるオムニバス作。直接的な性表現はないものの、ソレを想像させるような実験的な表現が評判を呼び、海外においても各種映画祭で招待作品として上映されるなど、注目を集めている一作。アメリカでは本4月の公開も決まっており、日米同時公開となったことも話題。
そんな本作の始まりは4年前。小さい企画として生まれたものだそうで、現場には、監督とカメラマン、そして1作目『納豆』に出演する橋本マナミの数人しかいなかったという。「ダメ元で橋本さんにオファーをしたら、まさかのOKをいただいて。本当に現場に来てくださって驚いたと同時に、そんな少人数の現場なので、自ら率先してご飯をよそってくださったり、納豆を用意してくださったりと。もうその人柄が素晴らしすぎて感動しました。その印象が強く残っています」と、監督は当時の橋本のことを振り返りながら絶賛。そして、公開を迎えることができて「感無量です」と喜びを表現していた。
そんな現場を経て、ようやく上映を迎えた感想を橋本は、「本日から上映ということで、大変うれしく思います」と大きな笑顔を見せながら、「会話のシーンのものすごく想像をかきたてられて、私もドキドキしました」と、監督の術中に落ちたことを吐露。タイトルが「納豆」だけに、「実際に私、納豆の匂いがするのかな?」という不安も浮かんできたそうだが、「そう思われてもいいです。私NGないので」とにこやかに話していた。
武田は最初、「タイトルを見た時に一瞬、台本を開くのをためらった」そうだが、読み進めていくとその面白さに引き込まれたそうで、「なんて面白い発想なんだろう」と感動したそう。その上で「性を表現している作品ではありますけど、それがとても美しく描かれているので、そうした表現が(私に)できるのかという不安もありました。けど、私もこのドライブ(衝動)に乗っかりたいと思って頑張った」という。結果、「参加できて。すごく嬉しいです」と、こちらも大きな笑顔を見せていた。
3作を通じて出演する謎の人物 栗田を演じた芹澤は、「役者が現場で感じたもの、高揚した感じなどを、観てくださる方が共感できる作品になっていると思います。食事という行為は実感しやすいものだと思うし、本能に訴えかけるものでもあるので、その想像力を監督が信じて本作を撮ったんだろうということが、すごく伝わってきました」と、監督の意図をくみ取ったコメントをしていた。
そんな芹澤演じる栗田に対する橋本の芝居には、監督は感銘を受けたそうで、「劇中で使っているのは、1発目のテイクなんです。それであの表現ができるのはすごいですよ。栗田って実在するのかもわからない人物なので、栗田と出会ったであろう真澄(橋本)と、出会っていない真澄。その両方のパターンがありますけど、橋本さんはちょうどその中間というか、どちらとも取れる芝居をしてくれて! 映画としてはその食べ方が恐らく正解なんですけど、そんな芝居をサラッとしてくれたところが、すごく印象に残りました」と、重ねて絶賛していた。
また、武田については、現場での食べっぷりというか、対ラーメンの芝居には、監督も大いに見せられたそうで、「食べるシーンがめちゃくちゃうまいなと思いましたね。しかも、ラーメンに対して興奮するしぐさも、一発でOKになるなど、見事にやってのけてくれました」とべた褒め。それを聞いた武田は「途中、何が正解なのかが分からなくなってしまって……。めちゃくちゃやりましたよ。口の周りがすごいことになったし、翌日は(ニンニクの匂いで)たいへんなことになりましたけど、当時はもう、ラーメンとのアクションシーンという気持ちでやっていました」と、当時の想いを思い出しながら語っていた。ちなみに、そんな武田の姿をそばで見ていた芹澤は、「ラーメンに抱かれていると感じた」と、そのエロスの表現を絶賛していた。
ちなみに、性を妄想させる本作にちなみ、エロスを感じる食材は何か? という質問が登壇者らに向けられると、橋本は「マンゴー」、武田は「ケバブ」。「店頭にケバブが吊られているのを見ると、食後でも“絶対に食べなくちゃ”っていう欲に負けてしまうから」(武田)とのことだ。
最後に、登壇者らから、「あっという間の70分でした。おひとりでも、お友達とでも観られる、楽しめる作品になっていますので、ぜひ劇場で、いい音響環境で感じてください」(橋本)、「ふらっと映画館に入って、この世界観に触れて、自分の知らない感情とか想像を見つけながら楽しんでください」(武田)、「テーマは食と性なんですけど、僕としてはピュアというか、純粋・純真な気持ちで芝居に臨みました。内容からはエッチな作品なのかな? と感じるかもしれませんが、そんなことはありませんので、ぜひ劇場でご覧ください」(芹澤)、「タイトルとは違って(笑)、楽しめる作品になっていますので、ぜひ劇場でご覧ください」(吉田監督)、というメッセージが発せられて終了となった。
映画『Sexual Drive』
新宿武蔵野館にて上映中 ほか全国公開
<STORY>
Vol.1「納豆」
とある休日の夕方にデザイナー・江夏の自宅に見知らぬ男・栗田(芹澤興人)がやって来る。江夏の妻・真澄(橋本マナミ)の知り合いだという栗田は、真澄と不倫をしてしまい謝罪に来たと言ってきた。妻と不倫中であるという栗田の告白に動揺する江夏。なぜ妻はこの男と不倫をしたのか。なぜこの男と行為を持っているのか―栗田から妻との不倫の詳細を聞くと、自身の知らなかった妻の内実が明らかになっていく……。
Vol.2「麻婆豆腐」
軽度のパニック障害で休職中の上原茜。リハビリを兼ねて夕飯の麻婆豆腐の買い出しに近所のスーパーへ車を運転していくことになる。運転を心配する夫をよそに、一人で運転を試みる茜。緊張しながら車を発進させるが、男を轢いてしまう 慌てて警察に連絡しようとするが、男は家まで送ってくれれば大丈夫だという。被害者を家まで送ることになった茜。その被害者の名前は栗田と言った……。
Vol.3「背油大蒜増々」
仕事が忙しい会社員の池上。今日も体だけの関係の萌花(武田梨奈)とのデートがあったが、仕事を理由にキャンセルした。 正直、既婚の身でありながら桃花との関係を続けているのも苦になっていた池上。会社で仕事をしていると、桃花の携帯から連絡が入る。面倒に思いながら携帯を取ると、何故か電話口からは 栗田と名乗る男の声。不審に思う池山に、栗田は今、桃花と一緒にいると言ってきた……。
<CAST>
池田良 さとうほなみ 尚玄 芹澤興人 武田梨奈 橋本マナミ 中村無何有(五十音順)
■STAFF
監督・脚本:吉田浩太 プロデューサー:後藤剛 撮影:関将史 録音:島津未来介、五十嵐猛吏、小牧将人 音楽:松本章 メイク:赤井瑞希 撮影助手:佐藤遊 編集:吉田浩太 製作・制作プロダクション:シャイカー 製作・配給:シャイカー
2021|70分|カラー|16:9|ステレオ
(C)SHAIKER