確かなクォリティと抜群の設置性で人気を博したエプソンの4KプロジェクターEH-TW8400Wが、よりパワフルに生まれ変わった。新世代機でしかも同社フラッグシップモデルとなるEH-LS12000は、レンズを本体中央に配置し、その両サイドに給排気口を配したスマートなスタイルを踏襲しつつ、2軸シフトテクノロジーによる4K表示およびレーザー光源を搭載。さらに新開発の画像処理チップにより、シーン適応のガンマ/コントラスト補正を実用化している。今回はエプソンの家庭用プロジェクター開発陣にリモートを含めて集まりいただき、本機の詳細についてお話をうかがった。
画像1: 渾身の4Kレーザープロジェクター「EH-LS12000」のこだわりを開発スタッフに聞く

4K PROJECTOR
エプソン
EH-LS12000
オープン価格(実勢価格54万7,800円前後)

● 使用パネル:0.74型LCD×3
● パネル解像度:水平1,920×垂直1,080画素
● 表示解像度:水平3,840×垂直2,160画素 
● 光源:レーザーダイオード
● 光出力:2,700ルーメン
● 投写レンズ:2.1倍電動ズーム/フォーカス(F=2.0〜3.0、f=22.5〜46.7mm)
● レンズシフト:上下±96%、左右±43%
● 接続端子:HDMI入力2系統(HDCP2.3、40Gbps対応)ほか
● 騒音レベル:22dB(最小値) 
● 寸法/質量:W520×H169×D447mm/約12.7kg
● 消費電力:311W(待機時0.4Wスタンバイ時) 
● 備考:3D表示非対応
● 問合せ先:エプソン販売(株)プロジェクターインフォメーションセンター TEL.050-3155-7010

 

 

藤原 3年以上に渡って安定した人気を保ってきたEH-TW8400Wのモデルチェンジだけに、ユーザーからの期待も大きいですね。

柏木章宏さん(以下、柏木) そのあたりは我々も重々承知していまして、中途半端な製品はだせないという意識が強くありました。技術的には3LCD方式とレーザー光源の組合せと、4Kの情報をフルカバーできる2軸シフト技術が柱になりますが、画像処理用LSIも新たに開発して、総合的な表現力に磨きをかけています。

藤原 透過型の液晶パネルについては、従来と同じフルHD解像度の仕様ですね。

水迫和久さん(以下、水迫) 性能的に安定していて、パネルとしての素性も熟知している透過型の液晶パネルを使い、そこに新しい駆動技術を組み込むことで4K対応しています。透過型液晶の場合、画素間の格子(ブラックマトリックス)が存在し、そこに情報はないわけです。今回の「2軸シフトテクノロジー」では1ピクセルを上下左右にずらして4K解像度の出力を行なっていますが、スクリーン上ではこのブラックマトリックスの影の部分に情報が表示できることになります。

藤原 情報が増えて、画素間の格子が見えづらくなるわけですね。

水迫 はい。しかも画素同士の重なりがなく、クロストークがない4K表示が可能なので、透過型液晶の特性をフルに活かせる表示方法なのです。

藤原 なるほど、もともと画素間の格子がほとんど存在しないLCOS(反射型液晶)と2軸シフトの組合せでは、どうしても画素が重なりますからね。ただ超高速(60p入力の場合240分の1秒)で4つのポジションを切り替えていくとなると、簡単じゃないでしょう。

水迫 倍速表示まで含めると、480Hz駆動が必須となるわけですが、液晶パネル自体の潜在能力は充分でした。ただ液晶の場合、温度によって反応が変わるため、対策が必要になります。今回はパネルの中に温度センサーを組み込み、その検出データを元に新開発の映像LSIで補正することで、安定した映像品質を確保しています。

画像: 本機はフルHD解像度の透過型液晶パネル3枚による「2軸シフトテクノロジー」を用いて、スクリーン上で4K解像度表示を果たす4Kプロジェクターだ。写真中央部の4Kシフトデバイス(白色部分)を動かし、映像を上下左右にずらすことで、4倍密映像表示を実現する。

本機はフルHD解像度の透過型液晶パネル3枚による「2軸シフトテクノロジー」を用いて、スクリーン上で4K解像度表示を果たす4Kプロジェクターだ。写真中央部の4Kシフトデバイス(白色部分)を動かし、映像を上下左右にずらすことで、4倍密映像表示を実現する。

 

レーザーの強みを活かしつつ静音化と高信頼性を実現

藤原 投写レンズについてはシフト量、ズーム、F値と基本スペックはTW8400Wから変わっていません。

日野俊介さん(以下、日野) レーザー光源の採用で、光源の特性が変わるため、レーザーのパワーを無駄なくパネルに届けられるように、光学系全体を最適化しています。ただし、基本的な設置性についてはTW8400Wと同一となるように合わせこんでいます。

藤原 レーザー光源を採用して、本体サイズもほとんど変わっていないのは立派です。

日野 いち早くレーザー光源を導入した2015年登場のEH-LS10000以来、業務用を含めてさまざまなレーザープロジェクターを開発してきました。レーザーの持つ能力を最大限活かす技術、ノウハウを蓄積していますので、本機ではその強みを生かすことができました。また青色レーザーを受けてRGB光源を確保するための蛍光体(フォスファー)は固定型としています。製品全体としての冷却能力の高さと相まって、静音性に寄与しています。

長野 幹さん(以下、長野) 先ほど柏木が述べたように、画像処理用LSIも新しくなりました。画面全体の映像の状況を逐次、把握して、ガンマを最適化していく「シーン適応ガンマ補正」と、輪郭部分をゆるやかに補正する「自動コントラスト強調」を新規に開発しています。

藤原 「シーン適応ガンマ補正」はHDR映像だけでなく、SDR映像でも有効ですね。

長野 はい、この類の画質補正では、効果を求めすぎると不自然になるので、映像の流れを慎重に把握しながら、やりすぎず自然な制御を心がけています。テレビ画質を意識した「ビビッド」モードではやや強目の設定にしていますが、20段階のレベル調整可能で、映像モードごとにメモリーもできます。

柏木 「自動コントラスト強調」については、単純に輪郭にシュートをつけて、キリッとみせるのではなく、映像の局所を見て、その周辺とのコントラストがつくような処理を行ないます。これも極端に補正せず、自然な奥行感を損ねないようなレベルに仕上げています。

古屋文崇さん 今回はLSIの開発段階から、回路設計メンバーが入り、評価基板開発と製品向け基板の試作を同時平行で進めるなどして、最短のスケジュールで完成までこぎつけることができました。4K/120p入力などのHDMIの新機能のサポートなど、新しい映像規格への対応も多かったのですが、チームワークで作り上げました。

画像: 画質担当の柏木章宏(写真上)さんには、HiVi視聴室で直接説明をしていただき、それ以外の開発陣とは、開発現場の長野・安曇野市にある豊料事業所とオンラインでつなぎ、インタビューを実施した。下はインタビュアーの藤原陽祐さん

画質担当の柏木章宏(写真上)さんには、HiVi視聴室で直接説明をしていただき、それ以外の開発陣とは、開発現場の長野・安曇野市にある豊料事業所とオンラインでつなぎ、インタビューを実施した。下はインタビュアーの藤原陽祐さん

専用室はもちろんリビングでの高性能と使いやすさを追求

藤原 ダイナミックHDR規格のHDR10+の再生もサポートしていますね。

柏木 その通りです。HDR10+信号はすべての映像モード(カラーモード)で再生に対応しています。厳密にいいますと、ナチュラルモードで再生したときの状態で規格認証をクリアーしましたので、HDR10+作品では、この条件で設計的にはベストマッチするという認識になります。

山下春菜さん 改めて申しますと、本機の基本コンセプトは、専用シアタールームで最高の画質を約束すると同時に、リビングルームの環境でも充分に楽しめる、エプソンのフラッグシッププロジェクター。高輝度/高コントラストの4K画質に加えて、設置性/静音性/本体サイズについても、使いやすさを意識して開発し、それに相応しい仕上がりだと思います。ぜひLS12000の映像を実際にご体験ください。

 家庭用4Kプロジェクターのスタンダードとして広く愛されたEH-TW8400W。そのスマートさ、使いやすさをそのまま受け継ぎながら、先進の技術を搭載し、持ち前の表現力に磨きをかけた意欲作。EH-LS12000の登場を待ち望んでいた大画面ファンは少なくない。

提供:エプソン

画像: セイコーエプソン株式会社VP営業部とVP企画設計部に所属する本機の開発スタッフの方々。写真左からプロジェクター営業の山下春菜さん、画質担当の長野 幹さん、パネル担当の水迫和久さん、回路担当の古屋文崇さん、光学担当の日野俊介さん

セイコーエプソン株式会社VP営業部とVP企画設計部に所属する本機の開発スタッフの方々。写真左からプロジェクター営業の山下春菜さん、画質担当の長野 幹さん、パネル担当の水迫和久さん、回路担当の古屋文崇さん、光学担当の日野俊介さん

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