平成最後の年の大阪で暮らしている海外からやってきた外国人と日本人との交流のズレ、そして日常の葛藤を描く映画『COME & GO カム・アンド・ゴー』の舞台挨拶が、11月20日(土)に東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で行なわれ、大阪を中心に活躍する中華系マレーシア人のリム・カーワイ監督、出会いカフェや漫画映画で寝泊まりする女性を演じた兎丸愛美、白骨化した遺体の謎に迫る刑事役の千原せいじ、その妻で難民に日本語を教えるというボランティア活動もしている女性を演じた渡辺真起子の4名が登場した。即興性を重視することで知られるカーワイ監督だが、そのスタイルは今回も用いられている。

 「台本はないですけれど、“ハコ書き”があるんです。そこには簡単なストーリーが書いてあります。ただ、セリフはない。役者さんに現場に来てもらって、その場でこういう風に演じてもらいたいと説明するんです。その場の雰囲気を大切にしたいと思うし、生々しさを出したかった」(カーワイ監督)

 「大体のあらすじは決まっていて、“ここではこうしてほしい”という前提はあります。自由になるのはセリフだけなんです。私はやりやすかったです。(セリフを)覚える時間がいらないから」(渡辺)

 「これ(=この演出)でいけるんやな、と。けっこうそれから普通に映画を見ても“このセリフいらんとちゃう”とか、そういう風に見るようになりました。日本人の監督は、むちゃくちゃキッチリしてはる。「~も」を、「~は」って言うたらNGです、とか。今回はそんなんもないし」(千原)

 「私は不慣れなので、セリフが用意されていないということに最初けっこう緊張しました。1回だと追いきれないところもあると思いますので、2回、3回見に来ていただけたらとても嬉しいです」(兎丸)

 AVオタクを演じた台湾のリー・カーション、技術研修生を演じたベトナムのリエン・ビン・ファットはビデオメッセージを寄せ、スーパーでアルバイトをする専門学校生を演じたナン・トレイシーからの手紙も渡辺によって代読された。彼女の住むミャンマーは2月にクーデターが起き(期限を1年間とする非常事態宣言を発出し、国軍が政権を掌握)、外出やインターネットへの厳しい制限が行なわれている状態が続いている。「撮影中は素晴らしい日々だったから、素晴らしい映画になっていると確信しています。しかし今の私はそれを見ることができない。ミャンマーの情勢が安定したらすぐに日本にかけつけます」という彼女の言葉が、ひときわ心にしみた。

 撮影はコロナ禍前の2019年。それから現在に至るまで、世界にはいろんなことがありすぎた。

 「本当にこの数年で世界の状況がガラリと変わり、子供の頃に夢見ていた地球というものの距離みたいなものを見失いかけているように私自身は思います。たまたまアジアの状況が変わる少し前、コロナになる少し前に、こんな時代があったということを皆さんの心にお留めおきいただけたら幸いです」(渡辺)

 「すごく面白い作品だと思うし、今の世の中で何が起きてるか、リアルに映し出している映画ではないかと思います。たくさんの方々に観ていただきたいですし、多分1回だけじゃなくて、2回、3回と観ると感想が変わってくるし、面白さも変わってくると思います。SNSでも呼びかけてください」(カーワイ監督)

映画「COME & GOカム・アンド・ゴー」

11月19日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷 他にて全国順次公開

リー・カーション リエン・ビン・ファット J・C・チーモウサム・グルン ナン・トレイシー ゴウジー イ・グァンス デイヴィッド・シウ 千原せいじ 渡辺真起子 兎丸愛美 桂雀々 尚生 望月オーソン

監督・脚本・編集:リム・カーワイ
宣伝 :ムービー・アクト・プロジェクト
配給:リアリーライクフィルムズ / Cinema Drifters www.reallylikefilms.com/comeandgo
[2020年製作/158分/日本語・英語・韓国語・中国語・ベトナム語・ミャンマー語・ネパール語など/ビスタサイズ/5 .1ch/DCP・ Blu-ray]
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