自らを神様と名乗るおじさんとの出会いによって、成長していく女の子の姿を描いた映画『ペテロの帰り道』が、いよいよ5月21日(金)より公開される。主演は、映画初出演にして初主演を飾った新鋭の吉田あかり。自身と同年齢の将来に悩む女学生・水華を等身大に好演している。ここでは公開に先駆けて出演の感想を聞いた。
――出演おめでとうございます。まずは決まった時のことを教えてください。
ありがとうございます。決まった時はもう、ただただ嬉しかったです。その後、クランクインする数日前に監督から直筆のお手紙をいただいたんです。それを読んだ時に初めて、役をいただいたという実感がわきました。と同時に、主演のプレッシャーも大きくなってきてしまって! ものすごく複雑な感情になりました。
――そのプレッシャーはどのように乗り越えたのですか?
特に、こうして解決しましたというのはなくて、自然と自信がついたというか、現場がものすごく楽しかったこともあって、もっと居たい、もっとやりたいという気持ちが段々強くなってきて、気が付いたらあまり深いことは考えずに、水華ちゃんになれていたという感じです。
――すると役作りは、演じるというよりなりきるほうですか?
どうなんでしょう。あまり深く“やるぞ”と意気込んで役に向き合うよりは、台本を何回も何回も読んでいくうちに(自分の中に)気持ちが入ってきて、気が付くと水華ちゃんになっていたので、そう考えるとなりきる方だと思います。
――それは、カットがかかるとすぐに抜けるものですか?
そうですね。割とすぐに(自分が)戻ってきます。ただ、めちゃくちゃ感情が高まっているような場合は、余韻というか、役の感情が残っていることもありますけど、結構、ふっと戻ってきますね。
――ちなみに、監督からの手紙はどのようなことが書かれていたのでしょう。
「水華役はあかりに決めたから、女優の吉田あかりの力を貸してほしい」と書かれていました。それを読んで、あっそうか、吉田あかりではなくて、女優として、プロとしてお仕事をいただいたのだから、生半可な気持ちでやってはいけない! そう気づかされて、一気に台本の読み方も変わりましたし、私はここで女優としてお仕事をさせていただいているんだ、ということを再確認することができました。
――覚悟ができたと。
はい!
――さて、その台本を読んでの感想は?
人間の温かみをすごく感じました。人と人の出会いの大切さ――人から何かを吸収したり、逆に何かをしてあげることで助けることができる――や、それによって人は変われるんだということに気付かされました。今はコロナ禍の中にあって、人と会うことも制限されていますけど、人間って人と出会うことが本当に重要なんだなということを学びました。
――今回は初主演ですが、もともとお芝居に興味はあったのですか?
はい。昔からやってみたいという気持ちはありました。けど、実際に演じることまでは考えたことはなかったので、今回、お芝居ができて、しかも主役ということで、本当に嬉しかったです。
――今回演じられた水華はどのように役を作っていったのでしょう?
台本を読んで感じたのは、私と似ているようで実は似ていないんだなっていうことでした。まさに正反対なんです。そこで、今の自分をクリーンにするというか、逆にすれば演じやすくなるんじゃないかって考えたら、すごくイメージが掴めたんです! そこで、私ならこうするけどという部分を押し殺して、水華ちゃんならこうするかなということを全力でやるようにしました。
――自分と正反対(違う)の役はやりやすいものですか?
そうですね。自分と似ていると、本当の自分(地)が出てしまわないかという不安もありますから(笑)、正反対というか(自分との)差が大きいほうが、演じやすいです。
――水華の性格をどのように表現しようと思いましたか。
水華は、お父さんを早くに亡くしたことに悩み、暗い人生を送っていますが、神様との出会いによって前向きになっていきます。私も、クランクインする直前におじいちゃんを亡くしているんです。最期まで私の映画を観たいと言ってくれていましたけど、それが叶わなくて……。水華と神様の付き合いを見ていると、おじいちゃんのことが懐かしく感じられて、小さい頃におじいちゃんと遊んだことを思い出しながら、そうした雰囲気を出すようにしたら、すごく演じやすくなりました。
水華からしたら、初対面で少し怪しいおじさん(=神様)に、お父さんっぽい雰囲気を感じていたから、一緒に散歩したり、いろいろとお話をしたりしたんだろうなって感じています。
――水華はお父さんのこと以外にも、将来への不安など、いろいろな悩みを抱えていました。
すごく共感しました。私も、小さいころからお芝居をしたいという明確な夢はありましたけど、実際にできるのかとか、成功できるのかは分かりませんでしたから、そういうことを考えている内に、不安が不安を増幅させていってしまって、どうしたらいいのか分からなくなってしまうこともあって。それがさらに将来への不安を強くしてしまう、という部分は似ているというかよく理解できましたので、演じやすくはありました。
――役作りについては、監督と相談しましたか。
はい。リハーサルの時から、ここはこういう気持ちで合っていますか?って、不安になった部分は相談させていただきました。監督からは“そうだよ”というお返事をいただくことが多かったので、(私の演技プランで)正解だったんだろうと思っています。相談というか、(芝居の)答え合わせをしているような感覚でした。
――自己採点は何点ぐらい?
うーん95点ぐらいでしょうか。言いすぎちゃったかも(笑)。
――そんな中で迎えたクランクアップはいかがでしたか?
無事に終わったという安心感が湧いてきて、本当にホッとしました。しかし、一方で、(終わってしまって)寂しいという気持ちもありましたね。
――最後の撮影は、どのシーンでしょう。
シーンとしては、本当に最後の最後のところで、未来の誰かに向かって手を振る場面なんです。撮り終えて明るい気持ちになりましたし、その時は水華と同じく、すっきりしていました。
――野暮なことを聞きますが、誰に手を振っていたのでしょう。
私には、神様が見えていました。そこは観てくださった方が感じたものが正解だと思います。
――ところで、中盤では先輩の岡田結実さんとの共演もありました。
岡田さんとは何度かお会いしたことがあって、今回共演した際に“大人っぽくなったね”って言ってくださったんです。今回初主演を経験して、自分の中で生まれた自信みたいなものを感じてくださったのかと思って、嬉しくなっちゃいました。撮影前は(先輩ということで)すごく緊張していたんですけど、とてもナチュラルなお芝居で合わせてくださったので、演じやすかったです。(作中の)世界観にスッと入り込めたようで、いいシーンができたと感じています。
――岡田さん演じる光里も、神様のようなことを言いますね。
私の中では、光里さんも過去に水華と似たような経験をしていて、その経験が二人を合わせてくれたんだろうなって思っていました。私が見た神様が、光里さんの見た存在と同じかどうかまでは分かりませんけどね(笑)。
――さて、撮影では結構長回しのシーンも多く、アドリブなのかもと感じる部分もありました。
結構、アドリブは入っていますよ。中でも、屋上のシーンで、弓香に後ろからワッてされるところは、私は知らなかったので、本当にびっくりしているんです。でも、それによってよりリアルな仲良し感が出せたのかなって思いますね。
――アドリブはすぐにできましたか?
結構できましたね。その時は、演じているのが楽しくて、もっと水華ちゃんでいたいという気持ちが強くて、積極的にアドリブに対応できました。
――今回初主演作を終えて、自信は付きましたか。
はい! 女優になりたいという思いはさらに強くなりましたし、もっともっとほかの役(設定)を演じたいという好奇心も湧いてきました。
――どんな役を演じてみたいですか。
自分とは違う、思いきり弾けた役を演じてみたいです。
――ダンスが得意であれば、アクションも行けるのでは?
ぜひやってみたいです。アクションのワークショップを受けた時に、すごく楽しくて、わー投げ飛ばされたいって思ったので(笑)、やってみたいです。
――吉田さんの好きなシーンを挙げてもらえますか。
中盤で、お兄ちゃんと将来のことを話すところです。最初はそんなに難しいとは思わなかったのですが、実は何回もNGを出してしまって……。本作の中では、一番って言えるぐらい難しかったです。でも、その分頑張って、よい形にできたという自信もあるので、観てほしいです。
――では、最後に読者へメッセージをお願いします。
引っ込み思案だった水華ちゃんが、出会いを通して変わっていくところに注目しながら観てほしいなって思います。今の状況では、なかなか人と会うことは難しいとは思いますけど、出会いの大切さや、それによる人の温もりというか、温かい部分を感じてもらえたら嬉しいですね。
映画『ペテロの帰り道』
5月21日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
<キャスト>
吉田あかり
東大 遊上なばな 武田一馬 向有美 宮本伊織 金野美穂 安原寛之 宮瀬彩加 真白ゆうみ 有里まりな 一ノ瀬円 本田茉利菜 本田真絆 中村ゆうじ / 岡田結実
<スタッフ>
監督・脚本:オカモトナオキ
プロデューサー:石井雅教 共同プロデューサー:遊上なばな 撮影:星野洋行 録音:古茂田耕吉 衣装:カドワキジュン子 メイク:SAYURI 編集:鈴木勝之 助監督:シェークMハリス 制作:久永光 宮本伊織 ビジュアル写真:小宮京 音楽:isao テーマソング:「バトン」三つ葉(作詞作曲isao)
(C)OBVERSE&REVERSE
公式サイト https://www.obvrev.com/petros
吉田あかり
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