とある村の空き家に勝手に住み着いている5人の男女。「前にも何人も来たけど、結局追い出せていないから」。退去勧告を伝えに来た役人を巻き込んで進む静かな夜。果たして、役人は仕事を果たすことができるのか?

 2020年のSKIPシティDシネマ国際映画祭の短編部門でグランプリを獲得した『stay』が、いよいよ公開となる。ここでは、メインキャストを務めたと石川瑠華遠藤祐美の二人にインタビューした。

画像1: 各種映画祭で好評を得た短編『stay』がいよいよ公開。社会の縮図に背を向けながらも、それに囚われている姿を生き生きと演じた「石川瑠華」&「遠藤祐美」にインタビューした

――出演おめでとうございます。設定が分からないまま進む話には引き込まれました。まずは、出演した感想をお願いします。

遠藤祐美 ありがとうございます。私も、どういう映画になるだろうと思いながらの撮影でしたので、完成したものを観て、(現場での)緊張感というか空気がきちんと映っていたのは、面白いなと思いました。

石川瑠華 私も、現場では作品のイメージがつかみ切れなくて……。どういう風になるんだろうって、ずっと悩んでいたんです。監督にも相談しましたけど、最後までつかみ切れなかったんです。そして、完成した映像を観て初めて、あっ、こういう作品だったんだってようやく理解できました(笑)。それが分からないままの撮影は、けっこう難しかったです。

――石川さんは、監督にどんな相談をされたのでしょう?

石川 私が演じるマキと、菟田(高城)さん演じる空き家のリーダー格の鈴山は、結構意見が異なっていて、対立というか衝突することが多いんです。その、衝突する部分をどういう風にするのかについて、かなり話し合った記憶があります。

――石川さんは、マキをどのように捉えていたのでしょう?

石川 年齢は二十歳ぐらいで、たぶん(この家の)外の世界では、自分のことが嫌になる時期を迎えていたんだろうなと思いました。そこで、誰も知らない場所で、新しい生活を始めたいと思って、ここ(空き家)に来た、と。マキという名前自体も、偽名というか、この家で始まる新しい自分を表すものなのかな、と思っていました。

――それは、監督と相談して決めたものですか?

石川 いえ、それは私の中の話です。

――細かい設定のない作品への出演というのは、プレッシャーは強いものですか?

石川 どういう映画になるのかは分かりませんでしたけど(笑)、それをプレッシャーに感じることはありませんでしたね。普段から、映画に出演させていただく時は、自分は映画の一部だという感覚があって、『stay』という世界観の中に私が含まれている、という風に感じているんです。

――遠藤さんは、監督に相談や質問はされたのでしょうか?

遠藤 私は特に、分からないですという話はしませんでしたね。ただ、撮影前にリハを行なった際に菟田さんが、「僕はこう思っているんだけど」「こうしたいんだけど」と積極的に主張して周りとコミュニケーションを取る姿を見て、あっ、鈴山っぽいなと思いました。もう(役の)関係性は始まっているなと。

画像2: 各種映画祭で好評を得た短編『stay』がいよいよ公開。社会の縮図に背を向けながらも、それに囚われている姿を生き生きと演じた「石川瑠華」&「遠藤祐美」にインタビューした

――その時点からすでに役に入っていた、と。

遠藤 そうですね。台本には、それぞれの役の設定・背景というものは特に描かれていませんでしたし、監督からも説明はありませんでしたから、これはもう、自分であれこれ想像をして、役の考えていることや雰囲気を掴んでいこうと思いました。

――でも、鈴山は粋がっているように見えて、意外と弱かったですね。

遠藤 そうなんですよ。

石川 言い合って、言い負かした後にシュンとしている姿は、こちらも悲しくなるというか、ちょっと言い過ぎたかなって、感じてしまいましたから(笑)。

――遠藤さんは、演じられたサエコをどのように捉えたのでしょう?

遠藤 台本をいただいて、読み進めながら自分との共通点を探しました。もし自分がこういう家に来たとして、せっかく新しい場所で自由になれると思っていたのに、いつの間にかしがらみというか関係性ができて生きづらくなってしまう……。自分ならどうするかと考えた時に、サエコの取った行動は理解できるし、私もそうすると思ったので、(セリフや行動については)すっと理解できました。

――監督からの指示などは?

遠藤 特にこうしてほしいと言われた記憶はなく、自分の想像と解釈を信じて撮影に入りました。

――サエコはなんでも知っているように見えました。

遠藤 特に人間関係については、どういうものがあって、それがどう変わっていくかという部分は、結構考えてから臨んだので、そう見えたのかもしれませんね。おそらくほかの人に比べたら割と長くそこに住み着いている設定なので、そう見えていたのかもしれません。

 ただ、撮影に入ってからは、空き家だけど実社会の集団でよくある人間関係を描いているなと感じましたので、演じる上での難しさや、理解できない状況を描いているという感覚はありませんでした。

――鈴山とは“何かあった”ようにも見えました。

遠藤 いい仲だったことはあったのかな、と(笑)。ただ、段々と他の人も含めての関係性が出来上がっていくことで、そうしたことが嫌でここに来たのに……と、煩わしさが生まれていったんだと思います。

――一方で、マキは子供っぽいというか無邪気に感じました。

石川 ちょっと子供っぽく、天真爛漫な感じで、というところは、監督と話しました。

――ところで、劇中ではマキとサエコは仲がよかったですね。

画像3: 各種映画祭で好評を得た短編『stay』がいよいよ公開。社会の縮図に背を向けながらも、それに囚われている姿を生き生きと演じた「石川瑠華」&「遠藤祐美」にインタビューした

石川・遠藤 はい!

石川 一緒に食事も作ったし……。

遠藤 料理を教えたりして……。

石川・遠藤 すごく楽しかったです。

石川 ただ、私の中ではサエコさんには何かこう、見透かされている感覚もあって、ドキドキすることもありました。と言っても、基本は楽しかったですよ。

――お互いの印象は?

遠藤 かわいらしいなって思いました。

石川 安心感がありましたね。遠藤さんとは初めましてでしたし、リハもあまり(役の) 情報がない中で進んでいったんですが、演じられている姿を見て、役そのままの人なんだと感じることができて、鈴山さんもサエコさんも、こういう人と一緒に暮らすんだと、割とストレートに受け入れることができました。

 ただし、そのリハも、お芝居を固めていくというよりは、間取りを説明してもらったり、部屋を移動しながらリハをすることが多かったので、ああ、この人たちと共同生活を送っているんだ、ということのほうが強く感じましたね。監督も、そこを馴染ませようとしているんだろうなと、受け取りました。

 サエコさんとは、同じ女性同士ですし、距離感は他の人に比べると近いものがあったので、先ほどお話したような安心感につながったのだろうと思います。

 ただ、遠藤さんの情報がない中で、役の状態で過ごすことが多かったこともあり、実は遠藤さんて、どんな人なのかはあまり理解が進んでいなくて……。こうして一緒に取材をさせていただく中で、段々と性格というか雰囲気が分かってきた印象です。

遠藤 私も、それはありましたね。

――では、最後に、好きなシーンや記憶に残っているシーンがあれば教えてください。

遠藤 私たちを追い出しに来た矢島(山科圭太)が、一晩を一緒に過ごすことで、私たちに取り込まれていって、段々と顔が変化していくところですね。そこが面白いと思いました。

――えーと、サエコのシーンでは(焦)。

遠藤 サエコが“今日、ここを出て行こうと思うんだ”と話す時の表情でしょうか…。それまでと違う、ちょっと開放感を味わっているシーンなので、(映像に)映っているか観て頂きたいなと思います。

石川 私は、矢島が泊まった夜の食事のシーンです。登場人物がギュッと集まって画面に映っているんですけど、家族のように振る舞いながらも、どこかぎくしゃくして、いろいろなもの(関係性)が見えてくるんです。言い合いもするし、なだめる人もいるし、場を和まそうとする人もいるしと、みんなのキャラがよく分かるので、見どころです。私の大好きなシーンでもあります。

画像4: 各種映画祭で好評を得た短編『stay』がいよいよ公開。社会の縮図に背を向けながらも、それに囚われている姿を生き生きと演じた「石川瑠華」&「遠藤祐美」にインタビューした

映画『stay』

4月23日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

<舞台挨拶決定>
4月23日(金) 14:50~15:31
【予告2分】【上映後トークショー】
登壇者:山科圭太、金子鈴幸、藤田直哉監督(約15分)

4月24日(土) 15:00~16:01
【予告2分】【上映前舞台挨拶】
登壇者:山科圭太、石川瑠華、藤田直哉監督(約15分)

4月25日(日) 18:05~18:46
【予告2分】【上映後トークショー】
登壇者:菟田高城、遠藤祐美、藤田直哉監督(約15分)

座席予約は下記URLから!
https://shibuya.uplink.co.jp/movie/2021/58420

◆4月26日(月)以降の上映回
4月23日(金)中に上映スケジュールならびにチケット販売スケジュールの発表を予定しております

<キャスト>
山科圭太 石川瑠華 菟田高城 遠藤祐美

<スタッフ>
監督:藤田直哉
脚本:金子鈴幸
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
助成:芳泉文化財団助成作品
配給:アルミード
2019 / 日本/ カラー/ シネマスコープ/ DCP/ 39min
(C)東京藝術大学大学院映像研究科

<ストーリー>
とある村の持ち主のいない古い空き家。ここは誰もが寝泊まりし、出ていくことが可能な場所。ちょうど吉田(山岸健太)が去ろうとしているところに、村の役所から派遣された矢島(山科圭太)が、不法に滞在する5人に退去勧告を言い渡しにやってくる。

長期滞在しているマキ(石川瑠華)が「前にも何人も来たけど、結局追い出せてないか ら」と予言したように、矢島は、リーダー格の男・鈴山(菟田高城)のペースに巻き込まれ、立ち退きを説得できないどころか、サエコ(遠藤祐美)の提案でその家で一晩を明かす羽目になり…

石川瑠華ヘアメイク:石松英恵

公式サイト:https://stay-film.com/
公式ツイッター:https://twitter.com/stay_film2021
公式Facebook:https://www.facebook.com/stayfilm2021

石川瑠華 https://www.sma.co.jp/s/sma/artist/561?ima=0000#/news/0

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