今冬の各社注目製品
残念ながら2020年度の開催が中止となった「東京インターナショナルオーディオショウ」。
しかしながら、今年も各社から魅力的な製品の数々がリリース予定。そこで、Stereo Sound 217号(12月10日発売)では、楽しみにしていたオーディオファイルの方々に向け、「誌上TIAS2020」と題して、メーカー/輸入商社ごとに各社の《この冬の注目製品》をご紹介する特集企画を用意。今回は誌面に先立ち、WEB上でその内容を一部、先行公開する。
ヨシノトレーディング株式会社編
300B管を同社初搭載のパワーアンプ
1945年生まれのティム・デ・パラヴィチーニ氏が英国でEAR(Esoteric Audio Research)を設立したのは1978年のこと。それ以前から彼の手がけたレコーディングスタジオの管球式ミキシングアンプやパワーアンプはミュージシャンの間でよく知られていたが、EARの設立を機にその名はさらに広く知れわたり、次第にオーディオファイルからも熱い視線が向けられるようになっていく。そんな期待に応えるように、パラヴィチーニ氏がPL509管を使用した初のコンシューマー向けプリメインアンプ「EAR859」を作り上げたのは1990年代半ばのことで、ここでも「オーディオ装置は独自の音を持つべきではない」という彼の理念は貫かれているようだ。2002年には米サンフランシスコの高音質レーベル「モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ」に招かれ、同レーベルのアナログシステムのデザインを担当するなど、その活動は多岐におよぶ。なお、2016年から創始者の子息である現代表ネヴィン・デ・パラヴィチーニ氏は父親と共同でメカニカル・デザインを担当している。
2021年春の発売が予定されているパワーアンプ「EAR300B」は、そのモデル名が示す通り、世界で根強い人気を誇る300B三極管を出力段に搭載するモデル。これまでのパラヴィチーニ氏は真空管の選定に固執せず、在庫の豊富な真空管を積極的に使用することで多くのユーザーに長い期間楽しんでもらえるアンプを作り続けてきた。先のEAR859のほか、「EAR869」やパワーアンプ「EAR861」などもそれにあたるが、今回は最初から300Bの使用を念頭に置き、それでいて従来の300B搭載アンプとはテイストの異なるアンプにすることを目指したという。斬新な外観デザインもネヴィン・デ・パラヴィチーニ氏の手によるものだ。
300Bの持ち味である自然な低歪率を引き出すためにプッシュプル回路を選択し、同社特別仕様となるトランスを搭載したドライバーサーキットによる低歪かつ正確なプッシュプルドライブを実現したというEAR300B。「King of Tube」の異名を持つパラヴィチーニ氏のチャレンジは、EAR設立から40年以上を経た現在も止まることがない。
パワーアンプ EAR300B 予価¥2,000,000・税別(ロシア管)/¥2,400,000・税別(オプションTakatsuki管)
(2021年春・発売予定)
EAR
創始者 ティム・デ・パラヴィチーニ 氏
代表 ネヴィン・デ・パラヴィチーニ 氏