今冬の各社注目製品
残念ながら2020年度の開催が中止となった「東京インターナショナルオーディオショウ」。
しかしながら、今年も各社から魅力的な製品の数々がリリース予定。そこで、Stereo Sound 217号(12月10日発売)では、楽しみにしていたオーディオファイルの方々に向け、「誌上TIAS2020」と題して、メーカー/輸入商社ごとに各社の《この冬の注目製品》をご紹介する特集企画を用意。今回は誌面に先立ち、WEB上でその内容を一部、先行公開する。
株式会社タイムロード編
新しいデュアル・フィードフォワード技術を搭載したパワーアンプ
1989年に英ケント州メードストンで設立されたコード・エレクトロニクス。航空機の電源開発に従事していたエンジニアのジョン・フランクスが、その知識とノウハウを趣味のオーディオに活かし、アンプ製作を始めたことがブランド設立のきっかけだという。近年はもうひとりのエンジニア、ロバート・ワッツの設計による「Dave」などのD/Aコンバーターに注目が集まっているが、ここへきてブランドのルーツとも言えるフルサイズのパワーアンプが刷新された。新ラインとなるUltima(アルティマ)シリーズは、モノーラル機の「Ultima 3」、ステレオ機の「Ultima 5」「Ultima 6」の3モデルが日本でも展開され、その優れた音質からオーディオファイルの間で早くも話題となっている。
AB級ステレオ機の上位モデル、Ultima 5を例に概要を見ると、同社の小型パワーアンプ「Etude」にて初搭載された低歪化技術「デュアル・フィードフォワード」が使われていることが特徴として大きい。一般的なネガティヴ・フィードバックのように入力された信号を戻すのではなく、差分信号を加えて入力を補正することで高精度な出力を実現するという。自社開発の高速スイッチング電源にアナログ増幅回路を組み合せる手法は、同社アンプ第1号機の「SPM1200」や本機の先代にあたる「SPM1200Mk2」と同じ。出力素子として、特殊なTO3メタルケースを持つMOS FETを左右チャンネル合せて32個搭載している。トップパネルの放熱ネットからブルーのLEDに照らされた回路がのぞく筐体デザインの美しさも、いかにもコードらしい。
同社が創業時より一貫して取り組んできた「高音質・高出力な回路を小型軽量のボディに凝縮する」というコンセプトを継承しながら、次世代の音へと進化を遂げたコードのパワーアンプ群。このUltimaシリーズが、アンプからスタートした同社の真髄に再び目を向けさせる契機になることは間違いない。
パワーアンプ コード Ultima 5 ¥1,700,000・税別(2020年5月発売)