今冬の各社注目製品
残念ながら2020年度の開催が中止となった「東京インターナショナルオーディオショウ」。しかしながら、今年も各社から魅力的な製品の数々がリリース予定。そこで、Stereo Sound 217号(12月10日発売)では、楽しみにしていたオーディオファイルの方々に向け、「誌上TIAS2020」と題して、メーカー/輸入商社ごとに各社の《この冬の注目製品》をご紹介する特集企画を用意。今回は誌面に先立ち、WEB上でその内容を一部、先行公開する。
テクニクス編
“進取の気風”から生み出された最新フルデジタルアンプ
テクニクスのリファレンス・クラスでは初となるプリメインアンプ、SU-R1000。本稿では、本来なら2020東京インターナショナルオーディオショウで注目モデルの一つになっていたであろうこの新型アンプの開発経緯と特長を、企画開発に携わった3人のキーマン(写真)の発言から探っていきたい。
井谷哲也(いたに てつや)氏 テクニクス事業推進室 CTO/チーフエンジニア
田口恵介(たぐち けいすけ)氏 テクニクス商品企画課 主幹
水俣直裕(みずまた なおひろ)氏 技術センター オーディオ技術部電気設計課 主任技師
新生テクニクスが目指す音とは?
「SL1000Rをつくったことで、我々製品開発者のあいだで、テクニクスが目指すべき音を共有することができました」(井谷氏)
「それは、歪を抑えたクリアーさのなかに、エネルギー感と躍動感が加わった音で、SU-R1000で実現しようとしたのも、まさにそうした音です」(水俣氏)
開発を主導したお二人の言葉から、2018年に誕生したアナログプレーヤーが現在のテクニクス開発陣にとってどれほど重要な意味を持つ製品なのか、そしてSU-R1000が何を目標に開発されたアンプなのかがよく分かる。アナログプレーヤーがデジタル技術が駆使されたアンプの音の指標になっているというのは、実に興味深いエピソードだ。
オリジナルのデジタル技術が満載
SU-R1000には数々の技術的特長があるが、その多くがテクニクスらしい“進取の気風”から生み出されたものだ。
「我々が蓄積してきた技術リソースを投入し、フルデジタルアンプのさらなる高音質を目指して開発しました」(井谷氏)
「アンプの革命を起こそうという意気込みで、インテリジェント・フォノイコライザーなど“デジタルだからこそできること”に積極的に挑戦しました」(水俣氏)
両氏がこう力説するように、デジタル領域で歪成分だけを抽出しキャンセルする新フィードバック回路「ADCT」を搭載したこと、高級オーディオ機器ではほとんど例のない新型の「GaN(窒化ガリウム)FET」を高速スイッチング用素子として新採用したことも、“進取の気風”の顕れと言えるだろう。
新しい音楽体験の提案
最後に、3人のキーマンからの読者へのメッセージをお伝えし、本稿のシメとしたい。
「テクニクスならではの新技術を投入し、時間をかけて開発しました。アナログ/デジタルの枠を超えた新しい音楽再生を楽しんでいただけたら嬉しく思います」(田口氏)
「従来のデジタルアンプの次元から脱したいと、設計に取り組みました。音を通して、その思いが伝わってほしいです」(水俣氏)
「お届けしたい音が実現できたと思っています。新生テクニクスが提起する新たな音の世界を多くの方に感じていただきたい」(井谷氏)
プリメインアンプ
テクニクス SU-R1000 ¥830,000・税別
2021年2月中旬発売
SU-R1000のおもな特長
① 新開発ADCT搭載フルデジタルアンプ
② GaN-FET採用高速スイッチング電源+超低ノイズレギュレーター
③ 独自のデジタル信号処理によるIntelligent PHONO EQ
「Stereo Sound ONLINE」YouTube公式チャンネルに、井谷氏と水俣氏がSU-R1000の特長解説とIntelligent PHONO EQの実演解説をしている動画がアップロードされていますので、ぜひご覧ください。