西条みつとしが主宰する劇団「TAIYO MAGIC FILM」の旗揚げ作「HERO」(2012年)が、昨年の再演を経て、その再演と同じキャストに松尾諭と斎藤工が加わった劇場版が製作され、6月19日より公開されることになった。脚本・監督はその西条氏が務め、2年間限定で始まった広樹と浅美の恋を、映画らしいスケールと映像で描いている。ここでは、昨年の舞台版に続いて浅美を演じた北原里英にインタビューした。

――出演おめでとうございます。演じられた浅美は、舞台版と映画版で変わった点はありますか?

 特に大きく変えてはいませんが、舞台の時は約一ヵ月間の稽古を経ての本番だったので、(役が)結構ガチガチに決まっていたんです。それは、舞台をする上では正解だったと思いますが、いざ一ヵ月空いて映画の撮影が始まった時、そのガチガチに固まった浅美じゃいけないって気づいて、ほぐしていく作業は行ないました。

――具体的には?

 セリフの言い方が、固まりすぎていたんです。つまり、相手の芝居に対しての返しが決まっていて、同じ音しか出てこないんですよ。冒頭部分のやり取りは、(舞台で)聞き覚えのある言い回しになってしまったなと感じて、もっと柔軟にやればよかったという反省はありました。

 逆にラストは、舞台と同じ熱量でいったら過剰だなと感じたので、西条監督とも話し合って、映画的なシーンにできたと思います。広樹役の廣瀬さんとは、舞台からの仲でしたから、恋人という空気感が出来上がっている中での撮影は、やりやすかったです。

――演技面では舞台に続いて、目の動きによる繊細な気持ちの表現が見事でした。

 ありがとうございます。実は、舞台の稽古中に、「里英ちゃんの芝居は映像向けだね」って言われたことがあって。嬉しかった反面、じゃあ舞台ではどうしたらいいんだろうっていうことを、課題として考えるきっかけにもなった一言でした。

 その後映画が完成して、そこでもまた「里英ちゃんは映像向きだね」って言ってもらえたんです。おそらく目の動きのことを指していると思うので、そこは今後の自分の強みにしていけるなと感じたし、背中を押してもらえたようで、嬉しかったです。

――課題というのは?

 目がはっきりしていて丸いこともあって(笑)、目線ひとつに意味が生まれてしまうんですよ。舞台を観に来てくれた知り合いにも言われたことで、「里英ちゃんが目を動かすと、そっちを見ちゃう」って。それは強みでもありますけど、余計な視線誘導をしてしまうことにもなりえますから、そこは気を付けないといけないなって、強く感じました。そうした細かい仕草にも気を配るようになったのは、舞台「HERO~2019夏~」に出演してからですね。

――あの目で“やだ”って言われたら、“はい”って前言撤回しそうです(笑)。

 あはは、廣瀬さんにも同じこと言われました。

――本作では舞台に続いて、数々の伏線があります。

 点と点がつながって線になって、伏線が回収されるところは、西条さんの作品の大きな魅力ですよね。私も大好きなんです。一度ですべてを理解するのは難しいと思うので、ぜひ3回は観てください(笑)。

――ところで、広樹の妹を演じた前島亜美さんの読む週刊誌の名前がまた、遊んでいました。

 気づきましたか! ありがとうございます。誰も気づかないかもしれないものなので(笑)。

画像2: 昨年上演して人気を博した舞台「HERO」が、同じキャストで映画になって6月19日より公開へ! 「西条さん作らしく、張り巡らされた伏線が見事に回収されるさまを見てほしい」(北原)

――タイトルにもなっているHEROの登場シーンも、映画版は豪華になっています。

 そうなんです。そこがまた、舞台版と違って面白いんじゃないかなって思います。

――映画版では、広樹と浅美の幸せなデートシーンも堪能できました。

 回想シーンで、二人が幸せだったころを演じることができて、ちゃんと好きで付き合っていたんだなって感じられて、嬉しかったです。ただ、目を瞑ってしまうという広樹とのやりとりについてはもう、反省しかありません(涙)。

――北原さんの思うHEROとは?

 やはりヒーローって、(自分が)助けてほしい時に来てくれるものだと思うんです。もちろん、人によっては、いかにも困っている風に見えることもありますけど、たいていはあまり表には出しませんよね。だから私は、そういう、フとした時にヒーローになりたくて――自分ではぽっと出ヒーローって言っていますけど――、周りの人をよく見て、気付いたら優しく接するように心掛けているんです。助けるというより、その人が笑顔になってくれたらいいなって思います。AKB48グループにいた時にキャプテンをしていた経験が役に立っていますね。

――前回、他作で取材させていただいた時、「受けの芝居はたいへんだ」と仰っていました。今回は、受けも出しも両方ありました。

 本作でも、受けることは多かったなというのは、自分の中に残っています。お芝居って、相手とのやり取りの中で作り出していくものですけど、本作の撮影を終えてみて、やはり受けの芝居は難しいなって、より感じました。(自分が演じた)浅美についても、自分に近いキャラではないこともあって、(本作の芝居は)舞台に続いて静かな挑戦でもありました。

――今後、やってみたいことは?

 やっぱりコメディですね。本作には、舞台版も映画版も、コメディ要素はふんだんに盛り込まれていますけど、自分のパートにはあまりなかったので、稽古中はずっと羨ましいなって思っていたんです。ただ、その一方で、難しさも感じていて、やりたいとは思いつつも、怖さもあります。

――たとえば本作で、気になった、あるいはやってみたいなと思った役は?

 小築舞衣さんの演じた秘書・小松崎が魅力的ですっごく気になりました。けど、舞衣さんの演技が面白すぎて! 羨ましいなと思う反面、これが自分にできるんだろうかって、考えさせられましたね。

 今回共演させていただいた小築舞衣さんと中村涼子さんは、西条さんの作品にも多数出演されているので、そんなお話していたら、じゃあそのうち女性だけのコメディをやりたいね、っていう案も出てきたので、いつかそれが実現できたらいいなって思います。

映画「HERO~2020~」

6月19日(金)より シネ・リーブル池袋ほか 全国順次公開
<キャスト>
廣瀬智紀 北原里英
小松準弥 前島亜美 小早川俊輔
小築舞衣 中村涼子 米千晴 小槙まこ 加藤玲大 後藤拓斗 双松桃子
飛鳥凛 伊藤裕一 根本正勝 今立進
松尾諭 斎藤工(友情出演)

<スタッフ>
原作:TAIYO MAGIC FILM 第一回公演「HERO」
エグゼクティブプロデューサー:石田誠 中西研二 プロデューサー:村田泰介
脚本・脚本:西条みつとし
配給:ベストブレーン 企画:MMJ 製作:「HERO」~2020~製作委員会

スタイリスト:丸山恵理子(オサレカンパニー)
ヘアメイク:MARVEE、オサレカンパニー

公式HP  https://www.mmj-pro.co.jp/hero2020/
北原里英 https://twitter.com/Rie_Kitahara3

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