ハイグレードな電源ユニットを製作するボルトアンペアが、DC12Vの出力を備えたGPC-DC12をリリースした。ボルトアンペアはこれまでプロマーケットを中心にAC電源を浄化する100V用の電源システムを送り出してきた。私も愛用する「GCP-TQ」はその役割を充分に果たし、我が視聴室のソース機器にクリーンなエネルギーを与えている。さらにGCP-TQは100Vだけでなく、120VのAC出力も取り出せるため、私が常用する海外製のソース機器とヘッドアンプになくてはならない存在だ。
そのボルトアンペアが次に送り出したのが、USB DACやオーディオインターフェイスにも利用できるDC電源システムである。
近年こうした機材はノイズの影響から逃れるため本体内に電源回路を設けず、外部からACアダプターを介して電源を供給するケースが多い。またこうしたアダプターは、ワールドワイドでの使用を考慮しているため100Vから220Vまで対応するスイッチング電源仕様になっている。コンパクトで便利だが、こうしたアダプターの中には怪しいものもあるのは事実。もちろんメーカーは機器の動作を保証しているが、音質を考慮すると、オーディオシーンでプラスになることはない。
私はUSB DACとして、エクササウンドの「e32」を使っている。従来機の「e22」以来だからかなりの付き合いになるが、いずれもACアダプターは用いず、12VのDC出力を持つアナログ電源を別に用意して使ってきた。
ボルトアンペアの「GPC-DC12」は、こうしたオーディオ機器の外部電源としても活躍するが、プロの現場での使用を念頭に置いて彼らはこの製品を開発したという。近年レコーディングの現場では、ハイレゾによる録音が標準化されている。こうした機材の小型化に伴ない、この分野でもスイッチング電源のACアダプターを用いる例が多いのだ。品質の悪いACアダプターを使うと、本体機器がノイズの影響を受けたり、周辺機器にもその害を及ぼすことがある。
GPC-DC12はこうした電源事情を鑑みボルトアンペアが開発した電源システムである。中核となる電源部には低ノイズで効率の高いニプロン社製のユニットを採用することで、ノイズレベルはVCCI(雑音端子電圧・輻射)クラスBという基準を達成したクリアーな直流電源を供給する。ここがまさに汎用の電源アダプターと大きく異なる部分だ。ニプロン社製のユニットは大手のサーバー会社やNTTデータなどに採用された実績を誇る優れものなのである。
S/Nが改善されるだけでなく音の芯が太くなる
2017年の8月にジャズヴォーカルのレコーディングを行なったのだが、その際アナログ信号からDSDの変換に使ったのが、RMEの「ADI-2 Pro」というオーディオインターフェイス。この時も「GPC-DC12」を組み合わせた。そのサウンドは高S/Nでデリカシーに富み、抜群の鮮度感を後押しするに充分な能力を発揮していた。
また、我が視聴室で愛用するエクササウンドのe32にこの電源を供すると、同様にS/N感が高まったことは言うまでもない。それ以上に感心させられたのは、音の芯が太くなったことだ。これまでにも電源には配慮してきたつもりなので、正直なところそれほど期待はしていなかったが、やはり供給元が変わると音質も変化することを改めて実感した。GPC-DC12を用いると、微細なニュアンスの表現力まで高まるように感じる。
このモデルには12VのDC出力が3系統設けられ、それぞれEIAJ規格の4、5.5-2.5φ、5.5-2.1φの電源プラグに対応する。さらに各端子に適合したケーブルが付属しているほか、別売りのオプションでハイグレードなケーブルが用意されていることもユーザーには嬉しい。
PCオーディオやネットワークオーディオのユーザーには、USB DACのほかにNASやルーターへの電源として使っても効果があると思う。電源を吟味してシステムを構築すると、歪みとノイズ感が低減する。全体にどことなくヌケの悪さを感じたり、音に甘さが認められるようなら、こうした電源機器の投入は大いに役立つはずである。
●リファレンス機器
D/Aコンバーター:エクササウンド e32
スピーカーシステム:ATC SCM-100sl
プリアンプ:マークレビンソン No.32L
パワーアンプ:パス XA-100
DA/ADコンバーター:RME ADI-2 Pro、他
12V POWER SUPPLY
Volt Ampere
GPC-DC12
¥52,000+税
●定格容量:120W●出力電圧:DC12V 0.5A、DC12V 2A、DC12V 1A
●寸法/質量:W363×H45×D92mm/5kg
【問合せ先】
ボルトアンペア
電話番号:03-3863-8599
この記事はHiVi 2018年1月号に掲載されています。
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