ステレオサウンドストアで販売中の真空管ヘッドフォンアンプ、ウエスギTAP-101HP。真空管OTL(出力トランスレス)方式ならではの瑞々しく伸びのある音をヘッドフォンで聴ける注目機だ。クラフトの楽しみもあるキット仕様と完成品仕様を展開するTAP-101HPの開発コンセプトを、上杉研究所の藤原伸夫氏が管球王国「マイ・ハンディクラフト」特別編として綴る。イントロダクションのPart1に続けて、藤原氏執筆のPart2開発記本編、Part3キット製作ガイドの、3部構成でお届けする。
藤原伸夫
低電圧大電流動作が可能な近代管6DJ8による真空管OTLアンプ。躍動的で瑞々しいヘッドフォンサウンドを聴く
管球式OTLアンプにとってハードルが低いヘッドフォン駆動
2024年に当社が商品化したフルバランス・サークロトロン増幅回路による真空管式OTLアンプU・BROS-333OTLは、現在主流の低インピーダンス・スピーカーの駆動を達成するために、大規模な構成を余儀なくされました。真空管式OTLアンプの出力は最大出力電流で制限され、負荷抵抗の値に比例してその出力は増加します。
例えば、32Ωの負荷インピーダンス(スピーカーのボイスコイルインピーダンス)における出力は、8Ωのそれの4倍に増大します。多くのヘッドフォンはダイナミックスピーカーを発音体としており、そのボイスコイルインピーダンスは32Ω~600Ωに分布しております。また、耳の至近距離に配される聴取形態により100mW程度の出力で十分な音量感が得られることから、管球式OTLアンプにとってハードルの低い動作環境といえましょう(第1図)。このことが、現在、活況を呈するヘッドフォンによるリスニングに応える管球式アンプを開発するトリガーとなりました。
第1図 ヘッドフォンのインピーダンス(公称300Ω)と周波数特性
ウエスギU・BROS-333OTLは出力管にロシア製軍用管6C33C-Bを採用する真空管OTL(出力トランスレス)パワーアンプ。出力段はフルバランス構成サークロトロン回路、6C33C-Bシングル・プッシュプル動作で、連続最大出力40Wを実現する。写真はパールホワイトシャーシ×ブラックトランスケースの『管球王国』特別仕様。