③ アルテック1568A

1957年に登場したパワーアンプ1568Aは、6CG7を2本使用し、出力段はEL34をpp動作として出力40Wを得ている。レコーディングスタジオや映画館、ホール、教会、空港施設など、様々なシーンで活躍していた。また、本機の出力段にEL34をパラレルpp動作として出力80Wを得ている1569Aも活躍していた。1568Aの出力管EL34としては、ヨーロッパのテレフンケンやシーメンスなどより、GEやシルヴァニアなど米国製の方がマッチする。試聴機ではシルヴァニア製を使用している。(土井)
アルテックA7かのような鳴りっぷり。20㎝口径とは思えないベースのアルコの深み
土井 アルテック1568Aは、このヴィンテージ企画でしばしば登場するアンプです。ダイナコMkIVと同じくEL34プッシュプルで、出力は40W。WE755Aを鳴らしたことは過去にありますが、アルテックH825に入れた状態で鳴らすのは初めてです。
新 20㎝口径のWE755Aというスピーカーが、ここまで聴いた3機種のアンプのキャラクターを見事に描き分けることにまず驚いています。たびたび本誌に登場するアルテック1568Aの、一番よい鳴り方のひとつではないかと思いながら聴いていました。改めてWE755Aは格の違うスピーカーだと感心した次第です。
杉井 アルテック1568Aは聴き慣れていますが、前の2機種のアンプからの流れで聴くとかえって新鮮に思えるから不思議ですね。アルテックH825は「The Voice of the Theatre」エンクロージュアであって、WE755Aを入れてもどこかシアタートーンが得られるんですね。それを1568Aで鳴らすことで、2ウェイ構成のA7かのようなスケール感が得られました。
土井 アルテック1568Aは、以前はテスラ製EL34を出力管に使って試聴していました。その頃の1568Aは、端的にいえばテスラの音でもあったわけです。しかし近年の試聴では、シルヴァニア製EL34を組み合わせています。今日もこの組合せで聴きましたが、やはりいいですね。格が違うという感じです。これは20㎝口径のスケールではない。WE755Aを大切にしなければ、と改めて思わせてくれる音でした。
新 「御諏訪太鼓」の太鼓のスケール感が、だんだん本物に近くなってきた印象です。もちろん太鼓だけでなく、人の声や金属の鳴り物、笛などもリアルに感じられました。「モルゲン」は、とにかく美しい音。特にベースのアルコが20㎝口径のスピーカーとは思えない深みで再生されていました。
「ちあきなおみ」は、まずギターのイントロが胸に沁みました。ちあきなおみの歌も豊かでしたね。そして間奏のストリングス。この音源を試聴で使い始めた10年以上前、当時は録音されたストリングスの音にどうしても馴染めなかったのですが、そんな時代が不思議に思えるほど聴き惚れました。私がこの音色に慣れたこともあると思います。しかし、それ以上に、説得力のある再生を聴かせてくれるシステムの登場が多くなったのだと思います。それは土井さんの丁寧なチューニングの賜物でしょう。
杉井 「御諏訪太鼓」はまさに「The Voice of the Theatre」のA7を思わせる鳴りっぷりでした。ダイナコMkIVが屋外での演奏を再生しているような鳴り方だったのに対して、こちらはホールの独特な残響感を含むような鳴り方。その余韻が音に風格や厚みを加えていた音ではないかと思います。太鼓のサイズ感までよく表現されていました。
「モルゲン」は新さんがおっしゃるように美しさが感じられる再生で、MkIVに比べると厚みと温かみが加わっていました。「ちあきなおみ」もよかったです。バタ臭くなりすぎず、演歌の情感がほどよく表れていましたし、ストリングスの再生もこれまで聴いてきた中でベストに近い印象でした。音楽の本質をダイレクトに伝えてくれるような再生だったと思います。
土井 「御諏訪太鼓」は歪み感が少なく、質の高い音でした。一聴するとダイナコMkIVよりも軽量級に思えるのですが、これを聴くことでむしろMkIVは中高域に少しクセがあったのだなと気づきました。「モルゲン」はゆったり、ほのぼの、大袈裟にならない再生。アルコの味わいもさらに増してびっくりしました。しっかり強弱があって、それでいて甘いアルコです。「ちあきなおみ」は歌をとても丁寧に聴かせてくれます。「故郷を想う心」ではなく「東京を想う心」がよく伝わってきた。ストリングスも最上級のテイチクサウンド。新さんがおっしゃることがよく分かる再生です。
④ アルテックA326A

6L6らしさがよい方向に出た音を持つ。スカッとしてキレがよく、音色が美しい
土井 続くアルテックA326Aは6L6のプッシュプルで、もとはマイクアンプとしての用途が多かったものです。マイク3本のミックスができる3ch入力のアンプですが、今回は1chのみを使用します。トーンコントロールのバスとトレブルは、最大値でフラットになる珍しい設計です。
新 アルテックらしい力強さを持つと同時に、ほんの少し帯域を抑えて聴きやすさに配慮している印象があります。最初に聴いたラックスA3500ほど帯域を抑えているわけではなく、ほんのわずかなバランス調整なのですが、それによって耳障りな部分が後退し、各曲の美しさが引き立っていたと思います。心地いい鳴り方のアンプです。
杉井 シルキータッチで、独特な滑らかさのあるアンプです。先に聴いた1568Aはアルテックらしい風格のあるマッシブな音でしたが、こちらはよりバランス重視の音。マッシブさは希薄ですが、高域は軽やかに、低域は重厚に聴かせます。とてもいいアンプだと思いました。
土井 先と同じアルテックですが、EL34から6L6に変わったということで出力管の違いが音に表れていました。6L6らしさがよい方向に出た音作りだと思います。音に厚みがあり、「美味しい音楽を聴かせてもらったな」という印象です。
新 「御諏訪太鼓」は耳あたりのいい、とても聴きやすい音でした。この音源は屋外での録音だと思われますが、録音そのものの少々ざらついた部分がうまく抑えられている。こまやかに帯域が制御されたアンプではないでしょうか。「モルゲン」は本当に気持ちよく、美しい音が追求されています。うっとりとするような再生でした。
「ちあきなおみ」についても同様で、歌やギター、ストリングスが薄化粧をしたかのような表情を聴かせます。「化粧」というより「磨き上げ」というべきかもしれません。このアンプを組み合わせることで、音が美しく、楽しい方向に変化しました。ここまでになかった鳴り方で、嬉しく思いながら聴きました。
杉井 「御諏訪太鼓」は、迫力やスケール感こそ控えめですが、太鼓の響きそのものを楽しめる音色のよさがあります。美しいだけでなく、スカッとしてキレがいいですね。大太鼓と小太鼓の描き分けも巧みで、見通しのいい再生です。「モルゲン」は、デリケートで繊細な演奏がよく再現されていて、ジャズというよりクラシックの室内楽を聴いているような気分にさせてくれました。音色そのものをじっくり楽しめるアンプですね。
「ちあきなおみ」は純粋に楽曲のよさを楽しむ鳴り方で、個々の音について考える必要がないほどよくまとまっていました。総じて高域にうっすらとヴェールがかかっているような印象があるのですが、それが独特の味わいを醸し出していたと思います。
土井 「御諏訪太鼓」は、1568Aと比べると太鼓に厚みがありました。加えて、杉井さんがおっしゃるように高域に甘い味わいがあるんです。それが他のアンプとは違う個性になっている。「モルゲン」は大型スピーカーを聴いているような量感があり、アルコの音色も素晴らしい。「ちあきなおみ」でもその持ち味は同様です。ギターの音色もたいへん美しい。先の1568AとこのA326A、どちらもそれぞれの持ち味があり、印象は五分五分。どちらも魅力的な音でした。
