ロンドン生まれの人気コメディ『Run For Your Wife ラン・フォー・ユア・ワイフ』(原作:レイ・クーニー、翻訳:小田島雄志 / 小田島恒志、演出:菅原道則)が、3月11日から15日にかけて、東京日本橋・三越劇場で再演されることが決定した。
物語の主人公は、ジョン・スミスという平凡なタクシー運転手。対照的なキャラクターを持つふたりの女性と所帯を持ち(つまり二重結婚)、毎日ハンドルを握りながら二軒の家を正確なスケジュールで行き来していたところ、ある事件に巻き込まれたことでそのスケジュールが狂い、修羅場が始まってしまう、という展開。重婚を隠すため、ウソにウソを重ねていくジョンを待ち受けていた事態とは……?
そのジョン・スミスを演じるのは、2019年7月公演からの続投となる山本一慶。そして二人の妻には新たに、舞羽美海(メアリー・スミス役)、十碧れいや(バーバラ・スミス役)が抜擢された。宝塚歌劇団の同期であるふたりが舞台上でどう火花を散らすのか、さっそく話をうかがった。
――『ラン・フォー・ユア・ワイフ』に出演するにあたっての意気込みをきかせてください。
舞羽美海 前回(19年7月)の公演を見に行かせていただいて、本当に笑い続けました。台本もほんとにしっかりしていて、普通ならちょっとありえない人間関係のことなのに、それを笑いで全部回収していくでしょう。見るのはすごく楽しかったんです……が、これを自分で、いざやるとなるとちょっと大変(笑)。台本を見て、文字数の多さとト書きの量に圧倒されて、果たして私はあのテンポ感でできるだろうかと思いながら、でも楽しみにしながら稽古の日を待っている感じですね。
十碧れいや 私は前回の公演を見ていないんですが、あらすじを読んで、すごく面白いコメディだなと思いました。自分の役は、大人っぽいキャリアウーマンのような感じ。女性を演じるのはまだ3回目なんですけど、新たにこういう役に挑戦させていただけるのは本当に嬉しいです。美海ちゃんと一緒なのもすごく楽しみです。宝塚の初舞台以来、14年ぶりくらいの共演なので。
――舞羽さんは雪組、十碧さんは星組でした。
舞羽 組が違うと、やっぱり一緒にお仕事をすることがないんですよ。
十碧 だから共演するのは、なんか不思議な感じがする。児玉明子先生の作品で安蘭けいさんのお披露目になった『シークレット・ハンター』以来ですね。私たちは、お魚さんの役。蛍光オレンジの衣装を着て、電気が暗くなると私たちが光るという。
――そして今回、舞羽さんはメアリー・スミスに扮します。基本的には良妻賢母のキャラクターで、ジョンとは先に結婚しています。
舞羽 前回メアリー役だった花奈澪さんが役柄にぴったりで、プンプン怒っているところとかも可愛くて、ぴったりだなと思っていたんですが、その役に私が扮するのは意外でした。メアリーは誠実に生きている女性ですよね、たぶん普通に旦那様を愛して……。
――だけど物語が進むにつれて、ジョンに対して疑心暗鬼になってきて、だんだんダークな部分も出てくる。
舞羽 ふだん絶対に言えないこととかも(セリフで)言ったりするかもしれませんね。女性として思い切り楽しみたいです。
――十碧さんはバーバラ・スミス役。セクシーで情熱的なキャラクターということです。
十碧 セクシーな部分を身につけたいなと思っているところなので、バーバラを演じながらそれができたらなと思います。バーバラとの共通点は……なかなか気づかないことでしょうか(笑)。
――冒頭、二分割された舞台上でバーバラとメアリーが同時に演技するシーンもあります。だけどバーバラもメアリーもそれぞれの家から電話をかけている設定なので、実際のところはお互いが見えていない。
舞羽 冒頭の二人でこの作品のテンポが決まると思うので、大切に演じたいですね。電話のシーンから、お客さんが違和感なく物語に入っていけるように……。宝塚がお好きな人だったら、この二人の同期ならではの空気感、信頼があるやりとりにも喜んでいただけると思います。
十碧 コメディはテンポが肝心だと思っているので、そこを大事にしていきたいです。そして、バーバラとメアリーのキャラクターの違いを際立たせるように演じていきたい。初顔合わせの役者さんからも新鮮に吸収しつつ、自分も学びつつ、一緒に作っていけたらすごくいいですね。
舞羽 宝塚だと、初めての顔合わせの瞬間に台本をもらって、みんなで一からスタートするんです。今回は事前に台本をいただいている分、皆さんがどう作って来るかが楽しみというか、それぞれの個性がぶつかるその瞬間の化学反応にわくわくしています。
――おふたりとも数多くの舞台に出演なさっていますが、日本のコメディと、今回の『ラン・フォー・ユア・ワイフ』のようなイギリスのコメディの大きな違いは?
舞羽 女性が強い気がする。
十碧 あぁ。
舞羽 思ったことをそのままストレートに表現したり、感情がやっぱり日本人より激しいかも。
十碧 日本語の舞台だと、女性はまだまだこう奥ゆかしいというか控え目なイメージがやっぱりある気がします。察して系というか。でも『ラン・フォー・ユア・ワイフ』はカラッと気持ちを表現して。
舞羽 今回の登場人物はガンガン行くんですよ。
――スタンリー・ガードナー役(メアリー宅の上階の住人)のルー大柴さんが突然ギャグを挟む可能性もありますが、基本的には登場人物が誰一人として笑わせようとしないのに、見るほうはクスッと笑えてくる。『ラン・フォー・ユア・ワイフ』は、お互いの超まじめな勘違いが面白さへと昇華している作品です。
舞羽 舞台上のキャラクターがただただ真剣に生きている姿を観ていただけたら嬉しいです。一瞬一瞬の動きやセリフを逃さず、ただただこのコメディの勢いにお客様ものっかって、いっぱい笑って楽しんでほしいですね。
十碧 昨年の7月に上演されて好評だったこちらの作品に、新たに出演できて光栄です。よりパワーアップできるようにがんばりたいと思いますので、どうぞ見にいらしてください。
舞台『Run For Your Wife ラン・フォー・ユア・ワイフ』
3月11日より15日まで、三越劇場にて上演
テキスト:原田和典
写真:山副圭吾