日本を代表する人気と実力を兼ね備えたカリスマラッパーANARCHYが初監督で挑む完全オリジナル作品「WALKING MAN」。どん底の境遇にあえぎながらも、家族を想う気持ちの強さからやがてラップと出会い、自らの自分の人生を歩きだす男の生きざまを描いた青春作だ。監督自身の大成の原動力ともなったラップを物語に巧みに取り入れた、注目作。ここでは、主人公アトム（野村周平）の妹・イマドキの女子高校生ウランを演じた優希美青にインタビューした。
――出演おめでとうございます。決まった時の感想は？
ありがとうございます。まずウランっていう役が難しいなって思いました。（家に）お金がないことで、いろいろなことを我慢しなければいけないし、ずっとそういう生活をしてきたんだろうなって思うと、心が痛かったです。せっかく華の女子高校生なんですから、ちゃんと青春してほしいなって思いました（笑）。
――とはいえ、登場シーンからわがまま娘でした。
あははは、そうでしたね。でも、お母さんの前では、苦労や我慢している姿は見せないようにしているので、わざと明るく振る舞ったりダンスを教えたりと、楽しそうにしているんです。私たちの世代だったら、あるあるじゃないかなと思って。
――反面、兄のアトムに対しては厳しいですね。
お母さんには本心を隠していることの反動なのかなって思いますね。加えて、お母さんが入院してしまったり、その容体や今後の生活への不安がすごく大きくなっていったことで、エスカレートしてしまいます。ただでさえたいへんなのに、もっとたいへんになってしまって、本当にどうしていいのかが分からなくなって……と。
――その焦りが、ウランをとある行動に走らせてしまった。
きっと彼女なりに、その状況を脱するために何をしたらいいのかを考えて、その結果として、いけないバイトに手を出してしまったと思うんです。ちょっとネタバレしてしまいますけど、その後お兄ちゃんの愛情をしっかりと受け止めることができて、更生につながったのかなと感じています。そうした成長も見てほしいですし、いま、家族のことをウザいとか思っている人は、それは愛情から出ていることなんだよと、この映画を観て気づいてほしいです。
――とは言え、迎えに（助けに）来たお兄ちゃんはボコボコにされます。
その時はまだ、お兄ちゃんの愛情に気付けていないからなんです。「死ねばいいのに」ってひどい言葉をぶつけますが、実は、当初の台本ではボコボコにされるお兄ちゃんを見ている設定だったんです。それを見たら、改心するかもしれないなと感じましたけど、無くなってしまったので、じゃあどこで更生するんだろうとか、どこでお兄ちゃんの愛情に触れて心を動かされるんだろうとか、役づくりの段階ではいろいろと考えてしまって……。
――そういう流れがあって、あの橋の上のシーンにつながっていくんですね。
はいっ！ 監督はそのシーンがこの映画の一番の見どころだと仰っていて、すごく力を入れていたのを覚えています。もう、リハの時からその期待に応えなくちゃっていうプレッシャーが大きくて！ すごく緊張しました。
――芝居はすぐにできましたか？
実は、プレッシャーが二重にあったんですよ！ ウランが川に投げる携帯の予備が1台（合計2台）しかなかったので、本番（撮影）は2回しかできないっていう新たなプレッシャーも加わって、とってもたいへんでした。けど、それに負けちゃいけない、監督の期待に応えなくちゃと思って、無我夢中で取り組みました。
――事前の準備は？
とにかく、（撮影）直前まで一人で考えて、自分を追い込んでいました。たぶん、話しかけないでオーラは全開だったと思います（笑）。
――すると、役づくりの時は結構考え込むタイプ？
いえ、そうでもないですね。通常は台本を読んで、ポンって（役に）入れるんですけど、今回は未知のことが多すぎて、いつもより考える時間も内容も多かったです。とにかく、上っ面にならないように、きっちりとリアルな役を届けたかったので、いろいろ試行錯誤しました。
――その意味では、お兄さんに凄むところの気合（芝居）は素晴らしかったです。
監督も「そんな声出るんや！」ってびっくりしていましたけど（笑）、私の中ではすごく自然にできました。まだ兄の愛に気付いていない時期でしたから、周平さんの熱量を受け取って、そのまま返すこと（表現）ができたのかなって思います。
――反抗期真っ盛りな雰囲気が、よく出ていました。ところで優希さんには反抗期はありましたか？
あははは、ありがとうございます。よく無さそうって言われるんですけど、もちろんありましたよ。ただ、この仕事を始めて一人上京してきた時に、両親のありがたみや愛を感じて、（反抗期を）乗り越えました（笑）。
――ラストシーンでは、周平さん渾身のラップが披露されます。
そこで初めて、今までお兄ちゃんが家族のことをどう思っていたのかを、歌詞を通じて知ることができましたし、だからこそ、あの時橋の上で震えているウランを強く抱きしめてくれたんだなって、ようやくすべてがつながった感じで、それまでのお兄ちゃんに対する態度にすごく後悔したと思います。現場ではもう、周平さんがアトムにしか見えなかったですし、アトムの心の叫びがストレートに身体に入ってきて、そこでは役づくりを離れて、自然とウランになれたというか、ウランが溢れていました。
――優希さんは、ラップはいかがですか？
現場（撮影）では歌う機会がなかったので、打ち上げで披露しようかなと思ったんですけど（笑）、出演されていた有名なラッパーの方々が勢揃いしていたので、気が引けて止めちゃいました。
――本作は、ANARCHYさんにとって初監督作となりました。現場での印象は？
お会いする前は、ちょっと怖そうだなっていう不安もありましたけど、実際にお会いしたらとても優しい方でしたし、みなさん（キャスト、スタッフ）の力を貸してほしいっていう感じで、本当に謙虚な姿勢で臨まれていました。でも、撮影が始まると、ここはこうしたいんですと、しっかりご自身の要望や希望を口にされていて、作品に対する愛情が伝わってきて、本当に素敵な方だなと思いました。
――さて、いよいよ公開が迫ってきました。
すごくかっこいい仕上がりになりました。加えて、エンドロールには遊び心も溢れていて、ANARCHYさんの感性だからこそできた映画じゃないかなって感じています。そういう作品に携われたことが、本当にうれしいです。
――ちなみに、ラストシーンで描かれるアトムと●●さんの関係は一体？
さぁどうなんでしょう（笑）？ 監督に正解を教えていただきましたけど、私の中ではまだしっくり来ていません。ぜひ、劇場で確認してみてください。
映画「WALKING MAN」
10月11日（金）より全国ロードショー
＜キャスト＞
野村周平 優希美青 柏原収史 伊藤ゆみ 冨樫 真 星田英利 渡辺真起子 石橋蓮司
＜スタッフ＞
監督：ANARCHY 脚本：梶原阿貴 企画・プロデュース：髙橋ツトム
主題歌：ANARCHY "WALKING MAN"（1% | ONEPERCENT）
制作プロダクション：ブロードマークス
配給：エイベックス・ピクチャーズ
製作：映画「WALKING MAN」製作委員会
（C）2019 映画「WALKING MAN」製作委員会
