今年1月に所属していたアイドルグループを卒業し、本格的に女優活動を開始した浅川梨奈が主演したホラー作「黒い乙女Q」が5月31日に公開される。「今まで誰も見たことがない怖い映画」を創るべく、監督&脚本をWで担当したのは、今年、監督デビュー15周年目を迎える佐藤佐吉。近年はやりのラストでのどんでん返しの展開を盛り込みつつ、ジャパニーズホラーらしく人間の心の奥底に潜む情念をも見事に紡ぎだして見せた快作だ。
浅川が演じるのは、訳あって養護施設で育った少女・芽衣。人との交流を避け、常に一人で過ごしている天涯孤独の女の子だ。「愛情というものを知らないで育った子だと思うんです」。そう感じて役を肉付けしていったという浅川の芝居は、ポスタービジュアルにもなっている写真の通りだ。無表情・無機質であり、ホラー作の主演としても充分な存在感を放っている。
そんな彼女は、和田&三津谷演じる宇田夫妻に養女として引き取られることになる。「観てくださるかたは気づくと思いますが、シーンのひとつひとつに怪しさが隠されていて……。いわゆる伏線というものですが、こんなにも多くそれが張り巡らされている作品は、それほどないんじゃないかと思いますし、人、モノすべてを疑ってかからないといけないという本作は、観る人に一瞬の隙も与えないようになっていると思います」。
物語は、宇田家に到着したところで一つの転換が行なわれる。ラナ(北香那)という同年齢の少女が、先に養女として迎えられていたのだ。「最初は、ラナにも両親にも心を開きませんが、ラナとの交流を通して、徐々に仲も深まっていきます」。そこには、浅川の芝居上での見事な計算が実行されている。「笑顔にも段階を見せようと考えながら演じましたので、初めて見せる笑顔、家族全員が打ち解けている時に見せる笑顔、それぞれの違いにも注目してほしいです」。必見だろう。
しかし、そんな平穏な生活の中にも、芽衣の中では、本人も自覚していない何かが蠢いているのだ。「芽衣には過去に大きなトラウマがあって。その影響か、彼女自身、現実と妄想(夢)の区別がつかなくなっている部分もあって、ところどころにそれが表現されているんです」。彼女が時折見せる、怯えたような表情には何が隠されているのか? 大きな謎をはらんだまま、物語は進んでいく。
途中、彼女が見せる驚愕の表情には、この作品にかける意気込みの強さが伝わってくるような、本気度満点の注目シーンに仕上がっている。「怖がっている人が本気で怖がっているように見えないと、ホラー映画って興ざめしちゃうじゃないですか。絶対に、そうならないようしようと決めて、撮影前から心に恐怖を刻み込んで、大事に演じさせて頂いたので、ぜひチェックしてほしいです」。
そしてラストには、冒頭に記したように大どんでん返しが用意されている。「私も台本を読んで、えええええってびっくりしたというか、裏切られたというか、とにかく驚きましたので、観てくださる皆さんもぜひ、その感覚を味わってほしいなって思います。同時に、いろんな受け取り方ができるのも、この作品のいいところなのかなって感じています。めちゃくちゃやりがいのある作品でした」と語りながら、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
ちなみに、1月にグループを卒業してからのことを聞いてみると、この取材を行なった5月は、本人のこれまでの芸能生活の中で、一番休養できたとか。「5月までは、ありがたいことに本当に忙しかった半面、5月の一ヵ月は、これからの活動へ向けて充分な休養・充電ができました。6月からは舞台の稽古が始まるのでここで養った英気を活かして、女優活動をよりまい進していきたいです」。
映画「黒い乙女Q」
5月31日(金)よりシネマート新宿・心斎橋にて公開
出演:浅川梨奈
和田聰宏 三津谷葉子 松嶋亮太 しゅはまはるみ 安藤なつ(メイプル超合金) 笹野鈴々音 北 香那
脚本・監督:佐藤佐吉 製作総指揮:吉田尚剛 製作:永森裕二
プロデューサー:飯塚達介/向井達矢 ラインプロデューサー:尾関 玄
キャスティング:伊藤尚哉音楽:遠藤浩二 撮影:栗田東治郎 照明:田中安奈
美術:坂本 朗 録音:高島良太 衣裳:杉本京加 ヘアメイク:唐澤知子
音響効果:小山秀雄 編集:難波智佳子 助監督:近藤俊明 制作担当:中村 元
スタントコーディネート:出口正義 特殊メイク:松井祐一 VFX:井上英樹
主題歌:「イショロガニム」作詞・作曲:坂本英三 歌:大沼あさひfeat.坂本和弥(AMG MUSIC)
製作・配給:AMGエンタテインメント
制作プロダクション:ラインバック
(C)2019AMGエンタテインメント