コンデンサーによるローカットのみで、ヴィンテージJBL製15インチフルレンジユニットD130とホーントゥイーター075を組み合わせ、現行/ヴィンテージのコンデンサーの種別と銘柄による音の違いを探る。コンデンサー種別の考察と使い方のガイドも盛り込む実践試聴企画だ。

Part.1 Part.2はコチラから。Part.4は、2月3日の正午に公開予定。・Part.1 Part.2はコチラから。Part.4は、2月3日の正午に公開予定。

比較試聴編

現行8種、ヴィンテージ4種のコンデンサーを聴き比べる。種別と銘柄の違いは音にどのような変化をもたらすのか

現行編

①パークオーディオ DCP-C001
②パークオーディオ DCP-FC003

電解コンはニュアンスの表現に富み、フィルムコンは繊細な表現に長ける。両種とも音楽をまとまりよく聴かせる

パークオーディオ DCP-C001

●静電容量/耐圧:2.2μF/100VDC●構造:バイポーラ型アルミ電解コンデンサー●問合せ先:(株)ドリームクリエーション☎0561(36)0269

パークオーディオ DCP-FC003

●静電容量/耐圧:2.2μF/400VDC●構造:フィルムコンデンサー●誘電体:メタライズドポリプロピレン

杉井 ①のコンデンサーは、内部構造としては電解コンデンサーの同極同士を突き合わせたバイポーラタイプでしょう。半導体アンプでも、クォードの303など、出力に電解コンが入っているものに私は聴感上の好ましさを感じています。60~80年代のアルテックやJBLのネットワークにもバイポーラの電解コンが多用されていましたが。クロスオーバー周波数が低いネットワークの場合は、サイズが小型化できることが大きな理由ですが、ネットワークのメインテナンスをしていますと、電解コンで音作りをしていたのではないかと感じられることが多々あります。

 そういうこともあり、①には独特の音楽的な楽しさが感じられました。「ブルーベック」は音楽にエネルギー感がありながら、比較的コンパクトにまとまっていた感じがします。「パガニーニ」や「アーメリング」も音像がコンパクトにまとまって音の芯が柔らかくなり、気持ちよく音楽を楽しめます。

 ②のフィルムコンは「ブルーベック」から明らかに音が変わって、「オーディオ的な音」という感じです。分析的で細かい音までよく出て、ジャズ的というよりは、繊細さが加わりクラシック的な響きに聴こえました。その点で「アーメリング」と「パガニーニ」は、音楽の濃さ、旨味成分のようなものは①の電解コンの方が上手ですね。

 フルレンジで聴けた音から音色がガラッと変わるということでなく、トゥイーターががむしゃらにせり出して鳴るような感じにはなりませんね。①では075とD130とが実によく溶け合って聴こえました。「ブルーベック」のジョー・モレロのシンバルはかっちりとした雰囲気が出て、感じのいい鳴り方です。

 「パガニーニ」は私がオランダに駐在していた頃に、ロンドンでの録音に立ち会いました。指揮者のスラットキンのフィリップス初録音ということもあり、割合明るい感じの音で録られています。その感じが075からきちんと出ていました。「アーメリング」は、詩が実にクリアーに出ています。しかも、ごく自然に輪郭が描かれてよかったですね。フィリップスのデジタル録音最初期のものですが、まるで録音してすぐにプレイバックした音を聴いているようでした。

岡田 D130は非常に完成度が高いフルレンジで、SP盤や初期のモノーラルLPを聴くにはトゥイーターは不要という印象を持っていました。トゥイーターをそこに足す難しさも昔から言われていたわけですが、①では好ましい印象でした。「JBLらしさ」が薄れるところはあるのかもしれませんが、トータルの音のクォリティが高いですね。「ブルーベック」はサックスの熱気が出て、シンバルは響きよりも叩いた直接音がダイレクトに耳に届くという感じです。「パガニーニ」と「アーメリング」は高音にやや不足感がありますが、レベル調整で解決できる程度だと思います。トゥイーターの追加で、低音の雰囲気まで変わるのが実に面白いですね。

 ②では、「ブルーベック」の低音に締まりがあって、シンバルの響きもよく出てきました。電解コンはインダクタンス成分が除けないという弱点がありますから、それも関連しているかもしれません。「パガニーニ」もヴァイオリンの高音がよく伸び、オーケストラの落ち着きと力感が出ます。「アーメリング」では、ニュアンス表現の点では①の電解コンに魅力があったと思いますが、高音の伸びは②のフィルムコンが上回ります。構造の違いがはっきりと音に表れていたと思います。

 トゥイーター075には独特の存在感というか、「俺が鳴っているよ」というような威張ったところもあると思えるのですが、この鳴り方なら、十分にシステムとして使えると思います。

岡田 実は、電解コンデンサーはバイポーラ型であっても、バイアス電圧の極性が変わるようなところに使うものなんです。直流成分が全くないようなところだと、どうしても弱ってしまいますので。

杉井 ですから、ヴィンテージスピーカーのネットワークに組み込まれているバイポーラ型は、ほとんどが劣化して要交換になってきています。それでも、電解コンには独特の音味がありますから、もっと低いクロスで使う20μF前後のバイポーラ型がパークオーディオから現行品で出ていることは、ヴィンテージのネットワークをメインテナンスする上でとても意味のあることだと思います。

試聴に使用した機器

[プリアンプ]
アルテック1567A
[パワーアンプ]
アルテック1520T
[CDプレーヤー]
スチューダーA730

③シズキ CMPP

空間の再現力が高いAC用進相コン。音に潤いがあり、響きの良さが際立つ

シズキ CMPP

●静電容量/耐圧:2μF/250VAC●構造/用途:AC用フィルムコンデンサー●誘導体:メタライズドポリプロピレン●問合せ先:三栄電波(株)☎03(3253)1525

岡田 AC用のフィルムコンデンサーは、コンデンサー自体が振動しないよう、箔を非常にきつく巻いて、がっちり固めてあるんです。振動による損失が避けられて基本性能の面で優れていますし、インダクタンスが少ない点も特徴です。そういう特徴が、残響の出方に表れたように思います。

杉井 潤いがあって、音楽の緊張感をほぐすような聴こえ方で、これが075を使ったスピーカーの音なのか? という感じです。「ブルーベック」では音楽のエネルギー以上に響きのよさが際立ちましたが、「パガニーニ」ではヴァイオリンに松ヤニが飛ぶようなニュアンスが加わり、音楽の力強さ、逞しに繋がっています。「アーメリング」は、ヴォーカル、ピアノともにホールトーンが十分に効いて、少し遠目から聴くようなニュアンスです。コンデンサー1個で、こんなに音が変わることに驚かされました。しかも、全帯域にわたる変化が感じられます。

 スッキリとして、余計な音がつかないという印象です。トゥイーターとウーファーがそれぞれの領分をきちんと鳴らしていて、それが音楽のスッキリした感じにつながったのかもしれません。「ブルーベック」でのシンバルのスムーズな鳴り方はフルレンジで聴くような感覚です。「パガニーニ」はヴァイオリンの存在がしっかりと際立ちますね。「アーメリング」は、歌とピアノが溶け合いながらもきちんと独立して音楽を奏でて、シューベルトの世界を作り上げる。良い再現でした。

岡田 低域の質と量感も変わったと思います。「ブルーベック」は音楽の太さ、サックスの生々しさ、シンバルを叩いた音と響きのバランスが良くなっています。ただ、音がすっきりしているためか、JBLらしさは減りましたね。075をJBLのネットワークを使って鳴らすとヴァイオリンが粗く聴こえるような感じがあって苦手だったんですが、この聴き方での「パガニーニ」では、全く気にならず好印象です。「アーメリング」は、ピアノと声のバランスも良いのですが、特に空間が感じられるところが印象的でした。