大出力、高効率化を求めた真空管式パワーアンプの技術革新
LPレコードの45/45方式によるステレオ再生技術が確立され、Hi-Fi再生に対する関心が社会的広がりを見せていた1950年代当時、主流であった真空管式パワーアンプの大出力、高効率を求めて、プッシュプル出力回路において数々の技術革新がなされました。それらは現在まで主流のDEPP(ダブルエンデッドプッシュプル)とCSPP(クロスシャントプッシュプル)に大別され、さらにCSPPはSEPP(シングルエンデッドプッシュプル)、マッキントッシュ型、サークロトロン型に分類され商品化されました。
現在、多くの真空管式プッシュプルアンプはDEPPタイプですが、CSPPタイプのマッキントッシュ型はハイパワー真空管アンプの一方の雄となり、現在に至っています。これらの方式の特徴について第2表に示します。DEPPは出力管のカソードに信号が帰還されないのでグリッド励振の電圧振幅が最小で、簡便にプッシュプルアンプのメリット(大出力)が得られることから、現在に至り主流となっています。
第2表 プッシュプル回路の種類と特徴
真空管式に限らずオーディオ用ハイパワーアンプでは出力段の動作階級がAB級にならざるを得ず、真空管プッシュプル動作では上下の出力管の動作が入れ替わるクロスオーバー領域でプレート電流の時間変化率が大きくなる(プレート電流が急激にカットオフとなる)ために、出力トランスの漏洩インダクタンスによる逆起電力に起因する有害なスイッチングトランジェントが発生します。これをいかに回避するかという目標が、CSPPの開発の背景です。
このような背景のもとに開発されたマッキントッシュ型は、バイファイラー巻線構造で密に磁気結合されたプレート巻線とカソード巻線による出力トランス設計が特徴であり、このことによりスイッチングトランジェントの抑え込みを達成した回路です。
SEPPは低電圧動作の半導体アンプでは現在主流の方式であり、特にOTLアンプでは標準的な回路です。真空管式では縦方向に2本の出力管が接続されることから、プレート供給電圧の2倍の電圧が相補関係にある上下の真空管のプレート—カソード間に発生し、また、真空管は半導体のpチャンネルに相当する素子(マイナスのプレート電圧で動作する真空管)が存在しないため出力管励振の対称性確保が困難で、いわゆる打ち消し回路が必要となります。過去の真空管式OTLにおける標準的な回路でした。
本機の出力管はハイパワービーム管のKT120。ウエスギ銘の真空管が用いられる。