[ヴィンテージ管]

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9 │ シルバニア 5931

独特の高域で華やかさを加える。清涼感のある伸びやかな音色

シルバニア 5931
●TV7試験値(実測値) 62/60 ●B電圧(実測値) 296V

米国シルバニア製の堅牢構造の長寿命高信頼管。電気特性は5U4GBとほぼ同等で、電極構造はシルバニア 5U4GBに非常に近い。カシメ止めされた角型リブなしの黒化ニッケルプレート、フィラメントは平面リボンで上部テンション機構はなく自立式。マイカはしっかりと白くアルミナ処理され、打ち抜き穴とプレート固定法はRCA系と異なる。専用のボタンステムに加え、ステムリードを長めにしてあり、独特な長い袴の黄色いマイカノールベースのため、シルバニア5U4GBよりさらに背が高くなっている。(岡田)

岡田 シルバニアが耐振堅牢構造管として開発した産業用の整流管です。最初は2A3と5U4G、6L6を「59シリーズ」として作りました。5931は5U4GBと同じ特性を持っています。

 高音部にキャラクターがあって、それが華やかな感じの音を作り出しているのではないかと思います。3曲の中でもそれが特に目立ったのは、「ブレイキー」のシンバルの音が、お祭りの鐘の音のような音に聴こえたところですね。これはいままでに聴いた球と違うなと思いました。やはり独特の音色感が出ていました。この球を挿すと綺麗な音が出るというところが特徴だと思いました。

岡田 系統的にはシルバニア系の音ですが、少し音色が違いました。一般的に高信頼管は寿命を長くするためにカソードの温度を低くする傾向があります。それをオーディオ用で使うと、つまらない音になることが多いんです。しかし、この球はいい雰囲気が出ています。その中で、「ペギー・リー」の声の音色やベニー・グッドマンの高音部、「ブレイキー」のシンバルのアタックと響きの比率が他とは少し違って聴こえました。「展覧会の絵」では弦の音が違います。これは好みが分かれるかもしれませんが、差し替えると面白い球だと思います。基本的な音のレベルは高い球です。

杉井 以前に6L6の比較試聴で聴いた兄弟管の5932もレギュラーの6L6とはたいぶ音が違っていましたが、5931も5U4GBとは違う音でしたね。先ほどGEを聴いたとき、高域に少しピークがあると言いましたが、これはピークというよりも高域特性がよくなったような聴感を与えます。整流管で直流を作り出すだけなのに、どうして周波数特性まで変わるのだろう? とやはり思わせますね。アルテック604Eを鳴らしていますが、その上にJBL075を追加したかのよう。全体を通して、GEに輪をかけてドライな感じではあるんですが、それが音色に清涼感をもたらしていると思います。不快ではなく、意外と心地よかったですね。「展覧会の絵」は、ストリングスの音が異様なくらいこまやかで、上まで伸びています。澄み渡った青空の下で演奏されて、音が空に抜けていくようなイメージで面白い。整流管を差し替えてトーンをコントロールするくらいの使い方ができる球ではないかと思います。高域が足りないという人は、ちょっと騙されたと思って5931を使うと、不足感が解消されるのではないでしょうか。どのアンプに挿しても同じ結果になるかは不明ですが、少なくとも今日のシステムではそう聴こえました。

10│ RCA(US ARMY) 5U4G

5931に通じる高域の伸びやかさ。音の勢いが増し、芯のある中域が特徴的

RCA(US ARMY) 5U4G
●TV7試験値(実測値) 61/62 ●B電圧(実測値) 293V

米国RCA製の1950年代の後期型軍用球。5U4Gは2A3と一緒に開発されたUXベースの5Z3同等管で、TV用の5U4GBより最大出力電流が小さく(225mA)、管内電圧降下が大きい(58V/225mA)ので注意したい。つまみステムに5Z3型リブ付き黒化ニッケルプレート、フィラメントは平面リボンで5U4GBと同じ自立型。上部マイカは5U4GBに近い俵型だが、打ち抜き穴は異なり、下部マイカはない。バルブはST16で吊り型フィラメントの旧型と比較して背が低く、ゲッターは上部片側に飛ばされている。(岡田)

 現行管のいずれかにとても似た音があったと感じました。少しザラッとした感じがあるんですが、それによって音楽に勢いがついて、聴き手を圧倒するところがあります。

岡田 フィラメントが吊り構造ではなく、5U4Gの中でも、5U4GBが作られるようになってからの後期のものでしょう。それで、新さんがおっしゃったように、現代的な要素が音に表れているのだと思います。低音の厚みやダイナミックレンジの大きさが、この球のよさだと思います。音の重心の低さという点は、RCAの系統でしょう。「展覧会の絵」はやや硬さが残るところがあり、もっとエージングが進むとなじんでくる個体かもしれませんね。

杉井 ST管の5U4Gですから、聴く前はRCAの5U4GBよりも古い音、まろやかな音がするのかと思ったら、そうではなく、より現代的な音になっていました。岡田さんからお話がありましたが、バルブ形状で製造時期が判断できるということではないわけですね。GB以前の製造時期の球を選ばないと、5U4Gの音とはいえないのかもしれません。直前に聴いた5931と同じくらい、異様なほどに高域が伸びているのが印象的です。ただ、「ペギー・リー」ではヴォーカルが主役であることが伝わってくる芯のある中域が特徴的で、その点は前の5931と大きく異なります。そういえば、UXベースの5Z3でも製造年代が新しいものはありますね。管種の違いだけではなくて、製造年代も重要になるのだと思いました。

岡田 中古市場で流通している5U4Gは、このタイプが多いですね。吊り構造のタイプは、切れやすく、数はかなり減っているようです。