この記事は、創刊60周年記念号 季刊『ステレオサウンド』第240号の巻頭企画「現代オーディオの到達点 いま聴きたい感動の音 60選+α」からの転載となります。7名のオーディオ評論家が選んだ、「自身が考える現代オーディオの到達点」を象徴する60機種の魅力をぜひ、ご覧ください。

TECHNICS SP10R

立ち上がりの速さと圧倒的な静粛性。
深奥な音場再現には惚れ惚れする

小原由夫

 テクニクスSP10Rの起源は、1970年発表のSP10に遡る。以降75年のSP10MK2、82年のSP10MK3という系譜を経て(83年にSP10MK2Aがあった)、2018年に暫くぶりに復活したSP10Rへと連なる。その間に一度、「Technics」は休眠しているのだが、2014年のブランド復活のきっかけがターンテーブルの再開発ではなかったという点が興味深い。やがて世界のDJシーンを席巻したSL1200の待望論が叫ばれ、それを契機にSP10復刻の気運も高まったというわけだ。

 テクニクスはダイレクトドライブ(DD)方式のイノヴェーターだ。その歩みは、高い回転精度と高トルクへの挑戦である。元来モーターとは、いかに小さく作って速く回すかに注力して設計される。そうした点から見れば、ゆっくり回るDDモーターのそれは真逆。その上で、コギングやワウフラッターを抑え込まねばならないのだから大変である。

 テクニクス開発陣は、ステーターコイルの2枚重ねや、両面のコイルを60度ずらすといった工夫を盛り込み、トルク増と低ワウフラッターのコアレスDDモーターを新たに完成させた。これらの開発には歴代モデルの知見が生きたことはいうまでもないが、新材料の登用や最新の加工精度が後ろ盾となったことはいうまでもない。
 電源部は急激なトルク変化に素早く追従するべく、リニア電源ではなくスイッチング方式を採用。パルス性ノイズを除去するアクティヴ回路も組み込まれた。また5段階のトルクコントロール機構を搭載し、微妙な音質調整が可能という遊び心も新たに採り入れられている。

 個人的にはSP10MK2を長い間使い続けてきたのだが、SP10Rの圧倒的な静粛性を前にして、使ってみたいという衝動を抑えることができなかった。俊敏な起動性は音にも表われており、立ち上がりの速さとトランジェントの切れが描く深奥な音場再現には惚れ惚れする。

いま聴きたい感動の音60選+α <49>

TURNTABLE
テクニクス「SP10R」
¥1,000,000(税込)
●駆動方式:ダイレクトドライブ●回転数:33・1/3、45、78rpm●備考:ターンテーブルのみ
●問合せ先:パナソニック ディーガ・オーディオご相談窓口 0120-878-982

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