この記事は、創刊60周年記念号 季刊『ステレオサウンド』第240号の巻頭企画「現代オーディオの到達点 いま聴きたい感動の音 60選+α」からの転載となります。7名のオーディオ評論家が選んだ、「自身が考える現代オーディオの到達点」を象徴する60機種の魅力をぜひ、ご覧ください。

FRANCO SERBLIN Ktêma

美意識が行き渡るフォルムと香り高い音。
「普遍なるもの」の名にふさわしい

小野寺弘滋

 クテマの登場は2010年だから、いまから16年前の出来事である。イタリアのソナス・ファベールの創業者であったフランコ・セルブリン氏が、自らの名前を冠して立ち上げた新しいブランドのデビュー作であり、何者にも似ていない独自のフォルムには設計者の美意識が隅々まで行き渡っており、その見識の高さに深い敬意を抱かざるを得なかった。

 このフォルムはもちろん、美しい外観デザインの追求のみならず、音響的にも考え抜かれたものである。正面に見える10センチ口径の2つのペーパーコーンユニットはミッドハイ/ミッドバスを担い、高域は28ミリのソフトドーム型が担当。そして技術的にもっとも特徴的なのは、2基の20センチ径メタルコーン型ウーファーが背面側に後ろ向きに取り付けられていることである。

 ウーファーの前(つまりシステムの一番後ろ側)には、これまた美しい曲面を持つ反射板が設けられており(したがってウーファーは外からは見えない)、適切な負荷をかけた上で、サイドのスリットからサウンドステージを包み込むように低域が放射される。サイドの曲面もまた美観と音質に貢献しており、本機でしか聴くことのできない、香り高く、最高品位の音世界を展開する。

 フランコ・セルブリン氏は本機ののち、小型機のアッコルドを最後にこの世を去った。そしてこのふたつのモデルはいまだにその輝きを失っておらず、現役モデルとして作り続けられている。素晴らしいことではないか。

 オーディオにおける到達点とは最新であることが条件ではない。古びない価値を持つものを到達的と呼ぶことができるはずだ。そして古びないとはすなわち、普遍的であることを意味する。

 クテマとはギリシャ語で「普遍なるもの」を表わすという。これほど到達点と呼ぶにふさわしい作品はないのではなかろうか。

いま聴きたい感動の音60選+α <06>

LOUDSPEAKER
フランコ・セルブリン「Ktêma」
¥5,200,000(Satin Sycamore仕上げ・ペア・税抜)
●型式:4ウェイ5スピーカー・バスレフ型
●問合せ先:㈱アーク・ジョイア 03(6902)0480

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