2022年のオートサウンドウェブグランプリにおいて、最高位であるゴールドアワードを獲得したアルパインのビッグDAシリーズ。同ブランドのゴールドアワード獲得歴は多いが、その全てがAVナビであった。2022年、もっとも評価されたのはディスプレイオーディオ。カーオーディオにおける主たる再生メディアが変貌を遂げたと言っていい年ではなかっただろうか。選考メンバーが選出直後に語った率直な思いをご紹介する。[編集部]

オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から脇森宏氏、黛健司氏、長谷川圭氏、藤原陽祐氏、石田功氏。

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、藤原陽祐、黛健司、脇森宏、長谷川圭]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

ASW:2022年のオートサウンドウェブグランプリでゴールドアワードとなりましたアルパインのディスプレイオーディオDAF11Zについて、皆さんの評価をお聞かせください。

黛 健司(以下、黛):このDAF11Z、ビッグDAと呼ばれる製品です。製品の形態はナビではなくディスプレイオーディオという形ですけれど、ビッグXとして毎年のように新しい素材を投入して、新しい音を作って完成度を上げてきたというその姿勢は不変のように思いました。アルパインのカーエンターテインメント製品というのは、安心してユーザーの方にお勧めできるなと、いい音、楽しい音、大画面が活きるような音というのがちゃんとそこで完結していてとてもいい製品だなと思います。値段が安いですよね、ナビが入っていませんから。

 現実問題としてスマホがあれば、今やナビがなくてもほとんど困ることがないんですよね。昔の高機能ナビを知っている身としては不便だなぁと思うかもしれないけれど、スマホのナビしか使ったことがない人はおそらく何の不便も感じないだろうと思いますね。そういう人たちにとっては、この値段であの大画面とあの音が手に入るというのはとても大きな福音ではないかなと思います。

黛健司氏。

石田 功(以下、石田):音出した瞬間に、この鳴り方でいいのかな?と感じて、リファレンス的に聴ける製品を確認したんです。例年使用していた部屋と違う環境だったので、部屋のせいかなと思って。でも確認した音は普通なんです。アルパインのビッグDAの鳴り方が普通じゃなかったんですよ。低音のすごく安定した出方とか、やはり音がすごいと感じました。僕は今回最大評価となる3点をつけた製品がないんです。そこまでの評価をするものは特別な製品という思いもあるので、今年の製品数が少ない中で、特別な製品というのがなかったんです。もし3点つけるならこのアルパインかパナソニックのストラーダだったんですが、悩みぬいた末、どちらも2点に……。

藤原陽祐(以下、藤原):ぼくはこのモデルを聴いた瞬間にビッグXの音だなと感じたんです。
音の部分を詰めたK氏の顔が浮かんだくらい……。

一同:笑。

藤原:デジタルのパワーICの使いこなしとか、音像の張り出しとか、空間表現の出し方、低音の押し出しとか、まあこの小さい中でよくやってるなって思いますよね。まさしくビッグXの系統だなという感じです。ナビがないからこの値段ですけど、オーディオで考えるとこの値段で一体機でオールインワンなわけで、そうとうにお得な感じがしますよね。音質的に従来評価されていたものとほぼほぼ同等な実力を備えるというのは、この製品は時代を変えるんじゃないかと思うところありますね。ホームオーディオでも、スマホはキーアイテムとして注目されています。ストリーミングの活用、映像も音もソースのメインはそうなってきてます。BTもapt-XやLDACを使えばそこそこの音でワイヤレス環境が使えます、映像もキャストを使えばワイヤレスでそのままいけちゃうわけです。ストリーミング配信サービスの展開の速さなど見てると、必然としてそちらがメインストリームになるのが納得できます。このビッグDAのOSはグーグルじゃないですけれど、グーグルOSなどが入ってしまえば、そういったエンターテインメントが楽しめるシステム構築が簡単にできてしまう。

石田:はい、とてもよくわかります。

藤原:そういう時代はすぐ来るだろうと思います。今回、このビッグDAを含めたAVナビなどを見るとほぼ同様な機能装備といえそうですけれど、オーディオのワイヤレス伝送をSBCとAACのみみたいな、ケンウッドは違いますが、あの制約は何なんだろうなと思うんです。ブルートゥースの音質はコーデックが変わると全く違うものになるので、その部分が底上げされると、だいぶ変わるんですけどね。その性能が得られるデバイスが高価だったりするのかもしれないですけれど……ここは今後期待したいです。アマゾンミュージックHDは再生環境にもよりますけれどハイレゾで聴けますし。そのあたりが整うと、カーオーディオの再生ソースはワイヤレスメインになっていくでしょう。

長谷川 圭(以下、長谷川):車両純正装備では、それが当たり前になってきてますね。

石田:僕はいま、自分のクルマでカロッツェリアのディスプレイオーディオに車載WiFiという環境にしてますが、それで充分ですもん。スポティファイが聴けるし、アマゾンが聴けるし……。

石田功氏。

:アルパインは発想の転換が早かった気がしますね。ここにエントリーされるものって各社のトップモデルが多いですよね。そこに並ぶものでナビを外して評価されている。ディスプレイオーディオとしてこれだけの高音質のものを造ったというのは高い評価にふさわしいですね。他メーカーはいつのタイミングでどんな動きを見せるかなというのは、今後、興味のあるところで注目しておきたいです。

藤原:ボルボなどではグーグルOSが入って来ています。あれがあるとナビでも地図データが常に最新になっていて、地図更新でン万円ですというビジネスが成り立たなくなってくる。ここ最近は変化が早くしかも大きいから、ナビメーカーとしての舵取りは難しいでしょう。

石田:通信の利便性は大きいというのが、ディスプレイオーディオを使い始めるとよくわかります。でも、秋田にいると、たまーに電波が受からない時があるんですよ(笑)。まだ全国津々浦々とまではいかないようです。山を越えて走っていたりすると、音は止まる、地図も動かなくなるというのが何度もありました。

長谷川:インフラとしてどこまでどう活用されるかわかりませんが、スペースXのスターリンクが稼働していて、それが利用できるようになったら、地球上で通信できない場所がなくなりますしね。ほんとにそう遠くない将来は通信による情報確保が当たり前になっているかもしれないですね。

藤原:ナビメーカーは地図データから解放されるメリットはあるでしょうしね。カロッツェリアは、インクリメントPとの関係があってそうでもないかもしれないけれど、他社は自前の地図は持っていないし。テレビに関しても、アプリがたくさんあるんですけれどどこと手を結ぶかというのがかなり煩わしい話になる、結果グーグルTVになるんです。

藤原陽祐氏。

:いったんスマホで無料のナビ機能を体験してしまうと、有償地図更新はなかなかできなくなりますよね。いま石田さんがおっしゃったように、電波が届かなくて不便な瞬間があるかもしれないけれど、でもそのためだけにデータ更新をお金払ってやりますか? っていうと、そこにお金かけるなら買い換えようかってなるかもしれない。

ASW:脇森先生はいかがでしたか?

脇森 宏(以下、脇森):まさにビッグXの音でしたね。物が変わっても同じ音が出せるんだと感心しました。

石田:ナビがないぶん音が……。

:余計なものがないことで良くなった……。

脇森:良くなっているのかもしれないですよね(笑)。

ASW:お一人ずつ話してください……。

:そう考えますよね、普通に。

脇森:そうそう。

:今までの進化の家庭を考えると、ガーンと良くなっているかなというと、そこまででもない……。

脇森:音としては昨年のビッグXの継承という感じですが、この値段からしたら立派なものです。

脇森宏氏。

長谷川:ビッグDAは、ナビが入っていないからなのでしょうが、インターフェイス……メニュー画面の作り方などがだいぶ変わっていて、オーディオ機器っぽいなというところが好きです。TVチューナーもないので、トップメニューの表示などは、今時の方には新鮮に見えるのではないでしょうか。昔から多くの製品を見てきている身としては、画面が大きいと、こんなに情報を入れ込んでいるのに見やすく整理整理してレイアウトできるものなんだと感じました。そういう作りが楽しかったし、皆さんが言うとおり、ビッグXを受け継いだサウンドクォリティは見事でした。

 それから、さきほど黛さんがおっしゃった“いつまでAVナビが同じような仕様ででてくるのか”というお話ですが、ナビメーカーはこの数年ずっとその検討を重ねていて、フローティングディスプレイによる大画面という形態がなかったらもっと早くディスプレイオーディオ化への流れが加速していたかもしれません。ただ、音のいいストリーミング配信サービスがなかなか始まらなかったりもしていたので、切り替えタイミングは難しかったでしょうね。自動車メーカーが標準装備で採用しているディスプレイオーディオも、ナビメーカーで設計製造しているので、そういう事業を進めながら、現在、市販製品での展開タイミングについても検討しています。アルパインで言えば、このモデルが発売される前にアルパインの公式通販サイトの専売品としてディスプレイオーディオ機のテスト販売していましたね。そこでドライバーの意見を吸い上げてビッグDAの“正式版”をリリースしました。かなり用意周到だったように感じます。

 最近は自分も取材をする際にCDを持ち歩くことが少なくなりました。純正オーディオでは再生できるクルマの方が少ないですから。再生する機会が多いのはUSBですけれど、サブスクのサービスも確認していて、あれを聴いてしまうとCDって……。

藤原:いやもうCDは聴かないでしょう(笑)。

石田:実際、個人的にはクルマの中にCDがあるのって、いまや邪魔にすら感じます。

長谷川:とはいえ、CDが聴けるクルマでその音を確かめると、やっぱりいいなと感じますね。いつも聴いている音だから安心するのか……。

藤原:聴きなじんでる音の安心感はあるかもだね。

長谷川:リッピングしてUSBを用意しているので、CDもUSBも同じなはずなのですけれど、別メディアにするとやはり音は変わるわけで、CDは大元のオリジナルを再生しているという信頼感のようなものもありますね。ただ、若い世代などだとCDで音楽を聴いたことがない……ストリーミングで聴くのが当たり前だと、そもそもCDを聴いたことがないから評価のしようもなくストリーミングの圧縮音源だけで聴いてたりするんですよね。そんな時代だからますますこうしたディスプレイオーディオのようなコンポーネントが重宝がられていくのかもしれません。

長谷川圭氏。

石田:間違いないですね。

藤原:AVナビっていうスタイルが20年以上でしょう。よく続いたよね。

脇森:イクリプスのAVN以降、進化を続けてきましたね。

藤原:カロッツェリアがディスプレイオーディオの市販モデルをリリースして、アルパインが高音質モデルを投入してきて、時代の転換期を迎えた気がしますね。

長谷川:その通りかもしれないですね。こうしてディスプレイオーディオがゴールドアワード獲得ですから、新時代の到来といえるのかもしれません。

ASW:なるほど、その時代にこのモデルだからこそのゴールドアワードとも言えそうですね。みなさん、ありがとうございました。