オートサウンドウェブグランプリ2022の選考委員は、評論家[石田 功、藤原 陽祐、黛 健司、脇森 宏、長谷川圭]の計5名によって構成している。例年参加の鈴木裕先生は病気療養のため本年は欠席。
 本記事では、グランプリ製品の選考に関する解説と今年の動向についてまとめた。

文=長谷川 圭

2022年は7モデルを選出したASWGP

 オートサウンドウェブグランプリ2022(ASWGP22)は、2021年12月(発表および発売時期の都合で前年選考対象から外れた製品)から2022年12月に発売されるカーオーディオ製品を対象に、音質面で高く評価されるものを選出するものである。選考は先述の5名によって行われる。

 選考手順は、選考メンバー各氏が推薦する製品をノミネート製品とし、対象製品に対する評価を各メンバーが表明、グランプリに相応しいと判断された製品を選出している。2022年の受賞は全7賞とした。

 Grand Prix Gold Award アルパイン ビッグDA DAF11Z
 Grand Prix Silver Award パナソニック CN-F1X10BGD
 Grand Prix Bronze Award カロッツェリア サイバーナビシリーズ
 Grand Prix オーディオウェーブ CR201X
 Grand Prix ケンウッド 彩速ナビType M
 Grand Prix Special Award パナソニック caos
 Grand Prix ブラム S135.100 A.1
 (上位3賞の他はブランド名のアイウエオ順に列記)

 選考手順は次の通り。

◆選考メンバー推薦による製品ノミネート
◆ノミネート製品に対する採点
◆得点数をもとにグランプリ入賞製品を協議
◆入賞製品の中で特に高く評価できるものに対し、ゴールドアワード以下、シルバー、ブロンズ、スペシャルなどの賞を決定

全製品を試聴取材し評価

 製品の評価については、基本的にオートサウンドウェブの試聴取材環境で実際に音を聴いておこなっている。ステレオサウンド社の試聴室における試聴条件は以下の通り。

〇スピーカーは、ユニットサイズや構成による一部の製品を除き、独自のプレーンバッフルにマウントして試聴している。
〇電源は車載用バッテリー(パナソニック製caos)に定電圧電源を接続し、つねにチャージしながら各コンポーネントを駆動。
〇接続ケーブルは、電源、ライン、スピーカーとも車載用製品を使用。
〇各製品ジャンルごと、評論家ごとにリファレンスとなる機器を接続。適宜組合せを変えるなど、できうる限り製品のパフォーマンスが引き出せるよう試聴を行っている。

 いずれの条件も、車載用という製品仕様ではあるものの、オーディオ機器として理想的な再生条件で評価しようというものだ。当サイトの前身でもある雑誌Auto Soundで確立させた試聴スタイルを踏襲した形でもある。

 なお、ステレオサウンド社には2つの試聴室があり、例年季刊ステレオサウンド誌と同じ部屋を使用しているが、本年は季刊HiVi誌が主に使用する部屋で試聴取材を行っている。部屋は異なるものの、リファレンス機による部屋の音の確認をしながら各製品を評価している。

2022年の動向

 昨年、市場の新製品が少なかったと記していたが、本年はさらに上回る状況となった。原因は、なかなか解消されない半導体や液晶パネルの不足によるもの、そしてコロナ禍にともなうサプライチェーンの問題で、スピーカーの構成パーツなどアナログなパーツの製造ができない事態が発生し、量産にブレーキがかかっているという。メーカーによっては新製品の開発ができているにもかかわらず、量産機の生産に入れず、市場への投入ができていないといった話も聞いている。

 この状況下で、不作の年かと思いきやさにあらず。ASWGPとして評価できる製品があったことは幸いであったと言える。ASWGP実施については新製品のリリース状況を見つつ、またその実力を確かめつつ検討、ふさわしい製品があるという確信を得て企画実施に至った経緯があった。これは雑誌Auto Sound時代のグランプリ企画から24年続けていて初めてのことであった。来年以降は実力機豊作となることを祈りたい。

 2022年の受賞製品をジャンルごとに振り返ってみよう。個々の製品評価については、個別のレビュー記事に詳しいので、そちらでご確認いただきたい。

AVナビゲーション & ディスプレイオーディオ

 AVナビゲーションおよびディスプレイオーディオは、半導体不足や液晶パネル不足と不遇をダイレクトに受けている製品ジャンルであるものの、各社が2022年モデルをリリースするに至った。とはいえ、地図データの更新を中心に、若干のソフトウェア変更などと音質的には2021年モデルと“変わりが無い”製品であった。が、音は進化。生産ラインにおける組み上げ精度が上がる、あるいはランニングチェンジで細かなところで素子の変更があったのかもしれない、各メーカーとも設計上変更無しとのことなので想像の域を出ないのだが……。

 今年の特長としては、ディスプレイオーディオがゴールドアワードに選ばれたところだろう。2020年にカロッツェリアのディスプレイオーディオが入賞を果たして以来だったが、いきなりのゴールド獲得は、今後のマーケットが変わっていく兆しなのではと思わずにいられない。AVナビゲーションのありようというのも、今後変わる可能性はあるわけで、期待したいところである。

アンプ、スピーカー受賞製品

 前述の通り、サプライチェーン問題が如実に出たパワーアンプ&スピーカーのジャンル。まったく新製品が無かったわけではないが、極端に高いものあるいは安いものといった両極端な価格分布で、安くて良い物も確認したものの、ASWGPとして紹介すべきものかどうかという点で外され、結果としてパワーアンプ1モデル、スピーカー1モデルとなった。

 イギリスのオーディオウェーブCR201Xはモノーラルパワーアンプであるため、評価は2台用意して行っている。そのため、製品の単価は246万円なのだが、評価は492万円の状態で行った。

 スピーカーのブラム(フランス)は、2018年にASWGP受賞を果たしたスピーカーセットが、構成するスピーカーユニットの変更を受けてモデルチェンジ、改めて受賞を成し遂げた製品である。

スペシャルアワードにバッテリー

 過去にも受賞歴を持つパナソニック・カオスだが、普段からオートサウンドウェブの試聴取材時のリファレンス電源として使用しているが、モデルチェンジを受けてこれまで以上に音を良くしてくれることを讃えてのスペシャルアワードとなった。そもそもバッテリーはオーディオコンポーネントではないので、対象としていかがなものかという声もあろうが、電源無くしてカーオーディオを作動させる事はできず、さらに他のカーバッテリーと比べて明らかに音に効くことが確認されてしまうと、ここはやはり評価するべきである。こうした意見が選考メンバー全員で確認されたため受賞となった。

 本企画によって選出されたカーオーディオ製品達は、卓越した才能を持ったオーディオ開発者達の力の結晶であり、多くのカーオーディオ愛好家にお勧めできるモデルばかりである。ぜひ近隣のカーオーディオショップへ足を運び、これらの製品を聴く機会を得ていただきたいし、叶うならば愛車への導入を検討してもらいたい。その先にはきっと、多幸が待っているはずである。