JUNE 2026 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION
THE CRITERION COLLECTION has announced its JUNE 2026 slate of 4K UHD BLU-RAY(5)and BLU-RAY(4)releases ー Amongst them are:CHARADE(1963)FIVE EASY PIECES(1970)DESPERATE LIVING(1977)HAIRSPRAY(1988)and IT WAS JUST AN ACCIDENT(2025)
4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
最高に面白いミステリー・コメディ!
クライテリオンからアナウンスされた2026年6月リリース・タイトル。まず6月2日に登場するUHD BLU-RAYタイトルは、『雨に唄えば』『掠奪された七人の花嫁』などMGMミュージカル黄金期を担ったスタンリー・ドーネン監督作『シャレード』(1963)である。離婚を決意したレジーナ(オードリー・ヘプバーン)がパリに戻ると、夫が殺されたという知らせが待っていた。どうやら夫は戦時中の横領事件に関わっていたらしい。レジーナはふとしたきっかけで知り合ったアメリカ人男性ピーター(ケイリー・グラント)に惹かれつつも、彼が犯人ではないかと疑念を募らせていく・・・。
United States • 1963 • 113 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 720p
ヘプバーンというと『ローマの休日』を思い浮かべる向きも多かろうが、アメリカではいまなお本作品の方が人気が高い。その理由のひとつはヘプバーンとグラントの醸し出す洗練されたムードと、異国を舞台にしてロマンティックなミステリー・コメディに仕立てたピーター・ストーンの脚本の妙にある(ストーンは翌年『がちょうのおやじ』でオスカーを受賞)。オリジナル草稿はストーンとマーク・ベーム(『HELP!四人はアイドル』)による中篇『The Unsuspecting Wife』。だがハリウッドで買い手が現れず、ストーンは改題小説『Charade』を執筆。小説は米国の女性向け月刊誌Redbookに連載された。この連載が(以前脚本を却下した)ユニバーサルの目に留まり、映画化権をドーネンに売り渡したという経緯がある。ヘプバーンとグラントの出演が決定した後、ストーンはふたりを当て書きして撮影用のシナリオを書き上げている。
ーー When viewing this clip, please set resolution to 720pーー
また監督ドーネンの演出も開幕から快調。明らかにヒッチコキアン・スリラーを狙いながら、監督自ら楽しんで演出している余裕を感じさせ、古典的なロマンスを愛するシネフィルをうっとりさせる要素が満載だ。ドーネンはここでも持ち前の優雅なコメディセンスを披露。かつてのクリエイティブパートナーであるジーン・ケリー主演の『巴里のアメリカ人』を題材にした、自己言及的なジョークを散りばめたセーヌ川沿いの散歩シーンは、彼のコメディセンスを満喫できる見せ場のひとつである。また俳優たちにそれぞれの持ち味を存分に発揮する機会を与えており、ヘプバーンとグラントの絡みはもちろん、ふたりを囲む脇役陣 ーー ウォルター・マッソー、ジェームズ・コバーン、ジョージ・ケネディも存在感たっぷり、ミステリーの興趣を盛り上げている。
撮影監督はチャールズ・B・ラング・Jr。32年の『戦場よさらば』でオスカー受賞歴があり、同作以外に16回もオスカー・ノミネートされているラングは、業界でもっとも多才なカメラマンのひとりと称されている。なかでも『OK牧場の決斗』『ガンヒルの決斗』『荒野の七人』『片目のジャック』『西部開拓史』といった剛健な西部劇で実力を発揮してきたラングだが、ここではそれとは違う撮影アプローチを試みている。「(西部劇では)絞りを絞ってシャープなショットを撮る。クロスライティング(照明を交差させ、人物やセットに深い陰影や立体感を与える照明法)などの効果光をできる限り活用し、顔の欠点さえも意図的に強調する」というアプローチとは対照的に、本作品ではソフトなライティングとディフュージョン(拡散光)を多用している。
ーー When viewing this clip, please set resolution to 720pーー
ヘプバーンやグラントをいかに魅力的に見せるかに注力しつつ、クロスライティングは背景や悪役に用いて不気味で不穏なムードを演出、視覚的にドラマチックな効果を生み出している。「ロマンティックで洗練された美しさ」と「サスペンスの緊張感」を両立させるために、ラングとドーネンはさまざまなテクニックを披露しており、UHD BLU-RAYの観どころのひとつに数えられよう。そのほかにも、光の都パリの風景を背景に撮影された屋外ショット、アングルや被写界深度へのこだわり、プレーンライト(平面ライティング)の多用など観どころに尽きない。ちなみに後者は被写体の前斜め45度方向から、均一な光を当てて全体を照らす基本ライティング。さらに光の面を層状に重ねるテクニックを用いて、ロケ地の広さを強調し、同時に俳優を背景から浮き立たせている(ガファー/照明チーフを務めたのは『ローマの休日』のエンゾ・ゾッキ)。
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
- NEW 4K DIGITAL RESTORATION, with uncompressed monaural soundtrack
- SDR / BT.709 PRESENTATION OF THE FILM
- One 4K UHD disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
- Audio commentary from 1999 featuring director Stanley Donen and screenwriter Peter Stone
- Trailer
- English subtitles for the deaf and hard of hearing
- PLUS: An essay by film historian Bruce Eder
Released: JUNE 2, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)
ーー When viewing this clip, please set resolution to 2160p/4Kーー
ーー When viewing this clip, please set resolution to 720pーー
| タイトル | シャレード |
|---|---|
| 年 | 1963 |
| 監督 | スタンリー・ドーネン |
| 製作 | スタンリー・ドーネン |
| 原案 | ピーター・ストーン マルク・ベーム |
| 原作 | ピーター・ストーン |
| 脚本 | ピーター・ストーン |
| 撮影 | チャールズ・ラング・Jr |
| 音楽 | ヘンリー・マンシーニ |
| 出演 | オードリー・ヘプバーン ケイリー・グラント ウォルター・マッソー ジェームズ・コバーン ジョージ・ケネディ ネッド・グラス ドミニク・ミノット ジャック・マラン ポール・ボニファ トーマス・チェリムスキー |
4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
いい生活なんて 吐き気がするだけだ!
クライテリオン6月リリース・タイトルのハイライト!時代を経ても決して色褪せることのないニューハリウッド(aka.アメリカン・ニューウェイヴ)の秀作『ファイブ・イージー・ピーセス』(1970)の登場である。映画はタミー・ワイネットが歌う「スタンド・バイ・ユア・マン」が流れるサウンドトラックを背景に、ジャック・ニコルソン演じるボビー・エロイカ・デュピーが南カリフォルニアの石油労働者として生計を立てている場面から始まる。ボビーという登場人物と彼が繰り広げるであろう物語について、観客にミスリードを抱かせる巧妙な出だしだ。物語が進むに連れて観客は、ボビーがかつて恵まれた家庭環境で育ち、クラシックピアニストとしての並外れた才能を持ち、過去から逃れるために労働者階級に身を潜めている男だと知る。故郷と身分を捨て、自堕落な生活を送るボビー。そして物語は動く。父が脳卒中で倒れた。妹から知らされたボビーは、ウェイトレスの恋人レイエット(カレン・ブラック)を連れて、はるばるワシントン州ピュージェット湾にある実家へと向かう・・・。社会に馴染めず、はみ出し者で、すべてに責任を負わないドロップアウターを鋭い眼力で見つめたヒューマンドラマであり、実存主義的で型破りなロードムービーである。初心者向けのピアノ教則本を示す題名は、ボビーが求める安楽な暮らしを象徴する一方で、彼の複雑な心象風景、そして身の置き場のない現実を示すダブルミーニングとなっている。
United States • 1970 • 98 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD
監督はボブ・ラフェルソン。実体験を盛り込んだこの長編監督第2作は、ラフェルソンをニューハリウッド運動の旗手のひとりへと 押し上げた。TV界や舞台で活躍した女優で脚本家でもあったキャロル・イーストマンが、エイドリアン・ジョイス名義でラフェルソンと書き上げたシナリオは、不安定で予測不可能なアメリカの政治情勢や、中産階級の疎外感と不安を徹底的に描き出したと高い評価を得た。またジャック・ニコルソンを同世代を代表する俳優として確立させ、業界屈指の撮影監督としてラズロ・コヴァックスの存在を世に知らしめた作品でもある。
コヴァックスが行ったアプローチは「不必要なカメラの動きを排除し、被写体の感情的な本質を捉える」というシンプルかつ直截的、自然主義的で控えめなドキュメンタリー調の撮影手法だ。人工照明を可能な限り排除し、自然光やアベイラブルライト(その場にある灯り)を軸として光彩陰影の明暗を構築。それにより独特の強い粒子感が生まれ、シネマティックな生々しさを際立たせ、油田シーンにみる荒々しいリアリズムや、アメリカ北西部(ピュージェット湾)のくすんだ秋の風景を引き立てている。色彩は抑制されており、ときに荒涼とした印象を与え、物語の暗鬱なムードや感情的な行き詰まりを反映している。またピュージェット湾近郊にみる湿ったグレートーンを利用して、「繭に包まれているようでいて息苦しい空気感(コヴァックス)」を作り出し、ボビーの心象風景を表現。広大な風景の中でボビーの孤独を捉えたフィックスショット。屋内ショットは広角レンズによるハンドヘルドを多用し、親密で日常のひとコマのような雰囲気を生み出している。コヴァックスの十八番でもあるディープフォーカス・ショットも多用され、前景・中景・後景を鮮明に際立たせることで、漂流するかのようなボビーの生きざま、小さく無力な存在であるという感覚を強調してみせた。これらの絵づくりが、4K/HDRで如何に再現されるのか、注目されたい。
ベトナム戦争の終焉を見ないまま1970年代に突入したアメリカでは、国家に対する心理的安定が不快なほどに揺らぎ、緊張と混乱が社会運動へと発展した。映画界もこうした変化を巧みに反映し、当時の文化を形作った、斬新で示唆に富む映画の波を生み出した。ラフェルソンの『ファイブ・イージー・ピーセス』は、まさにこの変化の精神を体現している。ニコルソンほど怒りを表現できる俳優は他になく、怒れる白人アメリカ人男性に関する根本的な真実を理解している。さらにカレン・ブラックをはじめとする脇役陣の完璧な演技によって形と深みが与えられた、複雑で魅惑的なアメリカ社会の探求である。タイムアウト誌
この映画の最大の功績はシナリオにある。寄り道や脱線を許容し、筋書きよりも行動を重視し、始まりから予想もできなかったような結末とトーンで終わる。映画評論家ロジャー・イーバート
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4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
- NEW 4K DIGITAL RESTORATION, with uncompressed monaural soundtrack
- HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
- One 4K UHD disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
- Audio commentary by director Bob Rafelson and interior designer Toby Rafelson
- Soul Searching in "Five Easy Pieces," a 2009 program featuring Bob Rafelson
- BBStory, a documentary about the legendary film company BBS Productions, with Rafelson; actors Jack Nicholson, Karen Black, and Ellen Burstyn; filmmakers Peter Bogdanovich and Henry Jaglom; and others
- Documentary featuring critic David Thomson and historian Douglas Brinkley
- Audio excerpts from a 1976 AFI interview with Rafelson
- Trailer and teasers>
- English subtitles for the deaf and hard of hearing
- PLUS: An essay by critic Kent Jones
Released: JUNE 2, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)
2010年、クライテリオンでは本作品と『ザ・モンキーズ/恋の合言葉 HEAD!』(1968)『イージー・ライダー』(1969)『ドライブ, ヒー・セイド』(1970/未公開)『ア・セーフ・プレイス」(1971/未公開)そして『ラスト・ショー』(1971)を所収したBLU-RAY BOX『AMERICA LOST AND FOUND: THE BBS STORY』をリリースしている。映画館の観客動員数は減少し、かつてはうまくいっていたものが崩壊したように見えた60年代後半、ラフェルソン、バート・シュナイダー、スティーヴ・ブラウナーはBBS(BBSプロダクションズ/3人の頭文字/1968 - 1972)を立ち上げた。BBSはそれまでのハリウッド・スタジオシステムに反旗を翻し、革新的な映画製作への転換を決定づけたことで知られる重要な独立系映画製作会社である。彼らはハリウッドに必要なのは新しい観客、つまり若者であり、そのためには新しい才能と新しいアイデアを育む必要があることを知っていた。スタジオの干渉を排除し、監督がクリエイティブな決定権を持つ体制を築くことで、監督の作家性が強く反映された作品を生み出したのである。
ビートルズ人気に対抗し、TV番組でモンキーズをスターに育て上げたラフェルソンとシュナイダーは、1968年、アイドルとしてのモンキーズ像を崩そうと、映画界に殴り込みをかけた。それがラフェルソンが演出を務めた『ザ・モンキーズ/恋の合言葉 HEAD!』である。ニコルソンが共同製作・脚本で参加した本作品は、32の風刺劇をパズル化した実験映画の趣を持つ。しかしBBSの名を知らしめたのは、続く『イージー・ライダー』である。反抗的な道楽映画と言われながら、若い世代の熱狂的な支持を集めた同作品の成功が、この時代の映画の到達点とも称される『ファイブ・イージー・ピーセス』へと導いていく。自堕落な生活を送る中年男ニコルソンの苦悶と孤独は、鉄の馬に跨った長髪のカウボーイたちよりも、はるかに深く、やるせない。
ニコルソン監督作『ドライブ, ヒー・セイド』、ヘンリー・ジャグロム監督作『ア・セーフ・プレイス』を経て、BBSが着手したのが秀作『ラスト・ショー』である。荒涼とした白黒画に浮かび上がるテキサスの田舎町は、まるで古き良き撮影所のセット。ハリウッド黄金期の讃歌でもある同作品で、古き良きハリウッドに別れを惜しみつつ、BBSと監督のピーター・ボグダノヴィッチは新たな時代、よりストレートな映画作りの時代の幕開けを告げたのである。映画製作におけるスタジオのシステムからの独立という新しいビジネスモデルを提示し、低予算でも映画が商業的な大成功を収める可能性があることを証明したBBS。アメリカ映画史において短命の製作活動ではあったが、その後の映像作家に与えた影響は計り知れず、ボグダノヴィッチ、フランシス・フォード・コッポラ、マーティン・スコセッシといったニュー・ハリウッド世代が活躍する土壌を作ったのである。
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| タイトル | ファイブ・イージー・ピーセス |
|---|---|
| 年 | 1970 |
| 監督 | ボブ・ラフェルソン |
| 製作 | ボブ・ラフェルソン リチャード・ウェクスラー |
| 製作総指揮 | バート・シュナイダー |
| 原作 | ボブ・ラフェルソン エイドリアン・ジョイス |
| 脚本 | エイドリアン・ジョイス |
| 撮影 | ラズロ・コヴァックス |
| 出演 | ジャック・ニコルソン カレン・ブラック スーザン・アンスパッチ ロイス・スミス ラルフ・ウェイト ビリー・グリーン・ブッシュ アイリーン・デイリー トニー・ベイジル ローナ・セイヤー リチャード・スタール |
4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
ハイキャンプなバブルガム・ミュージカル・コメディ!
6月22日にクライテリオンが贈るのは4Kジョン・ウォーターズ!『ヘアスプレー』(1988)と『デスペレート・リビング』(1977)の登場である。いずれもウォーターズ監修・最終承認の4Kレストア/HDRグレード版である。ウォーターズならではの反逆精神とバブルガムポップの甘さを融合させた『ヘアスプレー』は、『モンド・トラッショ(初の長編監督作)』『マルチプル・マニアックス』『ピンク・フラミンゴ』などなど、数十年にわたりアンダーグラウンドな挑発で悪趣味の限界を押し広げてきたウォーターズをメインストリームへと押し上げた痛快作だ。舞台は1962年のボルチモア。ぽっちゃり女子のトレイシー(リッキー・レイク)は、町でイチバン素敵な若者たちが集まる地元のダンス番組コーニー・コリンズ・ショーに出演することを夢見ていた。昔ながらの価値観を大切にする母親エドナ(ディヴァイン)からの反対にもかかわらず、トレイシーはついに夢を叶え、さらに一歩前へと踏み出すことを決意する・・・。
United States • 1988 • 92 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD
ジュークボックス・ミュージカルのスタイルを拝借した本作品の面白さは、音楽史を巧みに探求し、アメリカのポップミュージックにおける人種隔離の歴史に焦点を当てている点にある。1950年代後半から1960年代初頭にかけて、ボルチモアで「バディ・ディーン・ショー」という若者向けダンス番組があった。本作品が描いているように、この番組には人気ダンサーたちによる委員会があった。そう、この番組も人種隔離されており、月に1日だけアフリカ系アメリカ人専用の日とされていた。当時の出来事のほとんどすべてが、本作品に描かれている。もちろん、ウォーターズならではの描き方によって、である。まず、ぽっちゃり女子トレイシーをヒロインとして登場させることで、ダンサーとその体型に関する固定観念を打ち破っている。始めは夢見る女子であったトレイシーは、次第に自身の夢を叶えるだけでなく、平等な権利を求めるボルチモア市民の夢をも叶えようとするのだ。ダンスの世界を通してウォーターズは、人種隔離と体重蔑視というふたつの差別世界の壁を打ち破ることで、ふたつのポジティブなメッセージを発信したのある。白人が作り上げた完璧な世界であるダンス番組。そのテレビ画面の外にある現実。現実の世界では抑圧は日常的なものであり、それがトレイシーを正義感にあふれ寛大な行動へと駆り立てるのだ。
人種差別は悪であり、人種差別主義者も悪である。黒人はひとりの白人少女の勇敢な行動によって平等な地位に引き上げられる。プロットをたどれば救世主主義として一笑に付されるべきだが、そこにウォーターズの大胆不敵な天才性が隠されている。ぶ厚い皮肉や嘲笑の層を重ねることで、本作品をも批判されるべき社会や慣習の一部にしてしまったのだ。救世主?クソくらえ。画面の隅々から、そんなウォーターズのせせら笑いが聞こえてきそうだ。
撮影監督は『ロマンシング・マリーナ/ドライ・マティーニは危険な香り』『クライ・ベイビー』のデヴィッド・インスレー。メインストリームとは縁のなかったインスレーだが、アメリカのポップカルチャーの中核にある権力関係との繋がりを覆い隠すような色彩設計は必見。オゾン層を破壊するほどのエアロゾル、肉体から切り離されたような揺れ動く身体の振動、鼻をつく汗や化粧の臭気など、見えないものを共感覚的触覚として画面に焼き付けてみせた手腕を楽しみたい。
200万ドルの低予算にたいして、初公開時の売り上げは800万ドルとまずまずの興行成績であったが、1990年代にビデオ化されると熱狂的なファンに支えられ根強い人気を誇るカルト・クラシックとなった。加えて多くの批評家が作品を再評価。2002年には、本作品を原作としたブロードウェイ・ミュージカル版が上演され、2003年、トニー賞においてミュージカル作品賞を含む8部門を受賞している。2007年にはブロードウェイ舞台版を映像化した映画版(監督アダム・シャンクマン/出演ジョン・トラヴォルタ)が公開されている。
しかし、なんと言っても真に革新的なのは、ヒロインがダンスが上手く、異性にモテ、政治的な動機を持ち、しかも太っているという、すべてを同時に兼ね備えているという点だ。奔放なトレイシーを演じたリッキー・レイク(撮影時19歳/90年代前半に57kgの減量に成功する!)は、まるで十代のディヴァインのよう。スポンサーであるヘフティ・ハイディウェイから提供された特大サイズのファッションを披露するために、テレビカメラの前で堂々と歩きながら、チョコレートを平然と口に頬張ってみせたあたりの得体の知れない凄み。これまた必見である。
ーー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HDーー
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
- NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director John Waters, with DTS-HD Master Audio 2.0
- HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
- Alternate 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
- One 4K UHD disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
- Audio commentary featuring Waters and actor Ricki Lake
- New conversation between Waters and WFMU DJs Dave "the Spazz" Abramson and Gaylord Fields
- New interview with Lake and actor Colleen Fitzpatrick
- Reflections from actors Debbie Harry, Jo Ann Havrilla, Leslie Ann Powers, Clayton Prince, Shawn Thompson, and Pia Zadora
- Deleted scenes
- Behind-the-scenes documentary
- Get to Know John Waters (1987)
- Interview with production designer Vincent Peranio
- Trailer
- English subtitles for the deaf and hard of hearing
- PLUS: An essay by critic Jessica Kiang
Released: JUNE 23, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)
ーー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HDーー
| タイトル | ヘアスプレー |
|---|---|
| 年 | 1988 |
| 監督 | ジョン・ウォーターズ |
| 製作 | デヴィッド・インスレー |
| 製作総指揮 | サラ・リッシャー ロバート・シェイ |
| 脚本 | ジョン・ウォーターズ |
| 撮影 | デヴィッド・インスレー |
| 音楽 | ケニー・ ヴァンス |
| 音楽監修 | ボニー・グリーンバーグ |
| 出演 | リッキー・レイク ディヴァイン ソニー・ボノ ルース・ブラウン コリーン・フィッツパトリック マイケル・セント・ジェラード デボラ・ハリー レスリー・アン・パワーズ ジェリー・スティラー ショーン・トンプソン ピア・ザドラ ジョン・ウォーターズ |
4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
かのビート・ジェネレーションの代表的作家ウィリアム・バロウズが、1986年、ウォーターズを「POPE OF TRASH(ゴミの教皇)」と呼んだことはよく知られている。それはウォーターズの型破りな映画におけるタブー、悪趣味、グロテスクな表現に対して深い敬愛を示した証であった。一方で、カトリック系の学校に通っていた若き日のウォーターズにとって、バロウズは「悪の天使」のような存在だったという。『裸のランチ』や『ジャンキー』を読み、麻薬や同性愛といった社会が禁じていることを堂々と行い、それを芸術に昇華させる生き方に強い衝撃を受けたウォーターズは、普通でなくていい、自分の神経症や異常性を祝福して生きるべきだという指針を得たと語っている。
彼(バロウズ)と会ったのは80年代で、ビートニク全盛期ではなかった。若い頃は、ビートニクが僕のヒーローだった。最初になりたかったのはビートニクだった。男になることさえも望んでいなかった。彼は無表情な話し方をし、無表情な生き方をしていた。客がいない時もまったく同じだったと思う。それは演技ではなかった。彼は「自分」を演じる術を身につけたが、その「自分」こそが本物だった。彼は「自分」が語った通りの人物だった。そして、決して謝罪しなかった。一度たりとも。ジョン・ウォーターズ
United States • 1997 • 90 minutes • Color • 1.66:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 720p
精神病院よりも効果てきめん。犯罪者が身を潜める集落のお下劣革命!
容赦ない過激さに満ちた『ピンク・フラミンゴ』(1972)『フィメール・トラブル』(1974)に続いて放った『デスペレート・リビング』(1977/日本未公開)は、のちにウォーターズ自らが呼んだ『TRASH 三部作』(上記2作と本作品/いずれも16mm撮影の低予算映画)の最終章を飾る映画であり、反ファシズムを押し出した悪臭漂うお伽話である。ボルチモアの富裕層が暮らす住宅地に居を構えるグラベル一家。この家では地殻変動級の事態が起こりかけていた。精神病院から退院したばかりの妻ペギー(ミンク・ストール)の極度のヒステリーを起こし、パラノイアに陥った挙句、在宅看護師のグリゼルダ(ジーン・ヒル)と共に夫を殺してしまう。ふたりは逃亡の身となり、殺人犯が罰せられずに暮らせる村モートヴィルを目指す。だがそこは女王カーロッタ(エディス・マッセイ)が暴君として君臨する、堕落し切った流刑の地であった・・・。
ーー When viewing this clip, please set resolution to 720pーー
ウォーターズ作品のミューズ、ディヴァインが出演していない唯一の映画であり、本作品を区切りにおよそ4年の間、ウォーターズは映画製作から遠ざかることになる。この休止期間中、自身のキャリアや思想をまとめた著書『ショック・バリュー』(1981)の執筆や、各地で講演活動(スポークン・ワード・ツアー)を行うなど、映像作家としてのアイデンティティを再定義する時期でもあった。だがなによりウォーターズは、自身の作風をアンダーグラウンドなものから、より幅広い観客層、すなわちメインストリームへのアプローチへと転換させる準備期間として捉えていた。現に4年ぶりの監督作『ポリエステル』(1981)では、それまでの過激なユーモアは影を薄め、郊外の生活を風刺するメロドラマへとスタイルを変化させている。同作品では、匂いの出るカードをこすりながら鑑賞するオドラマ方式といったギミックの導入や、より洗練された演出を取り入れるようになり、7年後の次作『ヘアスプレー』へと繋がる商業的な成功への道筋を立てたのである。そうした意味でも、またウォーターズ・フィルモグラフィを語る上でも、本作品は重要な作品となっている。
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
- NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director John Waters, with uncompressed monaural soundtrack
- HDR PRESENTATION OF THE FILM(HDR10)
- One 4K UHD disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
- Audio commentary featuring Waters and actor Liz Renay
- Optional Italian dub track
- New conversation between Waters and film programmer Cristina Cacioppo
- Back to Mortville, a tour of the film's main Baltimore location, led by Waters
- New interview with actors Susan Lowe, Mary Vivian Pearce, and Mink Stole
- Interview with production designer Vincent Peranio
- Trailer
- English subtitles for the deaf and hard of hearing
- PLUS: An essay by critic Grace Byron
Released: JUNE 23, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)
ーー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HDーー
| タイトル | デスペレート・リビング |
|---|---|
| 年 | 1977 |
| 監督 | ジョン・ウォーターズ |
| 製作 | ジョン・ウォーターズ |
| 脚本 | ジョン・ウォーターズ |
| 撮影 | トマス・ロイゼクス ジョン・ウォーターズ |
| 音楽 | クリス・ロビンジェ |
| 出演 | リズ・レネー ミンク・ストール エディス・マッセイ スーザン・ロウ メアリー・ヴィヴィアン・ピアース ジーン・ヒル |
4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
クライテリオン6月リリースの最後を飾る作品は(いま深刻な話題となっている)イランが生んだ映像作家ジャファル・パナヒ監督最新作『シンプル・アクシデント/偶然』(2025)である。彼のフィルモグラフィを紐解くと、『白い風船』『人生タクシー』『ある女優の不在』『チャドルと生きる』『熊は、いない』など、各国の映画賞を受賞した秀作・傑作揃い。本作品も昨年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞。これにより世界三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)すべての最高賞を制覇するという史上4人目の快挙を成し遂げたのである。また先日開催されたアカデミー賞においても、国際長編映画賞(旧・外国映画賞/フランス代表作品として選出)脚本賞にノミネートされている。日本劇場公開が5月8日となっており、作品紹介は割愛させて貰うが、興味ある方は下欄のオフィシャルサイトを閲覧されたい。
Iran, France • 2025 • 103 minutes • Color • 1.85:1 • Persian ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD
ご存じのようにパナヒは、イラン政府から長年にわたり映画製作や出国を禁じられ、投獄も経験している。現在、フランスのレジデント(居住者)となっており、主に同国を拠点に活動。本盤の最終承認も行っている。そんななか、昨年12月、イラン当局はパナヒ監督に対し、特定の思想による国家に対する「宣伝活動」の罪で禁錮1年の判決を欠席裁判で言い渡している。また、2年間の出国禁止と政治・社会団体への参加禁止も命じられた。直近では、本作品のプロモーションや賞レースのため、ロサンゼルス(アカデミー賞出席)やニューヨーク、モロッコなどを来訪。イランに帰国すれば投獄される可能性に直面しているが、キャンペーン終了後にはイランに帰国して未執行の禁錮刑に服す意向を表明していた(アメリカとの戦時下にあるため、今後の動向は不明)。ちなみに共同脚本のメフディ・マフムーディアンは、オスカー式典直前にイランで逮捕・拘束されている。
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
- NEW 4K DIGITAL RESTORATION, approved by director Jafar Panahi, with 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
- SDR / BT.709 PRESENTATION OF THE FILM
- One 4K UHD disc of the film and one Blu-ray with the film and special features
- New conversation between Panahi and filmmaker Ramin Bahrani
- Cannes Film Festival press conference from 2025 featuring Panahi and members of the cast and crew
- Trailer
- New English subtitle translation
Released: JUNE 30, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)
| タイトル | シンプル・アクシデント/偶然 |
|---|---|
| 年 | 2025 |
| 監督 | ジャファル・パナヒ |
| 製作 | ジャファル・パナヒ フィリップ・マルタン |
| 脚本 | ジャファル・パナヒ ナデル・サエイヴァル ジャドメヘル・ラスティン メフディ・マフムーディアン |
| 撮影 | アミン・ジャファリ |
| 出演 | ワヒド・モバシェリ マルヤム・アフシャリ エブラヒム・アジジ ハディス・パクバテン マジッド・パナヒ モハマッド・アリ・エリヤ |