4K UHD BLU-RAY SHORT REVIEW - MURDER ON THE ORIENT EXPRESS ー 短評
| タイトル | オリエント急行殺人事件 |
|---|---|
| 年 | 1974 |
| 監督 | シドニー・ルメット |
| 製作 | ジョン・ブラボーン リチャード・グッドウィン |
| 原作 | アガサ・クリスティー |
| 脚本 | ポール・デーン |
| 撮影 | ジェフリー・アンスワース |
| 音楽 | リチャード・ロドニー・ベネット |
| 出演 | アルバート・フィニー ジャクリーン・ビセット アンソニー・パーキンス マイケル・ヨーク ローレン・バコール イングリッド・バーグマン ショーン・コネリー リチャード・ウィドマーク ヴァネッサ・レッドグレーヴ ウェンディ・ヒラー ジョン・ギールグッド マーティン・バルサム ジャン=ピエール・カッセル レイチェル・ロバーツ コリン・ブレイクリー デニス・クイリー ジョージ・クールリス |
ーーWhen viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HDーー
| Title | MURDER ON THE ORIENT EXPRESS |
|---|---|
| Released | Nov 24, 2025 (from Studio Canal) |
| Run Time | 2:07:25.833 (h:m:s.ms) |
| Packaging | Slipcover in original pressing |
| Codec | HEVC / H.265 (Resolution: Native 4K / DOLBY VISION / HDR10 compatible) |
| Aspect Ratio | 1.70:1 |
| Audio Formats | English LPCM 2.0(48kHz / 24bit), English DTS-HD Master Audio 5.1(48kHz / 24bit) |
| Subtitles | English SDH, French, German |
| Video Average Rate | 87395 kbps (HDR10) / 102 kbps (DOLBY VISION) |
| Audio Average Rate | 2304 kbps (LPCM 2.0 / 48kHz / 24bit / English) |
ーー4K UHD SCREEN SHOTーー
この中に犯人がいる?
ご存じアガサ・クリスティの傑作ミステリーを、名匠シドニー・ルメットがオールスタアキャストで映画化した娯楽大作。1935年。難事件を解決して、大陸横断国際列車オリエント急行に乗り込んだ名探偵エルキュール・ポワロ(アルバート・フィニー)。イスタンブールからロンドンへ向かう列車の一等寝台には、国籍も身分もさまざまな乗客が乗り合わせていた。しかしユーゴのザグレブに差し掛かったあたりで、列車が豪雪のために立ち往生。一夜明けた朝、乗客のひとりラチェット・ロバーツ(リチャード・ウィドマーク)が刺殺体で発見される・・・。1960年代後半から映画製作に進出した英・音楽大手EMI製作。本作品の成功によって気をよくしたEMIは、以後『ナイル殺人事件』(1978)『クリスタル殺人事件』(1980)『地中海殺人事件』(1982)を製作していくことになる。
1974年 第47回アカデミー賞
| 受賞 | 助演女優(イングリッド・バーグマン) |
|---|---|
| ノミネート | 主演男優(アルバート・フィニー)脚色(ポール・デーン)撮影(ジェフリー・アンスワース)作曲(リチャード・ロドニー・ベネット)衣装デザイン(トニー・ウォルトン) |
ーー4K UHD SCREEN SHOTーー
今回紹介するUHD BLU-RAYは、スタジオカナルから2025年11月にリリースされたUK版である。まずは簡単におさらいしておこう。本編はパナビジョンPSR R-200/パナビジョン球面プライムレンズ/1.37:1フルスクリーン撮影。上映アスペクトはピラーボックス1.66:1(欧州)ソフトマット1.85:1(米)ビスタサイズ。BLU-RAYは2013-2014年に北欧版とスペイン版、2017年に2KレストアされたUK版と豪州版、そして2022年に同2Kレストアマスターを採用した米国版(日本語字幕収録/同・国内版)がリリースされている。映像に関しては、UK/豪州版が1.66:1アスペクト、北欧/スペイン版は1.85:1アスペクト、米国版は1.78:1アスペクト収録であった。また米国版のみオリジナルMONOトラックをロスレス収録していない(ロスレス音声は5.1chのみ)。
ーー4K UHD SCREEN SHOTーー
UHD BLU-RAYリリースに関してはちとややこしい。まず2024年に米キーノ・ローバーが4Kリリース。初めて35mmオリジナルカメラネガ(前述)を使用した4Kレストア/HDRグレード版となる。修復作業は、テキサス大学オースティン校のハリー・ランサム・センターに保存されていた素材を用いて、キーノ・インターナショナル所属の映画監督ブレット・ウッド主導のもと、パラマウントと提携する修復施設であるUCLA映画テレビアーカイブとアウトフェストUCLAレガシープロジェクトの協力を得て実施されている。HDRはHDR10とドルビービジョンHDRをサポート。アスペクト比はソフトマット(上下マスク)1.85:1ビスタサイズ。DTS-HD MA5.1と同2.0ステレオトラックを収録。後者は5.1マスターからのダウンミックスとなり、オリジナルMONOトラックは収録されていない。
2025年になると、英スタジオカナルがEMI製作4タイトル(本作品と『ナイル殺人事件』『クリスタル殺人事件』『地中海殺人事件』)を所収した『THE AGATHA CHRISTIE COLLECTION』(UHD BLU-RAY版とBLU-RAY版の2バージョン/BLU-RAYはR-B仕様)をリリース。スタジオカナル版は単品での購入も可能。スタジオカナル版はキーノ・ローバー版と同じく35mmオリジナルカメラネガを採用しているが、修復作業は新たに2017年に設立された英シルバーソルト・レストレーションが担当している(本盤に関しては後述)。アスペクト比は本作品のみピラーボックス(左右マスク)1.70:1ビスタサイズ、他3タイトルはソフトマット1.85:1ビスタサイズ。ロスレス5.1トラックは本盤のみとなり、いずれの作品もロスレス(LPCM)2.0 MONOトラックを収録する。
そして今年1月、本作品を除く3タイトルを前述の米キーノ・ローバーがUHD BLU-RAY化(BLU-RAYとのコンボ/BLU-RAYはR-A仕様)。いずれもスタジオカナル版の4K DSMを採用している。サウンドはオリジナルMONOトラックを収録しているが、スタジオカナル盤とは異なりDTS-HD MA 2.0 MONO収録となっている。現時点で本作品のUHD BLU-RAYリリースは告知されていない。
ーー2022 PARAMOUNT BLU-RAYーー
ーー2024 KINO LOBER(U.S.)4K UHD BLU-RAYーー
ーー2025 STUDIO CANAL(U.K.)4K UHD BLU-RAYーー
さて本盤に関しては、パラマウントによる4KレストアDSMをベースにしているが(シルバーソルト・レストレーションが補正)、エンコードに細かな差がある。前述通りアスペクト比はピラーボックス1.70:1ビスタサイズ。映像転送レートに関しては、キーノ・ローバー版が50~75Mbpsで推移するのに対し、本盤はおよそ65~115Mbpsで推移しており、エンコードの安定性がより高まっている。サウンドに関しては、なんと言ってオリジナルMONOトラックを収録している点で本盤に軍配が上がり、レストア精度も非常に高い。
ーー2012 PARAMOUNT BLU-RAYーー
ーー2024 KINO LOBER(U.S.)4K UHD BLU-RAYーー
ーー2025 STUDIO CANAL(U.K.)4K UHD BLU-RAYーー
本作品の撮影監督は、『2001年宇宙の旅』『スーパーマン』やオスカーを受賞した『キャバレー』『テス』などで知られれるジェフリー・アンスワース。アンスワースはソフトな拡散光をライティング・アプローチとして用いており、それは1930年代の豪華な貴族社会のムードを強調し、際立たせるためのものである。その効果を増幅するために、控えめながらも明るく、濃い影を排したハイキー調のライティングスタイルを組み合わせており、それによって列車内の客室という閉鎖的な空間がエレガントで華やかに描き出されているのがわかろう。画のトーンや触感は舞台となる1930年代の、モノクロのロマン派映画のそれを彷彿させるものとなっており、カラー作品でありながら、パステルカラーを基調としたモノトーン調のカラースキームを実現している。それはまるで、どこか浮世離れした古き良き時代のノスタルジックで豊かなトーンの再現とも言えよう。こうした映像設計の蘇生は、BLU-RAYの再現力では叶わぬものであり、本盤鑑賞の観どころのひとつである。
ーー2024 KINO LOBER(U.S.)4K UHD BLU-RAYーー
ーー2025 STUDIO CANAL(U.K.)4K UHD BLU-RAYーー
またピラーボックスのアスペクトも、登場人物の胸裡を的確に伝え、視覚的な効果を上げている。列車内という極めて狭く限られた空間を活用するため、トラッキングショットやロングテイクなどの繊細なカメラワークを用いて、繊細な心理描写とダイナミックな視覚表現を構築している。アール・デコ調の豪華な車内装飾や洗練された衣装のディテイルを刻印する緻密なフレーミング。スタアたちの表情の機微やメイクアップの質感を際立たせる、頻度の高い「寄り」のショット。全編127分間にわたり、ドラマチックな緊張感を生み出すフレーミングや構図操演の巧みを満喫することができよう。
ーー4K UHD SCREEN SHOTーー
音響エンジニアはリチャード・アッテンボロー監督作や『戦略大作戦』『モナリザ』などのジョナサン・ベイツ(編集監督)『愛と哀しみの果て(オスカー受賞)』『ホワイトハンター ブラックハート』のピーター・ハンドフォード(録音)『シャイニング』『ラストエンペラー(オスカー受賞)』のビル・ロウ(リレコーディングミキサー)。限られた空間を舞台にしたミステリー映画ならではの、閉所恐怖症的な音響デザインの再現は聴き応えがある。トーンは低めながら、明晰を極めた声の質感。全編を通じて明瞭な口跡が披露され、登場人物たちによる知的な言葉の駆け引きへの集中を欠かすことはない。前述した「寄り」のショットでは、フレーム外からの声や効果音、環境音が効果的に配置され、狭い通路や客室に閉じ込められた乗客たちの心理的な圧迫感や、外部から遮断された孤立感が強調されている。
ーー4K UHD SCREEN SHOTーー
音楽は『遙か群衆を離れて』『ニコライとアレクサンドラ』などのリチャード・ロドニー・ベネット。当初監督ルメットは、『シーラ号の謎』『薔薇のスタビスキー』のスティーヴン・ソンドハイムに音楽を依頼するつもりであった。だがスケジュールが折り合わず、その代わりにソンドハイムはベネットを推薦、ルメットも了承した。ルメットはガーシュウィンやコール・ポーターの曲をベースにした現代的なサウンドの音楽を希望していたが、ベネットはラッシュプリントを観て「優雅で華やかな娯楽映画であり、音楽もそれを反映すべきだ」とルメットを説得したという。ベネットは映画のムードを表現するために、ハープ、アルトフルート、ミュートホルン、マリンバを装飾音として用いた小編成のアンサンブルを編成している。披露されるのは1930年代の華やかさ、エキゾチックな東洋の雰囲気、緊迫感あふれるサスペンスの融合した極上のスコア。この時代の優雅さを捉えたロマンチックで壮大なワルツによって特徴づけられるメインテーマは、かつてハリウッド映画で大流行したピアノ協奏曲スタイルの音楽を復活させながら映画の開幕を盛り上げてみせる。
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