APRIL 2026 NEWRELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its APRIL 2026 slate of 4K UHD BLU-RAY(5)and BLU-RAY(2)releases ー Amongst them are:TROUBLE IN PARADISE(1932)GILDA(1946)POINT BLANK(1967) MONTY PYTHON'S LIFE OF BRIAN(1979)and JOHN SINGLETON'S HOOD TRILOGY(1991 - 2001)

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

夜の世界を舞台にした愛憎劇

クライテリオンからアナウンスされた2026年4月リリース・タイトル。ジャンル映画の面白味を味わえる一方、このUHD BLU-RAYラインナップを見ると、サブテーマとしてアメリカ映画のヘイズ・コード(aka. プロダクション・コード/映画製作倫理規定=Motion Picture Production Code/1930年 ー 1968年/1934年から厳格化)または検閲システムが浮かび上がってくる点が興味深い。

まず4月7日に登場するUHD BLU-RAYタイトルは、チャールズ・ヴィダー監督作『ギルダ』(1946)である。第二次大戦末期のブエノス・アイレス。この街に流れ着いた詐欺師ジョニー・ファレル(グレン・フォード)は、思いがけない事がきっかけとなり、カジノのオーナーであるベイリン・マンスン(ジョージ・マクレディ)の下で働くこととなる。マネージャーとしてカジノを仕切るようになったファレルは、マンスンの右腕として裏社会で頭角を現し始める。そんなある時、アメリカ旅行へ出かけていたマンドソンが、旅先で知り合い、結婚したというひとりの女性を連れて戻って来た。彼女の名はギルダ(リタ・ヘイワース)。過去にジョニーと深い関係にあった女性であった・・・。

United States • 1946 • 110 minutes • Black & White • 1.37:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

リタ・ヘイワースを一躍スターダムに押し上げ、文字通り国際的なセックス・シンボルとして輝かせた作品。幾多の点で『上海ジェスチャー』『カサブランカ』『脱出』といった作品を思わせ、一方で性的、あるいは政治的に偏執的であった後期ノワール映画の登場を予感させて興味深い。映画を貫くムードは暴力的で、性的かつ混沌としている。ヘイワースはしばしば明かりを排除された暗闇の中で撮影され、彼女の目には一条の光さえ届かない。そしてもっとも注目すべき点は、『深夜の告白』のバーバラ・スタンウィックや『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のラナ・ターナーとは異なり、ここでのヘイワースはファム・ファタールではないことだ。ギルダは、彼女よりもお互いに関心があるように見える(ゲイをサブテキストに織り込んだ)ふたりの男に挟まれた、チェスの駒のような存在だ。E・A・エリントンの短編小説に基づき、ジョー・アイシンガーが脚色し、マリオン・パーソネットが仕上げ、ヴァン・アップが磨きをかけた脚本は、その点をはっきりと示している。こうした要素が当時のアメリカの批評家を戸惑わせ、その評価も実にさまざま、賛否が分けたのも頷けよう。

本作品はヘイズ・コードによる厳格な自主規制の下にあった時代に製作された映画であり、ヘイワースの放つ危険な魅力を最大化するような衣装デザイン、あまりにも有名なギルダが歌う「Put the Blame on Mame」のストリップシーン、性的魅力を強く香らせる心理描写などに苦心惨憺の跡がうかがえる。賛否が分かれたラストシーンに関しても、多分にコードを意識したものであった。

監督はハンガリー・ブタペスト出身のチャールズ・ヴィダー。20年代初頭に渡米、30年代後半から映画監督としての実力を開花し始めたヴィダーだが、よく言われる作家主義の監督として名前が上がることはない。彼は、雇われた物語の要求に応じた職人監督であり、ホラー映画、スクリューボール・コメディ、犯罪ドラマ、ミュージカルなど、あらゆるジャンルを手掛けている。スタジオのお偉方とは反りが合わなかったヴィダーだが、俳優の演出にはすこぶる優れた才能を示した監督であった。

ヴィダーとヘイワースのコンビ作は『THE LADY IN QUESTION(疑惑の女)』『カバーガール』『カルメン』、そして本作品の4本。1940年代は、ヘイワースが純真で将来を嘱望された主演女優から、気骨のあるセクシーなスーパースタアへと飛躍を遂げた時期でもある。興味深いことに本作品の撮影監督ルドルフ・マテも、この時期にいくつかの映画でヘイワースと仕事をしている。『カバーガール』『今宵よ永遠に』と本作品、そして『上海から来た女』である。マテもまたハンガリー出身の映画人であり、すでに1920年代、『裁かるゝジャンヌ』『吸血鬼』などで頭角をあらわし、1930年代にハリウッドに移ってきた撮影監督だ。本作品で披露される申し分のない光と影の明暗法、引き締まったディープフォーカス・ショット、決定的瞬間の緊張を伝えるクローズアップなど、すべてが巨匠の手腕の賜物と言えよう。

オープニングも忘れ難い。オープニングタイトルが終わると暗転、暗い虚空から物語は始まり、カメラは暗闇の中を上へ移動して、床の上を転がるサイコロを捕らえてみせる。しゃがみ込み、乱れ髪のファレルの姿。カメラはいちどトラックバックし、アイレベルからローアングルへと滑らかにティルトアップ。続いて現れるのは、光が欠如した夜の裏道だ。次第に物語は夜の華やかさを増していくが、この薄汚れたムード、すべてを無にするような真っ暗な虚空、悲観論に覆われた明暗のイメージが潜在し続けていく。見事である。

ー When viewing this clip, please set resolution to 720p ー

本作品は2016年にクライテリオンBLU-RAYが登場しているが、2016年版は35mmオリジナルカメラネガから生成された35mmファイングレインマスターを使用した2Kデジタルレストア版であった。本盤はオリジナルに立ち返ってやり直した最新4Kデジタルレストア版であり、HDR10およびドルビービジョンHDRグレーディングが施されている。そのため前述したマテの明暗法が、さらなる高みに押し上げられて再現されることは間違いなかろう。

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, with uncompressed monaural soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Audio commentary by film critic Richard Schickel
  • Interview with film-noir historian Eddie Muller
  • Program featuring filmmakers Martin Scorsese and Baz Luhrmann discussing their appreciation for Gilda
  • "The Odyssey of Rita Hayworth," a 1964 episode of the television show Hollywood and the Stars
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • Plus: An essay by critic Sheila O'Malley

Released: APRIL 7, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

タイトルギルダ
1946
監督チャールズ・ヴィダー
製作ヴァージニア・ヴァン・アップ
原作E・A・エリントン ジョー・アイシンガー
脚本マリオン・パーソネット
撮影ルドルフ・マテ
音楽モリス・W・ストロフ
出演リタ・ヘイワース グレン・フォード ジョージ・マクレディ ジョセフ・カレイア ジョー・ソーヤー ルース・ローマン

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

視覚的なウィット。人間の愚行に対する洗練された世俗的な視点。ルビッチの最高傑作のひとつ

ソフィスティケイテッド・コメディの名手エルンスト・ルビッチが、ハンガリーの劇作家ラズロ・アラダール の1931年の戯曲『A Becsületes Megtaláló(正直な発見者)』を映画化した名画クラシック『極楽特急』(1932)の登場である。ヴェネツィアで知り合ったガストン(ハーバート・マーシャル)とリリー(ミリアム・ホプキンス)は、紳士と淑女を装っていたが実は名うての泥棒で、互いの腕前を知ると意気投合、恋心も手伝ってコンビを組むことになる。ときが経ち、ふたりが新たなターゲットに選んだのは、パリの香水会社のオーナーで、大金持ちの未亡人マリエット・コレ(ケイ・フランシス)。ふたりは秘書と被用者としてマリエットに近づくことに成功し、彼女の財産を狙おうと画策する。だがマリエットがガストンに惚れてしまったことから、事態は思わぬ方向に展開する・・・。

本作品は、ルビッチ・タッチについて言及されるきっかけとなった映画であり、ルビッチのお気に入りの作品のひとつであった。ルビッチの作品は肝心な場面で多くを語らず、卓越した省略と思わせぶりのテクニックで観客の想像力を刺激する。何を隠して、何を観せるか。ルビッチ・タッチと呼ばれる視覚的なメタファーは、定義するのは難しいものの、軽やかにほのめかす表現手法を見分けるのは容易だ。たとえば本作品では時計のモンタージュ。セクシャルな関係の進展を映し出すシーンで顕著に表れている。これほどまでにかすかなエロティシズムを表現できたのは、同時代のスタンバーグやシュトロハイム、あるいはデミルと異なり、積極的に喜劇を手掛けたことにも起因している。ヘイズ・コード執行前夜、初期のハリウッドの性に対する開放性に浸りつつ、ロマンスと不貞という概念を洗練された笑いと風刺の中で描いたのである。

一方でコード執行後の1935年には、本作品の上映は承認されず、1968年までリバイバル上映もされていない。1943年、パラマウントがミュージカル版製作を試みたが、これもまた承認されなかった。言い換えれば本作品はコードが執行される前の時代の、ルビッチ・タッチの萌芽を楽しめる貴重な作品なのである。本作品が大恐慌時代に製作されたことも大きな驚きだ。ルビッチは大恐慌時代の不安を(いつものように軽やかに)描きながらも、その問題をロマンティックな錯乱として捉えている。大恐慌時代の夢物語でもある本作品が、1940年のルビッチの傑作『桃色の店』との大きな異なる点はこうした点にあろう。刺激的な題材を落ち着き払った演出で描き、危なげで繊細な心の機微を巧みに洞察した本作品は、のちのスクリューボール・コメディのスタンダードを確立し、あらゆるロマンティック・コメディに影響を与えている。だがあらゆる監督が、ガストン、リリー、マリエットの逢瀬で笑わせ、ため息をつかせながら深く考えさせるムードを模倣してきたが、その多くは不毛な努力に終わっている。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, with uncompressed monaural soundtrack restored by the UCLA Film & Television Archive and The Film Foundation, with funding provided by the Hobson/Lucas Family Foundation
  • SDR / BT.709 PRESENTATION OF THE FILM
  • Audio commentary featuring Scott Eyman, biographer of director Ernst Lubitsch
  • Introduction by filmmaker Peter Bogdanovich
  • NEW video essay by critic David Cairns
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by critic Farran Smith Nehme

Released: APRIL 14, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)

タイトル極楽特急
1932
監督エルンスト・ルビッチ
製作エルンスト・ルビッチ
原作ラズロ・アラダール
脚本サムソン・ラファエルソン
撮影ヴィクター・ミルナー
音楽W・フランク・ハーリング
出演ミリアム・ホプキンス ケイ・フランシス ハーバート・マーシャル チャーリー・ラグルス エドワード・エヴェレット・ホートン C・オーブリー・スミス ロバート・グリーグ

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

2月にクライテリオンでは『ルビッチ・ミュージカル』と題したBLU-RAY BOX(Eclipse Series)をリリースする。『ラヴ・レイド』(1929)『モンテ・カルロ』(1930)『陽気な中尉さん』(1932)『君とひととき』(1932)の4作品を所収。いずれもリージョンA地区初BLU-RAY化となる貴重なラインナップである。ご興味ある方は、是非ともご覧あれ。

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
PYTHON-APPROVED 4K-UHD SPECIAL EDITION

モンティを見ずしてヨーロッパ文明は語れない!笑いで現代を救えるか?

はちゃめちゃなアーサー王と円卓の騎士の物語『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』を大ヒットに導いた、お笑い集団モンティ・パイソンがトム・ストッパードとメル・ブルックスの知性を融合して作り上げた『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』(1979)の登場である。時はローマ帝政嫡熟期、西暦33年。ナザレのイエスが生まれた同じ日に、その隣の馬小屋でひとりの男児が生まれた。その男児ブライアン(グレアム・チャップマン)こそが救世主であると、東方の三博士に間違えられたその日から、彼の人生は世にも数奇なものとなる。普通の人として成長したブライアンは、出生の秘密を知り、反政府ゲリラ組織に加わり、囚われの身となり、脱走して逃亡生活を送るうちに狂信的な民衆に救世主と間違えられ・・・。

United Kingdom • 1979 • 94 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

イエス・キリストの隣人であり、同じ時代同じ日に生まれたことが最大の不幸であった男の、痛ましいほど滑稽な物語である。パイソンズ全員で脚本を仕上げ、『~ホーリー・グレイル』に続いてテリー・ジョーンズが監督を務めた本作品は、尽きることのないインスピレーションにあふれた宗教風刺満載の快作である。だが元ビートルズのジョージ・ハリスンの救援がなければ、日の目を見ることもなかった作品でもある(以降10年間の英国映​​画の新たな勢力となるハンドメイド・フィルムズが誕生した瞬間であった)。すでに企画段階から本作品を格好の標的と考えた宗教保守派や自称道徳家たちが声高に非難し始め、当初のスポンサーであるEMIは、物議を醸すテーマとそれに伴うさらなる激しい反発を恐れて土壇場で尻込みしたのだ。ハリスンの尽力もあり、その半年後の1978年9月、TVミニシリーズ『ナザレのイエス』のために製作されたセット(チュニジアのモナスティール近郊)でクランクイン。3か月の撮影後、2か月のポストプロダクション作業を経て、79年1月に映画は完成。

そして同年8月。映画が公開されると各国で大騒動が起きた。あまりに宗教的風刺が強い内容から、英国をはじめとするヨーロッパ地域で極めて厳しい検閲(かつてのX指定相当)を受け、上映禁止運動が巻き起こったのである。1988年にマーティン・スコセッシ監督作『最後の誘惑』が公開されるまで、映画によってこれほどまでに宗教的な憤りが巻き起こったことはなかったと言われている。一方でよくあることだが、こうした批判的な騒動が興行収入を押し上げ、北米では英国映​​画の歴代興行記録を大きく書き換えた。本作品が語られる時、この騒動が前面に押し出されることが多い。だが賞賛されるべきことは、パイソンズ以下才気あふれる製作陣が、教会や信仰という概念に安易な批判を向けたいという誘惑に抗い、質の高いユーモアと巧みな風刺を用いて組織宗教全般の不条理と偽善を指摘したという点にある。

PYTHON-APPROVED 4K-UHD SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised by Monty Python's Terry Gilliam, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Alternate 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • Two audio commentaries featuring Pythons Gilliam, John Cleese, Eric Idle, Terry Jones, and Michael Palin
  • The Story of Brian (2007), a making-of documentary
  • The Pythons (1979), a documentary about Monty Python filmed on location for Life of Brian
  • Behind-the-scenes Super 8 film shot by Palin
  • Five deleted scenes with commentary by the Pythons
  • Original British radio ads starring Mrs. Cleese, Mrs. Gilliam, Mrs. Idle, and Palin's dentist
  • Original illustrated recording by the Pythons of an early version of their screenplay
  • Animated stills gallery
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by film critic Bilge Ebiri

Released: APRIL 14, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD

タイトルモンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン
1979
監督テリー・ジョーンズ
製作ジョン・ゴールドストーン
製作総指揮ジョージ・ハリソン デニス・オブライエン
脚本グレアム・チャップマン ジョン・クリーズ テリー・ギリアム エリック・アイドル マイケル・パリン
撮影ピーター・ビジウ
音楽ジェフリー・バーゴン
出演グレアム・チャップマン ジョン・クリーズ テリー・ギリアム エリック・アイドル マイケル・パリン

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

裏切り者に情は無用!犯罪組織へ復讐する一匹狼!

親友と妻に裏切られた犯罪者が、復讐のための追跡を繰り広げる傑作ハードボイルド『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967)は、4月リリース・ラインナップのハイライトと呼べる作品だ。初めて35mmオリジナルカメラネガが使用され、4KレストアとHDR(HDR10とドルビービジョンHDRをサポート)/SDRグレードを監督ジョン・ブアマン自ら監修、最終承認を与えている。

この映画のストーリーは一見シンプルで、オールドスクールだ。リー・マーヴィン演じるウォーカーは、戦友マル・リース(ジョン・ヴァーノン)から大金強奪計画の協力を依頼される。計画は難なく進むが、奪った金は9万3000ドルほどで、組織犯罪のボスたちに多額の借金を抱えたリースにとって期待していたほどの金額ではなかった。しかもリースはウォーカーを裏切り、銃弾を浴びせ、妻リン(シャロン・アッカー)を奪って逃走。九死に一生を得たウォーカーは、謎めいた男ヨスト(キーナン・ウィン)と組んでリースを追跡。手始めにリースの女となったリンを探し出すが、怯えるリンは自殺。リースも暗躍する犯罪シンジケートのなかに身を潜めていた。残す手掛かりはリースと暮らしているという、リンの妹クリス(アンジー・ディキンソン)であった・・・。

United States • 1967 • 92 minutes • Color • 2.35:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 2160p/4K

原作はご存じクライム・ノワール・パルプ小説『悪党パーカー/人狩り』。巨匠ドナルド・E・ウェストレイクが、リチャード・スターク名義で書いた『悪党パーカー』シリーズ第1作の映画化である。これをレイフ・ニューハウスと デヴィッド・ニューハウスが脚色(ウェストレイクが存命中はパーカー名を使用できない規定があり、主人公の名はウォーカーに置き換えられている)。監督は英国出身のジョン・ブアマン。ブアマンはBBCのドキュメンタリーからキャリアをスタートさせ、1965年の初の長編映画『5人の週末』(英国グループ、デイヴ・クラーク・ファイヴ主演)を監督。『5人の週末』はアメリカで高評価で迎えられ、MGMとプロデューサーのジャド・バーナードの目に留まり、本作品の監督に抜擢されたのである。すでに出演契約を済ませていたリー・マーヴィンは、ロンドンで『特攻大作戦』を撮影している合間を縫ってブアマンと会って意気投合、ブアマンは異例の贈り物を受けることとなった。MGMはマーヴィンに脚本の承認、最終編集、その他のクリエイティブ・コントロール権を与えていたが、そのすべてをブアマンに委ねたのである。

ブアマンもマーヴィンもニューハウスの脚本に難色を示しており、まず『フレンチ・コネクション2』のアレクサンダー・ジェイコブスとブアマン(ノンクレジット)が共同で脚本を改訂、最終稿を仕上げている。そしてフィルム・ノワール、ヌーヴェル・ヴァーグ、そしてポップアートの要素を融合させた、極めて独創的と言える犯罪映画のひとつ、モダニズム・ハードボイルドを創り上げていくのである。前述した通り本作品はオールドスクールな復讐劇ではあるものの、その演出テクニックは決して古風なものではない。その最たる例は「ウォーカーが本当に生きているのか」「実は冒頭で射殺されたのではないか」という疑問を観客に抱かせる、鮮烈で幻覚的な視覚体験を生み出したことにあろう。原作にある非線形の語り口をより練り上げた複雑な回想構成は、ストーリーに時空を超えた感覚を付与し、増幅させているのである。

ホームシアターでの高品位な鑑賞では、ゴダール、トリュフォー、レネといったヌーヴェル・ヴァーグの監督たちの足跡が作品全体を彩っていることに、より気づかされるに違いない。プロットは断片的で、夢うつつの感覚を生み出し、断片化された時系列と混沌としたリズムの中に引き摺り込んでいく。緩やかなシークエンスは、突如として勃発する暴力行為によって大きく中断される。現在と混交させ、摩擦を生じさせる過去のフラッシュバックは、詩的ともいえるリズムを有している。同じシーンの反復も巧い。効果音、ミニマルな音楽、ナレーションは、観客を混乱させ、まるで他人の夢に侵入したかのような感覚に陥らせるために用いられており、結末は曖昧でありながら非常に象徴的だ。こうした映像リズムの構築は『有頂天時代』『グラン・プリ』の編集者ヘンリー・バーマンの功績であり、当時MGMの編集監督者であった伝説の編集者マーガレット・ブースの貢献によるものである。

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD

撮影監督は『ティファニーで朝食を(共同)』『ピンクの豹』のフィリップ・H・ラスロップ。ブアマンとラスロップは厳正な構図と複雑な色彩設計を有した映像を生み出す過程で、印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの影響を隠そうとはしなかった。ふたりの関心は光と色彩の表現だ。対象が持つ固有の色という観念を捨て、自由な色彩を筆触単位で配置したのである(筆触分割)。さらにはっきりとした輪郭を描き、映像の力感を追求した線描の表現だ。

舞台となるロサンゼルスはモダニズム建築になぞられる(コンクリートの川床、大きく伸びる橋、空の牢獄といった様式化された構図など)。ウォーカーが人間らしさを取り戻すにつれ、映画は寒色系から暖色系へと移行し、衣装やセットに使用された特定の色によって特徴づけられる(リンのアパートのクールブルーと灰色、クリスが纏うバターイエローのバスローブ、リースのペントハウスにみる鮮やかな赤い壁)。こうした様式化された配色操演と美術デザインは、ギミックのような感覚とは無縁であり、ウォーカーの内面状態と完璧に一致するように映像調整されている。

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD

長らく続いたヘイズ・コードが改訂されて、表現規制が緩和されたのが1966年9月のこと。それからわずか2年後の1968年11月にコード制そのものが撤廃され、新たにMPAA映画レーティングシステムが発効、G(すべての年齢の人が入場可)M(成熟した観客向け)R(16歳未満は親または成人保護者の同伴がないと入場不可)X(16歳未満は入場不可)の4つのレーティングが導入された。本作品がヘイズ・コード改訂と撤廃との、ごく短い中間期の産物だということを記しておかねばならない。

暴力や性描写、禁止用語や作品トーン(映画全体の情緒的な調子/雰囲気)の規制が押し広げられたなかで、本作品ではより厳しい規制を回避するためにSMA(成人向け推奨)指定を利用している。脚本のサブプロットでは組織犯罪を大企業やアメリカ政治と同一視しており、ウォーカーが挑戦状を叩きつける犯罪シンジケートは、金と権力に囚われた男たちによって腐敗したあらゆるアメリカの組織のメタファーとなっている。この映画に込められた社会風刺は、当時も今も斬新な感覚にあふれている(だが当然ながら、コード改訂前には検閲対象となった事案である)。

またSMA指定を受けたことにより、性行為、不倫や乱交、さらに残忍で冷酷な暴力といった、それまでの規範基準に違反するテーマを探求することができた。それでもブアマンは画面上での過激かつ直接的な暴力や性描写は避け、暗示するかフレームの外で起こるように演出している。こうした演出と編集テクニックが、独特で幻覚的な視覚体験を生み出した一因となっているのは間違いない。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised and approved by director John Boorman, with uncompressed monaural soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Audio commentary featuring Boorman and filmmaker Steven Soderbergh
  • Interview with Boorman conducted by author Geoff Dyer
  • NEW interview with critic Mark Harris
  • NEW reflections on the film by filmmaker Jim Jarmusch
  • NEW program on the midcentury Los Angeles architecture featured in the film, with historian Alison Martino
  • The Rock (1967), a short documentary on Alcatraz and the making of the film
  • Interview with Marvin from a 1970 episode of The Dick Cavett Show
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by Dyer

Released: APRIL 21, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD(BLU-RAY 1-DISC)

ー When viewing this clip, please set resolution to 2160p/4K

タイトル殺しの分け前/ポイント・ブランク
1967
監督ジョン・ブアマン
製作ジャド・バーナード ロバート・チャートフ アーウィン・ウィンクラー(ノンクレジット)
原作リチャード・スターク
脚本アレクサンダー・ジェイコブス デヴィッド・ニューハウス レイフ・ニューハウス
撮影フィリップ・H・ラスロップ
音楽ジョニー・マンデル
出演リー・マーヴィン ーナン・ウィン アンジー・ディキンソン キャロル・オコナー ジョン・ヴァーノン ロイド・ボックナー マイケル・ストロング シャロン・アッカー ジェームズ・シッキング

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 3-DISC 4K UHD + 1-DISC BLU-RAY SPECIAL EDITION

4月のクライテリオンUHD BLU-RAYリリース、その最後を飾るのはアフリカ系アメリカ人監督ジョン・シングルトンが自ら「HOOD TRILOGY」と称した『ボーイズ・ン・ザ・フッド』(1991)『ポエティック・ジャスティス/愛するということ』(1993)『サウスセントラルLA』(2001)を所収する『ジョン・シングルトン:フッド三部作』である。HOODとは映画のサブジャンルであるHOOD FILMを指すもので、社会的に疎外されたコミュニティ(特に都市部の貧困層)の背景と現実に焦点を当てた作品である。このサブジャンルの本質は、旧態依然としたステレオタイプを再考し、見過ごされてきた世界への窓を開き、都市生活に関する固定観念に疑問を投げかけるものだ。その特徴は、コミュニティに見られる日々の困難と不屈の精神の両方を反映した、生々しさと説得力を兼ね備えたストーリーテリングにある。観客は表面的な見方を超えて多様な視点を理解するよう促され、社会問題の複雑さを浮き彫りにすることで(しばしば暴動にも繋がってしまうような)批判的な対話を促し、観客の共感を掻き立てるのである。

HOOD FILMの起源は、アメリカ都市部で大きな文化的、かつ社会的変化が起きた1980年代後半から1990年代初頭に遡る。1980年代半ばまで、アフリカ系アメリカ人(あるいは少数民族やマイノリティ)の生活や苦難をテーマにした作品は、主流の映像作品と比べて圧倒的に少なかった。このギャップを埋めようと立ち上がった先駆的な映画製作者たちは、スラム街の現実を浮き彫りにする物語に目を向け、徐々にアフリカ系アメリカ人のプロデューサー、監督、脚本家が台頭、数々の映画が製作されると同時にあらゆる基準が引き上げられた。とりわけ、映画スタジオの多くの幹部が6桁の高給取りで、基本的に「NO!」を言い続けるために雇われているハリウッドで、それまでのシステムの枠に囚われない作品も製作され始め、商業的にも批評的にも成功を収めている。この時代のクライマックスであり、ハイライトであるのがスパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)である。

その大きな流れとうねりの中で産声を上げたのが『ボーイズ・ン・ザ・フッド』である。これはシングルトンの長編映画デビュー作であり、アカデミー監督賞に最年少かつ初のアフリカ系アメリカ人としてノミネートされるという歴史的な快挙を成し遂げた。その画期的な成功によりシングルトンは世界的な称賛と映画界の重鎮たちの尊敬を集め、作品自体も学術界と大衆文化の両面で議論の的にまでなったのである。物語は、悪循環を断ち切り、未来ある子供たちを守るために、何かをしなければならないという、切実な社会への呼びかけがテーマとなっている。青春物語として、あるいは人生の断片として、『ボーイズ・ン・ザ・フッド』がどのように受け止められようとも、シングルトンの脚本と演出からは悲劇が溢れ出ており、そのすべてが真摯で誠実だ。

現在では、ジャンルを問わず、映画はより多様な登場人物や社会的に意義のあるテーマを扱っている。だがその多くは、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『ボーイズ・ン・ザ・フッド』といった初期のHOOD FILMの影響下にあると言ってもあながち間違いではなかろう。この波及効果は驚くべきものがある。その影響はHOOD FILMが持ち得るテーマ性に留まらず、台詞のスタイル、編集のテンポ、視覚・聴覚的テクニックにも及び、その結果、社会の現実をより生々しく、より複雑に、そして誠実に描く映像作家の輩出へと繋がっている。HOOD FILMの成功によって映画業界は、より包括的な空間へとシフトし、ヘイズ・コードの時代には想像することさえ出来なかった物語を受け入る許容性を持つこととなったのである。

シングルトンは、2019年、51年の生涯を閉じた。クライテリオンでは(残念ながら)わずかに薄れ始めたシングルトンへの関心をふたたび呼び起こし、映画界への多大な貢献者としてのシングルトンに着目。HOOD三部作を、映画および大衆文化、そしてアフリカ系アメリカ人の歴史と文化を再認識させる重要な作品として位置づけ、同時にアフリカ系アメリカ人の若者文化全体に及ぼした重要な影響を読み解いていく。思えば『ボーイズ・ン・ザ・フッド』も、公開から35年の月日が流れた。もはやクラシックであり、未見の方も多かろう。『ポエティック・ジャスティス/愛するということ』や『サウスセントラルLA』も然りだ。だがHOOD三部作は、社会問題や文化的アイデンティティ、コミュニティ内の葛藤についての、意義深い体験へと観客を誘ってくれるに違いない。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

  • IN THE 4K UHD EDITION: THREE 4K UHD DISCS of the films and ONE BLU-RAY with the special features
  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION of BOYZ'N THE HOOD, supervised and approved by director John Singleton, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • ALTERNATE DOLBY ATMOS SOUNDTRACK(BOYZ'N THE HOOD only)
  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION of POETIC JUSTICE(with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack)and BABY BOY(with 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack)
  • HDR PRESENTATION OF ALL THREE FILMS(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Audio commentaries on all three films featuring Singleton
  • NEW conversation between filmmakers Ryan Coogler and Regina King
  • NEW documentary on Singleton's filmmaking process featuring publicist Cassandra Butcher, casting director Kimberly Hardin, and collaborator Paul Hall
  • NEW audio interviews with actors Taraji P. Henson and Tyrese Gibson
  • Archival interviews with cast and crew
  • Press conference from 1991
  • Deleted scenes, audition footage, music videos, and trailers
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An essay by critic Julian Kimble

Released: APRIL 21, 2026
List Price: $124.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 4-DISC SET)$99.95 USD(BLU-RAY 3-DISC)

BOYZ'N THE HOOD
原題は(BOYZ=BOYS、'N= ~の中に、THE HOOD=NEIGHBORHOOD)犯罪率の高い貧困地域や黒人居住区に住む若者たちを意味するスラングである。不確かな未来に葛藤する3人のBOYS(キューバ・グッディング・Jr、アイス・キューブ、モリス・チェスナット)の人生を、痛ましくも切実に描き出した傑作。アカデミー監督・脚本賞ノミネート作品。

United States • 1991 • 112 minutes • Color • 1.85:1 • Englishー When viewing this trailer, please set resolution to 2160p/4K

タイトルボーイズ’ン・ザ・フッド
1991
監督ジョン・シングルトン
製作スティーヴ・ニコライデス
脚本ジョン・シングルトン
撮影チャールズ・スミス
音楽スタンリー・クラーク
出演キューバ・グッディング・Jr モリス・チェスナット アイス・キューブ ラリー・フィッシュバーン ニア・ロング アンジェラ・バセット ティラ・フェレル レジーナ・キング

POETIC JUSTICE
『ボーイズ'ン・ザ・フッド』に続くシングルトン長編監督第2作。ふたたび生まれ育った街に視線を向け、詩だけしか愛せない女性(ジャネット・ジャクソン)がふたたび愛を見つけるまでの心の旅を綴る。当時、批評家に冷遇されたが、近年では鮮やかなストーリーテリングへのこだわりに対する評価が高まっている。共演のトゥパック・シャクールは本作品公開から3年後、射撃され他界。

United States • 1993 • 109 minutes • Color • 1.85:1 • Englishー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

タイトルポエティック・ジャスティス/愛するということ
1993
監督ジョン・シングルトン
製作ジョン・シングルトン スティーヴ・ニコライデス
脚本ジョン・シングルトン
撮影ピーター・ライオンズ・コリスター
音楽スタンリー・クラーク
出演ジャネット・ジャクソン トゥパック・シャクール ティラ・フェレル レジーナ・キング ジョー・トリー Q=ティップ ロリ・ペティ カンディ・アレクサンダー

BABY BOY
ヒップホップの2大スタア、タイリース・ギブソンとスヌープ・ドッグを迎えて描く青春ドラマ。二十歳になっても大人になり切れず、自分の将来も見出せずに苦悩する青年(ギブソン)の姿を、ユーモアと深いヒューマニズムで綴ったHOOD三部作、その最終章。ロサンゼルス南部の環境が同地域に住む黒人男女関係に与える影響と、そこから生じる緊張を浮き彫りにする。

United States • 2001 • 130 minutes • Color • 1.85:1 • Englishー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

タイトルサウスセントラルLA
2001
監督ジョン・シングルトン
製作ジョン・シングルトン
製作総指揮ドワイト・ウィリアムス
脚本ジョン・シングルトン
撮影チャールズ・ミルズ
音楽デヴィッド・アーノルド
出演タイリース・ギブソン スヌープ・ドッグ ヴィング・レイムス オマー・グッディング タラジ・P・ヘンソン モニーク

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