12月のクライテリオン『ピーウィーの大冒険 4K』『アメリカン･ユートピア 4K』ほか【海外盤Blu-ray発売情報】

DECEMBER 2025 NEW RELEASES- THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its DECEMBER 2025 slate of 4K UHD BLU-RAY（4）and BLU-RAY（1）releases. Amongst them are: HIS GIRL FRIDAY（1940）I KNOW WHERE I'M GOING！（1945）PEE-WEE'S BIG ADVENTURE（1985）SALAAM BOMBAY！（1988）and DAVID BYRNE'S AMERICAN UTOPIA（2020）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
3-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

新聞記者は恋も仕事も大忙し！

今年も早いもので、クライテリオンの12月リリース･タイトルの紹介である。まず12月2日登場となるのが、名匠ハワード･ホークスが贈る傑作スクリューボール･コメディ『ヒズ･ガール･フライデー』（1940）である。シカゴ･エグザミナー紙の編集長ウォルター･バーンズ（ケイリー･グラント）は、元妻でかつての花形記者ヒルディ･ジョンソン（ロザリンド･ラッセル）が保険業者ブルース･ボールドウィン（ラルフ･ベラミー）と結婚して専業主婦として暮らすことを知る。記者稼業に嫌気が差し、堅気な暮らしを望んだのである。ヒルディに未練たっぷりのウォルターは、そうはさせじと様々な策を弄して彼女の出発を遅らせ、挙句は乗り気でないヒルディに最後の取材を依頼する。だが早速取材に出かけたヒルディは、警官殺しの罪で有罪を宣告された死刑囚と面会するが･･･。

原作は1928年の大ヒット舞台劇『フロント･ページ』。この戯曲の映画化はルイス･マイルストンの1931年監督作『犯罪都市』が最初だが、ホークス版は2度目の映画化となる。脚本は『遊星よりの物体Ｘ』『紳士は金髪がお好き』のチャールズ･レデラーによるもので、原作からのもっとも大きな変更はヒルディ･ジョンソンを男性記者から女性記者にしたことで、このアイデアはホークスの提案によるものであった。本作品以降の映画化作品に、 ビリー･ワイルダー監督／ジャック･レモン＆ウォルター･マッソー共演『フロント･ページ』（1974）テッド･コッチェフ監督／バート･レイノルズ＆キャスリン･ターナー共演『スイッチング･チャンネル』がある。

クライテリオンでは2017年にBLU-RAYをリリースしているが（2Kレストア）本盤は2024年4K UHD BLU-RAY-BOX『コロンビア･クラシックス･コレクション VOL.4』（ソニー･ピクチャーズ／SPE）に所収されていた2023年4Kレストア･マスターを使用。HDRはHDR10とドルビービジョンHDRをサポート。また2017年BLU-RAYに特典収録されていた『犯罪都市』（4Kレストア）を収録している。

3-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: DECEMBER 2, 2025
List Price: $59.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 3-DISC SET）$49.95 USD（BLU-RAY 2-DISC SET）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

目の肥えた映画ファンを唸らせる傑作ロマンティック･コメディ

『黒水仙』『赤い靴』で知られるマイケル･パウエルとエメリック･プレスバーガー監督作『渦巻』（1945）。主演は高い評価を得た主演第1作『バーバラ少佐』（1941年）以来の銀幕復帰となるウェンディ･ヒラー。彼女が演じるジョーン･ウェブスターは、物質主義者で上昇志向が人一倍強く、お金こそがこの世のあらゆる幸福への近道だと信じる26歳の女性。若くして苦労人でもある彼女は、裕福な初老の実業家と結婚するため、ロンドンからヘブリディーズ諸島のキロラン島へと旅立つ。だが嵐に見舞われ、上陸を前にしてマル島で足止めを喰ってしまう。そこで知り合ったのが人当たりの良い海軍士官トークィル･マクニール（ロジャー･リヴセイ）。さらに渡航船の船頭ルーリ･モー（フィンレイ･カリー）風変わりな鷹匠のバーンスタプル大佐（キャプテンCWRナイト）トークィルの幼なじみで貧しいが誇り高い貴族階級の女性カトリーナ･ポッツ（パメラ･ブラウン）そして島の住民たちと時を共有するうちに、頑なに閉ざされていたジョーンの心に変化が訪れる･･･。

彼女を巧みに支えるのは、彼女を説得しようとするイギリス海軍士官役のロジャー・リヴジーと、それぞれが細心の注意を払ってそれぞれの役柄のために選ばれたと思われる、あまり知られていない多くの役者たちだ。これらの脇役たちはそれぞれ個性豊かで、彼女たちの言動は主人公たちの運命に大きな影響を与える。言い換えれば、『アイ・ノウ・ホエア・アイム・ゴーイング』は、映画製作におけるアンサンブルの原則を鮮やかに体現した作品と言えるだろう。26歳のジョーン・ウェブスターは、人生の行く末を常に自覚していた少女として描かれている。そして物語が進むにつれ、彼女はロンドンからヘブリディーズ諸島のキロラン島へ、年老いた裕福な実業家と結婚するために旅立つ。嵐に見舞われ、彼女は人当たりの良い海軍士官と他のハイランドの人々と共にマル島に8日間漂流する。そしてウェブスターは人生で初めて、頭だけでなく心で生き始める。このシンプルなストーリーラインは、豊かな想像力とウィット、そして感情的な洞察力に満ち、心から楽しめる爽快なロマンチックな体験へと導いていく。激しい感情表現を期待する向きは肩透かしを食うかもしれないが、パウエル＆プレスバーガー監督作品ならではの、成熟したストーリーテリングの巧みを味わって頂きたい。撮影監督は『カンタベリー物語』『さらばベルリンの灯』のアーウィン･ヒリアー。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: DECEMBER 9, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY 1-DISC）

私はこれまで、このように風雨の匂いがする映画は見たことがない。また、商業化された見せ場ではなく、人びとが実際に暮らす風景をこれほど美しく描いた映画も見たことがない。作家レイモンド･チャンドラー

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

ボンベイの路上に生きるストリート･チルドレンの友情と愛、そして人びとの喜びと悲しみ…

ヴェネチア国際映画祭オゼッラ･ドゥオロ（脚本）賞受賞『ミシシッピー･マサラ』や、同･金獅子受賞の『モンスーン･ウェディング』などで知られるインド出身の女流監督ミーラー･ナーイル。映画界の出自はドキュメンタリーだが、その彼女が商業映画に転向、初の長編映画となった『サラーム・ボンベイ！』の登場である。国内ではDVD、BLU-RAYともに未発売の作品で、いきなりのUHD BLU-RAY化は海外でも驚きをもって迎えられている。働いていたサーカス団から置き去りにされた少年クリシュナ（愛称チャイパウ／シャフィーク･サイイド）。途方に暮れた彼は、ボンベイ行きの列車に乗り、故郷の村（そしておそらく彼をサーカス団に売った母親のもと）へ戻るという、漠然とした計画を実行に移す。だがクリシュナは読み書きができず、自分の村がどこにあるのか、あるいは村の名前さえも正確には分からず、ボンベイの路上で暮らし、そして命を落としていく幾多のストリート･チルドレンの仲間入りをしてしまう･･･。監督ナーイル監修･最終承認を経た、35mmオリジナルカメラネガからの最新4Kデジタルレストア／HDRグレード版。

本作品の製作過程は、映画自体と同じように興味深い。ドキュメンタリー出身のナーイルは、製作スタッフとともにボンベイのストリートチルドレンを集め、彼らの体験について語り合い、その多くが暮らすストリートや駅、バザール、歓楽街などを訪れた。こうしたインタビューから複数の人生を織り交ぜた脚本が誕生。その後、130人近くの子供たちが数週間にわたってワークショップに参加したが、それは演技を教えるためではなく、カメラの前で自然な振る舞い方を教えるためのものであった。そのワークショップから選ばれた24人のストリートチルドレンは、本格的なレッスンを経て、慎重にキャスティング。主人公クリシュナに扮したシャフィーク･サイイドは、11歳という年齢以外の経歴は不明だったが、彼は驚くほど才能豊かで感受性の強い少年だったという。ストリートチルドレンの起用とボンベイでのロケーション撮影によって、監督ナーイルはドキュメンタリーのような生々しいリアリティと、壮大なドラマを観るような感情のエネルギーを兼ね備えた傑作を作り上げることに成功したのである。音楽は南インド古典音楽ヴァイオリンの巨匠L.スブラマニアム。カンヌ国際映画祭カメラ･ドール（新人監督賞）および観客賞受賞。アカデミー外国語映画賞ノミネート。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: DECEMBER 9, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY 1-DISC）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

盗まれた最愛の自転車をめぐる大冒険！

まさにコメディ･カルトの真髄。型破りで、予想外で、キッチュで、それでいてニッチな世界観に没入できる快作『ピーウィーの大冒険』（1985）の登場である。風変わりなコドモオトナのピーウィー･ハーマンの愛する赤い自転車が、白昼堂々盗まれた！ インチキ占い師に「自転車は（テキサス州サンアントニオの）アラモの果てにある」と告げられたピーウィーは、目的の地までヒッチハイクを開始、アメリカ中を駆け巡る人生最大の冒険に旅立つが･･･。80年代を代表するコメディアンのポール･ルーベンスと、当代きっての鬼才にしてハリウッドの異邦人ティム･バートンのシアワセな結婚！ 在籍していたディズニー･アニメーションから離れたバートンの長編初監督作であり、「ノーマルな人びとと上手く付き合えない」という彼の肖像画でもある。予算700万ドルのローバジェット作品ながら、当時のピーウィー人気も手伝って興収4000万ドル超を稼ぎ出したスマッシュヒット作。いまやバートン作品に欠かせない存在であるダニー･エルフマン初の長編映画音楽、『狼たちの午後』『ラスト･タイクーン』などで知られる写実派ヴィクター･J･ケンパーのカラフルなカメラ美術、テレンス･マリックやウォルター･ヒル作品の編集者ビリー･ウェバーによる絶妙なカッティングなど、観どころ聴きどころ満載。2011年ワーナーBLU-RAYの仕上がりが及第点スレスレだっただけに、本盤でのクオリティアップを大いに期待したい。監督バートン監修、最終承認を得た35mmオリジナルカメラネガからの最新4Kデジタルレストア／HDRグレード版！

ピーウィー･ハーマンは、アメリカのコメディアン、ポール･ルーベンスによって生み出され、演じられたコメディキャラクターである。1970年代、ルーベンスが即興コメディチーム「グラウンドリングス」の一員だった時に「一度見たら忘れられないキャラクターを作る」ために誕生させたもので、1950年代の子供向けテレビ番組のホストであったピンキー･リーを下敷きにしている。ピーウィーのキャラクターはコメディクラブからHBOのコメディ番組、大好評を博した舞台公演を経て、いよいよ映画版スピンオフ製作の運びとなる。ルーベンスは脚本執筆に着手する傍ら、プロデューサーのウィリアム･E･マッキューンとともに監督を選考。その際にふたりの目に留まったのが、『フランケンウィニー』を監督したティム･バートンであった。ルーベンスは、2000年にリリースされた『ピーウィーの大冒険』のDVDの音声解説で「映画が始まった瞬間、バートンのスタイルに惚れ込んだ」と語るほどの惚れ込みようであった。ポールのリクエストに見事に応えたバートンは、後の監督作品へと受け継がれる独特なスタイルを確立、その目を見張るような視覚的センスは必見となろう。

ポールは僕の兄が作った『フォービデン･ゾーン』（リチャード･エルフマン監督のカルトミュージカルコメディ）という深夜映画を見たんだ。僕は初めて音楽を担当して、自分のバンド（オインゴ･ボインゴ）の曲を提供した。本当に変わったカルト映画なんだ。ポールはそれを見て、ちょっとメモを取った。「もし映画を撮ることになったら、この人に電話しなきゃ」って。信じられないことに、彼はずっとそのメモを持っていて、ポールがティムと『ピーウィーの大冒険』の音楽について話すことになったとき、僕の名前を挙げたんだ。映画の打ち合わせでティムと会うことになり、最初に思ったのは、もしかしたらバンド曲が欲しいのかなってことだった。ところが彼は「いや、君にスコアをやってほしいんだ」って言う。「スコア？僕が？」って感じだったよ。だってスコアの正式なやり方なんてまったく知らなかったから。ダニー･エルフマン

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: DECEMBER 16, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY 1-DISC）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
PRODUCER- AND DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

目も眩むほどの幸福と感動のブロードウェイ･ショーがいま、幕をあける

1974年から1991年までロックバンド、トーキング･ヘッズのメンバーであったデヴィッド･バーン。1984年、ジョナサン･デミが『サムシング･ワイルド』『羊たちの沈黙』を放つ前夜に監督したトーキング･ヘッズの『ストップ･メイキング･センス』は、いまなお史上最高のライブ映画のひとつと称されている。ひたすら唄い踊るバーンの姿を追った『ストップ～』から41年、今度はスパイク･リーが監督、絶賛されたツアー『アメリカン･ユートピア』のブロードウェイ公演を追った恍惚のドキュメンタリーを生み出した。バーンが歌の持つ超越的な力でアメリカの不安定な政治情勢に立ち向かう姿を、没入感と臨場感極まる視点で捉えた音楽スペクタクルに仕上げている。アニー･B･パーソンによる振付と、バーンのライブパフォーマンスの特徴とも言える独創的なミニマリズムが融合した本作品は、国家の現状（危機、希望、そして変革の可能性）に対するバーン独自の考察を織り交ぜながら、高揚感溢れる新旧21曲の楽曲で構成される。撮影は『 I SHOT ANDY WARHOL』『ザ･ローリング･ストーンズ シャイン･ア･ライト』のエレン･クラスで、監督リーとは『サマー･オブ･サム』以来、26年ぶりの顔合わせとなる。SONYシネアルタ･ヴェニス／6K撮影作品。クラスによる総監修、監督リーとバーンの最終承認を得た4K DIマスターからの4Kリマスター版。

PRODUCER- AND DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: DECEMBER 16, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY 1-DISC）

『アメリカン･ユートピア』作品詳細

NEWS：11月のクライテリオン『アイズ ワイド シャット 4K』『地獄の天使 4K』ほか』
NEW & BACK NUMBER：世界映画Hakken伝 from HiVi