オーディオ新時代を実感する新鋭プリメインアンプ
スタイリッシュなデザインと、確かな品質で高感度のオーディオファン、音楽ファンから高い評価を得ているWiiM。特にストリーミング関連機器のクォリティの高さには定評があり、世代、性別、国境を越えて、広く親しまれている。
今回、紹介するのは充実したネットワーク機能を備えたプリメインアンプ、WiiM Amp、WiiM Amp Proの上位モデルとして登場したWiiM Amp Ultraと、ネットワーク機能を持たないDAC内蔵のプリメインアンプ/パワーアンプWiiM Vibelink Ampだ。
高剛性を追求したアルミニウム筐体はWiiMの証。ただAmp/Amp Proと比べると本体サイズは両モデルともわずかに大きく、Amp Ultraについては直感的な操作性を重要視したという3.5インチの大型タッチパネルを装備している。
写真(左)WiiM Vibelink Amp、(右)WiiM Amp Ultra
Integrated Amplifier
WiiM Vibelink Amp
オープン価格(実勢価格5万2,800円前後)
●出力 : 100W×2(8Ω)、200W×2(4Ω)
●接続端子 : アナログ音声入力1系統(RCA)、デジタル音声入力2系統(光、同軸)
●寸法/質量 : W200×H63×D200mm/2.05kg
WiiM Amp Ultra
オープン価格(実勢価格8万9,760円前後)予価
●出力 : 100W×2(8Ω)、200W×2(4Ω)
●接続端子 : アナログ音声入力1系統(RCA)、デジタル音声入力3系統(光、USB Type A、HDMI ARC)、サブウーファープリ出力1系統(RCA)
●対応ネットワークプロトコル : Chromecast Audio、DLNA、Spotify Connect、TIDAL Connect、Qobuz Connect、Alexa Cast
●対応ネットワークサービス : Spotify、Amazon Music、TIDAL、Qobuz、ほか
●備考 : Bluetooth 5.3対応
●寸法/質量 : W200×H75×D200mm/2.45kg
●備考 : AirPlay2対応、Wi-Fi6E(IEEE802.11 b/g/n/ac。2.4GHz、5GHzデュアルバンド対応
●問合せ先 : (株)エミライ
艷やかな音のWiiM Amp Ultraはドライブ力に全く不安なし
まずWiiMのアンプ一体型モデルの最高峰として登場したWiiM Amp Ultraから見ていくことにしよう。前述のディスプレイを除くとスマートな外観はWiiM Amp、WiiM Amp Proを踏襲しているが、背面のスピーカーケーブル接続部はバナナプラグ専用(付属のコネクターを使って裸線やYラグも使用可能)で、各種端子類も本体内にすっきりと収められるというフラットな仕上がりだ。
端子はHDMI ARC、光デジタル、アナログRCA、LAN、USB Type Aなどを備え、サブウーファーの接続が可能な「SUB OUT」端子も搭載済だ。専用アプリWiiM Homeから操作可能なグラフィック/パラメトリックイコライザー機能についても、WiiM Amp、WiiM Amp Proからそのまま引き継いでいる。
DAC素子はESSテクノロジー製の新世代チップ「ES9039 Q2M」。クラスDアンプ素子は高効率と高S/Nを両立したテキサス・インスツルメンツ(TI)製「TPA3255」。そしてオペアンプにはTI製「OPA1612」を6個投じるという大盤振る舞い。超低歪み、低ノイズを徹底して追求している姿勢が見て取れる。
HiVi視聴室のリファレンススピーカーBowers & Wilkins 805 D4との組合せで、Qobuzのハイレゾ音源を中心に実際のサウンドを確認してみたが、まずその静けさ、質感の滑らかさに感心させられた。それは単にノイズっぽさがないというだけでなく、リンダ・ロンシュタットのヴォーカルが艶やかで、透き通るような清々しさを伴ない、左右のスピーカー中央の空間にスッと定位するのである。安価なデジタルアンプにありがちな刺々しさ、かさつきは皆無だ。
ダイアナ・クラールの「テンプテーション」は活気に満ちて、ベースのリズムが気持ちよく弾む。音の骨格がしっかりとして、しかも明確。にじみを感じさせない爽快なサウンドで、空間の拡がりも窮屈にならず、実に清々しい。価格的にはややアンバランスとなる805 D4との組合せでも、ドライブ力に不安はなく、音量を思い切って上げても、帯域バランスが崩れず、上ずった感じにならない。この安定感は立派だ。
WiiM Vibelink Ampの端子は、RCAアナログ入力1系統、同軸/光デジタル入力とシンプル。コンパクト筐体ながら100W+100Wの高出力アンプを内蔵、様々なスピーカーの正確かつ強力な駆動を目指した。ストリーマーとの連携は、アナログRCAケーブルを用いて、ストリーマー側で音量調整をする使い方が利便性が高い
WiiMのネットワークプレーヤー機能内蔵プリメインアンプの最高峰モデルが、このWiiM Amp Ultraだ。WiiM Amp Proに比べてDACチップが「ESSテクノロジー製ES9038 Q2M」から「同ES9039 Q2M」に、アンプ出力が「60W×2(8Ω)」から「100W×2(8Ω)」とそれぞれ進化。ディスプレイ部も3.5インチタッチパネル式画面となるなど、仕様が大きく異なっている。スピーカー端子はバナナプラグ専用だが、裸線やYラグ接続用のアダプターが同梱されている
805 D4を小気味よく鳴らすVibelink Ampの新時代サウンド
続いてWiiM Ultra、WiiM Pro Plus、WiiM Pro、WiiM Miniといった音量調整機能付きのストリーマー(ネットワークプレーヤー)との連携を想定したDAC内蔵のプリメインアンプVibelink Amp。DACおよびアンプ素子、そしてオペアンプと、基本設計はWiiM Amp Ultraを踏襲しており、定格出力も一緒だ。HDMI ARC、LAN、USB、SUB OUTなどの接続端子は省略されている。
今回はアンプ自体の潜在能力を見極めるため、WiiM同士ではなく、デラのミュージックサーバーN1A/3、デノンのSACDプレーヤーDCD-SX1 LIMITED、コードのD/AコンバーターHugo2、B&W 805 D4などとの組合せで、アナログ/デジタル入力のサウンドを確認したが、いずれも全体に刺激を抑えた穏やかなサウンドで、805 D4が小気味よく反応する。
空間の拡がり、質感の滑らかさ、ベースの躍動といったところでは、デジタル入力の方が好ましく感じられたが、総合的な表現力ということでは甲乙つけ難い仕上がり。軽やかなリズム感といい、演色のないナチュラル再現性といい、随所でWiiM Amp Ultraに通じるアンプとしての素姓のよさを感じ取れた。
我々のようなオーディオ、オーディオビジュアルマニアが長年親しんできた重厚長大を良しとするオーディオの流儀とは一味も二味も違う世界を提示して見せた貴重な2モデル。軽やかに奏でる、聴き心地のいいサウンドには、新しいオーディオの時代の到来を感じさせるだけの説得力があった。
>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』