4K UHD BLU-RAY REVIEW:LETHAL WEAPON
| タイトル | リーサル・ウェポン |
|---|---|
| 年 | 1987 |
| 監督 | リチャード・ドナー |
| 製作 | リチャード・ドナー ジョエル・シルヴァー |
| 脚本 | ショーン・ブラック ジェフリー・ボーム(ノンクレジット) |
| 撮影 | スティーヴン・ゴールドブラット |
| 音楽 | マイケル・ケイメン |
| 出演 | メル・ギブソン ダニー・グローヴァー ゲイリー・ビューシイ ミッチェル・ライアン トム・アトキンス ダーレン・ラヴ トレイシー・ウルフ エド・オロス アル・レオン グランド・L・ブッシュ スティーヴ・カーン ドン・ゴードン |
4K SCREEN CAPTURE
| Title | LETHAL WEAPON |
|---|---|
| Released | Jun 24, 2025 (from Warner Bros.) |
| Run Time | 1:49:31.564 (h:m:s.ms / Theatrical), 1:57:02.014 (h:m:s.ms / D.C.) |
| Packaging | Slipcover in original pressing, SteelBook (Inner print) |
| Codec | HEVC / H.265 (Resolution: Native 4K / HDR10) |
| Aspect Ratio | 1.85:1 |
| Audio Formats | English Dolby Atmos (48kHz/24bit/Dolby TrueHD 7.1 compatible), English DTS-HD Master Audio 2.0 (48kHz, 24bit), French Dolby Digital 5.1, Spanish Dolby Digital 5.1, Italian Dolby Digital 5.1, German Dolby Digital 5.1, Japanese Dolby Digital 2.0, Spanish Dolby Digital Mono |
| Subtitles | English SDH, French, German, Italian, Japanese, Spanish, Danish, Dutch, Finnish, Norwegian, Swedish, Chinese |
| Video Average Rate (Theatrical) | 78490 kbps (HDR10) |
| Video Average Rate (D.C.) | 78617 kbps (HDR10) |
| Audio Average Rate (Theatrical) | 3702 kbps (English Dolby Atmos / 48kHz / 24bit / English), 2019 kbps (DTS-HD Master Audio 2.0 / 48kHz / 24bit / English) |
| Audio Average Rate (D.C.) | 3251 kbps (English Dolby Atmos / 48kHz / 24bit / English) |
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究極を超え絶対死をもたらす《人間兵器》人は奴を《リーサル・ウェポン》と呼ぶ!
今年に入って『セブン』『アマデウス』『ダーティハリー』などのUHD BLU-RAYをリリースしてきたワーナーだが、6月は『007 ジェームズ・ボンド - ショーン・コネリー・6フィルム・コレクション』、そして1987年のスマッシュヒット作である『リーサル・ウェポン』をリリース。ここで紹介する後者は、かつてテレビの常套手段と思われていたバディ(相棒)コップの設定を、伝統的な西部劇スタイルと融合させた傑作アクションである。このジャンルでは既にウォルター・ヒルの痛快作『48時間』(1982年)があったが、本作品によって独自のジャンルとして確立されたのは紛うことなき事実だ。タッグを組むのはマーティン・リッグス(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ(ダニー・グローヴァー)。マータフは50歳に手が届いた良き家庭人で「I'm too old for this sh*t - 年寄りにはこたえる(当時としては斬新な台詞)」が口癖の部長刑事。片や、深い悲しみを腹に溶け込ませながらロサンゼルスの汚れた街で一日を生きる理由を探している《人間兵器》。リッグスとマータフは共にベトナム帰還兵であり、リッグスは超一級の腕利きだ。マータフが幸せな家庭生活を送っている一方で、リッグスはPTSDとサバイバー症候群に苛まれ、海辺のトレーラーハウスで心が冷えた生活を送っている。このふたりが市警で思いがけない出会いを果たす。
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「発狂寸前」と陰口を叩かれているリッグスに対して、マータフはあからさまに距離を置く。だが「発狂」のスイッチが入るまでは一緒にいて楽しい、抗えない魅力を持つ男だと気づき始めると、一気にふたりの緊張が解け出していく。本作品は80年代後半のアクション映画に新たな活力を与えたばかりではなく、ヒューマニティーの真髄を高らかに謳った作品だ。人間の脆さ、孤独、怒りを大胆に描き出しつつ、その解毒剤として欠かさぬユーモアを以って真摯な友情を提示する。強烈で、面白く、暴力的でありながら、決して過剰な演出とテクニックに陥らない。そこには監督のリチャード・ドナーをはじめとするあらゆる才能の完璧な融合とそれに伴う化学反応、そして今日のハリウッドのスタジオが忘れがちである予測不能な映画マジックがある。公開から38年経った今でも、本作品が大衆娯楽活劇におけるロールモデルであり続けている所以である。さらにひと言付け加えるなら、 本作品は愛すべきクリスマス・ムービーでもある。オープニングタイトルで流れるのはボビー・ヘルムズの1957年ヒット曲『ジングルベル・ロック』。この曲はムードを演出するためだけのお飾り的音楽ではない。クリスマスにリッグスはマータフに出会い、その夜にマータフの家にやって来る。満ち溢れた家族の絆と暖かい喧噪、そして誰もがリッグスを大切に迎え入れる。それはクリスマスならではの出来事だったかもしれないが、このひとときの実感が凶悪事件解決よりも彼を救う。そして、終盤でテレビに流れる『クリスマス・キャロル』のエベニーザー・スクルージのように、リッグスは自らの過ちに気づき、立ち直り始める。そうだ。誰もが彼にエールを送らずにはいられないのだ。
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撮影はオスカー・ノミネートされた『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』『バットマン フォーエヴァー』の英国人撮影監督スティーヴン・ゴールドブラット。70年代にスチール写真家から映画撮影監督に転身。英国で撮影した『アウトランド』『ハンガー』『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』で知名度を上げ、アメリカ(ニューヨーク)に招かれた『コットンクラブ』に続く初のハリウッド撮影作品となる。主要撮影はパナビジョン・パナフレックス・ゴールド/35mm球面レンズ/1.33:1アスペクト撮影。アクションショットではパナグライドを多用している。パナグライドはパナビジョン開発のスタビライザー(手ブレ補正装置)で、ステディカムと異なる独特の浮遊感を生み出し、臨場感生成に大きなる効果を上げている。ゴールドブラットによれば、本作品の重要なテーマのひとつは「メル・ギブソンとダニー・グローヴァーの肌の色を的確なコントラストで、かつバランスよく撮影する」ことであったという。これはUHD BLU-RAYの注目点のひとつにもなっている。
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この映画で参考にしたのは『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967)でフィリップ・H・ラスロップが行ったスタイルだ。すべてのシーンにカラーチャートを作成し、過剰な照明や派手な色彩演出を避けた。高感度のフィルムを使い、できる限り少ない照明で撮り、現実味のある被写界深度を表現した。ベースとなる色は明るい色ではなく、非常に柔らかなアースカラーだ。クライマックスの連続するアクションはコダック5294を使った。多くの照明は必要なく、照明はキッカー(斜光)だけで十分だ。私は水を使うのが好きで、ハリウッド大通りでのアクションではコンドルのアームにアーク灯を取り付けて、通りの水面にキッカーを当てている。水はあらゆる場面で役に立つ。露出を良くし、あらゆるものを際立たせる。肉厚な映像にするには、濃いネガフィルムが必要だ。クライマックスのアクションは(開放絞り値)T2.8で撮影している。T2.3で撮影していたら、影が明るすぎてひどい出来になっていたはずだ。従来のアナモフィックレンズは使いたくなかった。なぜならT2.8以下の絞り値ではレンズが使い物にならないと思ったからだ。そこで新しいスーパーテクニスコープ(スーパースコープ235を84年に復活させた撮影方式/スーパー35の前身)で撮影して2.35:1スコープサイズで行こうとしたが、当時は最終の仕上がりまで2~3週間かかったため却下となった。撮影監督スティーヴン・ゴールドブラット
2012 WARNER BLU-RAY
2025 WARNER 4K UHD BLU-RAY
本作品のBLU-RAYは、2006年、35mmインターポジからの2Kレストア/1層25Gb/VC1コーディック(映像平均転送レート23.6Mbps)/1.78:1ハイビジョンサアスペクト仕様で登場している。2006年版は深刻なアーティファクトに悩まされたものであったが、2012年、画質を改善したHDリマスター(2層50Gb/VC1)が登場している。今回の4Kマスターは初めて35mmオリジナルカメラネガ(OCN)を使用。入念なクリーニングを経たOCNは、ワーナーMPI(モーション・ピクチャー・イメージング)で4Kスキャン。その後の4Kデジタルレストア/HDRカラーグレードもMPIが担当している。カラーグレード(HDR10のみ)監修は4K HDR『ゴッドファーザー』『ダーティハリー』などのMPIシニアカラリストのヤン・ヤーブロー。LUT(ルックアットテーブル)はコダック100T 5247/400T 5294(ナイトショット)35mmフィルムストックをベースとしたMPIオリジナル。映像平均転送レートは2012年BLU-RAYの3倍超となる78.5Mbpsを記録。鑑賞時に劇場公開版とディレクターズカットを選択可能。後者の追加ショットはわずかながら画質の後退を確認できる。
2012 WARNER BLU-RAY
2025 WARNER 4K UHD BLU-RAY
2006年BLU-RAY画質を改善した2012年HDマスターではあるが、残存するアーティファクトや傷痕、平坦なハイライト、黒ツブレや退色、赤味の強い肌色、そしてかろうじて許容できる解像感であった。新しい4Kレストア・マスターにはワーナーの自信が感じ取れ、これまでの状況を一変させている。まずなんと言ってもオリジナルの1.85:1アスペクトが再現されたこと。そして精細感の改善は全編を通じて視認でき、輪郭補正を含めてギミック的な加工とも無縁(デジタル撮影作品に慣れた目には軟調に映るかもしれないが)予想以上にフィルムルックな仕上がりとなっている。その結果、リッグスとマータフの大顔絵や姿絵の描画が飛躍的に向上。被写界深度の再現に関しても然りである。この2点に関して少なくともワーナーは、撮影監督ゴールドブラットのシューティングテーマを実現したと言えよう。粒子感は非常に細かく、破綻の少ない均一性をみせる。それでもいくつかの欠点はある。ゴールドブラットが語っているように、当時はまだ撮影後のフレーミング処理の自由度がなく、重要なアクションが常にフレーム内に残るようにブローアップやパンニング処理も行われている。それに伴う解像感の後退は光学処理ショットのそれと近似する。但しオリジナル素材に伴う現象であり、オーサリング等に伴うエラーではないことを承知されたい。
2012 WARNER BLU-RAY
2025 WARNER 4K UHD BLU-RAY
HDRグレーディングの恩恵も目覚ましい。HDR10のピーク輝度は995 nits、平均輝度は197 nits。測色と彩光の管理への取り組みは画に新たな活力を与え、この年代の映画のHDRキャリブレーションとしてはアグレッシブな印象となっている。本作品は絢爛なテクニカラーのような色調とは無縁だ。ゴールドブラッドの言葉通り、明るい色味や派手な原色は抑えられている。それでも色彩は明度と鮮明さを取り戻し、均質的だったトーンを払拭、より有機的で自然な色調へと改善されている。ゴールドブラッドが細心の注意を払ったとされる、白人と黒人の肌の色の描き分けと精度は誰の目にも明らか。こうした肌質肌色の精妙な描画力は、本盤の大きなセールスポイントとなろう。
4K SCREEN CAPTURE
アカデミー音響(録音)賞にノミネートされた音響エンジニアは『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』のビル・ネルソン(録音)『大統領の陰謀』『バード』でオスカーに輝くディック・アレクサンダーとレス・フレッショルツのコンビ(リレコーディングミキサー)同じく『バード』でオスカー受賞のヴァーン・ポア。サウンドに関しては、リマスター・オリジナル2.0ステレオトラックがDTS-HD MA 2.0(プロロジックサラウンド)収録されるほか、新たにリミックスされたドルビーアトモス・サウンドトラックを収録する。ちなみに2006年BLU-RAYではロッシーDD5.1(640 kbps)DD2.0(192 kbps)、2012年BLU-RAYではDTS-HD MA5.1(16ビット/2276 kbps)DD2.0(192 kbps)が収録されていた。まず2.0トラックだが、今回初のロスレス化となる(音声レートは上欄スペック表を参照)。オリジナル・サウンドトラックの真正性を重んじるオリジナル尊重派のシネフィルにとって、忠実で温かみのある音彩再現は満足度の高いものとなろう。但し、2.0トラックは劇場公開版のみの収録となるので注意されたい。オリジナル尊重派からは顰蹙を買うかもしれないが、ドルビーアトモス再生環境にある方は、2.0トラックをアップミックス再生してみるのも一興だ。思わぬ効果があり、オールドファンにとって当時ロードショー劇場での鑑賞を追体験させるものであった。
4K SCREEN CAPTURE
アトモス・リミックスを担当したのは、『北北西に進路を取れ』『コンスタンティン』『ダーディハリー』などのアトモス・リミックスや、『マルタの鷹』『捜索者』などのMONOレストアを手掛けた、ワーナーPPCS(ポストプロダクション・クリエイティブ・サービス)のサウンドミキサーであるダグ・マウンテンである。ワーナー作品に関してのアトモス・リミックスの「顔」となっており、当分の間はマウンテンの技量を楽しむことになろう。アトモス・リミックスのアプローチは控えめで、派手な効果と一線を画すものの、オリジナルのムードを損なうことなく、空間表現を絶妙にモダナイズ、ハイトチャンネルを統合することで心地よい没入感を高めている。フロントステージは総じてミッドレンジの分解能と明瞭度の改善を聴取することができ、さまざまな発声、その口跡の魅力を余すところなく伝えている。LFEエンハンスは決して攻撃的ではないが、随所で十分な効果を上げている。アトモス・トラックで鑑賞してとりわけインパクトがあったのは、銃声と音楽だ。
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まず銃声。リッグス愛用の軍用拳銃ベレッタM92FS、マータフのオールドスクールなS&W M19、さらにはリッグスの狙撃場面で使われるセミオートモデルH&K PSG1、ハリウッド通りで乱射されるH&K HK94A3やコルト XM177などなど、その動作音から着弾・跳弾を含めて描き分けが絶品で、どの場面も聴覚を存分に刺激してくれる。『ジョン・ウィック』などの作品と異なるのは、オリジナルの音づくりが銃声への偏愛を感じさせながら、かつて映画館に響き渡った西部劇の銃声を巧妙かつ作為的に強調していることだ。内臓に響くディフューズされた低音域はその好例。こうした旨味がアトモス・トラックでみごと再現された。
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そして音楽。作曲はマイケル・ケイメン、そしてご存じエリック・クラプトンが担当する。本作品以前のケイメンには『デッドゾーン』『未来世紀ブラジル』『ハイランダー/悪魔の戦士』といった映画音楽があったが、実のところ、ピンク・フロイド、クイーン、デヴィッド・ボウイなどといった幅広いアーティストの楽曲における優れたアレンジャーとしての知名度の方がはるかに高かった。そんなケイメンを本格的に映画音楽の世界へと導いたのが、英国TVドラマ『刑事ロニー・クレイブン』(原題:EDGE OF DARKNESS)の作曲だ。ケイメンはクラプトンと『刑事ロニー・クレイブン』を共同で手掛け、英国で絶大な人気を博し、英国アカデミー賞の最優秀オリジナルTVスコア賞を受賞した。『刑事ロニー・クレイブン』の楽曲は『リーサル・ウェポン』の編集を手掛けたスチュアート・ベアードにも強い印象を与え、ベアードは監督リチャード・ドナーに推薦、とんとん拍子で採用が決まっている。ドナーは「クラプトンのギターサウンドをそのまま持ち込んでくれるだろう」と期待していたというが、ケイメンがクラプトンに加えて、ジュリアード音楽院時代からの旧友でジャズ・サックス奏者のデヴィッド・サンボーンを同行させたことで、期待以上の功績を上げることになる。
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ケイメンはふたりのソリストとオーケストラを融合させながら、リッグスとマータフを表現している。クラプトンのギターはリッグスのキャラクターをモチーフにしており、その音色は孤独で繊細、一方で傲慢で暴力的な感情も響かせる。対照的にサンボーンのサックスはマータフだ。「年寄りにはこたえる」と疲労感を滲ませ、世の中を憂いて憤慨してもいるが、内なる強さと道徳心を示す根強くソウルフルな音色を湛えている。全編を通してギターとサックスは、時に独立して、時には一体化し、切り離すことのできない密接な関係を構築している。そこには明確なテーマは存在しない。だがケイメンはギターとサックスによるリフやモチーフの繰り返しを用いることで、リッグスやマータフだけでなく、観客の内面にまで緻密に楽音が構成されていくような頻度の高い映画音楽の在り方を構築してみせたのだ。それも驚くべき完成度で。そしてギターとサックスの音色は、パワフルなオーケストララインに絶妙に組み込まれ、激しく躍動的なアクション場面へと響き渡っていく。これぞアトモス・トラック最大の聴きどころである。
UHD PICTURE - 4.5/5 SOUND - 4/5
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写真トップのスチールブックは米国版。スチールブック版を同梱、その他特典満載のアルティメイト・コレクターズ・エディションもUK版(写真)で購入可能。UHD BLU-RAYは米国版と同仕様・スペック。リージョンALLのBLU-RAYも同梱するが、4Kマスター未使用、2012年BLU-RAYマスターのリユースとなる。但し、スリップBOXとディスクの観覧制限(レイティング)マークは固定。
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