オーディオメーカー謹製アプリに組み込めることがQobuzのアドバンテージ
数多くの音楽ストリーミングの配信サービスが存在しているが、スマホ再生を第一に、それに加えてスマートスピーカーでの再生を想定したサービスが主流であり、そのため音声フォーマットも、MP3やAAC、Ogg Vorbisなど、通信環境に関わらず安定した伝送が可能で、通信コストも抑えやすいロッシー圧縮フォーマットの音源を採用している。
Amazon MusicやApple Musicはオーディオ機器との連携に難あり
音楽配信の「定額使い放題=サブスク」サービスでは、いかに多くのユーザーに選ばれ、しかも使い続けてもらえるか、というマスの支持が勝負となるわけで、絶対数の多いスマホ/携帯プレーヤーユーザーがメインターゲットとなる当然のこと。本格的なオーディオ機器での再生は、あまり重視されていないのが実情だ。
ではAmazon Music UnlimitedやApple Musicなど、ハイレゾ音源の配信を行なっているサービスについてはどうだろう。Amazon Musicは、デノンやマランツ(D&Mグループ)のネットワーク対応オーディオ機器で採用している「HEOS」、あるいはヤマハ「MusicCast」、あるいはスマートスピーカーで広く知られているソノスの「Sonosアプリ」など、Amazon Music Unlimitedでのハイレゾ再生に対応したオーディオ機器も存在している。
ただ、これはオーディオ機器全体から見ると、ほんの一握り。192kHz/24ビットに達するAmazon Music Unlimitedのハイレゾ音源のフルスペック再生ができるオーディオ機器は、ごく一部に限定されているのが実情だ。
Apple Musicへの対応となると、さらにハードルは高くなる。本サービスは、基本的にオーディオメーカーに対して、アプリケーション間でアルバム、楽曲のデータや、機能、特徴を共有するためのソフトウェア的な仕組み(専門的にいうところのAPI[アプリケーション・プログラミング・インターフェイス])を開示していないようだ。
おのずとオーディオメーカーが作る独自の操作アプリで、Apple Musicがダイレクトに再生できるオーディオ機器はほぼ存在せず、同一ネットワーク内のスマホ/タブレット/Macからのデータを受けて再生するAirPlay / AirPlay2での対応にとどまっているというわけだ。
ここで“ほぼ”と表現したのは、一部Android OSを採用することで、Apple Musicの最大192kHz/24ビットのハイレゾ音源再生をサポートしている機器(たとえばEversoloのDMPシリーズなど)が存在するため。
携帯音楽プレーヤーについても、Android OSを採用し、Amazon Music UnlimitedやApple Musicの再生ができる製品が数多く登場している。
API提供に積極的なQobuzはオーディオ機器との親和性抜群
対するQobuzは、APIの提供に積極的で、時には技術サポートも行なうという。各オーディオメーカーは、そのAPI情報を元に、自らの独自アプリ内にQobuz再生機能を盛り込んでいる。デザイン、レイアウト、各種機能の設定など、ユーザーは使い慣れた画面設計がされたアプリでQobuzのストリーミングサービスが享受できるわけだ。
リンが作る「LINN」アプリ
ルーミンが作る「LUMIN」アプリ
WiiMが作る「WiiM Home」アプリ
エバーソロが作る「Eversolo Control」アプリ
オーレンダーが作る「Aurender Conductor」アプリ
アトールが作る「ATOLL Signature2」アプリ
実際にiPhoneのLINNアプリからQobuzを選び、IDとパスワードを入力しログインすると、見慣れたデザインでQobuzの様々な情報が画面上に表示される。リンのオーディオ機器のオン/オフが可能であり、音声出力を可変に設定してあれば、このアプリ上で音量調整ができる。
純正のQobuzアプリでは「ディスカバリー」と表記されるトップ画面が、LINNアプリではいくつかの要素に区分けされたり、「マガジン」が割愛されたり表現は微妙に異なっているが、楽曲選択機能は不足はない。
私の場合、家ではリンのネットワークプレーヤーを使用し、出先ではアステル&ケルンの携帯音楽プレーヤーSP1000を持ち出して、イヤホンで楽しむことが多いが、再生場所が変わっても、基本的な使い勝手、機能性は変わらない。
LINNアプリで入力した各種データは、アステル&ケルンSP1000のQobuz用アプリ(Open APP Serviceから、一度パソコンにダウンロード、SP1000に転送してからインストールしている)にもしっかりと反映され、家で聴いているプレイリストがそのまま再生可能。これは実に便利だ。
現段階では、音楽にまつわる様々な情報を発信するQobuz Magazineは、未対応となるケースも多いようだが、SP1000のQobuz用アプリなど、本機能を実装しているアプリも登場している。
「Qobuz」再生メソッド研究【 ① Qobuz純正アプリ】
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17755281
「Qobuz」再生メソッド研究【② オーディオ機器操作用アプリ】
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17755286
「Qobuz」再生メソッド研究【③ サードパーティ製アプリ】
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17755290
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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』