SACDとCD毎に最適な音質に仕上げられた凄みを伝える歌声がまっすぐ届く
美空ひばりの歌声をSACDとCDで聴き比べながら味わえる、唯一のパッケージソフトである。ステレオサウンドより2016年に発売された全8曲・45回転LP2枚組『美空ひばり』に、新たな2曲を追加した全10曲・SACD+CD2枚組。今回のために追加された2曲は、⑨「からたちの花」と⑩「スターダスト」の2曲となる。
『Stereo Sound ORIGINAL SELECTION Vol.7/美空ひばり』
シングルレイヤーSACD+CD 2枚組
(日本コロムビア/ステレオサウンド SSMS-041~042)¥4,950 税込
[収録曲]
1.悲しい酒(セリフ入り)1982年録音
2.みだれ髪
3.愛燦燦
4.舟唄
5.悲しい酒(セリフ入り)1966年録音
6.影を慕いて
7.川の流れのように
8.津軽のふるさと
9.からたちの花
10.スターダスト
●ライナーノート:衛藤邦夫、武沢茂(日本コロムビア)
●マスタリングエンジニア:武沢茂(日本コロムビア)
購入はこちら
1965年のアルバム『この歌をひばりと共に』収録の⑥「影を慕いて」から1989年の生前最後のシングル⑦「川の流れのように」まで、録音時期は60・70・80年代と3つの年代をまたいでおり、①「悲しい酒(セリフ入り)」と⑦「川の流れのように」の2曲はPCMデジタルマスター、それ以外の8曲はオリジナルのアナログマスターテープまで遡ってリマスタリング。SACD用のDSD2.8MHz/1ビットマスターとCD用のPCM44.1kHz/16ビットマスターは、それぞれに最適なバランスで器に収めるべく、個別にリマスタリングが施されている。リマスタリングは日本コロムビアのマスタリングエンジニアである武沢茂氏、プロジェクト・ディレクターは、同社のプロデューサーである衛藤邦夫氏が担当。ブックレットには作品に関する両氏の詳細なコメントが記載されている。
SACDとCDを聴き比べると、クラシック・ギターと弦楽セクションの音色、主役である美空ひばりの歌声に違いが感じられる。とりわけ①⑤「悲しい酒(セリフ入り)」や②「みだれ髪」、⑥「影を慕いて」で演歌の抒情的なフィーリングを表現するギターのフレーズは、繊細なSACDと力強さが感じられるCDの違いが興味深い。⑥「影を慕いて」の2コーラス目から現れる弦楽セクションは、SACDの自然な音の立ち上がりが魅力的だ。美空ひばりの声は、SACDの明暗のコントラスト表現が際立っている。大半が短調の楽曲で占められる選曲にあって、長調の③「愛燦燦」と⑦「川の流れのように」では音場がパッと開けて、生命力にみなぎるひばりの歌声がまっすぐ聴き手の心まで届く。不世出の歌手の凄みを伝える作品集である。