4K UHD BLU-RAY SHORT REVIEW:DESPERADO - 短評

タイトルデスペラード
1995
監督ロバート・ロドリゲス
製作ビル・ホーデン ロバート・ロドリゲス
脚本ロバート・ロドリゲス
撮影ギレルモ・ナヴァロ
音楽ロス・ロボス
出演アントニオ・バンデラス サルマ・ハエック ヨアキム・デ・アルメイダ チーチ・マリン スティーヴ・ブシェミ カルロス・ゴメス クエンティン・タランティーノ アルバート・ミシェル・Jr カルロス・ガラルドー アブラハム・ヴェルデュスコ ダニー・トレホ コンスエロ・ゴメス ジェイム・デ・ホヨス ピーター・マルカルド

4K SCREEN CAPTURE

TitleDESPERADO
ReleasedAug 27, 2024 (from Arrow Video)
Run Time104min
CodecHEVC / H.265 (Resolution: Native 4K / DOLBY VISION / HDR10 compatible)
Aspect Ratio2.39:1
Audio FormatsFrench DTS-HD Master Audio 5.1 (48kHz / 24bit), English LPCM 2.0 (48kHz / 24bit)
SubtitlesEnglish SDH
Video Average Rate95876 kbps (HDR10) / 78 kbps (DOLBY VISION 0.008%)
Audio Average Rate3955 kbps (DTS-HD Master Audio 5.1 / 48kHz / 24bit / English), 2304 kbps (LPCM 2.0 / 48kHz / 24bit / English)

10秒に1人を葬る復讐のショータイム

力量のある映画監督がB級映画お決まりの魅力にどっぷり浸りすぎて、刺激的でスパイシーな作品にを作ってしまうことがある。ノーマルなアクションに飽きがきた観客の味覚さえも刺激するネオウェスタン『デスペラード』は、まさにそんな映画だ。製作・脚本・編集、そして監督を務めたのは、わずか7000ドルのシューティング・アクション『エル・マリアッチ』(1992)で高い評価を得たロバート・ロドリゲスである。あの"無予算"の傑作の第2部、続編感覚の拡大版、あるいはリブートであり、同じく吟遊詩人であり凄腕ガンマンのマリアッチが主人公となる。恋人を殺され、自らも掌を射抜かれ、ギターの名手としての人生を失った男。その彼の、仇の麻薬王への復讐物語。筋書きはダイムノヴェルの表紙のように洗練されているが、実のところ銃撃戦が物語そのものだ。登場人物は銃弾を言葉のように使い、怒りと意志を瞬時に伝えてみせる。そして、本作の視覚的成功のハイライトは、マリアッチを演じたアントニオ・バンデラスだ。名機アリフレックスのカメラは、若き日のクリント・イーストウッドを見つめるが如く、このラテン系色男を気に入っている。長くストレートな黒髪、溶岩のように熱い目力を持つ彼こそ、この復讐劇のピクトグラムなのである。

4K SCREEN CAPTURE

昨年8月、米英アロー・ビデオが監督ロドリゲスによる『エル・マリアッチ』『デスペラード』、そして『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』を収めた限定コレクターズ・エディション4K UHD & BLU-RAY『メキシコ三部作(THE MEXICO TRILOGY)』をリリース。2024年初頭に「アロー・ビデオがロドリゲスの『メキシコ三部作』を制作中、リリースは夏予定」というニュースが流れた時、海外ファンは三部作すべてが4K UHDで登場すると期待に胸を膨らませた。だが5月に正式アナウンスされると『デスペラード』のみが4K UHD。これに多くの落胆の声が寄せられ、三部作パッケージの方向性を誤ったにもかかわらず、それでも『デスペラード』がスチールブック仕様で単品販売されるとの発表があると、関係者の思惑通り順調に予約数を伸ばしていったのである(残念ながらメキシコ三部作』の売り上げは予想を下回っている)。

4K SCREEN CAPTURE

ARRIアリフレックス 35BLⅢ/球面レンズ撮影。収録アスペクトは1.37:1、上映アスペクトはソフトマット(上映フィルムのプリントの際に上下にマスクをかける)1.85:1ビスタサイズ。監督ロドリゲスの承認を得た、SONYピクチャーズ(SPE)による35mmオリジナルネガからの2024年4Kデジタルレストア/HDRグレード版。HDRはHDR10とドルビービジョンHDRをサポート。2011年SONY BLU-RAY画質のアップグレードは随所で視認できるが、スティーヴ・ブシェミが登場する開幕の酒場シーンを観るだけでその違いがわかるはず。続く(あまりに有名な)オープニングタイトルは素晴らしいデモシークエンスとして機能し、それ以降、肌理細かなグレインに支えられたディテイル、複層的で深みのある色彩(特にウォームトーン)が披露されていく。HDRの塩梅よきハイライトと黒レベルは観応えがあり、屋外(デイライト)の力感、屋内の明暗コントラスト、光彩陰影が彫刻する曲者揃いの大顔絵は必見である。興味深いのは、4K UHD/HDR化されたことで、編集はよりタイト、アクションはよりクレイジーで血生臭く感じる。さらにシーン変わりのコントラストを強めるスマッシュカット、突発的なズーミング、重力を感じさせるスローモーション、思い入れたっぷりのクロスフェードがふんだんに盛り込まれていることに、これまで以上に気づかされるのだ。

2011 SONY PICTURES BLU-RAY

2024 ARROW VIDEO 4K UHD BLU-RAY

DTS-HD マスターオーディオ5.1とLPCM 2.0トラックを収録。2.0トラックも優秀だだが、やはりお薦めは5.1トラック。アクションを特徴とするサウンドトラックの傑作のひとつであり、ラテン系の血流が加速していくような陽気で制御不能な感覚でサウンドステージを満たしている。銃声への偏愛を思わせる活劇音は、ひたすら観客に突き刺さっていくかのよう。それはまるでコントロール不能に陥った出来事によって、キャラクターたちが押し流されていくような感覚を与えている。発声は引き締まった輪郭で凌烈な印象を与えるが、効果音に掻き消される場面もあるのが惜しまれる。ギターとドラムを軸としたパーカッシヴなスコアは重要なセットピースであり、限りなく緊張感を高め、動き回るキャラクターの体内を流れるエネルギーを音で具現化している。

4K SCREEN CAPTURE

UHD PICTURE - 5/5  SOUND - 4.5/5

4K SCREEN CAPTURE

When viewing this trailer, please set resolution to 2160p/4K.

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