去る1月24日(金)にSONOS(ソノス)のフラッグシップサウンドバー「Arc Ultra」(¥149,800、税込)と、ワイヤレスサブウーファー「Sub 4」(¥109,800、税込)が発売された。
それぞれのスペックは既報の通り(関連リンク参照)。Arc Ultraは14基のスピーカーを内蔵し、9.1.4のドルビーアトモスが再生できるサウンドバーで、Sub 4はSONOS製品と無線でつながり、迫力ある低音を再現してくれるサブウーファーだ。
リビングをエンタテインメント空間に変身させる、SONOSのサウンドバー&サブウーファー
サウンドバー:Sonos Arc Ultra ¥149,800(税込)
●使用ユニット:ツイーター✕7、ミッドウーファー✕6、ウーファー✕1●接続:WiFi6対応、Bluetooth、HDMI(ARC/eARC)、LAN●対応機能:SonosVoice Control(英語)、AirPlay2、AmazonAlexa●寸法/質量:W1,178✕H75✕D110.6mm/5.9kg
https://www.sonos.com/ja-jp/shop/arc-ultra
ワイヤレスサブウーファー:Sonos Sub 4 ¥109,800(税込)
●使用ユニット:5✕8インチ楕円型ウーファー✕2●再生周波数帯域:25Hz〜●接続:WiFi●寸法/質量:W402H389D158mm/11.79kg
https://www.sonos.com/ja-jp/shop/sub-4
これまでSONOSでは「Ray」「Beam(Gen2)」「Arc」という3モデルのサウンドバーをラインナップしていた。このうちBeam(Gen2)とArcはイマーシブオーディオの再生が可能で、Beam(Gen2)は5スピーカー、Arcは11スピーカーを使ったバーチャル再生を行っていた。
これに対しArc Ultraは本体上部に上向きスピーカーを新搭載し、ビームフォーミング技術を活用して天井などの反射を使ったイマーシブサラウンド再生を実現している点が異なる。今回は両モデルの試聴機を借用し、自宅のリビングでサウンドを確認してみることにした。
まずArc Ultraのセットアップからスタート。Arc Ultraの接続端子はeARC/ARC対応HDMI端子とLAN端子が各1系統。eARC/ARC対応テレビとHDMIケーブルでつなぐことで放送などの音声を受け取って、高品質で再生する(付属アダプターを使えば光デジタルの接続も可能)。
Arc Ultraの電源を入れてSONOSアプリを立ち上げると、画面上に新しい製品が表示されるので、メニューに従って入力していけば簡単に終了する。今回は「リビングルーム」でArc Ultraを使うように設定した。続いてSub 4も同様に「リビングルーム」に登録し、Arc UltraとSub 4を組み合わせて使うようにアプリ上でペアリングしておく。これで低音も迫力充分で楽しめるようになる。
さらにリアスピーカーとして「Era 300」などを組み合わせてリアルサラウンドシステムも構築可能だ。その場合もアプリからリアプピーカーを追加するだけで、サラウンド成分の割り振りはシステム側で自動的に処理してくれる。
SONOS製品を使う場合は、「Tureplay」も忘れずに行っておきたい。これは、スピーカーの設置環境を測定し、最良の状態にチューニングしてくれるものだ。Arc Ultraの場合は部屋の反射も使っているので、Trueplayの効果もより発揮されるはずだ。測定はiPhoneのマイクで行う仕組みで、iPhoneを持って部屋中を歩き回ることになる。なおArc Ultraは本体内蔵マイクで測定を行うクイックチューニングも可能で、こちらはAndroidスマホとの組み合わせでも使用可能だ。
箱出しからセッティングまで30分もかからずに終了。本体を置いてそれぞれの電源ケーブルとテレビとArc Ultra間をHDMIケーブルでつなぐだけなので手間もかからないし、スピーカーケーブルの引き回しもないので室内もすっきりしている。このあたりはワイヤレスシアターシステムの恩恵で、サラウンドを楽しみたいけど、大げさな機器やケーブルは部屋に入れたくないという方には間違いなくおススメだ。
今回は55インチ有機ELテレビ、レグザ「55X9400S」にArc Ultraをつないで視聴を行った。55X9400SはARC対応なので、UHDブルーレイに収録されているドルビーTrue HDでのドルビーアトモスは伝送できないが、Prime VideoやNetflixなどの配信で使われているドルビーデジタル・プラスによるドルビーアトモスは再生可能なので、主にこちらをチェックしている。
まず通常の放送(地デジ&BS)から視聴した。放送の音声はAAC圧縮なので、デコードはテレビ、またはレコーダー側で行うことになる。またほとんどが2chなので(一部5.1chもあるけど)、Arc Ultra+Sub4でアップコンバートして9.1.4で再生することになる。
地デジのバラエティはもともと音が混濁気味なところがあるが、そのガチャガチャした感じが少し落ち着いて聞きやすくなったようにも感じる。ニュース番組でのアナウンサーやドキュメンタリーのナレーションも声が明瞭で聞き取りやすい。日常使いのサウンドバーとして、これはとても重要だ。
NHK BS1とBS4Kで連続テレビ小説『おむすび』をチェック(レコーダーで録画・再生)。ナレーションのリリー・フランキーの声も耳馴染みがいいし、橋本環奈のセリフも元気いっぱいで好印象。オープニングや声の質感はBS4Kの方が細やかなように感じたが、これは、BS1はMPEG-2 AAC圧縮で、BS4KはMPEG-4 AACという違いがあるためかもしれない(デコードはレコーダーで行っているけど)。
WOWOW BSで放送されたエリック・クラプトン『レディ・イン・ザ・バルコニー〜ロックダウン・セッションズ』(2ch)や、BS4Kのウィーン・フィル『ニューイヤーコンサート2025』(5.1ch)は広がり感があって、それぞれの楽器が奏でるニュアンスも細かいところまで聞き取ることができる。このように演奏のディテイルまで楽しめるのもArc Ultra+Sub 4のいいところかも。
続いてNetflixから映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を再生(Fire TV Cubeで再生し、55X9400S経由でArc Ultraに入力)。本作はドルビーアトモス(ドルビーデジタル・プラス圧縮)で配信されており、イントロのドクの部屋で時計が一斉に鳴り出すシーンでは様々なアラームに囲まれる気分を味わえるし、そこからの「パワー・オブ・ラブ」もテンポがよく、80年代の雰囲気を楽しませてくれる。
クライマックスの時計台への落雷も、風音が徐々に強くなっていく様子がうまく再現されているし、遠雷がそれなりに高い位置から響いてきて、何回も見ているにも関わらず作品世界に引き込まれる。デロリアンが未来に帰還してからのヘリコプターのローター音も、高さや重さがリアル。40年前の作品だけど、改めてArc Ultra+Sub 4という環境で見直すことで、新しい魅力を感じられた。
さすがにラストでデロリアンが頭上を飛び去るシーンでは、真後ろまで音が抜けていくというわけにはいかないが、全体として広がりを持ったサラウンド音場が構築されている。もっと包まれる感じを味わいたいという場合は、リアスピーカーを追加するといいだろう。こういったシステムアップが、後から簡単にできるのもSONOS製品の魅力だ。
空間オーディオはどうか? Amazon Musicからピンク・フロイド『狂気』の「Time」と、ジョン・ウィリアムズ『JOHN WILLIAMS IN TOKYO』から「帝国のマーチ」を再生した。なおArc UltraでAmazon MusicやApple Musicを聞きたい場合は、SONOSアプリに配信サービスを追加すればいい。
「Time」の冒頭、あちこちから響いてくる秒針やアラームの音は高さや方向性を伴っていて、音に包まれる体験ができる。デヴィッド・ギルモアのヴォーカルも、声が太い。「帝国のマーチ」では、サントリーホールの音の響きが聞き取れるし、低音感も伸びている(ややふくらみ気味ながら)。
またどちらも、ドルビーアトモスらしい高さの再現ができているのがいい。Arc Ultraは音の反射を利用しているが、わが家は勾配天井なので反射の制御も難しいはずだ。それが正しく再現できているのは、Trueplayの効果だろう。
確認のため、Sub 4のペアリングを外してArc Ultraだけで「帝国のマーチ」を再生した(Arc Ultar単体では50Hzまで、Sun 4を加えると25Hzまでの低音再生が可能)。冒頭の低音は軽くなるが、サウンドバーだけの再生ということを考えると、結構な量感だ。これはArc Ultraに新搭載されたサウンドモーションの恩恵と思われ(サウンドモーションについては関連リンクを参照)、奥行約11cm、厚さ7.5cmというサイズとは思えないほどの量感を楽しむことができた。
最後に、Arc Ultraとヘッドホン「Ace」でテレビ音声スワップ機能も試した。Arc Ultraで再生している音をワンタッチでAceに切り替えられるもので、その際にサラウンド再現やヘッドトラッキング機能も働かせてくれる。音声切り替えはAceのコンテンツキーを長押しするだけと簡単だ。ただしスワップ機能を使うとArc Ultraの入力が自動的にHDMIに切り替わるので、Amazon Musicなどの音楽配信を聞きたい場合は外部デバイスを使ってテレビ経由で入力する必要がある。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、Arc Ultra+Sub 4より音場が小さくなった印象はある。一方でひとつひとつの音が整理・配置され、効果音などは耳元近くで鳴っているように、クリアーに聞こえる。よりダイレクトなサラウンド感を得たい場合は、Aceでの試聴もありだろう。
ちなみにスワップ機能は同社サウンドバーのArc、Beam(Gen 1)、Beam(Gen 2)、Rayでも使用可能で、夏頃に予定しているファームウェアアップデートで1台のサウンドバーから2つのAceに音声を伝送できるようになるそうだ。
IRレシーバーを追加して、テレビリモコンの操作性も改善
Arc Ultraは、テレビ放送も配信音楽も、さらには映画コンテンツも快適に楽しませてくれる完成度の高いサウンドバーだ。サウンドモーションの搭載によって一台だけでも豊かな低音再現力を獲得しているし、高さ方向を伴ったイマーシブサラウンド再現も優れている。さらにサブウーファーやリアスピーカーも簡単に追加していけるのだから、少しずつシステムをグレードアップしていくという楽しみ方もありだ。
最近は、空間オーディオを筆頭に、映画配信でもドルビーアトモスを採用したコンテンツが増えており、そういった作品を楽しまないのは正直もったいない。Arc Ultraなら、これだけでイマーシブオーディオの基本的な魅力を体感できるわけで、サラウンドビギナーにはぜひチェックしてもらいたい。(取材・文:泉 哲也)