「鮮明なアナログ」、「凝縮感」、「一体感」の3つで読み解く、伝説のデュオ・ザ・ピーナッツの完璧なデュアルハーモニー

  双子姉妹のポップ・デュオ、ザ・ピーナッツのモノーラル録音アルバムだ。本アナログディスクにはキーワードが3つある。

 ①「鮮明なアナログ」。「鮮明」といっても、現代的なスマートで高解像度、透明度が高い……という最新デジタル的なそれではなく、アナログらしいヒューマンなフレーバーを色濃く持ちながら、衝撃的に鮮やかなのである。アナログならではの触感、可触的な高解像感だ。

 ②「凝縮感」。単にモノーラルだから、ファントムセンターにまとまるというシンプルな話ではなく、本ディスクではザ・ピーナッツという不世出の双子のデュエットだからこその超常的な凝縮感がポイントだ。

 二人の歌の音色、アーティキュレーション、節回しは双子だから同一だ。ふつうに考えるなら、左と右に分けて配置するとステレオ的な音場の面白さがあるのだが、本作はモノーラルだ。ひとりでも強い存在感が、ステレオスピーカーではセンター位置から二重に重なって歌われる、まさに圧倒的な塊感、凝縮感、集中感だ。

 ③「一体感」。音色、ハーモニーと音像の一体感は凄い。ライナーノーツで音楽評論家の湯浅学氏が「共鳴、共振」と書いておられるが、高音質でザ・ピーナッツをモノーラルで聴く醍醐味とは、まさに「共鳴、共振」を鮮明に味わうことに他ならない。ユニゾン部とハーモニー部の対比もダイナミックだ。

Stereo Sound ANALOG RECORD COLLECTION
LP 33 1/3回転『THE PEANUTS~Monaural Edition(1959~1961)』

(キングレコード/ステレオサウンド SSAR-049)¥8,800 税込

[収録曲]
[SIDE A]
1.可愛い花
2.南京豆売り
3.キサス・キサス
4.情熱の花
5.乙女の祈り

[SIDE B]
1.白鳥の恋
2.悲しき16才
3.夢で逢いましょう
4.ロンリー・ワン
5.トゥー・ヤング

ボーナス・トラック
6.モスラの歌 【東宝映画「モスラ」より】

●カッティングエンジニア:松下真也(STUDIO Dede)
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 私が特に印象に残った楽曲を挙げよう。A面5曲目「乙女の祈り」は、ポーランドのバダジェフスカ作曲の有名なピアノピースの編曲版。音域が狭い中間部に歌詞を付けた。美的な旋律がロマンティックだ。B面2曲目「悲しき16才」はプリティなハーモニーが素敵。宮川泰の編曲も素晴らしい。B面3曲目「夢で逢いましょう」ではブリリアントなピアノと、響きの豊潤さに感動、B面4曲目「ロンリー・ワン」ではイイノホールの特別なアンビエントと、まるで一人で歌っているような完璧なデュアルハーモニーに感心。日本のポピュラー歌唱史に燦然と輝くモノーラル音源といえよう。