4月のクライテリオン『雨月物語 4K』『愛と宿命の泉 2部作 4K』『恋する惑星 4K』ほか【海外盤Blu-ray発売情報】

APRIL 2025 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its APRIL 2025 slate of 4K UHD BLU-RAY（6）and BLU-RAY（1）releases. They are: UGETSU（1953） SOME LIKE IT HOT （1959）JEAN DE FLORETTE／MANON OF THE SPRING: TWO FILMS BY CLAUDE BERRI（1986）CHUNGKING EXPRESS（1994）BASQUIAT（1996）） ANORA （2024）and PRINCE OF BROADWAY（2008）.

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

朧ろな湯気の中に、純白の肌を沈めて男の肌をまさぐる美女ひとり！

多彩なナインナップの4月のクライテリオン。その先陣を切って登場するのは、名匠･溝口健二監督作『雨月物語』（1953）である。怪奇文学の父･上田秋成の短編集から「浅茅が宿」「蛇性の淫」の2編を取り上げて、さらにモーパッサンの「勲章」を加えて川口松太郎と依田義賢が脚色。前年の溝口監督作『西鶴一代女』に続いて、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた映画史に残る大傑作である（金獅子賞は該当なしだったため実質的な最優秀作とされる）。ここで溝口は自らの作家性の試金石を創り上げ、長回しと広範囲に及ぶカメラワークで、運命論的な狂気の物語を観客に伝えることに成功した。そして現実と異空間を行き来しながら、戦争の惨禍、女性の苦境、そして男性のプライドに関する本質的な真実を明らかにしている。本作の4Kレストアは、2016年、ニューヨークのシネリックでフィルム･ファウンデーションとKADOKAWAによって行われている。本盤は2016年4K DSM（デジタルソースマスター）採用、BT.709／SDR仕様版となる。

戦国時代末期、戦乱に乗じて金儲けを企む陶工の源十郎（森雅之）は、妻の宮木（田中絹代）と子を残し、義弟の藤兵衛（小沢栄）と共に城下で焼物を売る。焼き物は飛ぶように売れ、分け前を貰った藤兵衛は、出世欲から侍になろうと妻･阿浜（水戸光子）を捨てて逃げ出した。一方、源十郎は焼き物を買ってくれた若狭（京マチ子）という女の屋敷に招かれ、怪しい魅力に惹かれて関係を結ぶが･･････。戦乱の世を背景に、人間の欲望が引き起こす悲劇を、幽玄耽美なムードの中で描いた怪奇幻想譚。その普遍的なテーマ性と、完璧なまでの映像美は決して古びれることなく、いまなお新鮮な驚きをもって迎えられるであろう。必見、必聴のUHD BLU-RAYである。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 1, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

爆笑また爆笑！名匠ワイルダーが贈る粋な香りの傑作㐂劇！

名匠ビリー･ワイルダー監督作『お熱いのがお好き』 （1959）の登場である。禁酒法時代のシカゴ。売れない楽士のジョー（トニー･カーティス）とジェリー（ジャック･レモン）は、ギャング一味の殺人現場を目撃して命を狙われる。女装して女ばかりの楽団に潜り込んだふたりは、楽団の歌手シュガー（マリリン･モンロー）に恋をしてしまう。金持ちにしか興味のないシュガーを落とすために、ジョーは百万長者に化けて接近、彼女のハートを射止めようとする。一方ジェリーは、女装のせいで金持ちの老プレイボーイに求婚される羽目に。そうこうしているうちにシカゴのギャングたちがやってきて･･････。楽しくって、可笑しくって、洒落てて、ジーンとくる傑作スラップスティック･コメディ。アカデミー衣装デザイン賞受賞作（監督･主演男優･脚色･撮影･美術監督装置賞ノミネート）。本作の4Kレストアは、2018年にMGM、パーク サーカス、およびクライテリオンによって行われた。35mmオリジナルカメラネガからの4Kレストアとなるが、欠損箇所には残存する35mmデュープネガ、35mmインターポジが使用されている。2022年に2018年4Kマスターを使用したUHD BLU-RAYが、キーノ･ローバーからリリースされているが、さらなるブラッシュアップを期待したい。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 8, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

レモンとカーティスの女装に関して、監督ワイルダーはメイクが薄いと倒錯趣味ととられる、濃いとグロテスクに見えてしまう、という判断から、敢えてモノクロ作品にすることに決めた。だが派手なカラー作品を想像していたマリリンは、とたんに不機嫌になったという。気が乗らないのか撮り直しの連続、突然怒鳴り出してはメイクルームに閉じ籠る、といった有様で、撮影現場はいつもピリピリとしたムードに包まれることに。レモンの回想によれば「彼女の体には一種の警報装置が埋め込まれていた。それがけたたましく鳴り出すと、みんな目を瞑り、唇を噛んで手を握り締めた」という。のちにマリリンとのキス･シーンの感想を聞かれたカーティスは「ヒトラーとキスするような気分だったよ」と答えている。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

その時、ふたりの恋は0.1ミリ。57時間後、彼は彼女に恋をした。
その時、ふたりの恋は0.1ミリ。6時間後、彼女は彼に恋をした。

一発の銃声が切り裂く、極彩色のネオンと雑踏。そこを駆け抜ける金髪サングラスの女（ブリジット･リン）。あるいはカリフォルニアを夢見ながら、ファストフード･ショップで働くちょっと変わった女の子（フェイ･ウォン）。そして警官223（金城武）と665（トニー･レオン）。ふたりとも恋人に振られたばかり。香港スノッブのたまり場、一軒のファストフード･ショップを中継点に、ふたつの恋物語が軽やかに離陸する。香港ニューウェイヴ、ウォン・カーウァイ監督が描く新感覚のラブ･ストーリー『恋する惑星』（1994）の登場である。日本でもファンの多いカーウァイだが、本作をカーウァイ･ベストに挙げる映画ファンも、また多い。カーウァイと本作のプロデューサー、ジェフ･ラウと1992年に設立した製作会社ジェットトーンの劇場公開第1作。トラブル続きだった『楽園の瑕』の編集作業が中断、その2か月の休止期間を利用して、カーウァイが直感的に製作した作品でもある。カーウァイは3番目の物語も構想していたが、本編の時間が長くなりすぎると感じたため、翌年『天使の涙』として製作している。

DIRECTOR-APPROVED 4K + UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 15, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

本作は1994年7月に香港で初公開され、批評家から高い評価を受けた。それ以来、海外での評価はぐんぐんと高まり、映画史上最高のアンソロジー映画およびロマンチック･コメディのひとつとみなされている。またカーウァイは、本作を「ジュークボックスのような映画」と形容している。最初の物語で主に繰り返し使われる音楽は、デニス･ブラウンの「THINGS IN LIFE」。第2章ではママス&パパスの「CALIFORNIA DREAMIN' 」が幾度もリプレイされる。またダイナ･ワシントンが歌う「WHAT A DIFF'RENCE A DAY MADE」、フェイ･ウォンによる「MUNG ZUNG YAN」（クランベリーズの「DREAMS」の広東語カバー）など、変幻自在な音楽の使い方にも注目されたい。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

泉の秘密を知ったとき、マノンの復讐が始まった･･･

『テス』『愛人／ラマン』『王妃マルゴ』など、プロデューサーとして高名なクロード･ベリが監督した文芸大作『愛と宿命の泉　PARTⅠ／フロレット家のジャン』（1986）『愛と宿命の泉　PARTⅠⅡ／泉のマノン』（1986）が堂々UD BLU-RAY化。原作はフランスで愛され続ける戯曲家マルセル･パニョルの『丘の泉』。少年期にパニョルが聞いた話を基に書かれた原作は、プロヴァンス地方の普遍的な叙事詩として高い評価を受けている。プロデューサー、映画監督としても知られるパニョルは、1952年、まず『MANON DES SOURCES（泉のマノン）』のタイトルでオリジナル脚本を書き、自ら監督して4時間の大作映画として完成させた。だが配給会社によって2時間長さに編集され、劇場公開されてしまう。パニョルはこうした経緯に満足できず、脚本を小説として語り直すことにした。『丘の水』と名付けられた小説は、2部構成／2巻ものとして1963年に出版。1978年、『テス』の撮影で泊まったホテルの一室で偶然パニョルの本を見つけた監督ベリは、本書に魅了され、すぐさま映画化へと動き出す。だがすでにパニョルは他界。映画化権獲得のための未亡人との交渉は、6年の長き歳月が費やされている。

この大書をベリと『反撥』『薔薇の名前』のジェラール･ブラッシュが脚色。この時点でベリは、原作の雰囲気、深みやリズムを損なわず、物語にふさわしいものを作るには、2部構成の映画にする必要があるとしていた。歴史的に正確な雰囲気を作り出すために多大な労力が費やされ、1985年5月から12月にかけて30週間にわたって一緒に撮影された（これにより、プロヴァンスの劇的な季節の変化を表現することができた）。製作費は1億2千万フランスフラン（1,700万ドル）。当時のフランス映画史上もっとも高価な作品となり、映画が完成して初公開を迎える頃には国家的な大イベントとなっていた。出演はイヴ･モンタン、ダニエル･オートゥイユ、ジェラール･ドパルデュー（PART I）そしてエマニュエル･ベアール（PARTⅡ）。撮影は『ブロンテ姉妹』『ポゼッション』のブルーノ･ニュイッテン。本作の撮影監督を最後に、監督、脚本家に転身している。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 1, 2025
List Price: $69.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 4-DISC SET）$59.95 USD（BLU-RAY 2-DISC SET）

1920年、仏プロヴァンス地方の小さな村。水源に乏しく、水不足に見舞われるこの村で、人びとは細々と暮らしていた。村一番の実力者セザール（モンタン）と甥のウラゴン（オートゥイユ）は、泉に恵まれ、持ち主の死んだ燐家の土地を手に入れようとする。しかしそこに、土地を相続すべく、ジャン（ドパルデュー）とその一家が町からやって来た。町の人間はすぐに懲りて逃げ出すだろう、と密かにセザールとウラゴンは泉をセメントで埋めてしまう。理想に燃えるジャン一家は、必死で農業を営むが、水不足で苦労を重ねたジャンは命を落とす。

（第1部の終幕）残された妻エイミー（エリザベート･ドパルデュー）は、土地をセザールに売って、町へ戻る決心をした。ジャンのひとり娘マノンは、引越しの日、セメントを掘り起こして吹き出す泉の傍らで歓喜するセザールとウラゴンの姿を目撃。あまりにのことに号泣してしまう。それから10年。美しく成長したマノン（ベアール）は、幼い日の衝撃を胸に刻んだまま、村に残って羊飼いをしていた。そして泉の本当の秘密を知ったとき、マノンの恐るべき復讐が始まった･･････。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

ショーン･ベイカーの名を聞いて、すぐに作品タイトルが浮かぶ人は相当の映画通だ。今年53歳になるベイカーは、移民やセックスワーカーなど、社会的に疎外された人びとの生活を描いたインディーズ系長編映画の映像作家として知られている。長編監督デビューは2000年『FOUR LETTER WORDS』。ベイカーの友人をモデルに、思春期を過ぎた男性の心理を探求した小品コメディである。ベイカーが注目され始めたのは監督第5作『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』あたりから。舞台はカリフォルニア州サンフェルナンドバレー。孤独に引きこもる21歳の女性と、彼女が偶然知り合った85歳の老女との友情を描いた作品である。ヒロインはアーネスト･ヘミングウェイのひ孫ドリー･ヘミングウェイ（彼女の本格主演デビュー作）。続くトランスジェンダーの娼婦ふたりが繰り広げる狂騒の1日を描いた『タンジェリン』では、3台のiPhone 5Sスマートフォンを使用して撮影、その画期的な映画製作技術を称賛された。ウィレム･デフォーがアカデミー助演男優賞にノミネートされた『フロリダ･プロジェクト 真夏の魔法』、落ちぶれた元ポルノスタアの男性を描いた『レッド･ロケット』で着実にキャリアアップしてきたベイカーだが、初めてカンヌ国際映画祭パルム･ドールにノミネートされた『レッド～』に続いて監督した本作『ARONA アノーラ』でみごと同映画祭パルム･ドールに輝いたのである。日本公開は2025年2月28日。

アノーラは、ブルックリンのロシア系アメリカ人地区、ブライトンビーチに住む23歳のストリップダンサー。ある日アノーラは、彼女のボスから21歳のロシア人の御曹司イヴァンを紹介され、1週間だけのカノジョとなる。契約金は15,000ドル。贅沢な時間を過ごすうちに、アノーラとイヴァンは惹かれ合い、ラスヴェガスで結婚式を挙げた。だが幸せな時間は長くは続かない。結婚に猛反対するイヴァンの両親が、ふたりの仲を裂くべく、ロシアからニューヨークへ乗り込んできたことから大騒動に発展する。階級社会の残酷な現実を見つめた、大胆かつ挑発的な反シンデレラ･ストーリーであり、ニューヨーク･ネオレアリズモと呼ばれる演出スタイルの成熟を楽しめる傑作スクリューボール･コメディである。撮影は『クリシャ』『WAVES／ウェイブス』のドリュー･ダニエルズ。35mmアナモフィック撮影作品。ベイカーとアレックス･ココ（製作）監修による4Kデジタルレストア版。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 29, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

グラフィティ･タガーからアート界のスタアへと上り詰め、27歳でこの世を去った画家ジャン＝ミシェル･バスキアの生涯を描いた『バスキア』（1996）。監督は1980年代の新表現主義の中核をなす画家であり、同時代を生きたバスキアとも親交のあったジュリアン･シュナーベル。『潜水服は蝶の夢を見る』『永遠の門 ゴッホの見た未来』の監督としても知られるシュナーベルの長編初監督でもある。ニューヨーク、トンプキンス･スクエア･パーク。ここで段ボール箱で暮らす貧しいバスキアは、地下鉄、スラム街地区の壁などにスプレーペインティングを続けながら、Tシャツやポストカードを売りながら生計を立てていた。徐々に彼の描いたスプレーペインティングは評価され、やがてアンディ･ウォーホル、美術商ブルーノ･ビショフベルガー、詩人で評論家のルネ･リカール、そして芸術家仲間のアルバート･ミロらと出会い、80年代のニューヨークの芸術界で頭角を現していく。主演はこれが長編主演デビューとなる『ハンガー･ゲーム』シリーズや『THE BATMAN－ザ･バットマン－』のジェフリー･ライト。バスキアの恋人ジーナに『ジョー･ブラックをよろしく』のクレア･フォーラニ。共演にデヴィッド･ボウイ、デニス･ホッパー、ベニチオ･デル･トロ、コートニー･ラヴ、テイタム･オニール、ウィレム･デフォー、クリストファー･ウォーケンと豪華な顔ぶれ。そして若き監督シュナーベルをモデルにした人物を演じるのはゲイリー･オールドマン。撮影は『その土曜日、7時58分』『HACHI 約束の犬』のロン･フォーチュナト。

本作は2024年、監督シュナーベル監修のもと制作、限定上映されたモノクローム版（35mmオリジナルネガを4Kスキャン／4Kデジタルレストア／モノクロームHDRグレード）での登場となる。

この新鮮なアプローチは、鑑賞体験を向上させ、伝説の芸術家ジャン＝ミシェル･バスキアの人生に対する新しい視点を提供することを約束する。修復により、画質が大幅に向上し、視覚的な物語が一変し、ストーリーにさらにドラマチックで時代を超越した感覚が付与された。モノクロームへの切り替えにより、貧しい生活からニューヨークのアート界で華々しく台頭するまでの、バスキアの人生における鮮明な対比が強調されている。この新しいバージョンはバスキアのファンや映画ファンにとって特に注目に値するもので、彼の世界の複雑さを体験する新たなバージョンである。モノクローム処理により視覚的な迫力が増し、バスキアの苦悩と勝利の両方が強調され、これにより、観客はバスキアの物語を新たな生々しさと真実味をもって体験することができるはずだ。修復の目的は、バスキアの作品への関心を再び呼び起こし、視覚メディアが歴史上の人物に対する私たちの認識をどのように形作っているかについての考察を喚起することである。（ヤヌス･フィルム）

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 29, 2025
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED BLU-RAY SPECIAL EDITION

『ANORA アノーラ』で前述したニューヨーク･インディーズの雄、DIY監督ショーン･ベイカーの長編監督第3作（単独監督第2作）『プリンス･オブ･ブロードウェイ』（2008／原題･未公開）。ベイカーの代名詞とされるニューヨーク･ネオレアリズモの萌芽であり、ここでベイカーは製作･脚本･撮影･編集を兼ね、DIY監督の真骨頂を披露する。表現力豊かな手持ちカメラワーク。驚くほど自然な演技。そして躁病的なユーモアのひらめきを通して切り撮られた都会生活の混沌。アメリカンドリームの幻想を、ベイカーがもっとも鮮やかに探求した作品のひとつとされる作品である。主演はガーナ出身のプリンス･アドゥ。プロのハスラーであり、職業俳優ではない。バイカーはプリンスの人生を本作のストーリーのテンプレートとし、彼の名前がタイトルのインスピレーションとなったという。ストリートの裏事情に精通し、多くの秘密を抱えていたとされるプリンスは、映画の撮影中、クリエイティブ･コンサルタントとしても活躍している。共演は舞台出身のカレン･カラグリアン。ベイカー作品に欠かせない俳優である。スーパー16方式／16mm撮影作品。『ANORA アノーラ』ベイカーとアレックス･ココ（製作）監修による4Kデジタルレストア版。UHD BLU-RAY未発売。

マンハッタン。ガーナからの不法移民であるラッキー（プリンス）は、有名ブランドの怪しげな偽物を売って生計を立てているハスラー（詐欺師）である。路上で客に声をかけ、アルメニア系レバノン移民のレヴォン（カラグリアン）の店で偽物品を売りさばく。ふたりのコンビは快調だし、プリンスには愛を語り合う恋人カリナがいる。ささやかながら将来の夢も抱いている。贅沢を言えばキリがないが、故郷では味わえぬ平穏な日々を送るラッキー。そんな彼のもとに、ある日突然元カノのリンダが現れた。あなたの息子を2週間預かってほしい。存在すら知らなかった幼い息子を預けられたラッキーの生活は激変。それまでの穏やかな生活リズムに破綻を及ぼし、悪戦苦闘の挙句、2週間経っても元カノは戻ってこない。育児放棄されたのだ。不法移民であることから、公的機関の援助や協力を受けることもできず、途方に暮れたラッキーは･･････。

DIRECTOR-APPROVED BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: APRIL 29, 2025
List Price: $39.95 USD（BLU-RAY）

バックナンバー：世界映画Hakken伝 from HiVi
バックナンバー：2025年3月のクライテリオン